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(お…落ち着け私‥。)
とりあえず、とりあえず、とりあえず、落ち着いて考えよう。。
どちらにしろ今の状況は、青Fの《遭遇イベント》からは逸脱した展開になってるんだ。
ここからは青Fの進行通りには行かないと考えておかないと‥。
私はorzの体勢のまま、何度も深呼吸することで無理やり気持ちを落ち着けた。
(‥スーハー、スーハー‥、一旦頭を空っぽにして…。)
こーゆー噂が出回るには、誰かの悪意か、何らかの原因が絶対にある筈なんだ。
まず、目の前の令嬢様方は私を問い詰めてきた時点で除外するとして。(思い当たらなかったからこそ噂の当人である私に聞いてきた訳だしね。)
私は地面を見つめながら、自分が足を引っ掛けられた時の状況を思い出しつつ、原因を考えることにした。
(ええと。まずは…。)
───私が上の空で参加した入学式が終わって、近くにいた先生に青Fには出てこない安全な事務室の場所を聞いて寄ったんだよね。
それから自分の教室に戻るまでを辿っていこうか。
───あの時の私は、青Fの登場人物に出会わないようにと、青Fには出てこない[場所]を選びながら“渡り廊下”の隅をこそこそと歩いていた。
そして私は、入学式後に配られた〈学院の規律が記載された冊子〉と〈特別学科の申請用紙〉と、事務室で貰った〈学院内の見取り図〉を抱きしめてた。
それで塞がった両手を空ける為に、肩から掛けた鞄に持ち物を入れようと、一瞬だけ目線を左脇の鞄へ向けて‥。
そしたら何でか右足の脛に蹴られたような痛みが走って、それで足がもつれて目の前の人にぶつかったんだよね…。
(──って、うわぁ‥。私あの時、王太子殿下に両肩、支えられてるじゃん! ゔわぁ~‥…私、よく生きてるな…。)
‥ま、まぁいいや、それは。。
とにかく。
あの時の私は『今、誰かに足を引っ掛けられたよね?!』って内心戸惑いつつも、ぶつかってしまった相手に『まずは謝罪しなければ!』って思って。
急いで体勢を立て直すと、相手の顔をろくに見ないまま、ビシィッと直角に上半身を曲げて。
「なぜか転けそうになってぶつかってしまいました。本当にすみませんでした!」と、息継ぎなく一気に謝った。
それで‥───手元を見たら、持っていた物が失くなってることに気づいて、慌てて足元に落としたかと床全体に視線を巡らせたんだ。
そしたら、目の前にいる人物(後で分かったけど王太子殿下‥長いから王子でいいやもう。)が、いつの間にか冊子と申請用紙と見取り図を集めてたらしく、きっちり重ねて私に差し出してきたんだよね…。
無言で。
(──はは。。あの時すでに王子は私に腹が立っていたのかぁ…ははは‥。)
‥っとと。思考がずれかけたわ。
とにかく、あの時の私は頭を下げていたから王子の表情は見えてなかったし、王子からの無言の威圧にも気づかないで、確か王子にこう言ったと思う。
「‥すみません、ぶつかってしまった上に持ち物まで集めていただいたみたいで‥その、ありがとうございます。。」って。
それで受け取りがてら、ようやく顔を上げて相手の顔を見て───‥絶句、したんだよね…。
‥だってその人物は。。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
光に透けてキラキラ輝く、白金のサラサラな髪。
長い睫毛に縁取られた、大きくて煌やかな目元。
まるで雪原の青空のような、澄んだ冬空色の瞳。
スッと通った鼻筋。緩く弧を描く形の良い口元。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(…ははは‥光希の時に何度も王子の登場シーンはやり直したから、一字一句違わず王子の容姿を表現する言葉を思い出せるってゆ~ね‥。)
青Fでは唯一 “攻略キャラ全員”と接点を持つ、【恋愛ルート】には欠かせない起点の人物。
ティタ二ア王国の[第一王子]
セノヴァス-ロル-レーゼンデルク・ティタ二ア。
───その人だったんだから。
前世の私が、現実にはこんな完璧な美形は居ないよね~とニヤニヤしながら青Fのゲーム画面で見ていた、顔面偏差値100%超えの、あの王子と寸分違わぬ、まんま同じ容姿の御方が目の前に居たんだもん。。
しかも青Fのストーリーは、この王子に出会うことで『他の攻略キャラも芋づる式に登場する』形式だったのよ!
(あんなの、二重の意味で絶句するしかないでしょーよ。。)
でもって、青Fの起点の人物に出会ってしまった私はですよ。
(はははは・・・‥…詰んだわ…。。)
せっかく【恋愛ルート】に入らないようにって、入学式後の少ない移動時間を使って事務室に行ってきた努力が、貰ってきた〈学院内の見取り図〉が、入学初日で用無しになってしまったと…。
これが “骨折り損の草臥れ儲け”ってヤツですね。大変勉強になりました。
…泣いてもいいですか…グスン。。
てゆーか。
そもそもなんで1つ年上の先輩にあたる王子と、一年生専用の“渡り廊下”で出会うことになるんだ!って話よ。
だって青F情報でいけば“渡り廊下”は、王子と出会う[場所]には一度も登場していないのだ。
それなのに、それなのに‥‥
(なんで青Fに登場してない[場所]で王子とぶつかる事になるのさ~~~~~!!?)
