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「カズ君、また変質者に絡まれたの?」
家に帰った僕の顔を見た母が心配そうな表情で聞いてきた。既に帰っていてソファーでゲームをしている遥希から聞いたんだろう。
姉と弟は母に似て背が高く、僕だけ父に似て低身長だからか変態に絡まれるのは僕ばかりなので、いつもこんな風に心配をかけてしまう。
「遥希が助けてくれたから大丈夫だったよ。それも聞いたんでしょ?」
「ハル君から聞いたけど、遅いから心配していたのよ。今まで高校の先輩と一緒だったの? ご飯は食べたのよね?」
「うん。先輩がハンバーガー驕ってくれて、家の前まで送ってくれた」
そう言ったらやっと母さんの表情が和らいだ。そんな僕達の会話にゲーム画面から目を離さないままの遥希が割り込んできた。
「母さん、これからはその先輩が兄貴を守ってくれるから大丈夫だよ」
「あら? どうして?」
「だってその人兄貴の彼氏だもん」
「なっ、そんなわけないだろ!?」
遥希がとんでもない事を言い出してびっくりしてしまった。どうしてそうなるんだ? そして何故かそれを聞いた母さんは嬉しそうな顔になっている。
「まあ、そうなの? ハル君はその人に会ったの? どんな人?」
「ちょっ、母さん?」
「俺の前で兄貴の肩を抱いて、お兄さんはまかせてくれて大丈夫って言われた」
「まあぁ!」
「いやっ、それは僕が姫っ、あああ、もう! とにかく彼氏じゃないから!」
確かに高橋さんはそんな事を言っていたけど、それは僕が姫ポジだからスキンシップや発言がおかしな事になっているだけなんだ。そんなのどう説明したらいいんだ。
それに母さん、僕に彼氏が出来てもいいんだ…。
二人には彼氏じゃないってはっきり訂正したのにいまいち信じて貰えなくて、そんなの高橋さんにも失礼だって言ってそれ以上の追及は何とか却下した。姉ちゃんが自分の部屋に籠って漫画を読んでくれてて良かった。こんな会話を聞かれたら絶対に揶揄われてしまう。
翌日教室に行くとクラスメイト達の様子がいつもと違っているのに気付いた。ちらちら僕を見ていたり、何だか暗い顔をしている人もいる。一体どうしたんだろうって思いながら自分の席に座ったら隣の席の伊藤君が聞いてきた。
「小林、生徒会長とファストフード店に行った?」
「うん。行った。季節限定のハンバーガー美味しかったよ」
店内にうちの高校の生徒もいたから高橋さんと一緒だったのを見かけた人がいたのかもしれない。僕が答えたら教室内のあちこちから「ああ…」とか「そんな…」って呻き声が聞こえて来て何だか重い空気が漂っている。本当にどうしたんだ?
そんな疑問も先生が来て授業が始まりあやふやなまま過ぎてしまい、そして最初の休み時間になると直ぐに佐藤君が僕の机までやって来た。
「小林、話したいことがあるんだ。一緒に来てくれるか?」
「え? うん、いいけど…」
何だか嘘の告白をされた時と似た状況だ。でも、今度は何の話だろう?
ついて行くとあの時と同じ階段の踊り場で、嘘の告白の時は困り顔だった佐藤君が今回は思い詰めた表情をして僕を見ている。
「話って?」
「小林は、生徒会長と付き合うことになったのか?」
「えっ? な、なんでっ」
「火曜も昨日も一緒にファストフード店に行って、食べ終わってもベンチでずっと一緒に座ってたって…。そんな頻繁にデートしてるなら、そうなんだろう?」
なんでそんなに僕の行動を把握してるの? そんな事より付き合ってとかデートって昨夜の遥希もそうだけど誤解だよ。
「違うよ。付き合って無いし、デートじゃ無いよ」
誤解されたら堪らないと思って全否定したら何故か胸にチクっと痛みのようなものが走った。自分でもわからなくて胸に手を当てたら、複数の足音が近づいてきた。
「良かったぁ!」
「デートじゃ無かった!」
「姫が取られたかと思ったぜ」
そんな声が聞こえて来て階段の上からも下からもわらわらとクラスメイト数人が周りに集まって来た。そして何故か佐藤君を捕まえて連れて行こうとしている。
「お前ら邪魔するな! 俺は小林にっ…」
「はーい、そこまで~」
「お、タイミング良く予鈴が鳴ったぞ。小林、教室に戻ろう」
「うん、そう、だね。…みんな聞いてたの?」
僕がジトリと恨めしい視線を向けたら慌てた様子で言い訳を始めた。
「えっ? いや、心配してたんだよ?」
「ほ、ほら急ごう。授業始まっちゃうぞ?」
言い訳って言うか、誤魔化し? もしかしたら噓の告白の時も今みたいにみんなが聞き耳を立てていたんだろうか。
誤解が解けたからなのか教室の雰囲気は戻った気がするけど、これで僕が高橋さんと一緒にイルミネーションを見に行くのが知られたら凄く面倒くさい事になりそうだ。
これは絶対に知られないように注意しないと…。
僕は急いで高橋さんにイルミネーションを一緒に見に行く事は秘密にして欲しいってメッセージを送っておいた。
