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影法師
薬師
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翌朝、河内忠親の屋敷へ向かう道すがら、美葛は冷たい風の中に雀たちのはしゃいだ声を聞いた。
垣を越えて往来へ枝を伸ばした大きな松の枝の上で、雀たちは楽しそうに、前生で良い行いをしたからに違いない、などと浮ついた話をしていた。
どこそこの森の木の剥げかかった皮の裏に天道虫がひしめいているのを見つけたので、暖かくなるまで食うには困らないだろう、というのだ。食べる物の心配をしなくていいというのは、寒さの厳しい時季にはとても幸せなこと。幸せのお裾分けを貰ったような気分の美葛は、いよいよ足取りが軽くなるのを覚えた。隣の真咲が何度目かの呆れ笑いを見せた。
「えらくご機嫌だな、美葛」
「ふふふ、やっぱりそう見える?」
機嫌も良くなろうというものだった。妙泉尼に縛めの術を解いてもらって、狐に戻ることができるようになったのだから。鳥の声も木々の囁きも聞き放題。当たり前のことが当たり前にできることは実に喜ばしい。
もゆらが、先を行きながら肩越しに振り向いた。お小言の目つきだった。
「いくら人通りの少ない道だからと言って、浮かれてもらっては困りますよ。お願いですからその耳は仕舞っておいて下さい」
おっと、と美葛は頭に手をやった。白い毛に覆われたひこひこと自在に動く狐の耳を、彼女は出したままにしていたのだ。言われた通りちゃんと仕舞って、ただし浮かれた気分はそのままに、真咲の顔を覗き込んだ。
「私もそうだけど、真咲だってご機嫌に見えるよ。良かったね。呼ばれて行く身なら、昨日の門衛さんだってすんなり招き入れてくれるよね」
「まったく、妙泉尼様様だな。底知れないお方だ。まさか世に名高い陰陽道の大家と繋がりをお持ちだとは思わなかった」
「安倍家って言ったら、信太の里でだって知られてるくらい有名だもんね。真咲は聞いたことある? 安倍家の当主の、大大大陰陽師、安倍晴明様のこと。御母堂様は狐だったらしいよ」
「確か、和泉国は信太の森の白狐で、葛の葉とかいう」
「そう。葛の葉様。何を隠そう、美葛っていう私の名は、その葛の葉様にあやかって付けられたんだよ」
えっへん、と美葛は胸を張った。滅多に披露できる機会の訪れない、密かな自慢の種だったのだ。
「あっちは信太の森の、こっちは信太の里の白狐って訳か。今度の一件が片付いたら、ちらっと安倍晴明様に挨拶しに行ってもいいかもな。お袋さんと同じ白狐の美葛を、まさか無下に扱いはしないだろう」
「そ、そうかなあ?」
「挨拶なんてできるわけないじゃありませんか」
もゆらが実に冷ややかに、しかも鋭く切って捨てた。
「安倍家は忌籠りの最中だと、美葛殿にはお話したはずですけれどね。晴明様、身罷られたのですよ。去年の秋頃に」
美葛も真咲も目を瞬いた。
大大大陰陽師が既に故人だったとは。
もゆらが眼差しを鋭くして美葛を見た。
「狐に戻れるようになったことが嬉しいのは分かります。分かりますけれど、あんまり浮かれない方がいいですよ。厄介な案件だと思えばこそ、お師匠様もそのようなはからいをなさったのでしょうからね」
門衛は、例の書状を見せるとすんなり門を潜らせてくれた。
直に忠親を訪ねるのではなく、まずは一人娘の雪世に案内を乞えという。
入ってすぐ、美葛たちは足を止めた。敷地の中にはむくつけき男どもがわんさといたからだ。
数で言えば、先の夫婦鼓の一件で訪ねた、破落戸をこれでもかと用心棒に雇った琴音姫の屋敷にも引けを取らないくらいだった。ただ、ここの連中は明らかに毛色が違う。人相のよろしくない者ばかりなのは同じだが、醸す雰囲気が異なっていた。美葛は似たものを知っていた。狼の群れだ。
「皆、放免なのだそうです」
もゆらの眼には明らかな嫌悪の色がちらついていた。
