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夫婦鼓
詠出
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「き、来ておるというのか、撥丸の霊が?」
刀自が声を裏返らせた。
一歩も二歩も後ずさる彼女とは逆に琴音が身を乗り出してきた。
「団栗眼に八重歯といったら撥丸の他におりません!」
白い顔を袖で包みもせず、きょろきょろともどかしそうに庭を見渡す。
片付けを進める下男下女が何事かと目を丸くしてもお構いなしだった。
「……いない。私には見えない。美葛殿、教えてください。撥丸はどこに、どんな様子でいますか」
真咲も、もゆらも、何事かという顔でこちらへやって来た。誰も彼も琴音の必死さに呑まれ気味だ。せがまれるまま、美葛はもう一度庭に目を凝らした。
「ええと、あっちの……、篝火? 鉤の付いた棒に鉄の籠を提げたものの隣に、撥丸は立ってます。それで、門の方を指差してる。……というか、あれは」
子供の指先は、ゆっくりとだが確かに動いていた。地面すれすれを這うように漂う、一朶の黒雲を追いかけているのだ。そして、何やら思い切った面持ちでその中に躍り込み、美葛の目からも姿を消してしまった。
「門の辺りを漂ってる、あの黒雲のことを指していたみたいです。隠れて見えなくなっちゃった」
あっ! と一声。こちらは母屋の真ん中に残されたままの《夕星》の叫びだった。
『感じます。来ている。《望月》がすぐ近くまで来ている!』
「……! 庭へ人を集めなさい!《望月》を探すのです!」
刀自の口を介する暇も惜しいのだろう、琴音が自ら声を張って呼びかけた。
命じられた下男たちがそれぞれ松明を手にして門前を検めた。夜の庭をいくつもの灯りと影が揺らめきながら行き来する。が、鼓はどうしても見つからない。
美葛も、黒雲を我慢しいしい一緒になって探してみた。しかし、やはりくたびれもうけに終わった。何かが見えていない、何かに届いていないという仄かな手応えはあって、その何かが《望月》なのだろうことはまず間違いないのに、どうすればそれを見いだせるのか、手に取れるのかがさっぱり分からない。
肩を落として蔵に戻った美葛を、もゆらが訳知り顔で出迎えた。
「何しろ《望月》の名を持つ品。うかうかと転がり出てしまったせいで、美葛殿の言う黒雲とやらに隠されてしまったのでしょう。まさに『照る月を 雲な隠しそ』と言いたい所ですね」
美葛はぱちくりと目を瞬いた。
「照る月を、え?」
「いえ、ですから、銘に『月』なんて付いているせいで」
「くもなかくしそ、って何? どういう意味?」
「どういう意味も何も……。ああ、なるほどなるほど」
もゆらは口許を袖で隠してつんと顎を反らし、わざとらしい高く作った声で、ここぞとばかりに美葛を嘲り始めた。
「『照る月を 雲な隠しそ 島蔭に 吾が船泊てむ 泊知らずも』。古い歌です。照り輝く月を、雲よ隠さないでくれ。船を島蔭に泊めようというのに、暗いと船着きがどこだか分からないよ。というくらいの歌意でしょうか。その上の句を、今この場の様子から思い出しまして、私ぽろっと口にしてしまったわけです。ご存じないとは知らずにたいへん失礼いたしました」
ほほほほほ、と童女は仰け反って笑った。
美葛は何やら悔しくなって大いに唇を尖らせた。
興味はあるけれど不得手。苦手だけれど気にはなる。そんな『歌』のことを一通り学んでおくよう、いつか母に言われたにも関わらず、美葛は等閑にしたまま今日までを過ごしてきた。ここへ来てその報いを受けた気がした。
「せっかく都にいるのです。よく知られた歌の一首くらい諳んじることができた方が良いと思いますよ、狐さん。団栗ではなくて当たり前の銭を払うなら、私がいくらか教授して差し上げますけれど。たとえば今の歌を詠んだのは春日……、春日……、あれ? 誰だったっけ」
「春日蔵老」
もゆらと美葛の間に真咲が割り込んできた。
「え、真咲も知ってるの?」
「そんな事より今は《望月》だ。美葛の言う黒雲を取り払ってやれば戻るかもしれないんだな? けど、どうやって。また野良法師なり何なり呼びつけて、今度は雲を払うための祈祷でもさせるのか」
