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物名歌
文使
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改めて訪ねた美葛と真咲を、喜斉は病み上がりも同然の青ざめた顔で迎えた。
既に時は申刻を過ぎており、縁から覗く雲がちな空には黄昏の気配が広がりつつあった。日が落ちる頃になると、きっとまた短冊を携えて不知也がやって来るのだろう。
下人の犬丸によると、喜斉は目が覚めてから今まで、吐いては床に就き、戻しては横になることを繰り返していたという。蚯蚓だの蛙だの虫だの鼠だの、あれだけ腹に収めれば、それは具合が悪くもなるはずだと真咲も頷いた。狐の身には馴染み深い食い物がほとんどだったので、人というのはつくづく難儀だなあと美葛はしみじみ考えた。
「そちらの話を聞く前に」
美葛のことをたじろがせずにはいない、虚ろな目で喜斉が切り出した。
「美葛、なぜ、言われた通り、問答無用で薫里の霊を祓わなかった? 何かそうできない訳でもあったか。それとも、試みはしたが果たせなかったのか。お前がそれなりの働きをしておれば、私はこのような、気持ちの悪い目には二度と遭わずに済んだはずだ。違うか」
喜斉の物言いはあくまで穏やかだった。穏やかなだけに恐ろしいものがあった。
美葛は居住まいを正して、まずは頭を下げた。
「申し訳ありません。あの、正直に申し上げますと、私、薫里殿とお会いしたのです。何だか、悪いお方とは思えませんでした。祓ったりするなんてちょっと……」
「失礼ながら、俺も同じように感じました」
隣で真咲も手を挙げてくれた。
「喜斉様さえなさるべきことをなさってくださるなら、ああして招いたりはしない。薫里殿はそう言いました」
「あれに会っただと? 私は一晩一緒だったはずだが、いつの間に」
「薫里殿は、喜斉様のためにも、己の口からは何も言えないと仰っていました。なさるべきことってのは、喜斉様、いったい何なんでしょう」
「分からん。さっぱりだ。しかしそうか……、私のためにも何も言えない、か」
「それでは、喜斉様」
美葛は懐から出した短冊を喜斉に示した。
頼もしき 心延えかな 花の夜に 一人待つ我 訪ひ給ふ背子
例の歌が記された、梅の香も芳しい一葉だ。
「喜斉様はこの歌の秘密をご存知でしたか? 私は、教えてもらって初めて気が付いたんですけれど」
嫌そうな顔を背けて短冊を見ようともしない喜斉は、ぶるぶると首を振った。
「知らん。少しも分からん。歌のことは、恥ずかしながら不得手でな。詠むことより、代わりに詠んでくれと人に頼むことの方が多いくらいだ。……秘密というのは?」
はい、と美葛は落ち着き払って短冊を指差した。
「この歌には、香道具の名が三つ、詠み込まれているというんです。お分かりでしょうか」
「香道具が三つ」
「はい。喜斉様、何かお心当たりはありますか?」
「悪いがさっぱり分からん」
考えてみるつもりもなさそうな返事だった。そんな、と美葛は食い下がる。
「まったくありませんか? 何かお忘れになっているとか」
「まったくないし、何も忘れていない」
喜斉は、顔色こそ悪いが平然としている。
何か次の手掛かりが得られるに違いないと期待していた美葛は、思わぬ躓きに唇を噛んだ。
「喜斉様」
真咲が代わって問いかけた。
「薫里殿と一緒にいる間、あの小屋で、何か香道具をご覧になりましたか?」
「私はずっと夢うつつでな。見るもの聞くものぼんやりしたままで、何もはっきりとは分からんのだ」
「夜が明けてから、俺たち、薫里殿の小屋に入ってみたんです。荒れ果てた中に、いくつか古い香道具が残ってました。ただ、歌に詠み込まれた三品は見当たらなかった。このこと、今度の一件と何か関わりがあるんじゃないでしょうか」
「あるのかもしれんが、言ったように私には何も分からん」
「そこさえ明らかにできれば、無理矢理に祓うとか、そういう荒っぽい真似をしなくても済むんじゃないかと思うんです。お願いします喜斉様、一緒に考えてみていただけませんか」
真咲の再三の申し出に、弱ったな、と喜斉は呟いてあらぬ方を向いた。
