追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

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第60話

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 リゼが慌ただしく報告に戻ってきましたの。

 「お嬢様! 第三防衛層の一部に異常反応を検知しました!」

 「座標を示しなさい」

 即座にホログラムマップへデータが展開されましたの。中央地区、工業プラント群に小規模ながら高エネルギーシグナル。

 「……これは」

 わたくしはすぐに推察いたしましたの。

 「自爆型侵攻兵器。無人突入ユニット、ですね?」

 リゼが顔色を変えましたの。

 「どうして……! 都市内部に持ち込まれていたんですか!?」

 「ふふ、予測範囲内ですわ」

 わたくしは悠然と微笑みましたの。内部からの撹乱――つまり、外からの攻撃だけでは勝てぬと見たクロノス機関が、工作員を潜伏させたに違いありませんわ。

 「リゼ、即時都市警戒モード《オーバーロード》を起動。対象エリアを封鎖、掃討プロトコルを発動なさい」

 「了解です!」

 全都市網に警報が鳴り響き、警備ゴーレム部隊が展開を始めましたの。あの自爆ユニット、起爆させれば甚大な損害は免れませんわ。しかし。

 「起爆させる前に、殲滅いたしますわ」

 それがわたくしの設計した、完璧な都市防衛網《オーバーロード》ですもの。

 リゼが通信モニターを操作しながら叫びましたの。

 「排除部隊、接触開始! 敵は自爆準備を……!」

 「切り替えなさい。EMP投射モードへ」

 「はっ!」

 わたくしの指示で、警備ゴーレム群の腕部ユニットから青白い閃光が迸りましたの。電子機器破壊用の局所EMPパルスですわ。

 次の瞬間、異常反応源が次々と沈黙していきましたの。

 「敵無力化、完了!」

 「当然の結果ですわ」

 ただ、これで終わりではありませんわ。敵は必ず、更なる手を打ってきますもの。

 「リゼ、全防衛網の再起動。特にエネルギー遮断モードと対魔導妨害フィールドを強化なさい」

 「了解しました!」

 そしてわたくしは、更なる安全策を指示しましたの。

 「都市住民には、地下避難区画への退避を命じなさい。避難完了まで、優先ルートの防衛を徹底すること」

 「はいっ!」

 クロノス機関がここまで執念深いとは。思わずわたくし、胸が高鳴りましたの。

 「ふふ、面白いですわね。もっともっと、仕掛けてきなさいな」

 そうこうしている間にも、第二波の正面衝突が近づいてきましたの。

 「お嬢様、第二波侵攻隊、接触まであと三十秒!」

 「迎撃陣形、緊急モードへ移行。全エネルギー出力、最大化」

 「了解!」

 端末上で赤く染まるインジケーター。それでもわたくしは、微笑みを崩しませんでしたの。

 来なさい。わたくしの未来を、試してみるがいい。

 そして――第二波、接触。

 「魔導障壁、耐久率八十三パーセント!」

 「よろしいですわ。そのまま押し返しなさい」

 防衛砲台群が一斉に火を噴き、敵侵攻ユニットをなぎ払いましたの。しかし、今度の敵はただの量産機ではございませんでしたの。

 「お嬢様、敵機、変形開始! 地形適応型モジュール搭載機です!」

 「ふふ……進化したつもりかしら? だが、わたくしの進化速度には遠く及びませんわ」

 わたくしはすぐさま新たな作戦を発動いたしましたの。

 「リゼ、対象座標に《ゼロポイント・コンバージョンフィールド》を展開なさい!」

 「はいっ!」

 未来都市の中枢制御装置《アウローラ・ハート》が唸りを上げ、対象区域に重力歪曲フィールドが生成されましたの。

 重力の力場に捕らわれた敵機群は、動きを奪われ、無様に地面へ叩き落とされていきましたの。

 「ふふ、重力すらも操れるわたくしに、あなたたちが敵うと思って?」

 リゼが歓声を上げましたの。

 「敵機、九割以上撃破! 残存敵機、撤退モードに移行しています!」

 「許しませんわ。全追撃モードに移行。撃ち漏らしは一機たりとも許可しません」

 「了解です!」

 わたくしの命令に従い、都市防衛網は獣のごとく動き出しましたの。

 追撃、捕縛、殲滅。

 未来を汚す存在など、このアウローラには一片たりとも残しませんわ。
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