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ギルドの受付カウンターで、俺は新しい依頼を受けることにした。
目的は月見草の採取だ。
俺は自分の名前を、台帳に記入してもらう。
「はいよ、『月見草の採取』だな。」
受付の男は、俺の顔を覚えていたらしい。
「あんた、さっき陽光草をどっさり持ち込んできた兄さんだよな。」
さっきまでの無愛想な態度は、どこかへ消えている。
少しだけ親しげな口調で、男は話しかけてきた。
「金貨20枚も稼いだっていうのに、またすぐに依頼かい。」
彼は少し呆れたように、そう言った。
「しかも、ゴブリン討伐より報酬の安い薬草採取とはね。」
働き者なんだな、と彼は続けた。
金が人間を変えるのか、それとも俺の実力を認めたのか。
どちらにしても、悪い気分はしなかった。
「まあ、駆け出しなんでね。」
俺は当たり障りのない返事を返す。
「地道に実績を、積んでいこうかと思ってます。」
本当の目的は違う。
月見草の近くにあるという、星屑の結晶だ。
そんなことを口に出すほど、俺はお人好しではない。
「そうかい、まあ頑張りな。」
男は激励の言葉をくれた。
「月見草はラトス南の森で見つかるはずだ、気をつけてな。」
その言葉を受け、俺はギルドを後にした。
懐には金貨20枚と、銀貨数枚がずっしりと収まっている。
まずは、この心許ない装備を何とかしなければならない。
今の俺の格好はひどいものだ。
旅の途中で着古したような、ただの布の服を着ている。
腰に提げたポーチは、空っぽで頼りない。
これでは森に入る前から、なめられてしまうだろう。
俺は街の大通りを歩いた。
武器や防具を扱う店を、探すためだ。
石畳の通りには、冒険者たちの活気ある声が響く。
荷馬車の車輪が立てる音も、にぎやかだった。
香ばしい焼き肉の匂いと、家畜の匂いが混じり合う。
いかにも辺境の街らしい、独特の空気が漂っていた。
すぐに一軒の武具屋が、俺の目に入った。
オークの顔をかたどった、ごつい看板が掲げられている。
「いらっしゃい、何を探してるんだ兄さん。」
店に一歩足を踏み入れると、店の奥から店主が顔を出した。
熊のように大きな体の男だ。
筋肉もりもりの腕に、見事な髭をたくわえている。
いかにもな職人といった、雰囲気の人物だった。
店内には鉄と油の匂いが、強く満ちている。
「冒険者になったばかりで、一通りの装備を揃えたいんです。」
俺は正直に伝えた。
「何かいいものは、ありますか。」
「ほう、新米か、いいだろう。」
店主は豪快に笑った。
「何でも見ていきな、予算はどれくらいだ。」
「金貨で、5枚くらいまでなら。」
俺がそう言うと、店主の目がわずかに見開かれた。
新米冒見者の初期予算としては、かなり大きな金額だったのだろう。
「そいつはすごいな、よし。」
店主は満足そうに頷いた。
「それだけあれば、そこそこの品が揃えられるぜ。」
まずは武器だな、と彼は言った。
「剣か、槍か、斧か。」
何を使うんだ、と店主は尋ねる。
「短剣を探してます、扱いやすそうなものを。」
「短剣か、なるほどな。」
店主は顎髭をなでながら、壁に掛けられた短剣を指し示した。
「こいつなら鉄製で頑丈だ、銀貨8枚。」
彼は一本の短剣を手に取る。
「こっちの鋼製なら切れ味もいい、銀貨15枚だ。」
まあ新米なら、鉄製で十分だろうがなと彼は言った。
勧められるままに、俺は鉄製の短剣を手に取ってみた。
ずしりとした重みが、腕に伝わる。
悪くはない感触だ。
だが、俺には【神の眼】がある。
俺は店内に並べられた、無数の武具に意識を集中させた。
すると視界に、膨大な量の情報が流れ込んでくる。
『名称は鉄の短剣、品質は並だ。』
『名称は鋼の短剣、品質は良だ。』
『名称はブロードソード、品質は並だ。』
次々と鑑定結果が、脳裏をよぎっていく。
ほとんどは見た目通りの、特に変わった点のない武具だった。
だが、俺は諦めずに鑑定を続けた。
