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リナの言葉は、俺が心のどこかで考えていたことそのものだ。
普通の依頼をこなすだけじゃ、この【神の眼】の力はもったいない。
誰も知らない情報を見つけ出し、誰もできない偉業を成し遂げる。
それこそが、この力の正しい使い方に違いない。
「そうだな、ただ依頼をこなすだけじゃつまらない。どうせなら、デカいことをやろう」
俺の言葉に、リナは「はい!」と力強く頷いた。
その目はこれからの冒険への期待で、キラキラと輝いている。
俺自身の心も、わくわくする気持ちでいっぱいだった。
追放された時は、この世の終わりのような気分だった。
でも今では、感謝すらしている。
あいつらに捨てられたおかげで、俺は本当の力を手に入れた。
そして信頼できる仲間と、出会えたのだから。
「よし、決まりだ。明日もう一度ギルドへ行って、何か面白そうな情報がないか探してみよう」
「はい、カイさん!」
翌朝、俺とリナは朝食を済ませた。
そして早速、冒険者ギルドへと向かった。
ギルドの扉を開けると、昨日とは明らかに違う空気が俺たちを迎える。
騒がしかった酒場が、一瞬で物音一つしなくなる。
全ての視線が、俺たちに突き刺さった。
「おい、来たぞ……」
「あいつが噂のカイか。一日で金貨65枚稼いだっていう……」
「隣の治癒師の子、昨日登録したばかりの新人だろ?とんでもないパーティに入ったもんだな」
うらやむ気持ちや、ねたむ気持ち。
色々な感情が入り混じった視線が、心地よかった。
Sランクパーティにいた頃、こんな風に注目されるのはいつもアレックスたちだった。
俺はいつも、その他大勢の存在だった。
日陰の存在だったが、今は違う。
俺が、この場の中心にいるんだ。
俺は周りの視線を気にせず、まっすぐ依頼書ボードの前へと向かう。
リナも少し緊張した顔ながら、しっかりと俺の後ろについてきた。
ボードには、昨日とあまり変わらない依頼が並んでいた。
ゴブリン討伐や、薬草採取。
荷物の護衛といった、簡単なものばかりだ。
だが俺は一つ一つの依頼書を、ただ眺めるわけじゃない。
【神の眼】で、その裏に隠された本当の情報を読み取るのだ。
『依頼:オークの討伐。報酬:銀貨10枚』
『【情報】このオークの集落の近くには、銀の鉱脈が存在する可能性あり』
『依頼:迷子のペット捜索。報酬:銀貨5枚』
『【情報】ペットの猫は、街の有力者である商人の屋敷の屋根裏にいる。見つければ、追加で多額のお礼が期待できる』
どれも、悪くはない。
普通の依頼に隠された、ボーナス情報だ。
これをこなしていくだけでも、大金が稼げるだろう。
でも俺が探しているのは、そんな小さな儲け話じゃない。
もっと胸が躍るような、伝説につながるような情報だ。
俺は根気強く、ボードに貼られた依頼書を全部鑑定していった。
そして一番隅の方に、古びて汚れた一枚の羊皮紙を見つけた。
依頼内容も、他のものと比べるとはっきりしない。
『依頼:ラトス北部に存在する古い坑道の内部調査。報酬:金貨1枚。備考:内部には弱いモンスターが巣食っているため危険。ギルドは一切の責任を負わない』
金貨1枚という報酬は、危険の大きさに明らかに合っていない。
だからこそ誰もこの依頼を受けず、ずっとここに置かれたままなのだろう。
だが俺の【神の眼】は、この依頼書が放つかすかな力の輝きを見逃さなかった。
俺は意識を集中させて、その依頼書を鑑定した。
――――――――――――――――
【依頼書:古い坑道の内部調査】
【情報】この坑道は、約500年前にドワーフ族によって掘られたもの。奥深くには、彼らが築いた古代の鍛冶場がほぼ完全な形で残っている。
【追加情報】鍛冶場の中央には、伝説の鍛治師『ウルヴァン』が最後まで愛用した『炎神の槌』が眠っている可能性が極めて高い。
【危険情報】鍛冶場は、ドワーフが作った強力な番人によって守られている。ランクA相当の警戒が必要。
――――――――――――――――
「……!」
これだ、と俺は思った。
俺は思わず、息を飲んだ。
伝説の鍛治師の槌に、ランクA相当の番人。
ただの坑道調査依頼の裏に、とんでもない情報が隠されていた。
これこそが、俺が求めていた冒険だ。
「リナ、これにしよう」
俺はリナに、その古びた依頼書を指し示した。
