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本編
【幕間】エミリア・カーティス(2) ※アルフレッド視点です
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『ねえ、今探している本が幸せな青い鳥だったなら、私と恋愛してみないか?』
『何それ』
『ほら、あれって幸せは身近なところにある、みたいな話だろ?多分』
『なんかそんな感じだったような気がします』
『だからさ、今近くにあるものこそ君の幸せだというか…なんというか』
今思うと、本当にかっこ悪い告白だったと思う。
けれど、彼女はその下手な告白に「ふふっ」と笑い、いいですよと言ってくれた。
結果、彼女が言っていた本はやはり幸せの青い鳥だった。
それを伝えたときの彼女の、真っ赤になった顔を両手で押さえて恥ずかしがる姿はとても可愛かった。
『約束だよね?エミリア』
私は彼女の名を呼び、右手を差し出した。
彼女は真っ赤にした頬を膨らませながら、私の手を取った。
『約束ですからね、アルフレッド様』
名を呼ばれた私は初めて彼女と会話した時のように、心臓が跳ねる音を聞いた。
それから何度も彼女の家に通い、逢瀬を重ねた。
知れば知るほどエミリアのことが好きなった。
本ばかり読んでいるせいか、妄想好きで恋愛に夢を見ているところは可愛いし、病弱な自分が嫌いで、強く見せようとつい意地を張るところも可愛い。
彼女に名を呼ばれると、自分の名前すらも好きになれた。
はじめは警戒していた彼女の両親にも受け入れてもらえて、出会ってから半年ほどで婚約にこぎつけた。
しかし、徐々に私たちの婚約に異議を唱える貴族が現れ始めた。
皆、先の短いエミリアには公爵夫人は務まらないと言い、私に考え直すよう進言する。
陛下は特に強く反対した。
彼らの言い分もわからないわけではなかったが、私はもうエミリア以外には考えられなかった。
私が周囲を説得して回っている最中、突然エミリアが屋敷を訪ねてきた。
2人の侍女をつれて、小さなトランクを持って。
『お父様が婚約を破棄すると言うから家出してきた』
と笑いながら言う彼女の目には涙がたまっていた。
私は彼女を抱きしめると、そのまま屋敷の中へと案内した。
ハイゼル伯爵にエミリアが来ていることを連絡すると、『申し訳ない。よろしく頼みます』と返って来た。
後日、伯爵に会いに行くと、彼は『陛下からの圧力がかかり、婚約は破棄せざるを得ない。だから、エミリアとは縁を切る形で家から追い出したのだ』と教えてくれた。
エミリアの病は一度発作が起こると対応が難しい。侍女2人は医学の知識があるから、彼女達を頼りにしてほしいと言われた。
私は出来る限り、エミリアの病の事を聞き出し伯爵邸を出た。
そして、彼女と結婚した。
屋敷の中の彼女の部屋で、白いワンピースにヴェールをかぶった彼女と指輪を交換し、誓いのキスをした。
神父はセバスチャンの友人に頼みこんで引き受けてもらった。
祝ってくれる人間が使用人達だけしかいない寂しい結婚式だった。
彼女の病の事でずっと気を張っていて、正直に言うならば少し疲れる結婚生活だったけれど、それでも彼女と共に生きたくてたくさん努力した。
結婚を認めてもらおうと、陛下にも対話を求めた。けれど陛下はいつも厳しい顔をするだけだった。
結局、私達の結婚は誰にも認められることなく幕を閉じた。
***
半分の月が高い位置から二人を見守る夜。
エミリアとの話をしていたアルフレッドは、ふと隣で寝息を立てる後妻の髪を撫でる。
「寝てしまったか…」
大人びていても、彼女の寝顔は無防備でまだまだあどけない。
「この話、つまらなかったかな?」
自嘲するように言うアルフレッド。すると隣から「はい」と返事が返ってきた。
「…え?起きてる?」
寝ていると思っていたシャロンが、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
「だんなさま…話…長い…」
「ご、ごめん…」
「見せてあげたいね…。青い薔薇」
そう言って、シャロンはふにゃっと笑う。
その笑顔にアルフレッドの心臓はまた、どくんと跳ねた。
シャロンの笑顔を見るといつも鼓動が速くなる。何かの病気なのだろうか。
エミリアの時とは違い、全身の血が沸騰するように体が熱くなる。
「今度、青い薔薇をエミリア様のお墓にお供えしましょう」
