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第12話 忍び寄る黒い影
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「あなたのその“力”、この私が、もっと詳しく研究させてはもらえないだろうか?」
セバスチャン先生の、にこやかな笑顔。
穏やかな声。
でも、その瞳の奥に渦巻く、底なしの闇。
ゾワリ、と全身の産毛が逆立つのがわかった。
心臓が、ドクン、と嫌な音を立てて跳ねる。
この人は、危険だ。
私の本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。
(どうしよう……どうやって、断れば……)
下手に刺激してはいけない。
でも、この人の領域に足を踏み入れたら、絶対にダメだ。
頭の中で、必死に言葉を探す。
冷や汗が、背中をツーっと伝っていく。
「……先生」
私は、意を決して、顔を上げた。
そして、今出せる、最高の笑顔を貼り付けた。
「ありがとうございます。でも、私の力なんて、そんな大したものじゃありませんから」
「そんなことはないだろう。あのレオン様の力さえ、良い方向へ導いたと聞いているよ」
彼は、私の言葉を、笑顔で受け流す。
探るような視線が、ちくり、と私の心を刺した。
(レオン様のことも、知ってるんだ……)
やっぱり、この人はただの臨時講師じゃない。
目的は、私? それとも、レオン様?
(落ち着いて、私。ここで怯んだら、相手の思うツボだ)
私は、きゅっと拳を握りしめ、続けた。
「私の魔法は、誰かをちょっとだけ元気にしたり、笑顔にしたりするための、ささやかなものです。研究だなんて、そんな大げさなものには、とてもとても」
そう。
私の魔法は、人を傷つけるためにも、誰かの野心のために利用されるためにもない。
これは、私の、そして、おばあちゃんの大切な誇りなんだから。
「ですから、先生のお申し出は、すごく嬉しいんですけど……ごめんなさい。私、この実習室で、みんなのために、ささやかなお菓子を作っているのが、一番幸せなんです」
断固として、でも、あくまで柔らかく。
私のその答えに、セバスチャン先生は、一瞬だけ、ぴくりと眉を動かした。
ほんの一瞬だけ、その笑顔の仮面の下から、冷たい苛立ちのようなものが覗いた気がした。
でも、すぐに彼は、またいつもの完璧な笑顔に戻っていた。
「……そうか。それは、残念だな」
彼は、心から残念だというように、肩をすくめてみせる。
「だが、君の意思は尊重しよう。無理強いはしないよ」
「ありがとうございます……!」
「もし、気が変わったら、いつでも声をかけてくれたまえ。私は、いつでも君を歓迎するよ」
そう言い残して、彼は優雅に一礼すると、静かに実習室から出ていった。
パタン、とドアが閉まる。
その瞬間、私は、張り詰めていた糸が切れたように、その場にへなへなと座り込んでしまった。
「はぁ……はぁ……」
心臓が、バクバクと音を立てて、うるさい。
(怖かった……)
あの瞳。
間違いない。
あの夜会で見た、アルビオン公爵と同じ、闇の色。
一体、何が起こっているの?
