追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

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第33話

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 未来記念塔の最上階へと向かう途中、わたくしはゴーグルを額に押し上げ、周囲の状況を確かめましたの。

 「リゼ、査察団の動きは?」

 「各班、今のところ異常なしです! 施設ごとの案内も順調です!」

 「よろしいですわ。監視魔具の解析データは逐一送信なさい」

 「了解ですっ!」

 わたくしは満足げに頷き、さらに階段を昇りましたの。外の眺めは絶景。広がるアウローラの街並みが、魔導の光で美しく彩られておりますわ。

 「お嬢様、浮遊広告塔の運行制御班から連絡です! 査察団のルート上、すべての広告表示を“未来都市アウローラへようこそ”に統一しました!」

 「上出来ですわ」

 リゼが得意そうに胸を張りましたの。

 わたくしは未来記念塔の展望フロアへ出ましたの。そこは全面ガラス張り、外を一望できる魔導強化ガラスで覆われておりましたの。

 「見渡しなさい、リゼ。これがわたくしたちの築いた世界ですわ」

 「……はいっ!」

 感極まった様子のリゼが、小さく拳を握り締めておりましたの。

 けれど、そのとき通信魔具が震えましたの。

 「お嬢様、緊急連絡です! 査察班の一部が進路を逸脱しました!」

 「ほう?」

 わたくしはすぐに作戦卓にアクセスし、状況を確認しましたの。

 「リゼ、解析データを映しなさい」

 「了解!」

 視界に浮かび上がったのは、査察団第二班――副査察官クロードを含む一隊が、予定外のルートへ進んでいる様子でしたの。

 「ふふ、好奇心旺盛なことですわ」

 「ど、どうしますか? 追い返しましょうか?」

 「いいえ。案内人のふりをして誘導なさい。あえて見せてもよろしい場所へ」

 「了解しました!」

 わたくしは未来記念塔の中央に設けたコントロールルームへ入りましたの。ここでは、特区全域のリアルタイム監視と指示が可能となっておりますわ。

 「第二班の動線、緊急再設定。リゼ、彼らを第七研究棟へ誘導しなさい」

 「第七研究棟……? あそこなら……!」

 「ええ、未来型医療魔導技術の展示区域ですわ。むしろ見せびらかして差し上げますわ」

 リゼが即座に伝令を飛ばしましたの。

 「第七研究棟、受け入れ準備完了しました!」

 「よろしいですわ。案内班、予定通り動かせ」

 「了解!」

 査察団の逸脱行動も、完全に掌握下ですわ。わたくしは優雅に椅子に腰掛け、視界に映る全特区の状況を眺めましたの。

 「査察官リュミエール本隊、予定ルート継続中。第二班誘導完了。第三班、未来記念塔に向かって進行中」

 リゼの報告がテンポよく続きます。

 「いい流れですわ。第三班の到着に合わせて、式典開始のタイミングを合わせなさい」

 「了解しました!」

 わたくしは唇に微笑を浮かべながら、空中花火魔具の最終チェックに取り掛かりましたの。

 「リゼ、式典開幕花火、特別仕様に切り替えなさい。“アウローラ・スペシャル・イリュージョンモード”で」

 「ええっ!? あれはまだ……!」

 「問題ありませんわ。わたくしが承認いたしますもの」

 「りょ、了解ですっ!」

 リゼがてんやわんやしながら指示を飛ばす中、わたくしは通信ラインを切り替えましたの。

 「広場管制班、タイミングを合わせて魔導演出開始。楽団班、演奏開始三分前待機」

 「管制班、了解!」

 「楽団班、了解!」

 わたくしは軽くゴーグルを直し、未来記念塔のバルコニーへ歩み出ましたの。

 目の前には、広大な広場と、集まった市民たち、そして続々と到着する査察団の面々。

 「リゼ、式典開幕準備は?」

 「全班、配置完了です! いつでも始められます!」

 「よろしいですわ」

 空を見上げると、今まさに夕暮れから夜へと移り変わる刹那。

 これ以上ない演出効果ですわ。

 わたくしは片手を高く掲げ、魔導指令を発しましたの。

 「式典、開幕ですわ!」

 次の瞬間、広場中に光の柱が立ち上がり、魔導楽団の壮大な演奏が鳴り響きましたの。

 空に舞い上がる特製花火群。金、銀、翠、紅――無数の光が夜空を裂き、未来都市アウローラの名を天に刻みましたの。

 「お嬢様! 世界各国からの通信接続申請が殺到しています!」

 「ふふ、当然ですわ」

 わたくしはバルコニーから手を振り、群衆と査察官たちに向けて、堂々と笑みを浮かべましたの。
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