そして、店の隅で埃をかぶっていた短剣に、目が留まった。
それは一本の、とても地味な短剣だった。
【真名】ミスリルダガー
【種別】魔法武器
【情報】刀身に希少金属ミスリルが、わずかに含まれている失敗作。本来であれば高い強度と、魔力伝導率を誇るはずだった。しかし鍛冶師の腕が悪く、その特性をほとんど引き出せていない。素材そのものの価値は高く、目利きの職人が打ち直せば一級品に生まれ変わる可能性を秘めている。現状の切れ味は、鋼の短剣に劣る。
【価値】銀貨20枚相当(打ち直し後は金貨15枚以上)
「……これだ。」
俺は心の中で、小さく呟いた。
とんでもない掘り出し物を、見つけた。
見た目はただの、古びた短剣にしか見えない。
だからこそ、こんな場所に放置されているのだろう。
「店主さん、あれは。」
俺が隅の短剣を指さすと、店主は不思議そうな顔をした。
「ん、あああれか。」
彼は面倒そうに言った。
「そいつはダメだ、何年も前に流れの鍛冶師が置いていったもんだ。」
ナマクラでな、と彼は付け加える。
「研いでもすぐに刃こぼれしちまう、売り物にはならねえよ。」
「そうですか、でも何だか気になりますね。」
俺は食い下がった。
「これを売ってもらうことは、できませんか。」
「本気で言ってるのか、やめとけって。」
店主は心底、不思議そうだ。
「そんなもんより、こっちの鋼の短剣の方がよっぽど役に立つぜ。」
この反応は、むしろ好都合だ。
「いえ、これがいいんです。」
俺は自分の意思を貫いた。
「これでゴブリンでも叩いて、使い方を覚えようかと。」
いくらですか、と俺は尋ねた。
「いくらって言われてもなあ、よし分かった。」
店主は少し考え込んだ。
「そんなに気に入ったんなら、銀貨3枚でいい。」
持っていきな、と彼は言った。
俺は内心で、ガッツポーズをした。
鋼の短剣の五分の一の値段で、すごい武器を手に入れたのだ。
将来は金貨15枚以上の、価値を持つ武器になる。
「次は鎧ですね、動きやすい革鎧がいいんですが。」
「おう、それならこっちだ。」
店主は店の奥から、いくつかの革鎧を持ってきた。
どれも丁寧な作りで、品質は悪くなさそうだ。
「こいつは硬化させたレザーを使った、ハードレザーアーマーだ。」
防御力はそこそこある、金貨1枚だと言った。
俺は再び、【神の眼】を発動させる。
するとその中に一つだけ、他とは違う情報を持つ鎧があった。
【真名】サラマンダーの革鎧
【種別】魔法防具
【情報】火トカゲの革をなめして作られた逸品。非常に高い火耐性を持つ。製作した職人は素材の正体に気づいていない。ただの頑丈なトカゲの革だと思い加工したため、安価で取引されている。目立った装飾もなく、見た目は普通の革鎧と変わらない。
【価値】金貨10枚相当
これも当たりだ。
火を吐くモンスターと戦う際には、絶大な効果を発揮するだろう。
「じゃあ、これでお願いします。」
俺は迷わず、その革鎧を指さした。
「よしきた、毎度あり。」
店主はにこやかに言った。
「じゃあ、鎧が金貨1枚で短剣が銀貨3枚だな。」
彼は少し心配そうに、付け加えた。
「兄さん、本当にその短剣でいいのか。」
「ええ、構いません。」
俺は代金を支払い、新しい装備を受け取った。
店主は最後まで首を傾げていたが、俺の心は高揚感で満ちていた。
武具屋を出た俺は、次に隣の道具屋へ向かった。
冒険にはポーションや解毒薬、ロープや松明なども必要だ。
ここでも俺の、【神の眼】が活躍した。
一見すると同じように見える、ポーションの瓶の中から選ぶ。
薬草の配合比率が絶妙で、通常よりも回復効果が高いものを見つけ出す。
ロープの束の中から、特別なものを選び出す。
特殊な植物の繊維で編まれており、驚くほどの強度を持つロープだ。
店主は俺の目利きの良さに、すっかり感心していた。
「あんた、本当に新米かい。」
彼は舌を巻いていた。
「ベテランの冒険者でも、そこまで品物は見抜けねえぞ。」
全ての準備を整えた俺は、ラトスの南門から森へと足を踏み入れた。