「ほうめん?」
「元罪人です。看督長である河内忠親殿は、己が関わり合いになった罪人たちを次々と放免やそれと同じような立場に召し上げて、家人代わりに使っているそうなのです」
「もゆら……? 何ていうか、すごく嫌そうだね」
「当たり前でしょう。いつまた罪を犯すとも知れない者たちの巣になんて、お師匠様の指図でなければ来たくなんかありませんでしたよ」
「そんな言い方しなくたって」
一行は嫌でも放免たちの目を引いた。面倒を嫌ってか話しかけてくる者はないが、値踏みするような怪しむような、鋭い眼差しが美葛には痛いし怖い。足早に庭を行くと、向かう先の母屋の妻戸が軋んで開いた。
黒っぽい直垂と袴に身を包んだ、えらく丈高い男が姿を見せた。
瞬間、美葛は《影法師》に行き逢った昨日に勝るとも劣らない悪寒を覚えた。迷わず真咲の背中に隠れた。
どこか覚束ない足取りでふらふらとこちらへやってきた黒衣の男は、烏帽子の分を差し引いても六尺をゆうに越えて見えた。行く手に立ちはだかった彼を見上げて、もゆらが恐れ気もなく前に出た。
「安倍家の使いで参りました。河内忠親様にお目通り願いたいのですが」
恐らく二十歳前後、真咲と変わらない年頃に見えるその男の目の下には、まるで三日も四日も寝ていないような濃い隈があった。いやに定まらない目付きで、もゆらよりは真咲の方を向いたまま、それは困った、と彼は薄笑いを浮かべた。爪の伸びた右手の指で頬を掻いた。
「俺には帰れとしか言えない」
だらしなく開いた口の端から今にも涎が伝い落ちそうで、美葛は男を見ていて妙にはらはらした。どうやら彼は隻腕だった。左腕がない。今一つ釣り合いの取れない、傾いだような立ち姿はそのせいだろうか。呂律の怪しい、間延びした、どもりがちな口振りで続けた。
「邪魔はしてほしくない。どやされたくないからな、俺も」
「……あの、念のために伺いますが、貴方はこちらのお屋敷の放免ですか?」
もゆらが尋ねると、男はいきなり呵々大笑して美葛たちをたじろがせた。
庭中の放免たちが、またかと言わんばかりの厭そうな顔を向けてきた。
「薬師に決まっているだろうが。他の何に見える」
「忠親様付きの、薬師? 貴方が? 本当に?」
もゆらが軽蔑も露わに声を荒らげた。
ひとしきり壊れたように笑った薬師は、突然、もゆらに頭突きを食わせかねない勢いで顔を近付けて凄んだ。
「誰とも会わせるわけにはいかん。とっとと失せろ」
「そこを何とか」
応えて口を開いたのは真咲だった。
もゆらと薬師との間に、彼は強引に割って入った。胸を反らして相手と向き合った。互いの顔のあまりの近さに、成り行きを見守る美葛の方が青ざめてしまった。
「どうか今一度、今一度、お願い申し上げます。常陸国は信太の里から来た、千種の息子だと伝えてもらえれば、きっと忠親様にもお分かりです」
「くどい奴らだな」
嘲るような声音はそのまま、薬師が眉間に深い皺を寄せた。額にも右手の甲にも太い青筋が浮いた。
まさに一触即発というその時だった。お止めください! と鋭く囁く声があった。
妻戸から顔を出した十七八の娘が、血相を変えて裸足のまま駆けてきた。彼女は、華奢で色白な見た目とは裏腹な振る舞い、薬師の黒衣を掴んで後ろから懸命に引っ張った。泣きそうな顔をしていた。
「茨殿、悶着はよして下さい! 父の身体に障ります!」
茨と呼ばれた薬師は真咲を睨めつけたまま、娘のことなど相手にしなかった。引っ張られようが打たれようが平然としてびくともしない。
「ひょっとして、雪世様でしょうか」
真咲が茨越しに呼びかけた。
「常陸国から来た者です。お願いします、忠親様に渡していただきたい物が」
「しつこいぞ」
茨が眉間に深い皺を寄せて遮った。
「弁えろ。今の忠親の心を少しでも波立たせそうな物を、近付けたりは絶対にできん。おい雪世」
しがみつく雪世を見下ろした。
「俺は何か間違った事を言っているか? おい。どうなのだ」