「え?古い坑道の調査、ですか?報酬も安いですし、なんだか危険な感じがしますけど……」
リナは、不安そうな顔をしている。
当然だろう、彼女には俺が見ている情報が見えていないのだから。
「心配するな、俺に考えがある。これは、ただの調査依頼じゃないんだ。とんでもないお宝が、眠ってるんだ」
俺の自信に満ちた言葉に、リナは少し驚いたような顔をした。
でもすぐに、こくりと頷いた。
「カイさんがそう言うなら、私はどこへでもついていきます」
その信頼が、とても嬉しかった。
俺はその依頼書をボードから剥がし、受付カウンターへと持っていった。
「この依頼を受けたい」
「ん?ああ、『廃坑調査』の依頼だな。……兄さん、本気かい?こいつはもう何年も誰も受けたがらない厄介な依頼だぜ。中から生きて帰ってきた奴は、ここ最近じゃ一人もいない。報酬にも見合わんよ」
受付の男は、本当に心配そうな顔で俺に忠告してきた。
昨日のことで、俺を多少は認めてくれているのだろう。
「構わない、やってみる価値はあると思ってるんでね」
「そうかい……。まあ、兄さんがそう言うなら止めはしないが……。本当に気をつけてくれよ。死んだら、昨日稼いだ大金も意味がなくなっちまうからな」
俺は礼を言って、依頼の手続きを済ませた。
ギルドの中が、またしてもざわついている。
「おい、カイの奴、あの『死に場所依頼』を受ける気だぜ」
「正気か?金を手にして、調子に乗ってるんじゃないのか」
「隣の治癒師の子が可哀想だな。あんな無茶な奴の道連れにされるなんて」
聞こえてくるのは、俺たちの行動を理解できない者たちの囁きだ。
だがそれでいい、こいつらが真実に気づく頃には、俺は遥か先を行っている。
「カイさん、準備はどうしますか?坑道の探索なら、明かりとか丈夫なロープとかが必要ですよね」
ギルドを出ると、リナが早速次の行動について尋ねてきた。
彼女はもう、迷いや不安を見せていない。
完全に、気持ちを切り替えたようだ。
「ああ、その通りだ。それに、お前の装備も揃えよう。いつまでも、そんなボロボロのローブじゃいられないだろ」
俺がそう言うと、リナは「えっ、でも、私なんかのために……」と遠慮し始めた。
「パーティの仲間に、最高の装備を揃えるのは当然のことだ。遠慮するな、金なら有り余るほどあるんだから」
俺たちは再び、昨日訪れた武具屋へと向かった。
熊のような店主は、俺たちの姿を見ると顔をほころばせた。
「おう、カイの兄さん!それに、そっちのかわいいお嬢さんは新しい仲間かい?いらっしゃい!」
「ああ。彼女に合う、いい杖とローブを見つけてほしい」
「任せとけ!治癒師さんなら、魔力の伝わりがいい杖と、防御力の高いローブがいいだろうな。こっちに来な」
店主は店の奥から、何本かの杖と数着のローブを持ってきた。
「この樫の木の杖は、作りが丁寧で扱いやすい。銀貨20枚。こっちの銀細工が施された杖は、見た目も綺麗だし魔力の増幅効果も少しだけある。金貨2枚だ」
リナは金貨2枚という値段を聞いて、ひえっと小さな悲鳴を上げている。
だが俺はそんなものには目もくれず、店内の商品を【神の眼】で鑑定していく。
そして壁に飾りとして置かれていた、一本の白く滑らかな木で作られた杖に目が留まった。
――――――――――――――――
【真名】世界樹の若枝の杖
【種別】魔法の杖
【情報】遥か昔に世界樹から切り出された若枝から作られた杖。生命力を活性化させ、治癒の力を大幅に増幅させる効果を持つ。作り手も素材の正体に気づいておらず、ただの美しい木材だと思い加工した。
【価値】金貨30枚以上
――――――――――――――――
「店主、あれは?」
俺がその白い杖を指さすと、店主は「おお、兄さん、目が高いね!」と笑った。
「そいつは、とあるエルフの職人が作ったもんだ。材質はよく分からんが、とにかく軽くて丈夫でな。ただ、魔力的な効果は特にないって話で、買い手がつかずにずっと飾ってあるんだ。もし気に入ったなら、金貨3枚でいいぜ」
俺はすぐに、購入を決めた。
リナにその杖を手渡すと、彼女は「わ……なんだか、すごく手に馴染みます。力が湧いてくるような……」と驚きの声を上げた。
次にローブだ、俺は鑑定を続けた。
そして一着の何の変哲もない、青いローブを見つけ出した。
――――――――――――――――
【真名】海竜の鱗のローブ