「とんでもないことを。あんな役立たずども、二度とこの屋敷へは近付けさせません」
怒れる刀自がそう切って捨てた。
ふむ、と腕組みをした真咲が美葛を見下ろしてくる。
「実は美葛には雲を晴らす神通力が……」
「ないないない。そんな都合の良い力」
「だよな」
「となると、いよいよ困りましたねえ。美葛殿にしか見えていないものを、貴女の他に、誰にどうせよと言えば良いのでしょう。本当に、何の力も術もお持ちではないのですか?」
もゆらの問いかけに、弱り切った美葛が背を丸めた時だった。あっ! とまた《夕星》が声を上げた。先程とは打って変わった悲鳴に近い叫びだ。
『気配が薄らいでいく! 黒雲にすっぽり包まれて、現の物ではなくなりかけている!』
一刻を争うと悟った琴音がこちらへずずずいっと迫って来た。
刀自の手を振り解き、らしくないほどの熱心さで美葛に訴える。
「今しがた、撥丸は黒雲に飛び込んだようだと仰いましたね。あの子は今きっと、《望月》のことを守ってくれているのです。小さいのに気配りができて情に厚い、本当に良い子でしたもの。そうに違いありません」
「黒雲の中で、撥丸が《望月》を守っている」
「ええ」
戸惑う美葛に取り縋ったまま、琴音が哀しそうに俯いた。
「あの子を亡くしたことを、私も屋敷の他の者たちも、この一年、とてもとても悔やんできました。もっと心を砕いて手厚く看病してやれば良かった、そうすれば助かったかもしれないのに、と。療治が届かなかったのはこちらのせい。恨んでくれたっていいのです。それなのに撥丸は、鼓を失って嘆く私たちのことを思って……」
お願いします、と顔を上げた琴音の瞳は涙に濡れていた。
「あの子のためにも、美葛殿、どうかどうか、《望月》を見つけ出してください」
冷たい風が庭を吹き抜け、篝火の鉄籠から火の粉が散った。美葛は、睦月の夜の寒さにも関わらず嫌な汗が浮いてくるのを感じた。些細な幻術と変化しかできない狐だなどと、この場でどうして言えるだろう。
手詰まりな感も露わな蔵の中でただ一人、もゆらがその酷薄な笑みを深くした。
「こうなったら、できそうなことは何でもやってみるしかありませんね。それこそ歌を詠むとか」
「歌」
たった今その歌のことで嫌な思いをしたばかりなのに、という美葛の心は面に出たらしい、もゆらに何ですかその顔はと半眼で凄まれた。
「歌で雨を呼んだとか、歌で妖を退けたとか、そういった歌の威徳を示すお話を一つも聞いたことがないなんて言わせませんよ? ほら言うじゃありませんか。『力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ――』とか何とか。ああ狐さんは『古今集』をご存知ないのですね。まあそれはともかく、歌にこの世を動かす力があることに疑いはないでしょう?」
「いや、まあ別に、疑いはしないけど」
「だったらはい、ここで一首、新しく詠んでください」
「よ……、ええっ! 私が? 今ここで?」
「他の誰にいつどこで詠めというのです。取り戻すべき《望月》が今どのような有様か、この中で一番はっきり分かっているのは美葛殿でしょう。となれば、この場に最も相応しい歌を詠み出し得るのもまた貴女だということになりませんか」
明らかに、こちらが歌に暗いと知っての振る舞いだ。意地悪以外の何ものでもない。ただ、だからといって強く言い返せるわけではなかったし、代りの案があるわけでもなかった。青くなって口をぱくぱくさせる美葛に、もゆらはにやにやと追い打ちをかけてくる。
「おやあ? 古い歌を知らないだけならともかく、もしかして詠むこともできないとか? まさかですよねえ」
「……その、すぐには、ちょっと……」
「すぐにはちょっと! 切羽詰まったこの時に何て悠長な」
切羽詰まったこの時に何て底意地の悪い、と言い返したいのを涙目の美葛がぐっと堪えた時だった。
「『樫の実の ひとり寝がたき 春の夜 雲な隔てそ 望月の影』、ではどうだ」
虚を突かれたらしい、もゆらがひょいと眉を上げた。