新しい革鎧は、体にぴったりと馴染んでいる。
腰に差したミスリルダガーは、不思議としっくりきた。
まだその真価を発揮してはいないが、いずれ強力な武器になるだろう。
森の中は薄暗い。
様々な獣や、モンスターの気配がした。
普通の冒険者なら、警戒しながら慎重に進む場面だ。
しかし、俺には【神の眼】がある。
視界の端に、半透明のウィンドウが絶えず情報を更新していく。
『前方50メートル、右の茂みにゴブリン2体。』
弱点は左膝関節と、眉間だと示される。
『左の木の上、枝に毒蛇。』
無害だという、情報も見える。
『この先の地面、深さ1メートルに抜け道。』
小動物用らしい。
全ての情報が、事前に俺の頭の中に流れ込んでくる。
危険は完全に予知され、安全なルートが示された。
これほどの安心感は、Sランクパーティにいた頃ですら感じたことはなかった。
しばらく進むと、茂みから二体のゴブリンが飛び出してきた。
棍棒を振り回しながら、こちらに向かってくる。
「グルルァァ。」
「やっぱりいたか。」
俺は落ち着いて、ミスリルダガーを抜いた。
そして、ゴブリンに向かっていく。
戦闘経験は、ほとんどない。
パーティにいた頃は、常に後方で鑑定に専念していたからだ。
だが、問題はなかった。
『ゴブリンAの行動パターンは、右からの大振りの一撃。』
攻撃後、大きな隙が生まれると表示される。
『ゴブリンBの行動パターンは、Aの攻撃に合わせて死角から回り込もうとする。』
敵の動きが、手に取るように分かる。
俺はゴブリンAの大振りを、軽く身をかがめて避けた。
棍棒が風を切る音が、耳元をかすめる。
がら空きになった左膝を、俺は一閃した。
「ギャッ。」
悲鳴を上げて、ゴブリンAは体勢を崩した。
その眉間に、俺は容赦なく短剣を突き立てる。
返す刀で、回り込んできたゴブリンBの突進をいなした。
そして同じように、左膝を切り裂く。
動きを止められたゴブリンBは、恐怖に顔を引きつらせた。
その命も、俺が正確に眉間を貫いて終わらせた。
戦闘は、ものの数秒で終わった。
Sランクパーティにいた頃は、アレックスたちが一瞬で蹴散らしていた相手だ。
だが、それを自分一人の力で無傷で倒せたという事実が、俺に確かな自信を与えた。
【神の眼】さえあれば、俺は戦えるのだ。
その後も何度かモンスターに遭遇した。
しかし全て弱点と行動パターンを読み切り、危なげなく撃退した。
そして森に入ってから一時間も経たないうちに、俺は目的の場所にたどり着いた。
切り立った崖の下。
そこに、月見草が群生していた。
月光を浴びると、青白く光るという薬草だ。
これで、依頼は達成だ。
俺は背負っていた袋に、依頼達成に必要な分だけの月見草を摘み取る。
だが、俺の目的はこれだけではない。
俺は改めて、周囲に【神の眼】を向けた。
『真名は眠り茸、食べると三日間眠り続ける強力な毒キノコ。』
少量なら、麻痺薬の材料になるらしい。
『真名は妖精の涙、夜露が集まってできた雫だ。』
精霊の力が宿っており、触媒として使用できる。
『情報、この岩壁の亀裂の奥に隠された洞窟への入り口が存在する。』
幻術で、巧妙に隠されているようだ。
あった、これだ。
依頼書にあった、隠された洞窟だ。
俺は月見草の群生の近くにあった、岩壁の亀裂に近づいた。
一見すると、ただの亀裂にしか見えない。
手を伸ばすと、何もないはずの空間に奇妙な抵抗を感じる。
まるで、薄い膜のようだ。
これが、幻術か。
俺はためらうことなく、その膜に足を踏み入れた。
視界がぐにゃりと歪む。
次の瞬間、俺は薄暗い洞窟の入り口に立っていた。
ひんやりとした空気が、肌をなでていく。
内部を、【神の眼】で鑑定する。
『情報、洞窟内部は全長約200メートル。』
コウモリやスライムなどの、低級モンスターが生息している。
危険度は、低いと表示された。
『情報、洞窟の最深部の壁面に星屑の結晶の鉱脈あり。』
純度は、中くらいらしい。
当たりだ、俺の口元が自然と緩んだ。
松明に火を灯し、俺は慎重に洞窟の奥へと進んでいく。
