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────結局の所、青Fと今の展開を照らし合わせて判ったことは。
青Fとこの世界は確実に酷似した世界であるにも関わらず、未来は予測不可能ってことだ。
(じゃあ何でこのタイミングで私は光希の記憶が蘇ったんだ…。)
てっきり私は前世の記憶が蘇ったのが青Fの登場人物達と出会う前だったから、この世界の主神である創世神様が何らかの目的で、私に“未来”の[選択肢]を選べるようにしたんだろうと思ってた。
でも、実際は光希の記憶は参考にならないわ、むしろ強制的に《遭遇イベント》へ突入してる状態だ。
(‥こんな状況で、いったい私にどうしろと…。。)
光希の知識で言えば、きっと前世で体験した青Fのゲームとこの世界は【平行世界】の位置関係にあるんだろう。
そして、光希の世界の神様か創世神様なのか、どっちにしろ青Fの内容を知る私を【平行世界】に転生させたのは、それなりの理由があるんだろう。
…でもさぁ。。
(それなら尚更、もっとちゃんとした説明というか情報をくれないと、どう動けば正解なのか分かんないよ‥。)
ぶっちゃけ今の状況じゃ、光希の記憶に翻弄されてる私を面白がってるとしか思えないし…。
そう考えたら、だんだんと腹が立ってきた。
(あ~~も~~!! 青Fじゃ悪役令嬢とはこんな出会い方じゃなかったのにーーーっ!!)
こんなの、こんなの、青Fの【恋愛ルート】を逸れようと頑張る以前の問題じゃないか~~~っ!!
(ゔゔゔ~~‥。)
そりゃあさ? 青Fの登場人物と出会う覚悟はしてたよ?
でもさぁー!
入学初日で次から次へと出会いまくるとか、普通、有り得なくない?!
まずね、緊張しながら新入生用に張り出されたクラス分け表の案内どおりに自分の教室に入って、指定された通りに自分の席に着いて。
無事に席に着けたことに安堵して、ふと何気なく左横を見たらよ?
───青Fのゲーム画面で見たと思しき容姿の女性が、左隣にいらっしゃった訳ですよ…。
・・・・いやいやいやいや。
いくら何でも私の隣の席に、示し合わせたみたいに青Fの登場人物が座ってるって!!
普通なら有り得ないでしょーが!
今思い出しても有り得ないレベルの遭遇率だよ!!!
普通に考えておかしい事は、誰でも『まさかねぇ~』って思うでしょ!?
‥まぁそんな訳で。
全くもって信じられなかった私は、そのまま視線を前に戻しましたよ。。
そんでもって、完全スルーして入学式に出席したよね。。
そのせいで式の間はずっと『まさかねぇ~』を頭の中で繰り返すことになって、壇上での皆様方の演説は右の耳から左の耳へ状態だったわ!!
ま、まぁ、それはとにかく。
入学式後に自分の教室へと戻ってきて。
担任の促しで皆の自己紹介が始まって。
…私の『まさかねぇ~』は裏切られた訳ですがね‥ハハハ。。。
そして今、目の前には青Fの悪役令嬢と取り巻きまで居るとゆーね…。
(‥くっっ ホント泣きたくなるレベルの遭遇率だよ!何でこんな事になってるのか、マジでほんと教えて欲しいんですけど?! 創世神様ぁ!!)
…───とまぁ。
いくら嘆いたところで返事なんか返ってこない訳ですけどね…ぐすん。。
(…これは最終手段だけど、本当にどうしようもなくなったら〔神降ろし〕ができる神官の方を紹介してもらうしかないか…。弟妹が通ってる教会の神父さんに頼もう…。でも〔神降ろし〕ってお布施料がめっちゃ高いから、本当に最終手段だけどね!!)