レオン様は、今、大丈夫なんだろうか。
言いようのない不安が、黒い霧みたいに、私の心に立ち込めてきた。
*
「――で、そのセバスチャンとかいう先生が、やけにしつこく、いちごに付きまとってくる、と」
「うん……」
あの日以来、私は一人で抱えきれなくなって、親友の桜ちゃんに、思い切って相談してみることにした。
もちろん、レオン様の秘密や、夜会のことまでは話せない。
ただ、「新しく来た先生が、私の作るお菓子にすごく興味を持ってるみたいで、ちょっと怖いんだ」とだけ。
私の話を聞いた桜ちゃんは、いつものお調子者の顔から一変、キリリと真剣な表情になっていた。
「ふむ……それは、怪しいわね」
「やっぱり、そう思う?」
「思う思う! 大体、臨時講師なんて、経歴が怪しいに決まってるんだから!」
桜ちゃんは、ぐっと胸を張って、名探偵みたいに言った。
「よし! いちごは、どーんと構えてなさい! この桜ちゃんが、その胡散臭い先生の正体、丸裸にしてやろうじゃないの!」
「え、ええ!? でも、危ないよ……!」
「だーいじょうぶ! 私の人脈、なめないでよね!」
桜ちゃんは、ウインクしてみせると、早速どこかへ駆け出していってしまった。
彼女のその有り余るほどの明るさと行動力が、今はすごく、すごく、心強かった。
それから数日間、桜ちゃんは本当に、学園中を駆け回って、セバスチャン先生の情報を集めてくれた。
魔法科の上級生に話を聞いたり、先生たちの噂話に聞き耳を立てたり。
そして、わかったことは、あまりにも意外なものだった。
「……ダメだ、いちご。あの先生、あまりにもクリーンすぎる」
放課後の教室で、桜ちゃんは、がっくりと肩を落としていた。
「どこの名門貴族の出身でもなく、でも、魔法の腕は超一流。過去に勤めていた学園での評判も、非の打ち所がないくらい完璧。おまけに、独身で、趣味は詩を読むこと……。怪しいところが、一つも、ない」
「そんな……」
「完璧すぎるのよ。それが、逆に、一番怪しい!」
桜ちゃんは、そう言って悔しそうに机を叩いた。
私も、同じ気持ちだった。
用意されたみたいに完璧な経歴。
それは、まるで、本当の自分を隠すための、巧妙な鎧みたいに思えた。
募る不安に、私は、とうとう、彼に連絡を取ることにした。
レオン様から渡された、あの魔法の連絡用メモ。
机に向かい、インク壺にペンを浸す。
(なんて書こう……)
『助けて』
そう、書きそうになって、私は、寸前のところでペンを止めた。
(ダメだ……)
脳裏に、彼の真剣な顔が浮かぶ。
『俺は、戦わなければならない』
彼は今、たった一人で、私には想像もつかないような大きなものと戦っているんだ。
家のこと、王宮のこと……。
そんな彼に、私の個人的な不安で、余計な心配をかけちゃいけない。
私は、彼の足手まといにだけは、なりたくなかった。
ぎゅっと唇を噛み、私は、書こうとした言葉を消した。
そして、代わりに、こう綴った。
『レオン様。お元気ですか? 私は毎日、あなたのことを考えて、新しいお菓子を作っています。だから、心配しないでくださいね』
健気な、いい子だと思われたかったのかもしれない。
ペンを置いた途端、じわりと涙が滲んできた。
しばらくすると、メモの文字が、すうっと消え、代わりに、彼の返事が浮かび上がってきた。
『無事だ。心配するな。菓子、楽しみにしている』
たった、それだけ。
いつもと同じ、短くて、ぶっきらぼうな返事。
その文字を見て、少しだけ、胸がちくりと痛んだ。
(……忙しいんだよね。きっと)
わかっているのに、ほんの少しだけ、寂しいと思ってしまう自分が、嫌だった。
私は、そのメモを大切に折り畳むと、ぎゅっと握りしめた。
大丈夫。彼を信じよう。
そして私は、私のできることを、精一杯やろう。
そう決めて、私は再び、新しいお菓子作りに没頭することにした。
セバスチャン先生のことも、少しだけ頭の隅に追いやって。
それが、敵の思う壺だとも知らずに。
*
異変が起こり始めたのは、その数日後のことだった。
学園内で、生徒の魔力が、突然、制御できなくなるという事件が、頻発し始めたのだ。
「きゃあああ! 魔法陣が暴走する!」
「だめだ、呪文が止まらない!」
授業中に、魔法科の生徒たちが、次々とパニックに陥る。
幸い、すぐに他の先生たちが取り押さえるため、大きな怪我人は出ていない。
でも、学園内には、じわじわと不穏な空気が広がり始めていた。
そして、そんな奇妙な事件には、一つの、不気味な共通点があった。
魔力を暴走させた生徒たちが、みんな、口を揃えてこう言ったのだ。
「――天野さんの作った、お菓子を食べてから、なんだか体の調子が……」
その噂は、あっという間に学園中に広まった。
この前まで、私のお菓子を「ありがとう」と笑顔で受け取ってくれていた生徒たちが、今では、怯えたような、疑うような目で、私を遠巻きに見ている。
「そんな……嘘だ……」
私は、実習室で、一人、呆然と立ち尽くしていた。
私が作ったのは、みんなが元気になるように、笑顔になるように、心を込めて作った、ただの優しいお菓子のはずだ。
そんなものが、人の魔力を狂わせるなんて、絶対に、ありえない。
でも、現実に、事件は起こっている。
私のせいなの?