美葛も、琴音も刀自も、皆が一斉に後ろを振り向いた。
真咲だった。
いつの間にか蔵の奥に戻っていた彼は、《夕星》を抱えたまま胡坐をかいていた。
刀自が声を裏返らせた。
一歩も二歩も後ずさる彼女とは逆に琴音が身を乗り出してきた。
「団栗眼に八重歯といったら撥丸の他におりません!」
白い顔を袖で包みもせず、きょろきょろともどかしそうに庭を見渡す。
片付けを進める下男下女が何事かと目を丸くしてもお構いなしだった。
「……いない。私には見えない。美葛殿、教えてください。撥丸はどこに、どんな様子でいますか」
真咲も、もゆらも、何事かという顔でこちらへやって来た。誰も彼も琴音の必死さに呑まれ気味だ。せがまれるまま、美葛はもう一度庭に目を凝らした。
「ええと、あっちの……、篝火? 鉤の付いた棒に鉄の籠を提げたものの隣に、撥丸は立ってます。それで、門の方を指差してる。……というか、あれは」
子供の指先は、ゆっくりとだが確かに動いていた。地面すれすれを這うように漂う、一朶の黒雲を追いかけているのだ。そして、何やら思い切った面持ちでその中に躍り込み、美葛の目からも姿を消してしまった。
「門の辺りを漂ってる、あの黒雲のことを指していたみたいです。隠れて見えなくなっちゃった」
あっ! と一声。こちらは母屋の真ん中に残されたままの《夕星》の叫びだった。
『感じます。来ている。《望月》がすぐ近くまで来ている!』
「……! 庭へ人を集めなさい!《望月》を探すのです!」
刀自の口を介する暇も惜しいのだろう、琴音が自ら声を張って呼びかけた。
命じられた下男たちがそれぞれ松明を手にして門前を検めた。夜の庭をいくつもの灯りと影が揺らめきながら行き来する。が、鼓はどうしても見つからない。
美葛も、黒雲を我慢しいしい一緒になって探してみた。しかし、やはりくたびれもうけに終わった。何かが見えていない、何かに届いていないという仄かな手応えはあって、その何かが《望月》なのだろうことはまず間違いないのに、どうすればそれを見いだせるのか、手に取れるのかがさっぱり分からない。
肩を落として蔵に戻った美葛を、もゆらが訳知り顔で出迎えた。
「何しろ《望月》の名を持つ品。うかうかと転がり出てしまったせいで、美葛殿の言う黒雲とやらに隠されてしまったのでしょう。まさに『照る月を 雲な隠しそ』と言いたい所ですね」
美葛はぱちくりと目を瞬いた。
「照る月を、え?」
「いえ、ですから、銘に『月』なんて付いているせいで」
「くもなかくしそ、って何? どういう意味?」
「どういう意味も何も……。ああ、なるほどなるほど」
もゆらは口許を袖で隠してつんと顎を反らし、わざとらしい高く作った声で、ここぞとばかりに美葛を嘲り始めた。
「『照る月を 雲な隠しそ 島蔭に 吾が船泊てむ 泊知らずも』。古い歌です。照り輝く月を、雲よ隠さないでくれ。船を島蔭に泊めようというのに、暗いと船着きがどこだか分からないよ。というくらいの歌意でしょうか。その上の句を、今この場の様子から思い出しまして、私ぽろっと口にしてしまったわけです。ご存じないとは知らずにたいへん失礼いたしました」
ほほほほほ、と童女は仰け反って笑った。
美葛は何やら悔しくなって大いに唇を尖らせた。
興味はあるけれど不得手。苦手だけれど気にはなる。そんな『歌』のことを一通り学んでおくよう、いつか母に言われたにも関わらず、美葛は等閑にしたまま今日までを過ごしてきた。ここへ来てその報いを受けた気がした。
「せっかく都にいるのです。よく知られた歌の一首くらい諳んじることができた方が良いと思いますよ、狐さん。団栗ではなくて当たり前の銭を払うなら、私がいくらか教授して差し上げますけれど。たとえば今の歌を詠んだのは春日……、春日……、あれ? 誰だったっけ」
「春日蔵老」
もゆらと美葛の間に真咲が割り込んできた。
「え、真咲も知ってるの?」
「そんな事より今は《望月》だ。美葛の言う黒雲を取り払ってやれば戻るかもしれないんだな? けど、どうやって。また野良法師なり何なり呼びつけて、今度は雲を払うための祈祷でもさせるのか」
「とんでもないことを。あんな役立たずども、二度とこの屋敷へは近付けさせません」