壁からは水が滴り、不気味な反響音を生み出していた。
時折現れるモンスターは、森で遭遇したゴブリンと同じように処理した。
弱点を見抜き、瞬時に倒す。
この力は、本当に万能だ。
ダンジョンの罠も、隠された財宝も、モンスターの弱点も全てお見通しだ。
アレックスたちは、俺がこの力のほんの一部しか使えていなかったことを知らない。
俺を追放したことを、今頃後悔しているだろうか。
それとも新しい鑑定士を見つけて、うまくやっているのだろうか。
いや、どうでもいい。
もう、あいつらは関係ない。
俺は思考を振り払い、目の前の道に集中した。
やがて道が開け、広めの空間に出た。
壁の一部が、チラチラと星のように輝いている。
「これか、星屑の結晶。」
それは、岩盤に埋め込まれる形で存在していた。
闇の中で、内側から淡い光を放っている。
魔道具の素材として、高値で取引される希少鉱物だ。
俺は持参したピッケルを構え、早速採掘に取り掛かった。
カン、カン、と硬い音が洞窟に響く。
一つ、また一つと手のひらサイズの結晶が剥がれ落ちていく。
袋がどんどん重くなっていく感覚が、たまらなく心地よかった。
夢中で採掘を続けていた、その時だった。
「誰か、いませんか。」
洞窟の、さらに奥から声が聞こえた。
それは、か細い女性の声だった。
俺はピッケルを持つ手を止め、声がした方をじっと見つめた。
モンスターの、擬態だろうか。
いや、【神の眼】にそんな反応はない。
確かに、人間の声だ。
「助けて、お願い。」
声は、とても切迫している。
どうするべきか。
面倒事に巻き込まれるのは、ごめんだ。
このまま結晶を採掘して、気づかなかったことにして立ち去るか。
それが一番、賢い選択だろう。
だが、声は明らかに助けを求めている。
このまま見捨ててしまえば、きっと後味が悪い。
俺は一つ、ため息をついた。
採掘した星屑の結晶を袋に詰め、口を固く縛る。
そして、ミスリルダガーを抜き放った。
声が聞こえた洞窟の奥へと、足音を忍ばせて向かった。
目的は月見草の採取だ。
俺は自分の名前を、台帳に記入してもらう。
「はいよ、『月見草の採取』だな。」
受付の男は、俺の顔を覚えていたらしい。
「あんた、さっき陽光草をどっさり持ち込んできた兄さんだよな。」
さっきまでの無愛想な態度は、どこかへ消えている。
少しだけ親しげな口調で、男は話しかけてきた。
「金貨20枚も稼いだっていうのに、またすぐに依頼かい。」
彼は少し呆れたように、そう言った。
「しかも、ゴブリン討伐より報酬の安い薬草採取とはね。」
働き者なんだな、と彼は続けた。
金が人間を変えるのか、それとも俺の実力を認めたのか。
どちらにしても、悪い気分はしなかった。
「まあ、駆け出しなんでね。」
俺は当たり障りのない返事を返す。
「地道に実績を、積んでいこうかと思ってます。」
本当の目的は違う。
月見草の近くにあるという、星屑の結晶だ。
そんなことを口に出すほど、俺はお人好しではない。
「そうかい、まあ頑張りな。」
男は激励の言葉をくれた。
「月見草はラトス南の森で見つかるはずだ、気をつけてな。」
その言葉を受け、俺はギルドを後にした。
懐には金貨20枚と、銀貨数枚がずっしりと収まっている。
まずは、この心許ない装備を何とかしなければならない。
今の俺の格好はひどいものだ。
旅の途中で着古したような、ただの布の服を着ている。
腰に提げたポーチは、空っぽで頼りない。
これでは森に入る前から、なめられてしまうだろう。
俺は街の大通りを歩いた。
武器や防具を扱う店を、探すためだ。
石畳の通りには、冒険者たちの活気ある声が響く。
荷馬車の車輪が立てる音も、にぎやかだった。
香ばしい焼き肉の匂いと、家畜の匂いが混じり合う。
いかにも辺境の街らしい、独特の空気が漂っていた。
すぐに一軒の武具屋が、俺の目に入った。
オークの顔をかたどった、ごつい看板が掲げられている。
「いらっしゃい、何を探してるんだ兄さん。」