で。〔神降ろし〕の件はともかく、私は隣の席の女性が悪役令嬢の取り巻きの“マーリン様”だと判った時点で、他の青Fの登場人物達とも遠からず『出会うんだろうな』って予想はできてた訳よ。
そう。ちゃんと予想はしてたんだよ。
───…でもさぁ~。
(‥まさか入学初日から、主人公の運命を左右する要注意人物の『悪役令嬢』と出会うことになるとは思ってなかったわ…。トホホ‥。)
色々と思考してみたけど結局、最大のズレからの【恋愛ルート】回避の糸口を見つけることができなかった私は。
半ば人生諦めの心境で、現実逃避していた思考を目の前の御三方へと引き戻した。
そして瞬間、顔がヒクついた。
だって、項垂れ姿勢からそぉっと顔を上げたら‥
アイリナ様の顔面ドアップがあったんだよ!
「ゔっ」
「あら‥ようやくこちらを見ましたわね。(先程からありったけの声量で話しかけていたのに反応がなかったのは、無視されていたと考えるべきかしら…。そうね、少し脅してみようかしらね‥。)」
お、脅してみるってアイリナ様‥‥聴こえてますよ“心の声”が。。
そうだった。今は《遭遇イベント?》中で、アイリナ様は“いびりモード”発動中だったわ。。
てゆーか、ちょ・・・
アイリナ様の瞳の奥、メラメラ燃えてるように見えるんですけど?
(あれ…確かアイリナ様って、青F設定では[火属性]に突出した魔力の持ち主で、しかも[攻撃特化]だったはず‥。)
そして、青Fとは異なる展開で、現在《遭遇イベント?》は進行中だ。
…ってことは・・・・。
(え‥この流れで行くと私、アイリナ様に消し灰にされるんじゃ…。)
…ヤヤヤヤバイ。。
(ヤバイよ、ヤバすぎるじゃん!!)
ととととりあえず現状を打破する為にも何か、何か会話を!!!
「す、す、すみま…。あの、その…。」
…ってちょっと待って。
えーと、えーと・・・
(…私は何から話せば良いんだっけ‥?)
・・・・・・・。
(うわーーーん! 現実逃避しててエステル様の話、全く聞いてなかったから分からないーーー!)
自分の失態に青くなりながら口ごもる私に、アイリナ様のすぐ後ろに居たエステル様が音もなく近づいてきた。
「あの‥そんなに怯えなくても大丈夫ですわよ? ‥落ち着いて話してくださって宜しいですから…。(なんだか庇護欲を掻き立てられる方ですわね‥。)」
「もうっ エステル様は優しすぎますわ!(‥まぁ、そうやって誰にでも優しい所がステルの魅力なんですけどね。ふふふん。) ──貴女、心優しいエステル様が貴女を思いやって、こうおっしゃられているんですから、正直に答えなさいな。」
‥えーと、…うん。そうだよね。。
アイリナ様の言うとおり、ここは正直に話そう。
あと、エステル様の“心の声”が『庇護欲』とか何かおかしなことを呟いてるのは、この際、置いておこう。。
「す、すみません。。私、貴族のご令嬢様方と一度も話したことがなくて…失礼な言い回しをしていたら、すみません。。ちょっと私、混乱していて。。先程お話しされていた…えっと、私が呼び出された理由を、半分くらい聞き洩らしてしまって…もう一度、お願いできますか?」
「‥あら。(マノンが言う通り、本当に聞こえてなかったのね。。)」
「まぁあ!!エステル様のお言葉を聞き洩らしただなんて貴女───‥エステル様?」
‥あ。
エステル様が閉じた扇子をアイリナ様の前に翳して、なんか止めた。
(うわぁ~っ あの場面が動くとこうなるんだぁ!)