怒れる刀自がそう切って捨てた。
ふむ、と腕組みをした真咲が美葛を見下ろしてくる。
「実は美葛には雲を晴らす神通力が……」
「ないないない。そんな都合の良い力」
「だよな」
「となると、いよいよ困りましたねえ。美葛殿にしか見えていないものを、貴女の他に、誰にどうせよと言えば良いのでしょう。本当に、何の力も術もお持ちではないのですか?」
もゆらの問いかけに、弱り切った美葛が背を丸めた時だった。あっ! とまた《夕星》が声を上げた。先程とは打って変わった悲鳴に近い叫びだ。
『気配が薄らいでいく! 黒雲にすっぽり包まれて、現の物ではなくなりかけている!』
一刻を争うと悟った琴音がこちらへずずずいっと迫って来た。
刀自の手を振り解き、らしくないほどの熱心さで美葛に訴える。
「今しがた、撥丸は黒雲に飛び込んだようだと仰いましたね。あの子は今きっと、《望月》のことを守ってくれているのです。小さいのに気配りができて情に厚い、本当に良い子でしたもの。そうに違いありません」
「黒雲の中で、撥丸が《望月》を守っている」
「ええ」
戸惑う美葛に取り縋ったまま、琴音が哀しそうに俯いた。
「あの子を亡くしたことを、私も屋敷の他の者たちも、この一年、とてもとても悔やんできました。もっと心を砕いて手厚く看病してやれば良かった、そうすれば助かったかもしれないのに、と。療治が届かなかったのはこちらのせい。恨んでくれたっていいのです。それなのに撥丸は、鼓を失って嘆く私たちのことを思って……」
お願いします、と顔を上げた琴音の瞳は涙に濡れていた。
「あの子のためにも、美葛殿、どうかどうか、《望月》を見つけ出してください」
冷たい風が庭を吹き抜け、篝火の鉄籠から火の粉が散った。美葛は、睦月の夜の寒さにも関わらず嫌な汗が浮いてくるのを感じた。些細な幻術と変化しかできない狐だなどと、この場でどうして言えるだろう。
手詰まりな感も露わな蔵の中でただ一人、もゆらがその酷薄な笑みを深くした。
「こうなったら、できそうなことは何でもやってみるしかありませんね。それこそ歌を詠むとか」
「歌」
たった今その歌のことで嫌な思いをしたばかりなのに、という美葛の心は面に出たらしい、もゆらに何ですかその顔はと半眼で凄まれた。
「歌で雨を呼んだとか、歌で妖を退けたとか、そういった歌の威徳を示すお話を一つも聞いたことがないなんて言わせませんよ? ほら言うじゃありませんか。『力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ――』とか何とか。ああ狐さんは『古今集』をご存知ないのですね。まあそれはともかく、歌にこの世を動かす力があることに疑いはないでしょう?」
「いや、まあ別に、疑いはしないけど」
「だったらはい、ここで一首、新しく詠んでください」
「よ……、ええっ! 私が? 今ここで?」
「他の誰にいつどこで詠めというのです。取り戻すべき《望月》が今どのような有様か、この中で一番はっきり分かっているのは美葛殿でしょう。となれば、この場に最も相応しい歌を詠み出し得るのもまた貴女だということになりませんか」
明らかに、こちらが歌に暗いと知っての振る舞いだ。意地悪以外の何ものでもない。ただ、だからといって強く言い返せるわけではなかったし、代りの案があるわけでもなかった。青くなって口をぱくぱくさせる美葛に、もゆらはにやにやと追い打ちをかけてくる。
「おやあ? 古い歌を知らないだけならともかく、もしかして詠むこともできないとか? まさかですよねえ」
「……その、すぐには、ちょっと……」
「すぐにはちょっと! 切羽詰まったこの時に何て悠長な」
切羽詰まったこの時に何て底意地の悪い、と言い返したいのを涙目の美葛がぐっと堪えた時だった。
「『樫の実の ひとり寝がたき 春の夜 雲な隔てそ 望月の影』、ではどうだ」
虚を突かれたらしい、もゆらがひょいと眉を上げた。
美葛も、琴音も刀自も、皆が一斉に後ろを振り向いた。
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