ひとしきり考える様子だった彼は、仕切り直すように何度か深く頷いた。
「仕方がない。帰って安倍家の連中なり尼さんなりに伝えてもらおう。今度の件は諦めることにする、とな」
「諦める?」
応える美葛の声は我知らず高くなった。
「喜斉様、それはどういう意味で……」
「どうもこうもそのままだ。今回頼んだ、薫里の霊を祓うという一件は取り下げさせてもらう。忘れてくれ。苦労をかけたな」
「でも、そんな、いいんでしょうか。私たち、まだほとんど何もできていないような」
「私が望んだことを何一つしておらんのは確かだな。まさか手間賃だの謝礼の品だの要るとは言うまい」
「言いません。言いませんけど」
「他を当たって祓わせることにする。おい、誰かおらんのか。客人がお帰りだ」
「喜斉様」
美葛と真咲は、下人たちに追い立てられるようにして屋敷から閉め出された。
閉ざされた門の前で、美葛と真咲はしばらく呆けていた。
「まずいな。俺まで締め出された」
真咲が弱り顔で後ろ頭を掻く。忠親の指図で喜斉の屋敷へ来た彼なのに、とんだとばっちりを食わせてしまった。美葛は事を上手く運べなかった己を責め、情けなさに項垂れた。悔しくて涙が出そうだった。
「役に立たないと思われたんだ、私」
「かもしれないけど、そればかりでもなさそうだったぞ」
腕組みの真咲は、何やら確信ありげだった。
「俺が見たところ、詠み込まれた道具たちが今度のことにどう関わるのか、喜斉様はよくご存知のようだった」
「本当に?」
「ああ。初めから分かっていたって様子に見えた。それなのに言わない。それとも言えないのか。どうあれ何か裏があるんだろう」
まだ諦めていないらしい。真咲の真剣な横顔に、美葛も励まされる思いだった。
己がにわかなどではなく真実立派な白狐であれば良かったのにと、美葛は強く思った。知恵と霊力を二つながら備えた妖狐の中の妖狐。その力でもって、どんな難題も快刀乱麻を断つがごとく鮮やかに片付け、真咲を喜ばせることができたらどんなに嬉しいだろう。
「懲りない方々だ。悔やむことになると申し上げたのに」
突然の声。美葛と真咲は揃って振り向いた。昨日の夕暮れと同じように、やはり今日もまた不知也が喜斉を迎えに来たのだった。足元の影に、髪の間に、懐に、呼べばすぐ現れる眷属たちを数限りなく潜ませて、白皙の美童は悠然と歩いて来た。
美葛と真咲はなす術もなく道を開けた。
固く閉ざされていた門が重たげな軋みを上げ、ひとりでに開いて不知也を受け入れた。
妙泉尼の言葉を思い出した美葛は、思い切って語りかけた。
「不知也は、……仲間を集めているの? 薫里殿のことを仲間にしたくて、だから、手を貸しているの?」
「そうとも言えます」
不知也は立ち止まり、美葛を振り返った。
「私は、より多くの人や人ならざるものと友誼を結んで、親しい間柄になりたい。それら弱い者の心に寄り添って、必要ならばその力になってやりたい」
何のために、と美葛が問う前に、不知也は真っ直ぐな瞳で続けた。
「美葛殿も、思い悩むことがおありでしたら、どうぞ私にお声がけください。必ずや力になってご覧に入れます」
「私は、別に……」
「もちろん真咲殿も。もっとも、あの滝夜叉姫の血に連なる御身に、私の力などは要らないかもしれませんが」
滝夜叉姫。
美葛はその名の響きに驚きを隠せなかった。
思わず真咲の顔を見た。抗うように何か言いかけた真咲を、不知也が掌で制した。
「あれこれ言い繕わずとも結構。吹聴して回るつもりはありません。それに私にとっては、血筋のことよりも、貴方が持つその歌の天稟の方がずっと喜ばしい。勝手ながら、共に敷島の道を行く仲間に出会えたような心地がします」
「……先の《影法師》の件で、忠親様の思いを歌にしたのはあんただったな。ひょっとして今度の歌も」
「いかにも私の詠です。薫里から事の経緯と思いの丈を聞いて、然るべき一首に表わしました」
真咲の動揺は美葛にもはっきりと伝わってきた。
悪びれる様子などまったくない不知也は、胸を張ってことさら堂々と続けた。
「弱き者の心に寄り添って歌を詠み、もってその望むところをなす。それが私の使命」
踵を返した不知也は肩越しに言った。