ふいに脳裏に、青Fでは静止画だった光希の記憶が鮮明に思い出されて、そのあまりにも優雅で綺麗過ぎるエステル様の所作に感激して、私はポーッと見惚れてしまった。
(ふわぁ~‥扇子をするりと胸元に戻す仕草まで気品が…様になってるわぁ~。。)
「良いのよ、アイリ。彼女はわたくし達のような身分の者と話したことがないと言ったわ。混乱して聞き洩らすのも分かります。もう一度話しましょう。──貴女、本日のお昼頃に殿下とぶつかりましたわね? (今度はちゃんと聞こえているかしら…。)」
(・・・・・うーーん??)
私はエステル様の言葉と態度に首をかしげた。
(…さっきから変だなぁとは思ってたけど…なんかエステル様、悪役というより“善人”な性格じゃない?)
光希の記憶では、青Fのエステル様はもっと高飛車で高慢ちきで常に人を見下してたし、自分を優位にする為なら人を陥れたり卑怯な手を使うのも当たり前で、THE悪役!って感じだった。
でも、実際のエステル様は何とゆ~か雰囲気が柔らかくて、言葉や行動の端々から優しさがダダ漏れてる。
しかも“心の声”は輪をかけて心配までされてるし…。
(これってどういう事なんだろう。。)
「───貴女?」
…っとと、また聞き洩らしそうになってたわ。あぶないあぶない。
(えーと、私がお昼頃に殿下──‥王太子殿下とぶつかったかどうか…だったよね?)
…うん、ぶつかりましたね。。
あれは災難だったわ本当…(遠い目)。。
私はエステル様に向かって、コクンと頷き返した。
「── そう。では質問を変えるわ。貴女、意図的に殿下にぶつかりまして? (もしも噂が本当なら…。)」
・・・・・・何ですと?
(意図的にって…わざとってこと?!)
いやいやいやいや!!!全力で否定するし!
ぶつかったのは誰かに足を引っ掛けられたからだし、たまたま転んだ先に王太子殿下が居ただけだから!
私はエステル様に向かって、今度はブンブンと首を左右に振って否定した。
「あら‥おかしいわね。わたくしが小耳に挟んだ噂では、意図的に貴女がぶつかったと聞きましてよ? (ステルは純粋で優しいから、私が嘘をついてるか見極めなきゃ!)」
エステル様の横から“いびりモード”のアイリナ様が勇んで私を睨みながら、ボソッと付け加えられた言葉に、私は『はあ?!!』っと目を剥いた。
だって意図的にとか、何でそんな事になってるのか皆目見当もつかないってゆーか、そんな噂が立ってるなんて最悪以外の何でもないから!
あまりの衝撃に、私は自分が体験した事実を整理しようと、頭の中の記憶を思い出しながら独りごちた。
「‥なんでそんな‥私は足を引っ掛けられて転んだのに…。。」
「「「…え…。」」」
「…私が、わざと王太子殿下にぶつかっ…そんな噂が…。。。」
あまりの衝撃に立つ力が失せた私は、地面に両膝を付き、両手を付き、それから頭を下げて…。
公爵令嬢様方の真ん前で、orz。
‥崩れ落ちてしまいましたよ。トホホ。。。
「「「・・・・。(これは‥噂はデタラメみたいですわね。。)」」」
(何で、何でそんな話になってるのよーーーー!!)
[王立アカデミー学院]に入学した初っ端からこんな展開とか、あんまりだ。
あんなに気をつけて《イベント》が起きる[場所]には近づかないようにしてたのに、魔法練習の経緯をショートカットの如くブッ飛ばして、問答無用で[裏庭]に連れて来られて《遭遇イベント?》が起きてるし!
しかも“意図的に王太子殿下にぶつかった”とか、青Fに準ずるようなこの流‥れ・・・
(え‥まさかこれって…謂わゆる【ゲーム補正】なんじゃ…?)
ままままさか・・・
(私がどんなに青Fの登場人物と関わらないように動いても、青Fのイベントは起きるってこと‥?)
‥そんな…‥そんなの・・・・
(っっ避けようがないじゃないのよーーーーーーー!!!)