【種別】魔法防具
【情報】水棲の竜である海竜の鱗を細かく砕き、繊維に織り込んで作られたローブ。物理的な防御力は革鎧に匹敵し、さらに高い水耐性と状態異常への耐性を持つ。これも素材の価値が理解されずに作られた一品。
【価値】金貨25枚相当
――――――――――――――――
これも、すぐに購入した。
値段は普通の布のローブとして、銀貨15枚だった。
「兄さんの目利きは、本当にどうなってやがるんだ……。昨日売った短剣と鎧も、後で詳しい奴に見せたら『とんでもない掘り出し物だ』って腰を抜かしてたぜ。あんた、一体何者なんだ?」
店主は、もはや尊敬の眼差しで俺を見ていた。
「ただの、運がいい冒険者ですよ」
俺はそう言って笑い、代金を支払った。
リナは新しい杖とローブを身につけ、嬉しそうにくるくると回っている。
その姿には、昨日までの不幸そうな少女の面影はどこにもない。
自信に満ちあふれているように、見えた。
道具屋で坑道探索に必要なものを買い揃え、準備は万端だった。
俺たちが街の大通りを歩いていると、不意に前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
それは、とても不快な声だった。
「おい、リナじゃねえか。そんなところで何してる」
見ると、そこには三人の冒険者が立っていた。
日に焼けた肌の、態度の大きい戦士。
痩せていて、目のいやらしい盗賊。
そして派手な化粧をした、女の魔術師だ。
リナの顔が、さっと青ざめた。
こいつらが、リナを捨てたパーティの連中か。
「ダリオさん……」
リナを捨てたリーダーの戦士、ダリオが嫌らしい笑みを浮かべてこちらに近づいてくる。
「なんだその格好は?ずいぶん良い装備じゃないか。どこで盗んできたんだ?ああ?」
「ち、違いま……!」
「それに、隣の男は誰だ?新しいパトロンでも見つけたのか?お前みたいな役立たずの治癒師でも、体を売ればそのくらいの装備は買ってもらえるってことか。大したもんだな!」
ダリオの言葉で、俺の中で何かがぷつりと切れた。
「おい」
俺は、ダリオの前に進み出た。
「なんだ、てめえ」
ダリオが、俺を睨みつける。
「その汚い口を閉じろ、リナはお前たちのようなクズとはもう関係ない。彼女は俺のパーティの、大事な仲間だ。二度と彼女に、馴れ馴れしく話しかけるな」
俺がそう言い放つと、ダリオたちは一瞬きょとんとした。
その後、腹を抱えて笑い出した。
「ははは!なんだこいつ!この役立たずの女が、お前の仲間だぁ?やめとけよ、兄さん。こいつは回復もろくにできねえ、ただの荷物持ちだぜ?すぐに足手まといになるのがオチだ」
「そうだそうだ!俺たちだから、我慢して使ってやってたんだぜ?」
盗賊のジンも、ゲスな笑いを浮かべて同意する。
俺はため息をついた、こいつらは何も分かっていない。
リナという治癒師の価値も、そして目の前にいる俺が何者なのかも。
「忠告はしたからな、次にリナに手を出したらどうなるか分かってるんだろうな?」
俺の冷たい声に、ダリオはかっとなった。
「ああ!?てめえ、誰に口聞いてるか分かってんのか!俺たちはCランク冒険者の『牙の団』だぞ!お前みたいな駆け出し、捻り潰してやることもできるんだぞ!」
ダリオが拳を握りしめ、殴りかかってこようとしたその時だった。
俺たちのやり取りを見ていた周りの人々の中から、声が上がった。
「おい、やめとけよダリオ。そいつに手を出すのはまずいぜ」
「そうだ、そいつは昨日、ギルドでとんでもない額を稼いだカイだぞ!」
「一日で金貨65枚だ。オーガを一人で狩ったって話だぜ」
その言葉を聞いて、ダリオたちの顔色が変わった。
金貨65枚、オーガを一人で。
その情報が、彼らの頭の中で処理しきれないようだった。
「な……なんだと……?」
「分かったら、さっさと失せろ。お前たちのような三流に、構っている暇はないんでね」
俺がそう吐き捨てると、ダリオは顔を真っ赤にしてわなわなと震えた。
だが今の俺たちに手を出せば、どうなるかくらいの計算はできるらしい。
「……っ、覚えてろよ!リナ、てめえもだ!俺たちを裏切ったこと、絶対に後悔させてやるからな!」
ダリオはそう捨て台詞を吐くと、仲間たちと共に人混みの中へと逃げるように去っていった。
「カイさん……」
リナが、不安そうな顔で俺を見上げている。
