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ifの世界線のお話
21:ハディスの言い分(3)
数秒の沈黙の末、ハディスは口を尖らせながらぼそっと呟いた。
「…俺はサイモンを手放したくない」
「え?」
「も、もももしかして、ハディスお兄様が結婚しないのって…、サイモンのことが…」
「えぇえぇぇぇ!?」
サイモンは身の危険を察知してベッドから飛び降りた。自分を守るように自身の肩を抱きしめて、ハディスのことを怪訝な目で見つめる。
一方のシャロンはハディスの横で両手で顔を覆い、ニヤついてしまう口を隠していた。きっと今度エミリアに手紙で報告しようと思っているに違いない。
「そ、そういうのは人それぞれですから、否定はしませんが…。ごめんなさい、俺はお嬢が好きなので…」
「違うから!そんな深々と頭を下げて振るんじゃない!」
「ではなぜ、兄様は結婚しないのですか?」
「お兄ちゃんは結婚しないのではなく、できないんだよ!モテないから!…ってなんでこんなこと言わなきゃならなんだよぉ!!」
自分で言っていて悲しくなったハディスは膝を抱えて丸くなってしまった。
「……俺は、シャロンと結ばれたことによってサイモンがこの家での居場所を無くして、出ていかなきゃならなくなるのが嫌だったんだよ」
「…ハディス様、ごめ…」
「違うからな。そういう意味じゃないから」
何回も同じくだりをしようとするサイモンをキッと睨みつけると、ハディスは話を続けた。
ハディスが言うに、彼にとってのサイモンは気心の知れた兄弟であり、友人であり、優秀な仕事のパートナーだ。
そんなサイモンがシャロンと結婚することにより、ジルフォードの家にいられなくなることをハディスはずっと恐れていたらしい。
「割と頼りにしていたから、手放したくなかったんだよ。それにさ、わざわざ苦労する道を選ぶ必要なんてないだろ?お前モテるんだからさ」
「兄様と違ってね」
「シャロンは黙ってなさい」
裏の仕事をするハディスにとって、自分の仕事を理解しつつ、それでも昔と変わらずそばにいてくれるサイモンはある意味唯一無二の存在だ。彼がいることにより救われた思い出は多々ある。
もし仮にサイモンが自分の元を離れるとしても、彼が侯爵令嬢を誑かした男として世間から糾弾されながら妹と苦労する人生を歩むなど、あっていいはずがない。
「お前には幸せになってほしいんだよ…」
「何それ。ハディス様、めっちゃ俺のこと好きじゃん」
「好きだけど、その好きじゃないからな!」
話終えたハディスは恥ずかしいのか、頭から布団をかぶった。
「てっきり『社交界で変な噂が流れて婚期を逃すのが嫌だから』だと思ってました…」
「その理由も半分くらいある」
「結構な割合を占めてますね」
「でも、それなら兄様の心配ごとは解消されましたよね?結局サイモンはジルフォード家の者になる予定ですし」
「でも苦労はするだろう。平民から婿入りなんて」
「苦労はするかもですけど、不幸になるとは限りませんよ?」
「そうですよ。お嬢は無駄にポジティブなのでそのポジティブさが伝染すれば、多分不幸になりません」
「…そうなんだけど」
なんか認めたくない、とハディスは布団の中で小さくつぶやいた。
シャロンはそんな兄の姿にピンとひらめく。
「もしかして妹と親友が同時にいなくなるようで寂しいとか?」
「…寝る」
わざとらしく『ぐーぐー』と寝息を立て始めたハディス。
サイモンとシャロンは顔を見合わせて、吹き出した。
「兄様、可愛い」
「ハディス様、可愛い」
「うっせぇよ!続きは明日だ!もう寝ろ!」
「はぁーい」
その夜は結局、不貞腐れたハディスを挟んで、シャロンとサイモンは眠りについた。
「…俺はサイモンを手放したくない」
「え?」
「も、もももしかして、ハディスお兄様が結婚しないのって…、サイモンのことが…」
「えぇえぇぇぇ!?」
サイモンは身の危険を察知してベッドから飛び降りた。自分を守るように自身の肩を抱きしめて、ハディスのことを怪訝な目で見つめる。
一方のシャロンはハディスの横で両手で顔を覆い、ニヤついてしまう口を隠していた。きっと今度エミリアに手紙で報告しようと思っているに違いない。
「そ、そういうのは人それぞれですから、否定はしませんが…。ごめんなさい、俺はお嬢が好きなので…」
「違うから!そんな深々と頭を下げて振るんじゃない!」
「ではなぜ、兄様は結婚しないのですか?」
「お兄ちゃんは結婚しないのではなく、できないんだよ!モテないから!…ってなんでこんなこと言わなきゃならなんだよぉ!!」
自分で言っていて悲しくなったハディスは膝を抱えて丸くなってしまった。
「……俺は、シャロンと結ばれたことによってサイモンがこの家での居場所を無くして、出ていかなきゃならなくなるのが嫌だったんだよ」
「…ハディス様、ごめ…」
「違うからな。そういう意味じゃないから」
何回も同じくだりをしようとするサイモンをキッと睨みつけると、ハディスは話を続けた。
ハディスが言うに、彼にとってのサイモンは気心の知れた兄弟であり、友人であり、優秀な仕事のパートナーだ。
そんなサイモンがシャロンと結婚することにより、ジルフォードの家にいられなくなることをハディスはずっと恐れていたらしい。
「割と頼りにしていたから、手放したくなかったんだよ。それにさ、わざわざ苦労する道を選ぶ必要なんてないだろ?お前モテるんだからさ」
「兄様と違ってね」
「シャロンは黙ってなさい」
裏の仕事をするハディスにとって、自分の仕事を理解しつつ、それでも昔と変わらずそばにいてくれるサイモンはある意味唯一無二の存在だ。彼がいることにより救われた思い出は多々ある。
もし仮にサイモンが自分の元を離れるとしても、彼が侯爵令嬢を誑かした男として世間から糾弾されながら妹と苦労する人生を歩むなど、あっていいはずがない。
「お前には幸せになってほしいんだよ…」
「何それ。ハディス様、めっちゃ俺のこと好きじゃん」
「好きだけど、その好きじゃないからな!」
話終えたハディスは恥ずかしいのか、頭から布団をかぶった。
「てっきり『社交界で変な噂が流れて婚期を逃すのが嫌だから』だと思ってました…」
「その理由も半分くらいある」
「結構な割合を占めてますね」
「でも、それなら兄様の心配ごとは解消されましたよね?結局サイモンはジルフォード家の者になる予定ですし」
「でも苦労はするだろう。平民から婿入りなんて」
「苦労はするかもですけど、不幸になるとは限りませんよ?」
「そうですよ。お嬢は無駄にポジティブなのでそのポジティブさが伝染すれば、多分不幸になりません」
「…そうなんだけど」
なんか認めたくない、とハディスは布団の中で小さくつぶやいた。
シャロンはそんな兄の姿にピンとひらめく。
「もしかして妹と親友が同時にいなくなるようで寂しいとか?」
「…寝る」
わざとらしく『ぐーぐー』と寝息を立て始めたハディス。
サイモンとシャロンは顔を見合わせて、吹き出した。
「兄様、可愛い」
「ハディス様、可愛い」
「うっせぇよ!続きは明日だ!もう寝ろ!」
「はぁーい」
その夜は結局、不貞腐れたハディスを挟んで、シャロンとサイモンは眠りについた。
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