店に一歩足を踏み入れると、店の奥から店主が顔を出した。
熊のように大きな体の男だ。
筋肉もりもりの腕に、見事な髭をたくわえている。
いかにもな職人といった、雰囲気の人物だった。
店内には鉄と油の匂いが、強く満ちている。
「冒険者になったばかりで、一通りの装備を揃えたいんです。」
俺は正直に伝えた。
「何かいいものは、ありますか。」
「ほう、新米か、いいだろう。」
店主は豪快に笑った。
「何でも見ていきな、予算はどれくらいだ。」
「金貨で、5枚くらいまでなら。」
俺がそう言うと、店主の目がわずかに見開かれた。
新米冒見者の初期予算としては、かなり大きな金額だったのだろう。
「そいつはすごいな、よし。」
店主は満足そうに頷いた。
「それだけあれば、そこそこの品が揃えられるぜ。」
まずは武器だな、と彼は言った。
「剣か、槍か、斧か。」
何を使うんだ、と店主は尋ねる。
「短剣を探してます、扱いやすそうなものを。」
「短剣か、なるほどな。」
店主は顎髭をなでながら、壁に掛けられた短剣を指し示した。
「こいつなら鉄製で頑丈だ、銀貨8枚。」
彼は一本の短剣を手に取る。
「こっちの鋼製なら切れ味もいい、銀貨15枚だ。」
まあ新米なら、鉄製で十分だろうがなと彼は言った。
勧められるままに、俺は鉄製の短剣を手に取ってみた。
ずしりとした重みが、腕に伝わる。
悪くはない感触だ。
だが、俺には【神の眼】がある。
俺は店内に並べられた、無数の武具に意識を集中させた。
すると視界に、膨大な量の情報が流れ込んでくる。
『名称は鉄の短剣、品質は並だ。』
『名称は鋼の短剣、品質は良だ。』
『名称はブロードソード、品質は並だ。』
次々と鑑定結果が、脳裏をよぎっていく。
ほとんどは見た目通りの、特に変わった点のない武具だった。
だが、俺は諦めずに鑑定を続けた。
そして、店の隅で埃をかぶっていた短剣に、目が留まった。
それは一本の、とても地味な短剣だった。
【真名】ミスリルダガー
【種別】魔法武器
【情報】刀身に希少金属ミスリルが、わずかに含まれている失敗作。本来であれば高い強度と、魔力伝導率を誇るはずだった。しかし鍛冶師の腕が悪く、その特性をほとんど引き出せていない。素材そのものの価値は高く、目利きの職人が打ち直せば一級品に生まれ変わる可能性を秘めている。現状の切れ味は、鋼の短剣に劣る。
【価値】銀貨20枚相当(打ち直し後は金貨15枚以上)
「……これだ。」
俺は心の中で、小さく呟いた。
とんでもない掘り出し物を、見つけた。
見た目はただの、古びた短剣にしか見えない。
だからこそ、こんな場所に放置されているのだろう。
「店主さん、あれは。」
俺が隅の短剣を指さすと、店主は不思議そうな顔をした。
「ん、あああれか。」
彼は面倒そうに言った。
「そいつはダメだ、何年も前に流れの鍛冶師が置いていったもんだ。」
ナマクラでな、と彼は付け加える。
「研いでもすぐに刃こぼれしちまう、売り物にはならねえよ。」
「そうですか、でも何だか気になりますね。」
俺は食い下がった。
「これを売ってもらうことは、できませんか。」
「本気で言ってるのか、やめとけって。」
店主は心底、不思議そうだ。
「そんなもんより、こっちの鋼の短剣の方がよっぽど役に立つぜ。」
この反応は、むしろ好都合だ。
「いえ、これがいいんです。」
俺は自分の意思を貫いた。
「これでゴブリンでも叩いて、使い方を覚えようかと。」
いくらですか、と俺は尋ねた。
「いくらって言われてもなあ、よし分かった。」
店主は少し考え込んだ。
「そんなに気に入ったんなら、銀貨3枚でいい。」
持っていきな、と彼は言った。
俺は内心で、ガッツポーズをした。
鋼の短剣の五分の一の値段で、すごい武器を手に入れたのだ。
将来は金貨15枚以上の、価値を持つ武器になる。
「次は鎧ですね、動きやすい革鎧がいいんですが。」
「おう、それならこっちだ。」
店主は店の奥から、いくつかの革鎧を持ってきた。
どれも丁寧な作りで、品質は悪くなさそうだ。