「気にするな、ああいう犬は吠えることしかできない。俺たちが、あいつらなんかが一生かかっても追いつけない場所まで行けば、何もできなくなる」
「……はい!」
俺の言葉に、リナは再び力強く頷いた。
その目には、もう怯えの色はなかった。
俺たちは気を取り直し、街の北門から目的の古い坑道へと向かった。
街の騒がしさが遠ざかり、荒れた野原が広がっている。
「カイさんは、どうしてあんなに強いんですか?それに、どうして私みたいな子を仲間に……?」
歩きながら、リナが尋ねてきた。
「強いかどうかは、まだ分からんさ。それに、お前を仲間にしたのは俺がお前を必要としたからだ。それだけだよ」
「私が、カイさんの役に……?」
「ああ。お前の治癒の力と、薬草の知識はこれから必ず必要になる。俺にはないものを、持ってる。だから、俺たちはパーティなんだ」
俺は、昔の自分を思い出していた。
誰からも必要とされず、ただ「鑑定」するだけの道具として扱われていた日々。
だからこそ、分かるんだ。
誰かに必要とされることが、どれほどの力になるかということを。
「私、頑張ります!絶対に、カイさんの足手まといになんてなりません!」
「期待してる」
そんな会話をしながら歩いていると、やがて岩山をくり抜いて作られた古い坑道の入り口が見えてきた。
入り口は半分ほど崩れていて、木の支柱も腐り落ちている。
中からはカビ臭い、湿った空気が流れてきていた。
普通の依頼をこなすだけじゃ、この【神の眼】の力はもったいない。
誰も知らない情報を見つけ出し、誰もできない偉業を成し遂げる。
それこそが、この力の正しい使い方に違いない。
「そうだな、ただ依頼をこなすだけじゃつまらない。どうせなら、デカいことをやろう」
俺の言葉に、リナは「はい!」と力強く頷いた。
その目はこれからの冒険への期待で、キラキラと輝いている。
俺自身の心も、わくわくする気持ちでいっぱいだった。
追放された時は、この世の終わりのような気分だった。
でも今では、感謝すらしている。
あいつらに捨てられたおかげで、俺は本当の力を手に入れた。
そして信頼できる仲間と、出会えたのだから。
「よし、決まりだ。明日もう一度ギルドへ行って、何か面白そうな情報がないか探してみよう」
「はい、カイさん!」
翌朝、俺とリナは朝食を済ませた。
そして早速、冒険者ギルドへと向かった。
ギルドの扉を開けると、昨日とは明らかに違う空気が俺たちを迎える。
騒がしかった酒場が、一瞬で物音一つしなくなる。
全ての視線が、俺たちに突き刺さった。
「おい、来たぞ……」
「あいつが噂のカイか。一日で金貨65枚稼いだっていう……」
「隣の治癒師の子、昨日登録したばかりの新人だろ?とんでもないパーティに入ったもんだな」
うらやむ気持ちや、ねたむ気持ち。
色々な感情が入り混じった視線が、心地よかった。
Sランクパーティにいた頃、こんな風に注目されるのはいつもアレックスたちだった。
俺はいつも、その他大勢の存在だった。
日陰の存在だったが、今は違う。
俺が、この場の中心にいるんだ。
俺は周りの視線を気にせず、まっすぐ依頼書ボードの前へと向かう。
リナも少し緊張した顔ながら、しっかりと俺の後ろについてきた。
ボードには、昨日とあまり変わらない依頼が並んでいた。
ゴブリン討伐や、薬草採取。
荷物の護衛といった、簡単なものばかりだ。
だが俺は一つ一つの依頼書を、ただ眺めるわけじゃない。
【神の眼】で、その裏に隠された本当の情報を読み取るのだ。
『依頼:オークの討伐。報酬:銀貨10枚』
『【情報】このオークの集落の近くには、銀の鉱脈が存在する可能性あり』
『依頼:迷子のペット捜索。報酬:銀貨5枚』
『【情報】ペットの猫は、街の有力者である商人の屋敷の屋根裏にいる。見つければ、追加で多額のお礼が期待できる』
どれも、悪くはない。
普通の依頼に隠された、ボーナス情報だ。
これをこなしていくだけでも、大金が稼げるだろう。
でも俺が探しているのは、そんな小さな儲け話じゃない。
もっと胸が躍るような、伝説につながるような情報だ。
俺は根気強く、ボードに貼られた依頼書を全部鑑定していった。
そして一番隅の方に、古びて汚れた一枚の羊皮紙を見つけた。
依頼内容も、他のものと比べるとはっきりしない。
『依頼:ラトス北部に存在する古い坑道の内部調査。報酬:金貨1枚。備考:内部には弱いモンスターが巣食っているため危険。ギルドは一切の責任を負わない』
