【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々

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本編

54:公爵は白?

 ヘンリーは顔面蒼白のエディを医務室に連れて行くようアルフレッドに指示した。
 当然の如く、双方ともに心底嫌そうな顔をしたが、彼は有無を言わさぬ王族スマイルで2人を部屋から追い出した。
 そして、シャロンの方へ向き直るとふぅ、と息を小さく吐く。


「シャロン、それ魅了の魔術…ではないよね?」

 怪訝な顔でシャロンをまじまじと眺めるヘンリー。
 魅了の魔術は相手の精神に干渉して、術者に対する好意を強制的に抱かせる禁術。もしそれを使ってるのならば大罪だ。
 しかし彼女はそれを否定した。

「ただの幻術を少し応用したものですよ。ちなみに、王太子殿下に私はどんな風に見えていますか?」

 シャロンがスカートを翻し、くるりと回る。
 ヘンリーは少し悩みながらも答えた。

「いつもの死んだ目がキラキラしているように見える。全体的にいつもより美人…というか、光属性の人間に見える。友達多そう」

     かなり失礼な返答だったが事実な上に、相手は王太子なのでシャロンは反論したい衝動を内にしまった。

「エミリア様に見えますか?」
「いや、見えない」
「ですよね…」

 シャロンはしゅんと肩を落とす。

「あの日の夜会で見たものが、幻術を使った偽物である可能性を考えたんです。ですが魔術師相手に幻術など通じるものではありませんね」
「まあ、よほどの阿呆でなければ何かしらの術が使われていることはすぐにわかるからな…」

 魔術師相手のに幻術を使っても、基本的にはすぐバレる。傾国と謳われた女性に擬態することはやはり、難しいようだ。
 
 (やっぱ、あの夜に見たのはエミリアだと考えるべきだろうか)


 うーん、と唸りながら思考を巡らせする彼女にヘンリーはおもむろに口を開く。

「君の推論はハディスから聞いている。確かに妙に納得のいく推論だった。だが、未だエミリア・カーティスらしき人物は見つかっていない」
「王太子殿下は彼女が生きている可能性はどのくらいあると思いますか?」
「…ほぼ確実に生きていると思う」

 ヘンリー曰く、普段は生真面目で冗談の言わない妃の母親が、彼女の姿を見たと言っていたらしい。

「ちなみに今更だが、君は公爵はこの件に無関係だと思うかい?」
「思います」
「即答か。根拠は?」
「ありません。ですが、エミリア様が生きているのに、そばに置かないなんてあり得ないと思います」
「…ははっ。実は俺もそう思ってたんだ」

 2人は顔を見合わせ、フッと笑った。
 
 アルフレッドと一緒に過ごして数ヶ月。シャロンはどうしても彼が謀事のできるタイプには思えない。あれが演技なら役者にでもなった方が良いだろう。

「そもそもやってない事の証明ほど難しいものはないしな」
「そうですね」

   これが間違えていれば、敵に手の内をばらしたもの同然なのだが、その時は死なば諸共だ。
   ヘンリーはハディスに目配せした。

「先ほど話した計画、ダミーのつもりだったがそのまま決行しよう」
「はい」
「では、ハディス。行ってきてくれ」
「…はい」

 ハディスは今から行わねばならない、あまり乗り気でない仕事に向かうため、ため息をつきつつも部屋を出た。
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