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絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防
しおりを挟む世は、追放ブームである。「いや、そのブーム遅いよ」とか言わないで欲しい。現実問題として、ここオタワの街では、追放がブームである。
なんじゃそりゃという人に説明しておくと、冒険者パーティーから既存メンバーを追放して、新しいメンバーと入れ替える、というのが流行っている。
何故かというと、コストの問題――らしい。冒険者保護の目的で設定された、ある法律が発端だ。
『五年以上パーティーに貢献したメンバーは、必ず昇給しなければならない』
この法律によって、五年ギリギリの冒険者たちが次々に追放されるという騒ぎになった。
さて、何故こんな話をしているかというと――。
冒険者歴四年九ヶ月。職業、アンチマジシャン。二十一歳独身、彼女募集中。
(オレである!!!)
そう。このオレ、ヴィゼルは、追放条件にバッチリ当てはまるのである。
今のパーティーに所属して四年九ヶ月。たまたま誘われて、なんとなくそこに居続けているだけで、パーティー内での関係はそれほど良くない。
何しろ、うちのパーティー、剣士ゼルドのハーレムパーティーなのである。ヒーラーちゃんも弓使いちゃんも、魔法使いさんも、全員がゼルドの嫁なのである。イケメン滅べ。
さらに言うと、オレの職業はアンチマジシャン。なにかと言えば、敵の魔法を打ち消すだけの魔法使い。ハッキリ言って需要が低い。レア職業だけど、使いどころもレアである。やかましい。
つまり今のところオレは、追放待ったなしの状態なのである。
そして、現在。
(ついに来たか……)
目の前に居るのは、金髪のイケメン剣士。テーブルに肘を着いて手を組み、ニッコリと笑みを浮かべている。我がパーティーのリーダー、ゼルドである。
(いよいよ来るんだな!? オレの追放劇が!)
パーティー登録・解除の権限は、リーダーに一任されている。つまり、ゼルドがパーティーから外すと言ったら、それで終わりなのだ。この制度が追放ブームに拍車をかけている。今後、制度は見直されるだろうが、残念ながらオレは間に合いそうにない。
(追放かぁ……。他にアンチマジシャンを必要とするところ、あるかなあ……。せめて有利な条件で辞めたいけど)
慈悲も貰えず、着の身着のまま追放された例もあるらしい。僅かな金銭を貰えれば良い方だ。
なお、制度を逆手にとって、二つのパーティーで人員を交換して誤魔化しているところもあるらしい。闇が深い。
仲良しこよしではなかったが、まぁまぁ気に入っていたパーティーなので、残念だ。せめて、交渉で泥沼にならなきゃ良いのだが……。
「ヴィゼル、わざわざ来てもらって、悪いな」
「いや……。重要な話か?」
「ああ。重要な話だ」
ゼルドが神妙な顔でオレを見る。ああ、ついに、この時が来てしまった。
「パーティーの件について、だな?」
念押しのようにそう確認すると、ゼルドはゆっくりと頷いた。
「ああ。パーティーの件だ」
「そうか……。なんだかんだ、やりやすいパーティーだし、お前のことも嫌いじゃない。オレはそう思っていたんだが――」
「そっ、そうか? ヴィゼルも俺のことを?」
「ん? ああ、好ましいと思っているぞ?」
下半身以外はな。パーティーメンバー全員食うって、おかしいだろ。
「そうか。それなら話は早いな」
「……(なんの話だっけ?)」
今の流れで、どうして追放がしやすくなるのだろうか。「パーティーを想うお前なら、理解してくれるよな!」とかかな。結構なサイコパスだと思うぞ、それ。
「知っての通り、俺はパーティーメンバーをハーレムメンバーで揃えたいと思っている」
「ああ――」
そっちかー。
なるほど。この下半身男、これを機にオレを追放して、新しい女の子を加入させる気か。
オレが呆れ半分、失望半分で見てやると、何故かゼルドはニッコリと笑った。
嬉しそうにすんな。
「そこでヴィゼル」
「ああ。そういうことだな」
「そうだ。お前には――」
追放。その言葉を、神妙な気持ちで待つ。嫌な気分だ。その上、コイツはオレが居なくなったあと、誰かをパーティーに入れるんだ。
(……覚悟してたのに、変な気分だ)
ズキリ、心臓が痛む。ああ、オレ。社交辞令なんかじゃなく、結構ゼルドのことも、パーティーのことも、気に入ってたんだ。
「お前には、俺のハーレムメンバーになって欲しい」
「なんて?」
聞こえてきた言葉に、幻聴か? と聞き返す。
今コイツ、何を言った?
「俺の恋人になってくれ、ヴィゼル! お前もハーレムの一員だ」
「いや、何言ってるか解らないですね」
何を言ってるんだ、コイツは。ハーレムメンバー? オレが?
「え? どゆこと? 追放は?」
オレって追放される流れじゃなかったっけ? 混乱してきた。
「追放? ああ、なんだか流行っているらしいな。安心してくれ。俺はそんなことしないぞ。ヴィゼルもハーレムの一員として、これからもよろしくな」
邪気などまったく感じない笑顔で、ゼルドが笑う。
「~~~~~~」
パーティー登録の権限と解除は、リーダーに一任されている。つまり、パーティーから抜けるにも、リーダーの許可が必要な訳で……。
「っ、つ、追放してくれよっ!?」
「なに言ってるんだ。手放すわけないだろ」
動揺するオレをよそに、どうやらパーティー残留が決定したようだった。
完っ!!!!!
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感想ありがとうございますw
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