「後悔も覚悟の上と仰るなら、どうぞ後に続いてください。私と一緒ならば見咎める者はいない。この一件を通じて、お二人に、都の醜さと弱き者の苦しみをご覧に入れましょう」
既に時は申刻を過ぎており、縁から覗く雲がちな空には黄昏の気配が広がりつつあった。日が落ちる頃になると、きっとまた短冊を携えて不知也がやって来るのだろう。
下人の犬丸によると、喜斉は目が覚めてから今まで、吐いては床に就き、戻しては横になることを繰り返していたという。蚯蚓だの蛙だの虫だの鼠だの、あれだけ腹に収めれば、それは具合が悪くもなるはずだと真咲も頷いた。狐の身には馴染み深い食い物がほとんどだったので、人というのはつくづく難儀だなあと美葛はしみじみ考えた。
「そちらの話を聞く前に」
美葛のことをたじろがせずにはいない、虚ろな目で喜斉が切り出した。
「美葛、なぜ、言われた通り、問答無用で薫里の霊を祓わなかった? 何かそうできない訳でもあったか。それとも、試みはしたが果たせなかったのか。お前がそれなりの働きをしておれば、私はこのような、気持ちの悪い目には二度と遭わずに済んだはずだ。違うか」
喜斉の物言いはあくまで穏やかだった。穏やかなだけに恐ろしいものがあった。
美葛は居住まいを正して、まずは頭を下げた。
「申し訳ありません。あの、正直に申し上げますと、私、薫里殿とお会いしたのです。何だか、悪いお方とは思えませんでした。祓ったりするなんてちょっと……」
「失礼ながら、俺も同じように感じました」
隣で真咲も手を挙げてくれた。
「喜斉様さえなさるべきことをなさってくださるなら、ああして招いたりはしない。薫里殿はそう言いました」
「あれに会っただと? 私は一晩一緒だったはずだが、いつの間に」
「薫里殿は、喜斉様のためにも、己の口からは何も言えないと仰っていました。なさるべきことってのは、喜斉様、いったい何なんでしょう」
「分からん。さっぱりだ。しかしそうか……、私のためにも何も言えない、か」
「それでは、喜斉様」
美葛は懐から出した短冊を喜斉に示した。
頼もしき 心延えかな 花の夜に 一人待つ我 訪ひ給ふ背子
例の歌が記された、梅の香も芳しい一葉だ。
「喜斉様はこの歌の秘密をご存知でしたか? 私は、教えてもらって初めて気が付いたんですけれど」
嫌そうな顔を背けて短冊を見ようともしない喜斉は、ぶるぶると首を振った。
「知らん。少しも分からん。歌のことは、恥ずかしながら不得手でな。詠むことより、代わりに詠んでくれと人に頼むことの方が多いくらいだ。……秘密というのは?」
はい、と美葛は落ち着き払って短冊を指差した。
「この歌には、香道具の名が三つ、詠み込まれているというんです。お分かりでしょうか」
「香道具が三つ」
「はい。喜斉様、何かお心当たりはありますか?」
「悪いがさっぱり分からん」
考えてみるつもりもなさそうな返事だった。そんな、と美葛は食い下がる。
「まったくありませんか? 何かお忘れになっているとか」
「まったくないし、何も忘れていない」
喜斉は、顔色こそ悪いが平然としている。
何か次の手掛かりが得られるに違いないと期待していた美葛は、思わぬ躓きに唇を噛んだ。
「喜斉様」
真咲が代わって問いかけた。
「薫里殿と一緒にいる間、あの小屋で、何か香道具をご覧になりましたか?」
「私はずっと夢うつつでな。見るもの聞くものぼんやりしたままで、何もはっきりとは分からんのだ」
「夜が明けてから、俺たち、薫里殿の小屋に入ってみたんです。荒れ果てた中に、いくつか古い香道具が残ってました。ただ、歌に詠み込まれた三品は見当たらなかった。このこと、今度の一件と何か関わりがあるんじゃないでしょうか」
「あるのかもしれんが、言ったように私には何も分からん」
「そこさえ明らかにできれば、無理矢理に祓うとか、そういう荒っぽい真似をしなくても済むんじゃないかと思うんです。お願いします喜斉様、一緒に考えてみていただけませんか」
真咲の再三の申し出に、弱ったな、と喜斉は呟いてあらぬ方を向いた。
ひとしきり考える様子だった彼は、仕切り直すように何度か深く頷いた。