家に帰った僕の顔を見た母が心配そうな表情で聞いてきた。既に帰っていてソファーでゲームをしている遥希から聞いたんだろう。
姉と弟は母に似て背が高く、僕だけ父に似て低身長だからか変態に絡まれるのは僕ばかりなので、いつもこんな風に心配をかけてしまう。
「遥希が助けてくれたから大丈夫だったよ。それも聞いたんでしょ?」
「ハル君から聞いたけど、遅いから心配していたのよ。今まで高校の先輩と一緒だったの? ご飯は食べたのよね?」
「うん。先輩がハンバーガー驕ってくれて、家の前まで送ってくれた」
そう言ったらやっと母さんの表情が和らいだ。そんな僕達の会話にゲーム画面から目を離さないままの遥希が割り込んできた。
「母さん、これからはその先輩が兄貴を守ってくれるから大丈夫だよ」
「あら? どうして?」
「だってその人兄貴の彼氏だもん」
「なっ、そんなわけないだろ!?」
遥希がとんでもない事を言い出してびっくりしてしまった。どうしてそうなるんだ? そして何故かそれを聞いた母さんは嬉しそうな顔になっている。
「まあ、そうなの? ハル君はその人に会ったの? どんな人?」
「ちょっ、母さん?」
「俺の前で兄貴の肩を抱いて、お兄さんはまかせてくれて大丈夫って言われた」
「まあぁ!」
「いやっ、それは僕が姫っ、あああ、もう! とにかく彼氏じゃないから!」
確かに高橋さんはそんな事を言っていたけど、それは僕が姫ポジだからスキンシップや発言がおかしな事になっているだけなんだ。そんなのどう説明したらいいんだ。
それに母さん、僕に彼氏が出来てもいいんだ…。
二人には彼氏じゃないってはっきり訂正したのにいまいち信じて貰えなくて、そんなの高橋さんにも失礼だって言ってそれ以上の追及は何とか却下した。姉ちゃんが自分の部屋に籠って漫画を読んでくれてて良かった。こんな会話を聞かれたら絶対に揶揄われてしまう。
翌日教室に行くとクラスメイト達の様子がいつもと違っているのに気付いた。ちらちら僕を見ていたり、何だか暗い顔をしている人もいる。一体どうしたんだろうって思いながら自分の席に座ったら隣の席の伊藤君が聞いてきた。
「小林、生徒会長とファストフード店に行った?」
「うん。行った。季節限定のハンバーガー美味しかったよ」
店内にうちの高校の生徒もいたから高橋さんと一緒だったのを見かけた人がいたのかもしれない。僕が答えたら教室内のあちこちから「ああ…」とか「そんな…」って呻き声が聞こえて来て何だか重い空気が漂っている。本当にどうしたんだ?
そんな疑問も先生が来て授業が始まりあやふやなまま過ぎてしまい、そして最初の休み時間になると直ぐに佐藤君が僕の机までやって来た。
「小林、話したいことがあるんだ。一緒に来てくれるか?」
「え? うん、いいけど…」
何だか嘘の告白をされた時と似た状況だ。でも、今度は何の話だろう?
ついて行くとあの時と同じ階段の踊り場で、嘘の告白の時は困り顔だった佐藤君が今回は思い詰めた表情をして僕を見ている。
「話って?」
「小林は、生徒会長と付き合うことになったのか?」
「えっ? な、なんでっ」
「火曜も昨日も一緒にファストフード店に行って、食べ終わってもベンチでずっと一緒に座ってたって…。そんな頻繁にデートしてるなら、そうなんだろう?」
なんでそんなに僕の行動を把握してるの? そんな事より付き合ってとかデートって昨夜の遥希もそうだけど誤解だよ。
「違うよ。付き合って無いし、デートじゃ無いよ」
誤解されたら堪らないと思って全否定したら何故か胸にチクっと痛みのようなものが走った。自分でもわからなくて胸に手を当てたら、複数の足音が近づいてきた。
「良かったぁ!」
「デートじゃ無かった!」
「姫が取られたかと思ったぜ」
そんな声が聞こえて来て階段の上からも下からもわらわらとクラスメイト数人が周りに集まって来た。そして何故か佐藤君を捕まえて連れて行こうとしている。
「お前ら邪魔するな! 俺は小林にっ…」
「はーい、そこまで~」
「お、タイミング良く予鈴が鳴ったぞ。小林、教室に戻ろう」
「うん、そう、だね。…みんな聞いてたの?」
僕がジトリと恨めしい視線を向けたら慌てた様子で言い訳を始めた。
「えっ? いや、心配してたんだよ?」
「ほ、ほら急ごう。授業始まっちゃうぞ?」
言い訳って言うか、誤魔化し? もしかしたら噓の告白の時も今みたいにみんなが聞き耳を立てていたんだろうか。
誤解が解けたからなのか教室の雰囲気は戻った気がするけど、これで僕が高橋さんと一緒にイルミネーションを見に行くのが知られたら凄く面倒くさい事になりそうだ。
これは絶対に知られないように注意しないと…。
僕は急いで高橋さんにイルミネーションを一緒に見に行く事は秘密にして欲しいってメッセージを送っておいた。
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