「こいつは硬化させたレザーを使った、ハードレザーアーマーだ。」
防御力はそこそこある、金貨1枚だと言った。
俺は再び、【神の眼】を発動させる。
するとその中に一つだけ、他とは違う情報を持つ鎧があった。
【真名】サラマンダーの革鎧
【種別】魔法防具
【情報】火トカゲの革をなめして作られた逸品。非常に高い火耐性を持つ。製作した職人は素材の正体に気づいていない。ただの頑丈なトカゲの革だと思い加工したため、安価で取引されている。目立った装飾もなく、見た目は普通の革鎧と変わらない。
【価値】金貨10枚相当
これも当たりだ。
火を吐くモンスターと戦う際には、絶大な効果を発揮するだろう。
「じゃあ、これでお願いします。」
俺は迷わず、その革鎧を指さした。
「よしきた、毎度あり。」
店主はにこやかに言った。
「じゃあ、鎧が金貨1枚で短剣が銀貨3枚だな。」
彼は少し心配そうに、付け加えた。
「兄さん、本当にその短剣でいいのか。」
「ええ、構いません。」
俺は代金を支払い、新しい装備を受け取った。
店主は最後まで首を傾げていたが、俺の心は高揚感で満ちていた。
武具屋を出た俺は、次に隣の道具屋へ向かった。
冒険にはポーションや解毒薬、ロープや松明なども必要だ。
ここでも俺の、【神の眼】が活躍した。
一見すると同じように見える、ポーションの瓶の中から選ぶ。
薬草の配合比率が絶妙で、通常よりも回復効果が高いものを見つけ出す。
ロープの束の中から、特別なものを選び出す。
特殊な植物の繊維で編まれており、驚くほどの強度を持つロープだ。
店主は俺の目利きの良さに、すっかり感心していた。
「あんた、本当に新米かい。」
彼は舌を巻いていた。
「ベテランの冒険者でも、そこまで品物は見抜けねえぞ。」
全ての準備を整えた俺は、ラトスの南門から森へと足を踏み入れた。
新しい革鎧は、体にぴったりと馴染んでいる。
腰に差したミスリルダガーは、不思議としっくりきた。
まだその真価を発揮してはいないが、いずれ強力な武器になるだろう。
森の中は薄暗い。
様々な獣や、モンスターの気配がした。
普通の冒険者なら、警戒しながら慎重に進む場面だ。
しかし、俺には【神の眼】がある。
視界の端に、半透明のウィンドウが絶えず情報を更新していく。
『前方50メートル、右の茂みにゴブリン2体。』
弱点は左膝関節と、眉間だと示される。
『左の木の上、枝に毒蛇。』
無害だという、情報も見える。
『この先の地面、深さ1メートルに抜け道。』
小動物用らしい。
全ての情報が、事前に俺の頭の中に流れ込んでくる。
危険は完全に予知され、安全なルートが示された。
これほどの安心感は、Sランクパーティにいた頃ですら感じたことはなかった。
しばらく進むと、茂みから二体のゴブリンが飛び出してきた。
棍棒を振り回しながら、こちらに向かってくる。
「グルルァァ。」
「やっぱりいたか。」
俺は落ち着いて、ミスリルダガーを抜いた。
そして、ゴブリンに向かっていく。
戦闘経験は、ほとんどない。
パーティにいた頃は、常に後方で鑑定に専念していたからだ。
だが、問題はなかった。
『ゴブリンAの行動パターンは、右からの大振りの一撃。』
攻撃後、大きな隙が生まれると表示される。
『ゴブリンBの行動パターンは、Aの攻撃に合わせて死角から回り込もうとする。』
敵の動きが、手に取るように分かる。
俺はゴブリンAの大振りを、軽く身をかがめて避けた。
棍棒が風を切る音が、耳元をかすめる。
がら空きになった左膝を、俺は一閃した。
「ギャッ。」
悲鳴を上げて、ゴブリンAは体勢を崩した。
その眉間に、俺は容赦なく短剣を突き立てる。
返す刀で、回り込んできたゴブリンBの突進をいなした。
そして同じように、左膝を切り裂く。
動きを止められたゴブリンBは、恐怖に顔を引きつらせた。
その命も、俺が正確に眉間を貫いて終わらせた。
戦闘は、ものの数秒で終わった。
Sランクパーティにいた頃は、アレックスたちが一瞬で蹴散らしていた相手だ。