「仕方がない。帰って安倍家の連中なり尼さんなりに伝えてもらおう。今度の件は諦めることにする、とな」
「諦める?」
応える美葛の声は我知らず高くなった。
「喜斉様、それはどういう意味で……」
「どうもこうもそのままだ。今回頼んだ、薫里の霊を祓うという一件は取り下げさせてもらう。忘れてくれ。苦労をかけたな」
「でも、そんな、いいんでしょうか。私たち、まだほとんど何もできていないような」
「私が望んだことを何一つしておらんのは確かだな。まさか手間賃だの謝礼の品だの要るとは言うまい」
「言いません。言いませんけど」
「他を当たって祓わせることにする。おい、誰かおらんのか。客人がお帰りだ」
「喜斉様」
美葛と真咲は、下人たちに追い立てられるようにして屋敷から閉め出された。
閉ざされた門の前で、美葛と真咲はしばらく呆けていた。
「まずいな。俺まで締め出された」
真咲が弱り顔で後ろ頭を掻く。忠親の指図で喜斉の屋敷へ来た彼なのに、とんだとばっちりを食わせてしまった。美葛は事を上手く運べなかった己を責め、情けなさに項垂れた。悔しくて涙が出そうだった。
「役に立たないと思われたんだ、私」
「かもしれないけど、そればかりでもなさそうだったぞ」
腕組みの真咲は、何やら確信ありげだった。
「俺が見たところ、詠み込まれた道具たちが今度のことにどう関わるのか、喜斉様はよくご存知のようだった」
「本当に?」
「ああ。初めから分かっていたって様子に見えた。それなのに言わない。それとも言えないのか。どうあれ何か裏があるんだろう」
まだ諦めていないらしい。真咲の真剣な横顔に、美葛も励まされる思いだった。
己がにわかなどではなく真実立派な白狐であれば良かったのにと、美葛は強く思った。知恵と霊力を二つながら備えた妖狐の中の妖狐。その力でもって、どんな難題も快刀乱麻を断つがごとく鮮やかに片付け、真咲を喜ばせることができたらどんなに嬉しいだろう。
「懲りない方々だ。悔やむことになると申し上げたのに」
突然の声。美葛と真咲は揃って振り向いた。昨日の夕暮れと同じように、やはり今日もまた不知也が喜斉を迎えに来たのだった。足元の影に、髪の間に、懐に、呼べばすぐ現れる眷属たちを数限りなく潜ませて、白皙の美童は悠然と歩いて来た。
美葛と真咲はなす術もなく道を開けた。
固く閉ざされていた門が重たげな軋みを上げ、ひとりでに開いて不知也を受け入れた。
妙泉尼の言葉を思い出した美葛は、思い切って語りかけた。
「不知也は、……仲間を集めているの? 薫里殿のことを仲間にしたくて、だから、手を貸しているの?」
「そうとも言えます」
不知也は立ち止まり、美葛を振り返った。
「私は、より多くの人や人ならざるものと友誼を結んで、親しい間柄になりたい。それら弱い者の心に寄り添って、必要ならばその力になってやりたい」
何のために、と美葛が問う前に、不知也は真っ直ぐな瞳で続けた。
「美葛殿も、思い悩むことがおありでしたら、どうぞ私にお声がけください。必ずや力になってご覧に入れます」
「私は、別に……」
「もちろん真咲殿も。もっとも、あの滝夜叉姫の血に連なる御身に、私の力などは要らないかもしれませんが」
滝夜叉姫。
美葛はその名の響きに驚きを隠せなかった。
思わず真咲の顔を見た。抗うように何か言いかけた真咲を、不知也が掌で制した。
「あれこれ言い繕わずとも結構。吹聴して回るつもりはありません。それに私にとっては、血筋のことよりも、貴方が持つその歌の天稟の方がずっと喜ばしい。勝手ながら、共に敷島の道を行く仲間に出会えたような心地がします」
「……先の《影法師》の件で、忠親様の思いを歌にしたのはあんただったな。ひょっとして今度の歌も」
「いかにも私の詠です。薫里から事の経緯と思いの丈を聞いて、然るべき一首に表わしました」
真咲の動揺は美葛にもはっきりと伝わってきた。
悪びれる様子などまったくない不知也は、胸を張ってことさら堂々と続けた。
「弱き者の心に寄り添って歌を詠み、もってその望むところをなす。それが私の使命」
踵を返した不知也は肩越しに言った。
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