金貨1枚という報酬は、危険の大きさに明らかに合っていない。
だからこそ誰もこの依頼を受けず、ずっとここに置かれたままなのだろう。
だが俺の【神の眼】は、この依頼書が放つかすかな力の輝きを見逃さなかった。
俺は意識を集中させて、その依頼書を鑑定した。
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【依頼書:古い坑道の内部調査】
【情報】この坑道は、約500年前にドワーフ族によって掘られたもの。奥深くには、彼らが築いた古代の鍛冶場がほぼ完全な形で残っている。
【追加情報】鍛冶場の中央には、伝説の鍛治師『ウルヴァン』が最後まで愛用した『炎神の槌』が眠っている可能性が極めて高い。
【危険情報】鍛冶場は、ドワーフが作った強力な番人によって守られている。ランクA相当の警戒が必要。
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「……!」
これだ、と俺は思った。
俺は思わず、息を飲んだ。
伝説の鍛治師の槌に、ランクA相当の番人。
ただの坑道調査依頼の裏に、とんでもない情報が隠されていた。
これこそが、俺が求めていた冒険だ。
「リナ、これにしよう」
俺はリナに、その古びた依頼書を指し示した。
「え?古い坑道の調査、ですか?報酬も安いですし、なんだか危険な感じがしますけど……」
リナは、不安そうな顔をしている。
当然だろう、彼女には俺が見ている情報が見えていないのだから。
「心配するな、俺に考えがある。これは、ただの調査依頼じゃないんだ。とんでもないお宝が、眠ってるんだ」
俺の自信に満ちた言葉に、リナは少し驚いたような顔をした。
でもすぐに、こくりと頷いた。
「カイさんがそう言うなら、私はどこへでもついていきます」
その信頼が、とても嬉しかった。
俺はその依頼書をボードから剥がし、受付カウンターへと持っていった。
「この依頼を受けたい」
「ん?ああ、『廃坑調査』の依頼だな。……兄さん、本気かい?こいつはもう何年も誰も受けたがらない厄介な依頼だぜ。中から生きて帰ってきた奴は、ここ最近じゃ一人もいない。報酬にも見合わんよ」
受付の男は、本当に心配そうな顔で俺に忠告してきた。
昨日のことで、俺を多少は認めてくれているのだろう。
「構わない、やってみる価値はあると思ってるんでね」
「そうかい……。まあ、兄さんがそう言うなら止めはしないが……。本当に気をつけてくれよ。死んだら、昨日稼いだ大金も意味がなくなっちまうからな」
俺は礼を言って、依頼の手続きを済ませた。
ギルドの中が、またしてもざわついている。
「おい、カイの奴、あの『死に場所依頼』を受ける気だぜ」
「正気か?金を手にして、調子に乗ってるんじゃないのか」
「隣の治癒師の子が可哀想だな。あんな無茶な奴の道連れにされるなんて」
聞こえてくるのは、俺たちの行動を理解できない者たちの囁きだ。
だがそれでいい、こいつらが真実に気づく頃には、俺は遥か先を行っている。
「カイさん、準備はどうしますか?坑道の探索なら、明かりとか丈夫なロープとかが必要ですよね」
ギルドを出ると、リナが早速次の行動について尋ねてきた。
彼女はもう、迷いや不安を見せていない。
完全に、気持ちを切り替えたようだ。
「ああ、その通りだ。それに、お前の装備も揃えよう。いつまでも、そんなボロボロのローブじゃいられないだろ」
俺がそう言うと、リナは「えっ、でも、私なんかのために……」と遠慮し始めた。
「パーティの仲間に、最高の装備を揃えるのは当然のことだ。遠慮するな、金なら有り余るほどあるんだから」
俺たちは再び、昨日訪れた武具屋へと向かった。
熊のような店主は、俺たちの姿を見ると顔をほころばせた。
「おう、カイの兄さん!それに、そっちのかわいいお嬢さんは新しい仲間かい?いらっしゃい!」
「ああ。彼女に合う、いい杖とローブを見つけてほしい」
「任せとけ!治癒師さんなら、魔力の伝わりがいい杖と、防御力の高いローブがいいだろうな。こっちに来な」
店主は店の奥から、何本かの杖と数着のローブを持ってきた。
「この樫の木の杖は、作りが丁寧で扱いやすい。銀貨20枚。こっちの銀細工が施された杖は、見た目も綺麗だし魔力の増幅効果も少しだけある。金貨2枚だ」
