追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第43話

　わたくしは未来記念塔の制御卓に戻り、広域防衛モードへの移行手続きを開始しましたの。

　「リゼ、防衛網モジュール、全ユニット起動なさい」

　「了解しました！　《アウローラ・シールド》展開、全域対応完了！」

　広場にいた市民たちは、頭上に現れた透き通った光のドームを見上げ、歓声と驚嘆の声を上げましたの。

　「な、なんだ……！」

　「防御結界……こんなに巨大なものが……！」

　リュミエールが唇を引き結びながら訊ねてきましたの。

　「これが……アウローラの防衛力か」

　「ええ、これが未来都市群を守る最後の砦、《アウローラ・シールド》でございますわ」

　わたくしはゴーグルを押し上げながら余裕の笑みを浮かべましたの。

　「リゼ、迎撃部隊の配置状況を報告なさい」

　「はいっ！　第一防衛線、重装魔導兵装部隊配置完了！　第二防衛線、機動迎撃部隊待機中！　第三防衛線、市街地防衛用自律兵器、展開完了！」

　「結構ですわ。敵軍の進行速度は？」

　「予想よりやや早いです！　三時間後には特区境界線に到達すると推測されます！」

　「面白いですわね」

　わたくしは冷ややかに笑いながら、敵軍の進行ルートをモニターに映し出しましたの。

　「防衛戦術パターン・オプションDを展開しなさい。“徹底抗戦型”で迎撃いたしますわ」

　「了解です！」

　リゼが指を走らせ、各部隊に指令を飛ばしましたの。

　「敵軍の戦力規模は三万、しかし、アウローラの総防衛力は十万規模に相当しますわ」

　リュミエールが目を剥いて呟きましたの。

　「十万規模……？　この都市一つで、そんな……！」

　「当然ですわ。人間兵士だけで考えるなど、時代遅れにもほどがありますもの」

　わたくしは指を弾き、ホログラムに無数の自律兵器と防衛魔導システムを展開しましたの。

　「わたくしたちは、“面白い未来”を守るため、旧時代の亡霊など蹴散らして差し上げますわ」

　リゼがさらに詳細な報告を続けましたの。

　「敵軍の主力は、従来型魔導兵と機械化歩兵！　一部に重装砲兵部隊と見られる大規模魔導兵器を確認！」

　「砲兵部隊の位置情報を優先的にマークなさい。まずは頭を叩きますわ」

　「了解しました！」

　リゼが操作を続ける間に、わたくしは制御卓から個別作戦プランを起動しましたの。

　「リゼ、広域戦術支援システム《ヴァルハラ》、起動なさい」

　「《ヴァルハラ》、起動開始します！」

　未来記念塔上空に、巨大な魔導演算陣が展開され、アウローラ全体に戦術支援ネットワークが張り巡らされましたの。

　「これより、全戦場を一元管理し、敵の一手先を制圧いたしますわ」

　「通信班、前線各部隊にリアルタイム支援開始！」

　「情報班、敵軍布陣の逐次解析を続行！」

　「工兵隊、後方補給路の確保と維持作業に入れ！」

　リゼが矢継ぎ早に命令を飛ばし、わたくしはそのすべてを掌握して指揮しましたの。

　「リゼ、特区市民に向けて避難指示を出しておきなさい。不要な混乱を避けるためですわ」

　「はいっ！」

　わたくしは、広場を見下ろしましたの。市民たちは不安を抱えつつも、わたくしの存在を信じる瞳でこちらを見上げておりましたの。

　「わたくしが守りますわ。どんな相手だろうと、未来を渡すつもりなど一切ありませんもの」

　わたくしは未来記念塔から、堂々と、そして鮮烈に宣言しましたの。

　「未来都市群連合、第一防衛戦闘、開始ですわ！」