ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow

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第73話 七つの星と二つの団の長

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 暴走した力が収まり、ディノッゾは休憩所のベンチに深く腰掛けていた。
 隣には、心配そうに寄り添うセスティーナ。
 少し離れたところには、恐怖に震えていたはずの子供たちが、固まって何かを話し合っている。
「……悪いな、セス。俺はリーダー失格だ」
 ディノッゾは、重い息を吐いた。
 子供たちを怯えさせ、あまつさえ「蹂躙」などと口走った。アレンやレイラたちにも合わせる顔がない。
 その時だった。
 ザッ、ザッ、と土を踏みしめる音が近づいてきた。
 顔を上げると、そこには七人の子供たちが立っていた。
 先頭に立っているのは、勝ち気な両手剣使いの少女、カミラだ。彼女はまだ少し顔を青ざめさせてはいたが、その瞳には強い光が宿っていた。
「……先生」
「カミラ、か。……すまねえ。怖かったろ」
 ディノッゾが謝ろうとすると、カミラは首を横に振った。
「ううん。確かに凄かったけど……先生が苦しんでるのも分かったから」
 彼女は、後ろに続くリオ、ボルツ、サラ、マヤ、ティナたちを見回し、大きく息を吸い込んだ。
「私たち、七人で話しました。そして、決めました」
「決めた?」
「私たち七人で、正式に新しいパーティーを組みます。名前は……『セブンスターズ』!」
 ディノッゾは目を丸くした。
 今まで便宜上そう呼んでいたが、彼ら自身が正式に名乗るとなれば意味が違う。それは、一人前の冒険者としての自立宣言だ。
「……ほう。いい名前じゃねえか」
「でしょ? それでね、先生」
 カミラは、ディノッゾを真っ直ぐに見据えた。
「先生には、私たちのパーティーを導く、『団長』になってほしいんです!」
「……は?」
 ディノッゾは間の抜けた声を出した。
「団長って……お前ら、俺はさっき暴走したばかりだぞ?」
「だからだよ!」
 今度は、リオが前に出た。
「先生一人だと無茶するから、俺たちが支えるんだ。それに、先生にはアレン兄ちゃんやレイラ姉ちゃんたちのパーティーもあるだろ?」
「つまりですね」
 ボルツが眼鏡(伊達)をクイッと上げた。
「先生は、アレンさんたちの『年長組パーティー』と、僕たち『セブンスターズ』。この二つのパーティーを統括する、全体のリーダーになってほしいんです」
 その、あまりにも壮大な提案に、ディノッゾは言葉を失った。
 自分を恐れるどころか、支えようとし、さらには全体のトップに据えようとする子供たち。
 その信頼の重さに、目頭が熱くなる。
「……馬鹿野郎どもが」
 ディノッゾは、涙をごまかすように、カミラの頭をワシワシと撫でた。
「てめえらだけでやっていけると思ってんのか。……だが、無理だ。俺みてえな、ただの子煩悩なオッサンに、そんな大層な役目は務まらねえ」
「いいえ。務まります」
 その声を上げたのは、隣にいたセスティーナだった。
 彼女はすっと立ち上がると、ディノッゾの前に進み出た。
 そして、聖騎士のプライドも、皇帝直属の威厳もかなぐり捨てて、その場で片膝をつき、深々と頭を下げた。
「ディノッゾ殿」
 彼女の、あまりにも真剣な声に、子供たちが息を呑む。
「もし、貴方様が二つのパーティーを束ねる『団長』をお引き受けになるのでしたら……。私も、その団に入れてはいただけないでしょうか」
「……は?」
 ディノッゾは、本日二度目の間の抜けた声を上げた。
「あ、あんた……聖騎士だろ? 何言ってんだ」
「本気です」
 セスティーナは顔を上げ、熱を帯びた瞳で彼を見つめた。
「貴方様はご自分を『ただのオッサン』と卑下なさいますが……貴方様はまだお若い。そして何より、私にとっては……!」
 彼女はそこで言葉を詰まらせ、頬を朱に染めた。
 その先にある「英雄です」「お慕いしています」という言葉を、寸でのところで飲み込んだのだ。
「……王都へ着いたら、陛下に懇願し、聖騎士の任を解いていただきます。最悪の場合、辞職することもやむを得ないと、覚悟は決めております」
「そこまで……」
「はい。ディノッゾ殿は先ほど、『帝国の御者仲間に会いに行く』と仰いましたね? ならば、王都での任務が終われば、私たちが行動を共にすることに何の不自然もありません」
 彼女は、ニッコリと微笑んだ。
「陛下も、私の決意をきっと理解してくださいます。……ですので、どうか。この二つのパーティーの『団長』として、私も、貴方様のお傍に置いてはいただけないでしょうか」
 子供たちからの純粋な信頼。
 そして、全てを捨ててでもついていくという、聖騎士の重すぎる愛。
 ここへ来て断れるほど、ディノッゾは野暮ではなかった。
 彼は天を仰ぎ、大きく息を吐き出した。
「……分かったよ。降参だ」
 ディノッゾは立ち上がり、ニカッと笑った。いつもの、太陽のような笑顔だ。
「いいだろう! 本日から俺が、テメェらの『団長』だ! 俺についてくる以上、地獄の特訓だろうが何だろうが、文句は言わせねえぞ!」
「「「イエッサー! 団長!」」」
 子供たちが声を揃えて敬礼する。
「ふふっ……よろしくお願いします、団長殿」
 セスティーナもまた、嬉しそうに微笑んで敬礼した。
 こうして、街道の片隅にある小さな休憩所で。
 二つのパーティーと一人の聖騎士を束ねる、新たな「団」が誕生したのだった。
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