リナは金貨2枚という値段を聞いて、ひえっと小さな悲鳴を上げている。
だが俺はそんなものには目もくれず、店内の商品を【神の眼】で鑑定していく。
そして壁に飾りとして置かれていた、一本の白く滑らかな木で作られた杖に目が留まった。
――――――――――――――――
【真名】世界樹の若枝の杖
【種別】魔法の杖
【情報】遥か昔に世界樹から切り出された若枝から作られた杖。生命力を活性化させ、治癒の力を大幅に増幅させる効果を持つ。作り手も素材の正体に気づいておらず、ただの美しい木材だと思い加工した。
【価値】金貨30枚以上
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「店主、あれは?」
俺がその白い杖を指さすと、店主は「おお、兄さん、目が高いね!」と笑った。
「そいつは、とあるエルフの職人が作ったもんだ。材質はよく分からんが、とにかく軽くて丈夫でな。ただ、魔力的な効果は特にないって話で、買い手がつかずにずっと飾ってあるんだ。もし気に入ったなら、金貨3枚でいいぜ」
俺はすぐに、購入を決めた。
リナにその杖を手渡すと、彼女は「わ……なんだか、すごく手に馴染みます。力が湧いてくるような……」と驚きの声を上げた。
次にローブだ、俺は鑑定を続けた。
そして一着の何の変哲もない、青いローブを見つけ出した。
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【真名】海竜の鱗のローブ
【種別】魔法防具
【情報】水棲の竜である海竜の鱗を細かく砕き、繊維に織り込んで作られたローブ。物理的な防御力は革鎧に匹敵し、さらに高い水耐性と状態異常への耐性を持つ。これも素材の価値が理解されずに作られた一品。
【価値】金貨25枚相当
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これも、すぐに購入した。
値段は普通の布のローブとして、銀貨15枚だった。
「兄さんの目利きは、本当にどうなってやがるんだ……。昨日売った短剣と鎧も、後で詳しい奴に見せたら『とんでもない掘り出し物だ』って腰を抜かしてたぜ。あんた、一体何者なんだ?」
店主は、もはや尊敬の眼差しで俺を見ていた。
「ただの、運がいい冒険者ですよ」
俺はそう言って笑い、代金を支払った。
リナは新しい杖とローブを身につけ、嬉しそうにくるくると回っている。
その姿には、昨日までの不幸そうな少女の面影はどこにもない。
自信に満ちあふれているように、見えた。
道具屋で坑道探索に必要なものを買い揃え、準備は万端だった。
俺たちが街の大通りを歩いていると、不意に前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
それは、とても不快な声だった。
「おい、リナじゃねえか。そんなところで何してる」
見ると、そこには三人の冒険者が立っていた。
日に焼けた肌の、態度の大きい戦士。
痩せていて、目のいやらしい盗賊。
そして派手な化粧をした、女の魔術師だ。
リナの顔が、さっと青ざめた。
こいつらが、リナを捨てたパーティの連中か。
「ダリオさん……」
リナを捨てたリーダーの戦士、ダリオが嫌らしい笑みを浮かべてこちらに近づいてくる。
「なんだその格好は?ずいぶん良い装備じゃないか。どこで盗んできたんだ?ああ?」
「ち、違いま……!」
「それに、隣の男は誰だ?新しいパトロンでも見つけたのか?お前みたいな役立たずの治癒師でも、体を売ればそのくらいの装備は買ってもらえるってことか。大したもんだな!」
ダリオの言葉で、俺の中で何かがぷつりと切れた。
「おい」
俺は、ダリオの前に進み出た。
「なんだ、てめえ」
ダリオが、俺を睨みつける。
「その汚い口を閉じろ、リナはお前たちのようなクズとはもう関係ない。彼女は俺のパーティの、大事な仲間だ。二度と彼女に、馴れ馴れしく話しかけるな」
俺がそう言い放つと、ダリオたちは一瞬きょとんとした。
その後、腹を抱えて笑い出した。
「ははは!なんだこいつ!この役立たずの女が、お前の仲間だぁ?やめとけよ、兄さん。こいつは回復もろくにできねえ、ただの荷物持ちだぜ?すぐに足手まといになるのがオチだ」
「そうだそうだ!俺たちだから、我慢して使ってやってたんだぜ?」