…ハァ。ハァ。。
(‥お、落ち着け私…。)
とにかく、あの時の私は絶句したまま全身の血の気が引いてしまってて。
一番出会っちゃいけない人物にぶつかってしまったショックで、頭の中は真っ白だった訳で。
そんな中で、顔面偏差値100%超えの王子に、完っっっ璧な笑顔を、真正面から向けられたんだよね…。
過去の私が、うっひゃああぁ/// と叫びまくった、誰もがうっとり見惚れる、それはそれは綺羅びやかで甘ぁ~い笑顔を、間近で‥真正面から‥…くうぅ!!!
‥───当然ながら私は、王子を、凝視、してしまいましたよ。。
(ゔゔゔ‥‥そのせいで、そのせいで‥…ガクブル…。。)
だって仕方なかったんだよ!!
あの時の私は、前世の記憶で知り得た青Fのゲームの世界とリアルなこの世界が、本当に同じ世界なのか?って半信半疑だったんだもん!
もっと言うと、青Fの攻略キャラがまんま同じ人物としてこの世界に居るかどーかなんて、会ったことも見たこともなかったから、根っこでは信じきれてなかったんだよね…。
『ああ…前世の私が夢にまで見た理想の王子様が目の前にいるよ‥、動いてるよ‥、信じられない‥、本当に居たよ…。』そんな感じのことを、あの時の私は現実味がない感覚で考えてたと思う。
…でもさ。
王子が言ったんだ。
そんな私の呆けた思考を一気に現実に引き戻す台詞を。
青Fで主人公と王子が最初に出会った時と“全く同じ台詞”を。
困ったような優しい笑みを浮かべながら、“全く同じ仕草”で。
私の中で王子を〈冷黒王子〉呼びするようになった、恐ろしい一言を…。
「──キミ、具合が悪い様子だけれど大丈夫かい?‥私で良ければ手を貸そうか? (何だこの下民は…。この俺にぶつかる事自体、無礼にも程があるのに、さらに王族の顔をじろじろと見るなど‥ここが学院内でなければ、即刻、打首ものだな…。)」
「────── っっ?!!」
…う、う、打首ぃいぃいいーーーーーーー?!!
とりあえず、とりあえず、とりあえず、落ち着いて考えよう。。
どちらにしろ今の状況は、青Fの《遭遇イベント》からは逸脱した展開になってるんだ。
ここからは青Fの進行通りには行かないと考えておかないと‥。
私はorzの体勢のまま、何度も深呼吸することで無理やり気持ちを落ち着けた。
(‥スーハー、スーハー‥、一旦頭を空っぽにして…。)
こーゆー噂が出回るには、誰かの悪意か、何らかの原因が絶対にある筈なんだ。
まず、目の前の令嬢様方は私を問い詰めてきた時点で除外するとして。(思い当たらなかったからこそ噂の当人である私に聞いてきた訳だしね。)
私は地面を見つめながら、自分が足を引っ掛けられた時の状況を思い出しつつ、原因を考えることにした。
(ええと。まずは…。)
───私が上の空で参加した入学式が終わって、近くにいた先生に青Fには出てこない安全な事務室の場所を聞いて寄ったんだよね。
それから自分の教室に戻るまでを辿っていこうか。
───あの時の私は、青Fの登場人物に出会わないようにと、青Fには出てこない[場所]を選びながら“渡り廊下”の隅をこそこそと歩いていた。
そして私は、入学式後に配られた〈学院の規律が記載された冊子〉と〈特別学科の申請用紙〉と、事務室で貰った〈学院内の見取り図〉を抱きしめてた。
それで塞がった両手を空ける為に、肩から掛けた鞄に持ち物を入れようと、一瞬だけ目線を左脇の鞄へ向けて‥。
そしたら何でか右足の脛に蹴られたような痛みが走って、それで足がもつれて目の前の人にぶつかったんだよね…。
(──って、うわぁ‥。私あの時、王太子殿下に両肩、支えられてるじゃん! ゔわぁ~‥…私、よく生きてるな…。)
‥ま、まぁいいや、それは。。
とにかく。
あの時の私は『今、誰かに足を引っ掛けられたよね?!』って内心戸惑いつつも、ぶつかってしまった相手に『まずは謝罪しなければ!』って思って。
急いで体勢を立て直すと、相手の顔をろくに見ないまま、ビシィッと直角に上半身を曲げて。
「なぜか転けそうになってぶつかってしまいました。本当にすみませんでした!」と、息継ぎなく一気に謝った。
それで‥───手元を見たら、持っていた物が失くなってることに気づいて、慌てて足元に落としたかと床全体に視線を巡らせたんだ。
そしたら、目の前にいる人物(後で分かったけど王太子殿下‥長いから王子でいいやもう。)が、いつの間にか冊子と申請用紙と見取り図を集めてたらしく、きっちり重ねて私に差し出してきたんだよね…。
無言で。
(──はは。。あの時すでに王子は私に腹が立っていたのかぁ…ははは‥。)
‥っとと。思考がずれかけたわ。
