【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々

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本編

58:その頃の餌 その1

 冷たい空気と後頭部の痛みで目を覚ましたエディは、魔力封じの仕掛けが施された手枷をじっと見つめ、ため息をついた。

 そして、今度は目の前の鉄格子を見つめ、またため息をつく。

「全然助けに来てくれないんだけど…」

『何かあったらすぐに迎えに行く』と言っていたのに…。本当に迎えは期待できるのだろうか。
 不安になったエディが三度目の深いため息をついた時、ガチャっと重い鉄の扉が開く音がした。

「ひぃぃい!」

 突然の大きな音に驚き、牢の隅で膝を抱えて怯えるエディ。
 恐る恐る入り口の方に視線を向けると、そこにいたのはダンディに髭をはやし、所々に白髪が見え隠れするオールバック頭のおじさんだった。
 それなりに整った造形の顔立ちをしているおじさんは、人の良さそうな笑みを浮かべてエディに話しかける。

「ああ、起きたのかい」
「貴方は…ジルフォード侯爵?」
「そうだよ。後頭部のコブを見るからこちらにおいで」

 人畜無害そうな侯爵の笑みに、すぐに警戒心を解いたエディは鉄格子越しに背を向ける。
 侯爵は彼の霞んだ金髪をかき分け、コブの状態をみて、「大丈夫そうだね」と笑った。

「いやぁ、すまないねぇ。本当は少し意識を奪うだけのつもりだったんだけど、君の姿を見た途端に何故か手加減を忘れてしまって」
「…え?」
「だってほら、うちの娘は君にすごくお世話になっていたみたいだからさぁ。つい、ね?」

 ほっほっほ、と穏やかに笑うジルフォード侯爵。
 その笑顔が逆に怖い。
 エディはザザザーっと再び牢の端に寄り、身構えた。

「そんなに怯えなくとも、何もしないよ?
「….まだ…ですか」
「うん。

 にこーっと爽やかな笑顔の侯爵につられて、エディもにこっと笑う。
 そして…。

「誰か助けてぇえええ!」

 力一杯叫んだ彼の声が地下牢でこだました。



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