盗賊のジンも、ゲスな笑いを浮かべて同意する。
俺はため息をついた、こいつらは何も分かっていない。
リナという治癒師の価値も、そして目の前にいる俺が何者なのかも。
「忠告はしたからな、次にリナに手を出したらどうなるか分かってるんだろうな?」
俺の冷たい声に、ダリオはかっとなった。
「ああ!?てめえ、誰に口聞いてるか分かってんのか!俺たちはCランク冒険者の『牙の団』だぞ!お前みたいな駆け出し、捻り潰してやることもできるんだぞ!」
ダリオが拳を握りしめ、殴りかかってこようとしたその時だった。
俺たちのやり取りを見ていた周りの人々の中から、声が上がった。
「おい、やめとけよダリオ。そいつに手を出すのはまずいぜ」
「そうだ、そいつは昨日、ギルドでとんでもない額を稼いだカイだぞ!」
「一日で金貨65枚だ。オーガを一人で狩ったって話だぜ」
その言葉を聞いて、ダリオたちの顔色が変わった。
金貨65枚、オーガを一人で。
その情報が、彼らの頭の中で処理しきれないようだった。
「な……なんだと……?」
「分かったら、さっさと失せろ。お前たちのような三流に、構っている暇はないんでね」
俺がそう吐き捨てると、ダリオは顔を真っ赤にしてわなわなと震えた。
だが今の俺たちに手を出せば、どうなるかくらいの計算はできるらしい。
「……っ、覚えてろよ!リナ、てめえもだ!俺たちを裏切ったこと、絶対に後悔させてやるからな!」
ダリオはそう捨て台詞を吐くと、仲間たちと共に人混みの中へと逃げるように去っていった。
「カイさん……」
リナが、不安そうな顔で俺を見上げている。
「気にするな、ああいう犬は吠えることしかできない。俺たちが、あいつらなんかが一生かかっても追いつけない場所まで行けば、何もできなくなる」
「……はい!」
俺の言葉に、リナは再び力強く頷いた。
その目には、もう怯えの色はなかった。
俺たちは気を取り直し、街の北門から目的の古い坑道へと向かった。
街の騒がしさが遠ざかり、荒れた野原が広がっている。
「カイさんは、どうしてあんなに強いんですか?それに、どうして私みたいな子を仲間に……?」
歩きながら、リナが尋ねてきた。
「強いかどうかは、まだ分からんさ。それに、お前を仲間にしたのは俺がお前を必要としたからだ。それだけだよ」
「私が、カイさんの役に……?」
「ああ。お前の治癒の力と、薬草の知識はこれから必ず必要になる。俺にはないものを、持ってる。だから、俺たちはパーティなんだ」
俺は、昔の自分を思い出していた。
誰からも必要とされず、ただ「鑑定」するだけの道具として扱われていた日々。
だからこそ、分かるんだ。
誰かに必要とされることが、どれほどの力になるかということを。
「私、頑張ります!絶対に、カイさんの足手まといになんてなりません!」
「期待してる」
そんな会話をしながら歩いていると、やがて岩山をくり抜いて作られた古い坑道の入り口が見えてきた。
入り口は半分ほど崩れていて、木の支柱も腐り落ちている。
中からはカビ臭い、湿った空気が流れてきていた。
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高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
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【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
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10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
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土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
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・・
・
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