「いいえ。いいえ茨殿。お願いですからお静かに! ようやく眠れたのに、父が起きてしまいます。皆様、申し訳ありません」
雪世が茨の陰からすまなそうに言った。
「どのような御用かも伺わずにたいへん失礼とは存じますが、どうかどうか、今はお引き取り下さい」
垣を越えて往来へ枝を伸ばした大きな松の枝の上で、雀たちは楽しそうに、前生で良い行いをしたからに違いない、などと浮ついた話をしていた。
どこそこの森の木の剥げかかった皮の裏に天道虫がひしめいているのを見つけたので、暖かくなるまで食うには困らないだろう、というのだ。食べる物の心配をしなくていいというのは、寒さの厳しい時季にはとても幸せなこと。幸せのお裾分けを貰ったような気分の美葛は、いよいよ足取りが軽くなるのを覚えた。隣の真咲が何度目かの呆れ笑いを見せた。
「えらくご機嫌だな、美葛」
「ふふふ、やっぱりそう見える?」
機嫌も良くなろうというものだった。妙泉尼に縛めの術を解いてもらって、狐に戻ることができるようになったのだから。鳥の声も木々の囁きも聞き放題。当たり前のことが当たり前にできることは実に喜ばしい。
もゆらが、先を行きながら肩越しに振り向いた。お小言の目つきだった。
「いくら人通りの少ない道だからと言って、浮かれてもらっては困りますよ。お願いですからその耳は仕舞っておいて下さい」
おっと、と美葛は頭に手をやった。白い毛に覆われたひこひこと自在に動く狐の耳を、彼女は出したままにしていたのだ。言われた通りちゃんと仕舞って、ただし浮かれた気分はそのままに、真咲の顔を覗き込んだ。
「私もそうだけど、真咲だってご機嫌に見えるよ。良かったね。呼ばれて行く身なら、昨日の門衛さんだってすんなり招き入れてくれるよね」
「まったく、妙泉尼様様だな。底知れないお方だ。まさか世に名高い陰陽道の大家と繋がりをお持ちだとは思わなかった」
「安倍家って言ったら、信太の里でだって知られてるくらい有名だもんね。真咲は聞いたことある? 安倍家の当主の、大大大陰陽師、安倍晴明様のこと。御母堂様は狐だったらしいよ」
「確か、和泉国は信太の森の白狐で、葛の葉とかいう」
「そう。葛の葉様。何を隠そう、美葛っていう私の名は、その葛の葉様にあやかって付けられたんだよ」
えっへん、と美葛は胸を張った。滅多に披露できる機会の訪れない、密かな自慢の種だったのだ。
「あっちは信太の森の、こっちは信太の里の白狐って訳か。今度の一件が片付いたら、ちらっと安倍晴明様に挨拶しに行ってもいいかもな。お袋さんと同じ白狐の美葛を、まさか無下に扱いはしないだろう」
「そ、そうかなあ?」
「挨拶なんてできるわけないじゃありませんか」
もゆらが実に冷ややかに、しかも鋭く切って捨てた。
「安倍家は忌籠りの最中だと、美葛殿にはお話したはずですけれどね。晴明様、身罷られたのですよ。去年の秋頃に」
美葛も真咲も目を瞬いた。
大大大陰陽師が既に故人だったとは。
もゆらが眼差しを鋭くして美葛を見た。
「狐に戻れるようになったことが嬉しいのは分かります。分かりますけれど、あんまり浮かれない方がいいですよ。厄介な案件だと思えばこそ、お師匠様もそのようなはからいをなさったのでしょうからね」
門衛は、例の書状を見せるとすんなり門を潜らせてくれた。
直に忠親を訪ねるのではなく、まずは一人娘の雪世に案内を乞えという。
入ってすぐ、美葛たちは足を止めた。敷地の中にはむくつけき男どもがわんさといたからだ。
数で言えば、先の夫婦鼓の一件で訪ねた、破落戸をこれでもかと用心棒に雇った琴音姫の屋敷にも引けを取らないくらいだった。ただ、ここの連中は明らかに毛色が違う。人相のよろしくない者ばかりなのは同じだが、醸す雰囲気が異なっていた。美葛は似たものを知っていた。狼の群れだ。
「皆、放免なのだそうです」
もゆらの眼には明らかな嫌悪の色がちらついていた。
「ほうめん?」