私が、何か、間違えちゃったの?
自信が、音を立てて崩れていく。
そして、運命の日。
私のいた製菓科の実習室のドアが、勢いよく開け放たれた。
そこに立っていたのは、学園長を始めとする、調査団の先生たち。
そして、その中に、なぜか、セバスチャン先生も混じっていた。
彼は、私を見ると、とても、とても、悲しそうな顔をした。
「……残念ですが、原因は特定できました」
セバスチャン先生は、調査団が連れてきた、魔力が暴走してぐったりとしている生徒を指さした。
「原因は、彼女です」
その指は、まっすぐに、私を指していた。
「天野いちごさんの作る魔法菓子が、生徒たちの魔力を、内側から狂わせているのです」
え……?
私が……?
何を、言っているの……?
周りの先生たちが、冷たい、厳しい目で私を見る。
信じてくれていたはずの、製菓科の仲間たちでさえ、不安そうな顔で私を見ている。
違う。
私じゃない。
私は、そんなこと、絶対にしない。
声にならない叫びが、喉の奥で詰まる。
セバスチャン先生の瞳の奥が、あの闇の色で、満足そうに、にやりと歪んだように見えた。
ああ、そうか。
これは、罠なんだ。
私を、そして、レオン様を、貶めるための、巧妙に仕組まれた――。
でも、私の声は、誰にも届かない。
私はたった一人、立ち尽くすことしかできなかった。
セバスチャン先生の、にこやかな笑顔。
穏やかな声。
でも、その瞳の奥に渦巻く、底なしの闇。
ゾワリ、と全身の産毛が逆立つのがわかった。
心臓が、ドクン、と嫌な音を立てて跳ねる。
この人は、危険だ。
私の本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。
(どうしよう……どうやって、断れば……)
下手に刺激してはいけない。
でも、この人の領域に足を踏み入れたら、絶対にダメだ。
頭の中で、必死に言葉を探す。
冷や汗が、背中をツーっと伝っていく。
「……先生」
私は、意を決して、顔を上げた。
そして、今出せる、最高の笑顔を貼り付けた。
「ありがとうございます。でも、私の力なんて、そんな大したものじゃありませんから」
「そんなことはないだろう。あのレオン様の力さえ、良い方向へ導いたと聞いているよ」
彼は、私の言葉を、笑顔で受け流す。
探るような視線が、ちくり、と私の心を刺した。
(レオン様のことも、知ってるんだ……)
やっぱり、この人はただの臨時講師じゃない。
目的は、私? それとも、レオン様?
