追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

第44話

　未来記念塔から全戦線の状況を掌握しながら、わたくしは攻勢への移行タイミングを見計らっておりましたの。

　「リゼ、敵軍の先鋒部隊、到達予想時間は？」

　「現在の進行速度なら、あと一時間です！」

　「それまでに第一防衛線の布陣を完全に仕上げますわよ」

　「了解しました！」

　広域戦術支援システム《ヴァルハラ》の制御下で、わたくしの防衛網は着実に強化されていきましたの。敵軍の動きに合わせ、迎撃拠点、砲撃支援網、魔導障壁、それぞれの配備が完了していく様は、まるで芸術作品のようでございましたわ。

　リゼが追加報告を持ってきましたの。

　「お嬢様、敵軍の背後からさらに二千規模の増援部隊が接近中との情報が！」

　「ふふ、愚かですわ。数だけで勝てると思っているところが、まさに旧時代の発想ですもの」

　わたくしは悠然と微笑み、広域マップ上に展開される敵軍の配置を指でなぞりましたの。

　「リゼ、増援部隊には機動迎撃部隊を回しなさい。敵の背後から制圧いたしますわ」

　「了解しました！」

　わたくしは重ねて命じましたの。

　「主力迎撃戦闘は、あくまで第一防衛線で行いますわ。絶対に市街地に到達させてはなりません」

　「はいっ！」

　リゼが応答し、前線指揮班にも指示が次々に飛んでいきましたの。

　未来都市群の中心たるアウローラ、その矜持を賭けた戦いが、いよいよ幕を開けようとしておりましたの。

　「リゼ、前線の魔導砲台起動率を確認なさい」

　「起動率、九十八パーセント！　残り二基、最終調整中です！」

　「許容範囲ですわ。起動可能なものから順次照準合わせを開始なさい」

　「了解しました！」

　わたくしは一歩、制御卓から身を乗り出しましたの。敵軍の先鋒部隊が、もう目前に迫ってきておりましたの。

　リゼが緊迫した声で叫びましたの。

　「お嬢様、敵軍、視界に入りました！」

　「砲台第一射、解禁ですわ！」

　未来記念塔の指示に従い、第一防衛線の魔導砲台群が一斉に火を噴きましたの。白銀に輝く魔導砲弾が一直線に走り、敵軍の先頭列を叩き潰していきましたの。

　「命中率、七十パーセント超！　先鋒部隊、半数以上壊滅！」

　「ふふ、当然ですわね」

　わたくしはさらに冷ややかに指示を飛ばしましたの。

　「続いて地上迎撃部隊、展開なさい。機動戦で敵を引き裂きなさいませ」

　「了解です！」

　防衛線から飛び出した高速機動魔導兵器部隊が、疾風のように敵軍へと突撃しましたの。機動力と火力を兼ね備えた特区兵たちは、まさに一騎当千の勢いで敵陣を蹂躙していきましたの。

　「お嬢様、敵軍指揮系統に混乱発生！　中央指揮陣、後退を開始！」

　「指揮官を潰すのが定石ですわ。狙いなさい」

　リゼが即座に命令を転送し、狙撃班が敵指揮官を次々と排除していきましたの。

　「敵中央部、壊滅状態に移行中！」

　「素晴らしいですわ。追撃を許可いたします」

　わたくしは悠然と命じ、次なる手を講じましたの。

　「リゼ、増援部隊への迎撃タイミングは？」

　「あと二十七分で交戦可能距離に到達します！」

　「機動迎撃部隊を増援部隊背後に回り込ませなさい。包囲殲滅戦に持ち込みますわ」

　「了解しました！」

　敵軍の戦力は、数だけの張り子の虎。わたくしたちアウローラの未来を脅かすには、あまりにも力不足でしたの。

　わたくしは更に制御卓を操作し、全戦線に通達を流しましたの。

　「未来都市群の市民たちよ、安心なさいませ。わたくしが、この未来を護り抜きますわ！」