「元罪人です。看督長である河内忠親殿は、己が関わり合いになった罪人たちを次々と放免やそれと同じような立場に召し上げて、家人代わりに使っているそうなのです」
「もゆら……? 何ていうか、すごく嫌そうだね」
「当たり前でしょう。いつまた罪を犯すとも知れない者たちの巣になんて、お師匠様の指図でなければ来たくなんかありませんでしたよ」
「そんな言い方しなくたって」
一行は嫌でも放免たちの目を引いた。面倒を嫌ってか話しかけてくる者はないが、値踏みするような怪しむような、鋭い眼差しが美葛には痛いし怖い。足早に庭を行くと、向かう先の母屋の妻戸が軋んで開いた。
黒っぽい直垂と袴に身を包んだ、えらく丈高い男が姿を見せた。
瞬間、美葛は《影法師》に行き逢った昨日に勝るとも劣らない悪寒を覚えた。迷わず真咲の背中に隠れた。
どこか覚束ない足取りでふらふらとこちらへやってきた黒衣の男は、烏帽子の分を差し引いても六尺をゆうに越えて見えた。行く手に立ちはだかった彼を見上げて、もゆらが恐れ気もなく前に出た。
「安倍家の使いで参りました。河内忠親様にお目通り願いたいのですが」
恐らく二十歳前後、真咲と変わらない年頃に見えるその男の目の下には、まるで三日も四日も寝ていないような濃い隈があった。いやに定まらない目付きで、もゆらよりは真咲の方を向いたまま、それは困った、と彼は薄笑いを浮かべた。爪の伸びた右手の指で頬を掻いた。
「俺には帰れとしか言えない」
だらしなく開いた口の端から今にも涎が伝い落ちそうで、美葛は男を見ていて妙にはらはらした。どうやら彼は隻腕だった。左腕がない。今一つ釣り合いの取れない、傾いだような立ち姿はそのせいだろうか。呂律の怪しい、間延びした、どもりがちな口振りで続けた。
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「薬師に決まっているだろうが。他の何に見える」
「忠親様付きの、薬師? 貴方が? 本当に?」
もゆらが軽蔑も露わに声を荒らげた。
ひとしきり壊れたように笑った薬師は、突然、もゆらに頭突きを食わせかねない勢いで顔を近付けて凄んだ。
「誰とも会わせるわけにはいかん。とっとと失せろ」
「そこを何とか」
応えて口を開いたのは真咲だった。
もゆらと薬師との間に、彼は強引に割って入った。胸を反らして相手と向き合った。互いの顔のあまりの近さに、成り行きを見守る美葛の方が青ざめてしまった。
「どうか今一度、今一度、お願い申し上げます。常陸国は信太の里から来た、千種の息子だと伝えてもらえれば、きっと忠親様にもお分かりです」
「くどい奴らだな」
嘲るような声音はそのまま、薬師が眉間に深い皺を寄せた。額にも右手の甲にも太い青筋が浮いた。
まさに一触即発というその時だった。お止めください! と鋭く囁く声があった。
妻戸から顔を出した十七八の娘が、血相を変えて裸足のまま駆けてきた。彼女は、華奢で色白な見た目とは裏腹な振る舞い、薬師の黒衣を掴んで後ろから懸命に引っ張った。泣きそうな顔をしていた。
「茨殿、悶着はよして下さい! 父の身体に障ります!」
茨と呼ばれた薬師は真咲を睨めつけたまま、娘のことなど相手にしなかった。引っ張られようが打たれようが平然としてびくともしない。
「ひょっとして、雪世様でしょうか」
真咲が茨越しに呼びかけた。
「常陸国から来た者です。お願いします、忠親様に渡していただきたい物が」
「しつこいぞ」
茨が眉間に深い皺を寄せて遮った。
「弁えろ。今の忠親の心を少しでも波立たせそうな物を、近付けたりは絶対にできん。おい雪世」
しがみつく雪世を見下ろした。
「俺は何か間違った事を言っているか? おい。どうなのだ」
「いいえ。いいえ茨殿。お願いですからお静かに! ようやく眠れたのに、父が起きてしまいます。皆様、申し訳ありません」
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