うわぁああああん!!
青Fとこの世界は確実に酷似した世界であるにも関わらず、未来は予測不可能ってことだ。
(じゃあ何でこのタイミングで私は光希の記憶が蘇ったんだ…。)
てっきり私は前世の記憶が蘇ったのが青Fの登場人物達と出会う前だったから、この世界の主神である創世神様が何らかの目的で、私に“未来”の[選択肢]を選べるようにしたんだろうと思ってた。
でも、実際は光希の記憶は参考にならないわ、むしろ強制的に《遭遇イベント》へ突入してる状態だ。
(‥こんな状況で、いったい私にどうしろと…。。)
光希の知識で言えば、きっと前世で体験した青Fのゲームとこの世界は【平行世界】の位置関係にあるんだろう。
そして、光希の世界の神様か創世神様なのか、どっちにしろ青Fの内容を知る私を【平行世界】に転生させたのは、それなりの理由があるんだろう。
…でもさぁ。。
(それなら尚更、もっとちゃんとした説明というか情報をくれないと、どう動けば正解なのか分かんないよ‥。)
ぶっちゃけ今の状況じゃ、光希の記憶に翻弄されてる私を面白がってるとしか思えないし…。
そう考えたら、だんだんと腹が立ってきた。
(あ~~も~~!! 青Fじゃ悪役令嬢とはこんな出会い方じゃなかったのにーーーっ!!)
こんなの、こんなの、青Fの【恋愛ルート】を逸れようと頑張る以前の問題じゃないか~~~っ!!
(ゔゔゔ~~‥。)
そりゃあさ? 青Fの登場人物と出会う覚悟はしてたよ?
でもさぁー!
入学初日で次から次へと出会いまくるとか、普通、有り得なくない?!
まずね、緊張しながら新入生用に張り出されたクラス分け表の案内どおりに自分の教室に入って、指定された通りに自分の席に着いて。
無事に席に着けたことに安堵して、ふと何気なく左横を見たらよ?
───青Fのゲーム画面で見たと思しき容姿の女性が、左隣にいらっしゃった訳ですよ…。
・・・・いやいやいやいや。
いくら何でも私の隣の席に、示し合わせたみたいに青Fの登場人物が座ってるって!!
普通なら有り得ないでしょーが!
今思い出しても有り得ないレベルの遭遇率だよ!!!
普通に考えておかしい事は、誰でも『まさかねぇ~』って思うでしょ!?
‥まぁそんな訳で。
全くもって信じられなかった私は、そのまま視線を前に戻しましたよ。。
そんでもって、完全スルーして入学式に出席したよね。。
そのせいで式の間はずっと『まさかねぇ~』を頭の中で繰り返すことになって、壇上での皆様方の演説は右の耳から左の耳へ状態だったわ!!
ま、まぁ、それはとにかく。
入学式後に自分の教室へと戻ってきて。
担任の促しで皆の自己紹介が始まって。
…私の『まさかねぇ~』は裏切られた訳ですがね‥ハハハ。。。
そして今、目の前には青Fの悪役令嬢と取り巻きまで居るとゆーね…。
(‥くっっ ホント泣きたくなるレベルの遭遇率だよ!何でこんな事になってるのか、マジでほんと教えて欲しいんですけど?! 創世神様ぁ!!)
…───とまぁ。
いくら嘆いたところで返事なんか返ってこない訳ですけどね…ぐすん。。
(…これは最終手段だけど、本当にどうしようもなくなったら〔神降ろし〕ができる神官の方を紹介してもらうしかないか…。弟妹が通ってる教会の神父さんに頼もう…。でも〔神降ろし〕ってお布施料がめっちゃ高いから、本当に最終手段だけどね!!)