とにかく、あの時の私は頭を下げていたから王子の表情は見えてなかったし、王子からの無言の威圧にも気づかないで、確か王子にこう言ったと思う。
「‥すみません、ぶつかってしまった上に持ち物まで集めていただいたみたいで‥その、ありがとうございます。。」って。
それで受け取りがてら、ようやく顔を上げて相手の顔を見て───‥絶句、したんだよね…。
‥だってその人物は。。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
光に透けてキラキラ輝く、白金のサラサラな髪。
長い睫毛に縁取られた、大きくて煌やかな目元。
まるで雪原の青空のような、澄んだ冬空色の瞳。
スッと通った鼻筋。緩く弧を描く形の良い口元。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(…ははは‥光希の時に何度も王子の登場シーンはやり直したから、一字一句違わず王子の容姿を表現する言葉を思い出せるってゆ~ね‥。)
青Fでは唯一 “攻略キャラ全員”と接点を持つ、【恋愛ルート】には欠かせない起点の人物。
ティタ二ア王国の[第一王子]
セノヴァス-ロル-レーゼンデルク・ティタ二ア。
───その人だったんだから。
前世の私が、現実にはこんな完璧な美形は居ないよね~とニヤニヤしながら青Fのゲーム画面で見ていた、顔面偏差値100%超えの、あの王子と寸分違わぬ、まんま同じ容姿の御方が目の前に居たんだもん。。
しかも青Fのストーリーは、この王子に出会うことで『他の攻略キャラも芋づる式に登場する』形式だったのよ!
(あんなの、二重の意味で絶句するしかないでしょーよ。。)
でもって、青Fの起点の人物に出会ってしまった私はですよ。
(はははは・・・‥…詰んだわ…。。)
せっかく【恋愛ルート】に入らないようにって、入学式後の少ない移動時間を使って事務室に行ってきた努力が、貰ってきた〈学院内の見取り図〉が、入学初日で用無しになってしまったと…。
これが “骨折り損の草臥れ儲け”ってヤツですね。大変勉強になりました。
…泣いてもいいですか…グスン。。
てゆーか。
そもそもなんで1つ年上の先輩にあたる王子と、一年生専用の“渡り廊下”で出会うことになるんだ!って話よ。
だって青F情報でいけば“渡り廊下”は、王子と出会う[場所]には一度も登場していないのだ。
それなのに、それなのに‥‥
(なんで青Fに登場してない[場所]で王子とぶつかる事になるのさ~~~~~!!?)
…ハァ。ハァ。。
(‥お、落ち着け私…。)
とにかく、あの時の私は絶句したまま全身の血の気が引いてしまってて。
一番出会っちゃいけない人物にぶつかってしまったショックで、頭の中は真っ白だった訳で。
そんな中で、顔面偏差値100%超えの王子に、完っっっ璧な笑顔を、真正面から向けられたんだよね…。
過去の私が、うっひゃああぁ/// と叫びまくった、誰もがうっとり見惚れる、それはそれは綺羅びやかで甘ぁ~い笑顔を、間近で‥真正面から‥…くうぅ!!!
‥───当然ながら私は、王子を、凝視、してしまいましたよ。。
(ゔゔゔ‥‥そのせいで、そのせいで‥…ガクブル…。。)
だって仕方なかったんだよ!!
あの時の私は、前世の記憶で知り得た青Fのゲームの世界とリアルなこの世界が、本当に同じ世界なのか?って半信半疑だったんだもん!
もっと言うと、青Fの攻略キャラがまんま同じ人物としてこの世界に居るかどーかなんて、会ったことも見たこともなかったから、根っこでは信じきれてなかったんだよね…。
『ああ…前世の私が夢にまで見た理想の王子様が目の前にいるよ‥、動いてるよ‥、信じられない‥、本当に居たよ…。』そんな感じのことを、あの時の私は現実味がない感覚で考えてたと思う。
…でもさ。
王子が言ったんだ。
そんな私の呆けた思考を一気に現実に引き戻す台詞を。
青Fで主人公と王子が最初に出会った時と“全く同じ台詞”を。
困ったような優しい笑みを浮かべながら、“全く同じ仕草”で。
私の中で王子を〈冷黒王子〉呼びするようになった、恐ろしい一言を…。
「──キミ、具合が悪い様子だけれど大丈夫かい?‥私で良ければ手を貸そうか? (何だこの下民は…。この俺にぶつかる事自体、無礼にも程があるのに、さらに王族の顔をじろじろと見るなど‥ここが学院内でなければ、即刻、打首ものだな…。)」
「────── っっ?!!」
…う、う、打首ぃいぃいいーーーーーーー?!!
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