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本編
94:記憶があるタイプ
夜中、目を覚ましたシャロンはズキズキと痛む頭を押さえながら起き上がる。
暗くてよく見えないがおそらくシャロンの部屋だろう。少し薬品の匂いがした。
彼女はベッド脇のテーブルに置いてある水を飲むと、その場に崩れ落ちた。
「…し、死にたい」
酔い潰れた人間というのは大まかに分けると、その時の記憶を失う人と鮮明に覚えている人の二種類に分けられる。
そして、シャロンは間違いなく後者だった。
やさぐれたり幼児退化したり、していた気がする。いや、気がするではない。間違いなくそうだった。
「あぁぁあ!!いっそのこと、ひと思いに殺してほしいぃぃぃ!!」
妙に軽くなった心とは裏腹に、思い出せば思い出すほど、恥ずかしさで死にそうになる。
シャロンは床にコロコロと転がりながら、何ともいえない声で叫んだ。
すると、その叫び声を聞いたアルフレッドが慌てて駆けつけた。
「だ、大丈夫かシャロン!!」
「すみません。大丈夫…ん?」
廊下の明かりに照らされたアルフレッドの顔は、誰かに殴られたような青あざでパンダのようになっていた。
正直ドン引きするほどにボッコボコである。
「え?強盗でも入りました?」
「ああ、これね。大丈夫、気にしないで」
「いや、気にせざるを得ないですよ。怖いくらいにボッコボコですけど…」
「ちょっとね」
「ちょっとねって…」
ちょっとね、と言うレベルではない。離宮での国王に匹敵するくらいの重傷だ。
シャロンは立ち上がると、戸棚から薬を取り出した。
「とりあえず、湿布薬作りますね、そこ座ってください」
「いや、いいんだ。気にしないでくれ」
「でも…」
「この傷を君に直してもらうのは、なんか、その、違うから」
アルフレッドは困ったように笑うと、彼女の治療を受けることを拒否した。
何だか様子のおかしい彼に、シャロンは首を傾げる。
実はあの後、シャロンを寝室に運んだアルフレッドは、セバスチャンに呼び出されて再び庭園に出ていた。
そこで待ち構えていたのは怒れるサイモン。
『ちょっとツラかせや』と言う彼にツラを貸したら、ボッコボコに殴られたのだ。
それはもうボッコボコに。
さすがはハディスの下でスパイ活動も行うスーパーハイスペック薬師。騎士団に勧誘したくなるほどに重い拳だったらしい。
そして最後には、よろけた際に肥料用の馬糞に運悪く片足を突っ込んでしまい、転けた。
回避したはずなのに、結局馬糞まみれになったアルフレッドを見て、デニスは爆笑したらしい。
流石のアルフレッドもこの時ばかりは『我、公爵ぞ?』と思った。
もうこれは軽くリンチではなかろうか。暴力反対。立派なウィンターソン公爵襲撃事件である。
なんとか彼らとは和解したが、アルフレッドはこの公爵邸における力関係について再確認する必要性を感じた。
なんて事をシャロンに話せるわけもなく、ボッコボコのアルフレッドは誤魔化すように優しく微笑んだ。
「軽く、何か食べるかい?」
「頂きます…」
シャロンが時計を見ると夜の8時だった。かなり眠っていたらしい。
「わかった。すぐに用意させよう。部屋で食べるか?」
「いえ、食堂で食べます」
「では先に行っててくれ」
「はい…」
アルフレッドはセバスチャンを呼びに行くため、その場を後にした。
シャロンはアルフレッドの様子に少し違和感を覚えつつも、彼の背中を見送り、食堂へと向かった。
暗くてよく見えないがおそらくシャロンの部屋だろう。少し薬品の匂いがした。
彼女はベッド脇のテーブルに置いてある水を飲むと、その場に崩れ落ちた。
「…し、死にたい」
酔い潰れた人間というのは大まかに分けると、その時の記憶を失う人と鮮明に覚えている人の二種類に分けられる。
そして、シャロンは間違いなく後者だった。
やさぐれたり幼児退化したり、していた気がする。いや、気がするではない。間違いなくそうだった。
「あぁぁあ!!いっそのこと、ひと思いに殺してほしいぃぃぃ!!」
妙に軽くなった心とは裏腹に、思い出せば思い出すほど、恥ずかしさで死にそうになる。
シャロンは床にコロコロと転がりながら、何ともいえない声で叫んだ。
すると、その叫び声を聞いたアルフレッドが慌てて駆けつけた。
「だ、大丈夫かシャロン!!」
「すみません。大丈夫…ん?」
廊下の明かりに照らされたアルフレッドの顔は、誰かに殴られたような青あざでパンダのようになっていた。
正直ドン引きするほどにボッコボコである。
「え?強盗でも入りました?」
「ああ、これね。大丈夫、気にしないで」
「いや、気にせざるを得ないですよ。怖いくらいにボッコボコですけど…」
「ちょっとね」
「ちょっとねって…」
ちょっとね、と言うレベルではない。離宮での国王に匹敵するくらいの重傷だ。
シャロンは立ち上がると、戸棚から薬を取り出した。
「とりあえず、湿布薬作りますね、そこ座ってください」
「いや、いいんだ。気にしないでくれ」
「でも…」
「この傷を君に直してもらうのは、なんか、その、違うから」
アルフレッドは困ったように笑うと、彼女の治療を受けることを拒否した。
何だか様子のおかしい彼に、シャロンは首を傾げる。
実はあの後、シャロンを寝室に運んだアルフレッドは、セバスチャンに呼び出されて再び庭園に出ていた。
そこで待ち構えていたのは怒れるサイモン。
『ちょっとツラかせや』と言う彼にツラを貸したら、ボッコボコに殴られたのだ。
それはもうボッコボコに。
さすがはハディスの下でスパイ活動も行うスーパーハイスペック薬師。騎士団に勧誘したくなるほどに重い拳だったらしい。
そして最後には、よろけた際に肥料用の馬糞に運悪く片足を突っ込んでしまい、転けた。
回避したはずなのに、結局馬糞まみれになったアルフレッドを見て、デニスは爆笑したらしい。
流石のアルフレッドもこの時ばかりは『我、公爵ぞ?』と思った。
もうこれは軽くリンチではなかろうか。暴力反対。立派なウィンターソン公爵襲撃事件である。
なんとか彼らとは和解したが、アルフレッドはこの公爵邸における力関係について再確認する必要性を感じた。
なんて事をシャロンに話せるわけもなく、ボッコボコのアルフレッドは誤魔化すように優しく微笑んだ。
「軽く、何か食べるかい?」
「頂きます…」
シャロンが時計を見ると夜の8時だった。かなり眠っていたらしい。
「わかった。すぐに用意させよう。部屋で食べるか?」
「いえ、食堂で食べます」
「では先に行っててくれ」
「はい…」
アルフレッドはセバスチャンを呼びに行くため、その場を後にした。
シャロンはアルフレッドの様子に少し違和感を覚えつつも、彼の背中を見送り、食堂へと向かった。
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