で。〔神降ろし〕の件はともかく、私は隣の席の女性が悪役令嬢の取り巻きの“マーリン様”だと判った時点で、他の青Fの登場人物達とも遠からず『出会うんだろうな』って予想はできてた訳よ。
そう。ちゃんと予想はしてたんだよ。
───…でもさぁ~。
(‥まさか入学初日から、主人公の運命を左右する要注意人物の『悪役令嬢』と出会うことになるとは思ってなかったわ…。トホホ‥。)
色々と思考してみたけど結局、最大のズレからの【恋愛ルート】回避の糸口を見つけることができなかった私は。
半ば人生諦めの心境で、現実逃避していた思考を目の前の御三方へと引き戻した。
そして瞬間、顔がヒクついた。
だって、項垂れ姿勢からそぉっと顔を上げたら‥
アイリナ様の顔面ドアップがあったんだよ!
「ゔっ」
「あら‥ようやくこちらを見ましたわね。(先程からありったけの声量で話しかけていたのに反応がなかったのは、無視されていたと考えるべきかしら…。そうね、少し脅してみようかしらね‥。)」
お、脅してみるってアイリナ様‥‥聴こえてますよ“心の声”が。。
そうだった。今は《遭遇イベント?》中で、アイリナ様は“いびりモード”発動中だったわ。。
てゆーか、ちょ・・・
アイリナ様の瞳の奥、メラメラ燃えてるように見えるんですけど?
(あれ…確かアイリナ様って、青F設定では[火属性]に突出した魔力の持ち主で、しかも[攻撃特化]だったはず‥。)
そして、青Fとは異なる展開で、現在《遭遇イベント?》は進行中だ。
…ってことは・・・・。
(え‥この流れで行くと私、アイリナ様に消し灰にされるんじゃ…。)
…ヤヤヤヤバイ。。
(ヤバイよ、ヤバすぎるじゃん!!)
ととととりあえず現状を打破する為にも何か、何か会話を!!!
「す、す、すみま…。あの、その…。」
…ってちょっと待って。
えーと、えーと・・・
(…私は何から話せば良いんだっけ‥?)
・・・・・・・。
(うわーーーん! 現実逃避しててエステル様の話、全く聞いてなかったから分からないーーー!)
自分の失態に青くなりながら口ごもる私に、アイリナ様のすぐ後ろに居たエステル様が音もなく近づいてきた。
「あの‥そんなに怯えなくても大丈夫ですわよ? ‥落ち着いて話してくださって宜しいですから…。(なんだか庇護欲を掻き立てられる方ですわね‥。)」
「もうっ エステル様は優しすぎますわ!(‥まぁ、そうやって誰にでも優しい所がステルの魅力なんですけどね。ふふふん。) ──貴女、心優しいエステル様が貴女を思いやって、こうおっしゃられているんですから、正直に答えなさいな。」
‥えーと、…うん。そうだよね。。
アイリナ様の言うとおり、ここは正直に話そう。
あと、エステル様の“心の声”が『庇護欲』とか何かおかしなことを呟いてるのは、この際、置いておこう。。
「す、すみません。。私、貴族のご令嬢様方と一度も話したことがなくて…失礼な言い回しをしていたら、すみません。。ちょっと私、混乱していて。。先程お話しされていた…えっと、私が呼び出された理由を、半分くらい聞き洩らしてしまって…もう一度、お願いできますか?」
「‥あら。(マノンが言う通り、本当に聞こえてなかったのね。。)」
「まぁあ!!エステル様のお言葉を聞き洩らしただなんて貴女───‥エステル様?」
‥あ。
エステル様が閉じた扇子をアイリナ様の前に翳して、なんか止めた。
(うわぁ~っ あの場面が動くとこうなるんだぁ!)