(落ち着いて、私。ここで怯んだら、相手の思うツボだ)
私は、きゅっと拳を握りしめ、続けた。
「私の魔法は、誰かをちょっとだけ元気にしたり、笑顔にしたりするための、ささやかなものです。研究だなんて、そんな大げさなものには、とてもとても」
そう。
私の魔法は、人を傷つけるためにも、誰かの野心のために利用されるためにもない。
これは、私の、そして、おばあちゃんの大切な誇りなんだから。
「ですから、先生のお申し出は、すごく嬉しいんですけど……ごめんなさい。私、この実習室で、みんなのために、ささやかなお菓子を作っているのが、一番幸せなんです」
断固として、でも、あくまで柔らかく。
私のその答えに、セバスチャン先生は、一瞬だけ、ぴくりと眉を動かした。
ほんの一瞬だけ、その笑顔の仮面の下から、冷たい苛立ちのようなものが覗いた気がした。
でも、すぐに彼は、またいつもの完璧な笑顔に戻っていた。
「……そうか。それは、残念だな」
彼は、心から残念だというように、肩をすくめてみせる。
「だが、君の意思は尊重しよう。無理強いはしないよ」
「ありがとうございます……!」
「もし、気が変わったら、いつでも声をかけてくれたまえ。私は、いつでも君を歓迎するよ」
そう言い残して、彼は優雅に一礼すると、静かに実習室から出ていった。
パタン、とドアが閉まる。
その瞬間、私は、張り詰めていた糸が切れたように、その場にへなへなと座り込んでしまった。
「はぁ……はぁ……」
心臓が、バクバクと音を立てて、うるさい。
(怖かった……)
あの瞳。
間違いない。
あの夜会で見た、アルビオン公爵と同じ、闇の色。
一体、何が起こっているの?
レオン様は、今、大丈夫なんだろうか。
言いようのない不安が、黒い霧みたいに、私の心に立ち込めてきた。
*
「――で、そのセバスチャンとかいう先生が、やけにしつこく、いちごに付きまとってくる、と」
「うん……」
あの日以来、私は一人で抱えきれなくなって、親友の桜ちゃんに、思い切って相談してみることにした。
もちろん、レオン様の秘密や、夜会のことまでは話せない。
ただ、「新しく来た先生が、私の作るお菓子にすごく興味を持ってるみたいで、ちょっと怖いんだ」とだけ。
私の話を聞いた桜ちゃんは、いつものお調子者の顔から一変、キリリと真剣な表情になっていた。
「ふむ……それは、怪しいわね」
「やっぱり、そう思う?」
「思う思う! 大体、臨時講師なんて、経歴が怪しいに決まってるんだから!」
桜ちゃんは、ぐっと胸を張って、名探偵みたいに言った。
「よし! いちごは、どーんと構えてなさい! この桜ちゃんが、その胡散臭い先生の正体、丸裸にしてやろうじゃないの!」
「え、ええ!? でも、危ないよ……!」
「だーいじょうぶ! 私の人脈、なめないでよね!」
桜ちゃんは、ウインクしてみせると、早速どこかへ駆け出していってしまった。
彼女のその有り余るほどの明るさと行動力が、今はすごく、すごく、心強かった。
それから数日間、桜ちゃんは本当に、学園中を駆け回って、セバスチャン先生の情報を集めてくれた。
魔法科の上級生に話を聞いたり、先生たちの噂話に聞き耳を立てたり。
そして、わかったことは、あまりにも意外なものだった。
「……ダメだ、いちご。あの先生、あまりにもクリーンすぎる」
放課後の教室で、桜ちゃんは、がっくりと肩を落としていた。
「どこの名門貴族の出身でもなく、でも、魔法の腕は超一流。過去に勤めていた学園での評判も、非の打ち所がないくらい完璧。おまけに、独身で、趣味は詩を読むこと……。怪しいところが、一つも、ない」
「そんな……」
「完璧すぎるのよ。それが、逆に、一番怪しい!」
桜ちゃんは、そう言って悔しそうに机を叩いた。
私も、同じ気持ちだった。
用意されたみたいに完璧な経歴。
それは、まるで、本当の自分を隠すための、巧妙な鎧みたいに思えた。
募る不安に、私は、とうとう、彼に連絡を取ることにした。
レオン様から渡された、あの魔法の連絡用メモ。
机に向かい、インク壺にペンを浸す。
(なんて書こう……)
『助けて』
そう、書きそうになって、私は、寸前のところでペンを止めた。
(ダメだ……)