「…そうだね。話を聞いてくれてありがとう。おやすみ」
「おやすみなさい…」
翌朝、二人は青い薔薇を彼女の墓石の前に飾った。
『何それ』
『ほら、あれって幸せは身近なところにある、みたいな話だろ?多分』
『なんかそんな感じだったような気がします』
『だからさ、今近くにあるものこそ君の幸せだというか…なんというか』
今思うと、本当にかっこ悪い告白だったと思う。
けれど、彼女はその下手な告白に「ふふっ」と笑い、いいですよと言ってくれた。
結果、彼女が言っていた本はやはり幸せの青い鳥だった。
それを伝えたときの彼女の、真っ赤になった顔を両手で押さえて恥ずかしがる姿はとても可愛かった。
『約束だよね?エミリア』
私は彼女の名を呼び、右手を差し出した。
彼女は真っ赤にした頬を膨らませながら、私の手を取った。
『約束ですからね、アルフレッド様』
名を呼ばれた私は初めて彼女と会話した時のように、心臓が跳ねる音を聞いた。
それから何度も彼女の家に通い、逢瀬を重ねた。
知れば知るほどエミリアのことが好きなった。
本ばかり読んでいるせいか、妄想好きで恋愛に夢を見ているところは可愛いし、病弱な自分が嫌いで、強く見せようとつい意地を張るところも可愛い。
彼女に名を呼ばれると、自分の名前すらも好きになれた。
はじめは警戒していた彼女の両親にも受け入れてもらえて、出会ってから半年ほどで婚約にこぎつけた。
しかし、徐々に私たちの婚約に異議を唱える貴族が現れ始めた。
皆、先の短いエミリアには公爵夫人は務まらないと言い、私に考え直すよう進言する。
陛下は特に強く反対した。
彼らの言い分もわからないわけではなかったが、私はもうエミリア以外には考えられなかった。
私が周囲を説得して回っている最中、突然エミリアが屋敷を訪ねてきた。
2人の侍女をつれて、小さなトランクを持って。
『お父様が婚約を破棄すると言うから家出してきた』
と笑いながら言う彼女の目には涙がたまっていた。
私は彼女を抱きしめると、そのまま屋敷の中へと案内した。
ハイゼル伯爵にエミリアが来ていることを連絡すると、『申し訳ない。よろしく頼みます』と返って来た。
後日、伯爵に会いに行くと、彼は『陛下からの圧力がかかり、婚約は破棄せざるを得ない。だから、エミリアとは縁を切る形で家から追い出したのだ』と教えてくれた。
エミリアの病は一度発作が起こると対応が難しい。侍女2人は医学の知識があるから、彼女達を頼りにしてほしいと言われた。
私は出来る限り、エミリアの病の事を聞き出し伯爵邸を出た。
そして、彼女と結婚した。
屋敷の中の彼女の部屋で、白いワンピースにヴェールをかぶった彼女と指輪を交換し、誓いのキスをした。
神父はセバスチャンの友人に頼みこんで引き受けてもらった。
祝ってくれる人間が使用人達だけしかいない寂しい結婚式だった。
彼女の病の事でずっと気を張っていて、正直に言うならば少し疲れる結婚生活だったけれど、それでも彼女と共に生きたくてたくさん努力した。
結婚を認めてもらおうと、陛下にも対話を求めた。けれど陛下はいつも厳しい顔をするだけだった。
結局、私達の結婚は誰にも認められることなく幕を閉じた。
***
半分の月が高い位置から二人を見守る夜。
エミリアとの話をしていたアルフレッドは、ふと隣で寝息を立てる後妻の髪を撫でる。
「寝てしまったか…」
大人びていても、彼女の寝顔は無防備でまだまだあどけない。
「この話、つまらなかったかな?」
自嘲するように言うアルフレッド。すると隣から「はい」と返事が返ってきた。
「…え?起きてる?」
寝ていると思っていたシャロンが、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
「だんなさま…話…長い…」
「ご、ごめん…」
「見せてあげたいね…。青い薔薇」
そう言って、シャロンはふにゃっと笑う。
その笑顔にアルフレッドの心臓はまた、どくんと跳ねた。
シャロンの笑顔を見るといつも鼓動が速くなる。何かの病気なのだろうか。
エミリアの時とは違い、全身の血が沸騰するように体が熱くなる。
「今度、青い薔薇をエミリア様のお墓にお供えしましょう」
「…そうだね。話を聞いてくれてありがとう。おやすみ」
「おやすみなさい…」
翌朝、二人は青い薔薇を彼女の墓石の前に飾った。
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