だが、それを自分一人の力で無傷で倒せたという事実が、俺に確かな自信を与えた。
【神の眼】さえあれば、俺は戦えるのだ。
その後も何度かモンスターに遭遇した。
しかし全て弱点と行動パターンを読み切り、危なげなく撃退した。
そして森に入ってから一時間も経たないうちに、俺は目的の場所にたどり着いた。
切り立った崖の下。
そこに、月見草が群生していた。
月光を浴びると、青白く光るという薬草だ。
これで、依頼は達成だ。
俺は背負っていた袋に、依頼達成に必要な分だけの月見草を摘み取る。
だが、俺の目的はこれだけではない。
俺は改めて、周囲に【神の眼】を向けた。
『真名は眠り茸、食べると三日間眠り続ける強力な毒キノコ。』
少量なら、麻痺薬の材料になるらしい。
『真名は妖精の涙、夜露が集まってできた雫だ。』
精霊の力が宿っており、触媒として使用できる。
『情報、この岩壁の亀裂の奥に隠された洞窟への入り口が存在する。』
幻術で、巧妙に隠されているようだ。
あった、これだ。
依頼書にあった、隠された洞窟だ。
俺は月見草の群生の近くにあった、岩壁の亀裂に近づいた。
一見すると、ただの亀裂にしか見えない。
手を伸ばすと、何もないはずの空間に奇妙な抵抗を感じる。
まるで、薄い膜のようだ。
これが、幻術か。
俺はためらうことなく、その膜に足を踏み入れた。
視界がぐにゃりと歪む。
次の瞬間、俺は薄暗い洞窟の入り口に立っていた。
ひんやりとした空気が、肌をなでていく。
内部を、【神の眼】で鑑定する。
『情報、洞窟内部は全長約200メートル。』
コウモリやスライムなどの、低級モンスターが生息している。
危険度は、低いと表示された。
『情報、洞窟の最深部の壁面に星屑の結晶の鉱脈あり。』
純度は、中くらいらしい。
当たりだ、俺の口元が自然と緩んだ。
松明に火を灯し、俺は慎重に洞窟の奥へと進んでいく。
壁からは水が滴り、不気味な反響音を生み出していた。
時折現れるモンスターは、森で遭遇したゴブリンと同じように処理した。
弱点を見抜き、瞬時に倒す。
この力は、本当に万能だ。
ダンジョンの罠も、隠された財宝も、モンスターの弱点も全てお見通しだ。
アレックスたちは、俺がこの力のほんの一部しか使えていなかったことを知らない。
俺を追放したことを、今頃後悔しているだろうか。
それとも新しい鑑定士を見つけて、うまくやっているのだろうか。
いや、どうでもいい。
もう、あいつらは関係ない。
俺は思考を振り払い、目の前の道に集中した。
やがて道が開け、広めの空間に出た。
壁の一部が、チラチラと星のように輝いている。
「これか、星屑の結晶。」
それは、岩盤に埋め込まれる形で存在していた。
闇の中で、内側から淡い光を放っている。
魔道具の素材として、高値で取引される希少鉱物だ。
俺は持参したピッケルを構え、早速採掘に取り掛かった。
カン、カン、と硬い音が洞窟に響く。
一つ、また一つと手のひらサイズの結晶が剥がれ落ちていく。
袋がどんどん重くなっていく感覚が、たまらなく心地よかった。
夢中で採掘を続けていた、その時だった。
「誰か、いませんか。」
洞窟の、さらに奥から声が聞こえた。
それは、か細い女性の声だった。
俺はピッケルを持つ手を止め、声がした方をじっと見つめた。
モンスターの、擬態だろうか。
いや、【神の眼】にそんな反応はない。
確かに、人間の声だ。
「助けて、お願い。」
声は、とても切迫している。
どうするべきか。
面倒事に巻き込まれるのは、ごめんだ。
このまま結晶を採掘して、気づかなかったことにして立ち去るか。
それが一番、賢い選択だろう。
だが、声は明らかに助けを求めている。
このまま見捨ててしまえば、きっと後味が悪い。
俺は一つ、ため息をついた。
採掘した星屑の結晶を袋に詰め、口を固く縛る。
そして、ミスリルダガーを抜き放った。
声が聞こえた洞窟の奥へと、足音を忍ばせて向かった。
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