脳裏に、彼の真剣な顔が浮かぶ。
『俺は、戦わなければならない』
彼は今、たった一人で、私には想像もつかないような大きなものと戦っているんだ。
家のこと、王宮のこと……。
そんな彼に、私の個人的な不安で、余計な心配をかけちゃいけない。
私は、彼の足手まといにだけは、なりたくなかった。
ぎゅっと唇を噛み、私は、書こうとした言葉を消した。
そして、代わりに、こう綴った。
『レオン様。お元気ですか? 私は毎日、あなたのことを考えて、新しいお菓子を作っています。だから、心配しないでくださいね』
健気な、いい子だと思われたかったのかもしれない。
ペンを置いた途端、じわりと涙が滲んできた。
しばらくすると、メモの文字が、すうっと消え、代わりに、彼の返事が浮かび上がってきた。
『無事だ。心配するな。菓子、楽しみにしている』
たった、それだけ。
いつもと同じ、短くて、ぶっきらぼうな返事。
その文字を見て、少しだけ、胸がちくりと痛んだ。
(……忙しいんだよね。きっと)
わかっているのに、ほんの少しだけ、寂しいと思ってしまう自分が、嫌だった。
私は、そのメモを大切に折り畳むと、ぎゅっと握りしめた。
大丈夫。彼を信じよう。
そして私は、私のできることを、精一杯やろう。
そう決めて、私は再び、新しいお菓子作りに没頭することにした。
セバスチャン先生のことも、少しだけ頭の隅に追いやって。
それが、敵の思う壺だとも知らずに。
*
異変が起こり始めたのは、その数日後のことだった。
学園内で、生徒の魔力が、突然、制御できなくなるという事件が、頻発し始めたのだ。
「きゃあああ! 魔法陣が暴走する!」
「だめだ、呪文が止まらない!」
授業中に、魔法科の生徒たちが、次々とパニックに陥る。
幸い、すぐに他の先生たちが取り押さえるため、大きな怪我人は出ていない。
でも、学園内には、じわじわと不穏な空気が広がり始めていた。
そして、そんな奇妙な事件には、一つの、不気味な共通点があった。
魔力を暴走させた生徒たちが、みんな、口を揃えてこう言ったのだ。
「――天野さんの作った、お菓子を食べてから、なんだか体の調子が……」
その噂は、あっという間に学園中に広まった。
この前まで、私のお菓子を「ありがとう」と笑顔で受け取ってくれていた生徒たちが、今では、怯えたような、疑うような目で、私を遠巻きに見ている。
「そんな……嘘だ……」
私は、実習室で、一人、呆然と立ち尽くしていた。
私が作ったのは、みんなが元気になるように、笑顔になるように、心を込めて作った、ただの優しいお菓子のはずだ。
そんなものが、人の魔力を狂わせるなんて、絶対に、ありえない。
でも、現実に、事件は起こっている。
私のせいなの?
私が、何か、間違えちゃったの?
自信が、音を立てて崩れていく。
そして、運命の日。
私のいた製菓科の実習室のドアが、勢いよく開け放たれた。
そこに立っていたのは、学園長を始めとする、調査団の先生たち。
そして、その中に、なぜか、セバスチャン先生も混じっていた。
彼は、私を見ると、とても、とても、悲しそうな顔をした。
「……残念ですが、原因は特定できました」
セバスチャン先生は、調査団が連れてきた、魔力が暴走してぐったりとしている生徒を指さした。
「原因は、彼女です」
その指は、まっすぐに、私を指していた。
「天野いちごさんの作る魔法菓子が、生徒たちの魔力を、内側から狂わせているのです」
え……?
私が……?
何を、言っているの……?
周りの先生たちが、冷たい、厳しい目で私を見る。
信じてくれていたはずの、製菓科の仲間たちでさえ、不安そうな顔で私を見ている。
違う。
私じゃない。
私は、そんなこと、絶対にしない。
声にならない叫びが、喉の奥で詰まる。
セバスチャン先生の瞳の奥が、あの闇の色で、満足そうに、にやりと歪んだように見えた。
ああ、そうか。
これは、罠なんだ。
私を、そして、レオン様を、貶めるための、巧妙に仕組まれた――。
でも、私の声は、誰にも届かない。
私はたった一人、立ち尽くすことしかできなかった。
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