ふいに脳裏に、青Fでは静止画だった光希の記憶が鮮明に思い出されて、そのあまりにも優雅で綺麗過ぎるエステル様の所作に感激して、私はポーッと見惚れてしまった。
(ふわぁ~‥扇子をするりと胸元に戻す仕草まで気品が…様になってるわぁ~。。)
「良いのよ、アイリ。彼女はわたくし達のような身分の者と話したことがないと言ったわ。混乱して聞き洩らすのも分かります。もう一度話しましょう。──貴女、本日のお昼頃に殿下とぶつかりましたわね? (今度はちゃんと聞こえているかしら…。)」
(・・・・・うーーん??)
私はエステル様の言葉と態度に首をかしげた。
(…さっきから変だなぁとは思ってたけど…なんかエステル様、悪役というより“善人”な性格じゃない?)
光希の記憶では、青Fのエステル様はもっと高飛車で高慢ちきで常に人を見下してたし、自分を優位にする為なら人を陥れたり卑怯な手を使うのも当たり前で、THE悪役!って感じだった。
でも、実際のエステル様は何とゆ~か雰囲気が柔らかくて、言葉や行動の端々から優しさがダダ漏れてる。
しかも“心の声”は輪をかけて心配までされてるし…。
(これってどういう事なんだろう。。)
「───貴女?」
…っとと、また聞き洩らしそうになってたわ。あぶないあぶない。
(えーと、私がお昼頃に殿下──‥王太子殿下とぶつかったかどうか…だったよね?)
…うん、ぶつかりましたね。。
あれは災難だったわ本当…(遠い目)。。
私はエステル様に向かって、コクンと頷き返した。
「── そう。では質問を変えるわ。貴女、意図的に殿下にぶつかりまして? (もしも噂が本当なら…。)」
・・・・・・何ですと?
(意図的にって…わざとってこと?!)
いやいやいやいや!!!全力で否定するし!
ぶつかったのは誰かに足を引っ掛けられたからだし、たまたま転んだ先に王太子殿下が居ただけだから!
私はエステル様に向かって、今度はブンブンと首を左右に振って否定した。
「あら‥おかしいわね。わたくしが小耳に挟んだ噂では、意図的に貴女がぶつかったと聞きましてよ? (ステルは純粋で優しいから、私が嘘をついてるか見極めなきゃ!)」
エステル様の横から“いびりモード”のアイリナ様が勇んで私を睨みながら、ボソッと付け加えられた言葉に、私は『はあ?!!』っと目を剥いた。
だって意図的にとか、何でそんな事になってるのか皆目見当もつかないってゆーか、そんな噂が立ってるなんて最悪以外の何でもないから!
あまりの衝撃に、私は自分が体験した事実を整理しようと、頭の中の記憶を思い出しながら独りごちた。
「‥なんでそんな‥私は足を引っ掛けられて転んだのに…。。」
「「「…え…。」」」
「…私が、わざと王太子殿下にぶつかっ…そんな噂が…。。。」
あまりの衝撃に立つ力が失せた私は、地面に両膝を付き、両手を付き、それから頭を下げて…。
公爵令嬢様方の真ん前で、orz。
‥崩れ落ちてしまいましたよ。トホホ。。。
「「「・・・・。(これは‥噂はデタラメみたいですわね。。)」」」
(何で、何でそんな話になってるのよーーーー!!)
[王立アカデミー学院]に入学した初っ端からこんな展開とか、あんまりだ。
あんなに気をつけて《イベント》が起きる[場所]には近づかないようにしてたのに、魔法練習の経緯をショートカットの如くブッ飛ばして、問答無用で[裏庭]に連れて来られて《遭遇イベント?》が起きてるし!
しかも“意図的に王太子殿下にぶつかった”とか、青Fに準ずるようなこの流‥れ・・・
(え‥まさかこれって…謂わゆる【ゲーム補正】なんじゃ…?)
ままままさか・・・
(私がどんなに青Fの登場人物と関わらないように動いても、青Fのイベントは起きるってこと‥?)
‥そんな…‥そんなの・・・・
(っっ避けようがないじゃないのよーーーーーーー!!!)
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