サハギンに転生した俺、最弱から進化して海の覇王になりました

☆ほしい

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第39話

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血に濁った水の中で、まだわずかに動ける個体が数匹いた。
そいつらは必死に水をかき分け、なんとか逃げ出そうと足掻いていた。

「た、助け──誰か助けてくれ!」

「嫌だ、嫌だ、殺される……!」

「なぜだ、なぜこんなことに……!」

(うるさい)

俺は追撃を仕掛けた。
水流支配で作り出した渦の力をさらに強め、逃げるモンスターたちを強引に引き戻す。

「や、やめろぉおおお!!」

「許して、許してくれぇえええ!」

断末魔を上げる声を無視して、牙を突き立てる。
肉を裂き、骨を砕き、血をすすった。

「う、うわああああああ!!」

一匹、また一匹と絶命していく。
抵抗する個体もいたが、今の俺に抗える存在ではなかった。

「くそっ……! こんなやつに……!」

「俺たちは……負けるわけには……!」

あがく声も空しく、命の灯火はひとつ、またひとつと消えていった。

(弱い)

それが、すべてだった。

捕食本能が暴走を続ける。
喰らえば喰らうほど、俺の中で力が膨れ上がる。

【経験値を獲得しました】
【筋力が上昇しました】
【敏捷が上昇しました】
【耐久が上昇しました】

身体がさらに進化していくのを感じる。

「バケモノだ……」

「もう駄目だ……終わりだ……」

「あいつは……海の破壊者だ……!」

絶望の呟きだけが水中にこだまする。
だが、それもすぐに消えた。

全滅だった。

この海域に俺に刃向かう者はいなくなった。

感知スキルを全開にしても、敵意を持つ気配は一つもない。

全員、屈服していた。
あるいは死んだ。

(これで……この海域は、俺のものだ)

それでも、満たされない。

強者を喰らいたい。
さらなる高みへ登りたい。

俺は水を蹴って進みながら、感知範囲をさらに広げた。

すると、遠方から別格の気配が届いた。

重く、鋭く、禍々しい。

(……いいな)

俺は迷わずその方向へ進んだ。

海の奥深くへ。
より暗く、より重い圧力がかかる深海層へ。

水温が急激に下がる。
水圧が骨を軋ませる。

だが、俺は進み続けた。

「……ここから先は、死の領域だぞ」

突然、水中に声が響いた。

「誰であろうと、生半可な存在は生きては帰れん……!」

(知ったことか)

俺は進む。
止まらない。

声の主が姿を現した。

それは巨大な甲殻類だった。

【アビスシェルロード】
【レベル:38】
【特徴:超耐久、超重量、高圧攻撃】

「貴様……なぜ、ここへ来た?」

(喰らいに来た)

言葉などいらない。
俺の牙がすべてを語る。

「……よかろう」

アビスシェルロードはその巨体を震わせ、戦闘態勢に入った。

「この深海の主たる我を打ち倒せるか、試してみるがいい!」

(試すまでもねえ)

俺は爆発的な加速で一気に間合いを詰めた。

高速遊泳、水流支配、血潮の加護──
すべてを駆使して、アビスシェルロードに飛びかかる。

「ほう……面白い!」

巨爪が振り下ろされる。

避ける。
渦潮掌握で水流を乱し、爪の軌道をずらす。

(遅い)

瞬時に懐に入り、鋭く牙を突き立てた。

だが、アビスシェルロードの殻は並大抵の硬度ではなかった。

ガギン!と嫌な音が響く。
牙がわずかに弾かれた。

「通じぬ!」

(なら、削るだけだ)

俺は渾身の力で引き裂いた。
一度で無理なら、十度、百度、千度。

叩き続ければ必ず砕ける。

「ぐぅっ……!」

巨爪を振るい、俺を叩き落とそうとする。
だが、感知スキルがすべてを読んでいる。

動きが重い。
攻撃範囲が狭い。

巨大な身体に甘えた鈍重な動き──
そんなもの、俺には通じない。

俺は高速で泳ぎ回りながら、隙を見つけては牙を突き立てた。

「この程度で……!」

(焦ってる)

わずかに表面にひびが入ったのを見逃さない。

そこを狙う。
集中的に。

ひたすらに。

「ぐおおおおお!!」

咆哮と共に、アビスシェルロードが水流を巻き起こす。

だが、そんなもの、俺には通じない。

水流支配を上書きする。

俺の水流が、相手の水流をねじ伏せた。

(終わりだ)

俺は一気に加速し、ひび割れた部分へ牙を突き刺した。

砕ける。
殻が弾け飛び、内部の柔らかな肉が露出する。

「ぐ、うぅぅ……!」

悲鳴を上げる巨体に、俺はためらわず喰らいついた。

肉を裂き、血をすすり、骨を砕く。

「がああああああ!!」
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