ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)

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第56話 汚れた金貨と黄金のアップルパイ

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夜の街道を、私の馬車が猛スピードで駆け抜けていく。
車輪が石畳を削る甲高い音が、静寂を引き裂くように響き続けていた。
御者が鞭を振るうたびに馬がいななき、車体がガタガタと激しく揺れる。
普通の令嬢なら悲鳴を上げて気絶しているかもしれない速度だが、私は揺れに合わせて重心を移動させ、手元の報告書から視線を外さなかった。
魔法灯の明かりに照らされた羊皮紙には、信じがたい数字が羅列されている。

「リリア様、少し速度を落とさせましょうか。このままでは車軸が持ちません」

向かいの席で青ざめた顔をしているレオン様が、手すりを強く握りしめながら提案してきた。
王宮騎士団のエリートである彼が、馬車の揺れ程度で音を上げるとは情けない。
私は報告書をめくりながら、冷ややかな声で答える。

「いいえ。車軸が折れたら、走って帰ればいいだけのことだわ。それよりも、この数字を見て」

私は羊皮紙をレオン様の目の前に突きつけた。
彼は目を白黒させながら、踊るような文字を追う。

「き、金貨三万枚……? これは、アークライト銀行への預け入れ額ですか? 素晴らしい利益ではないですか」

「馬鹿ね。ただ数字が増えればいいというものではないわ」

私はため息をつき、報告書の隅に記載された送金元の情報を指差した。
東の海の向こう側、正体不明の幽霊商会を経由した、出所不明の資金。
これが何を意味するか、騎士団の脳筋には理解できないらしい。

「いいこと、レオン様。銀行にとって一番のリスクは、貸し倒れではないわ。信用を失うことよ。この金は、明らかに『汚れた金』だわ」

「汚れた金、ですか」

「ええ。犯罪や違法取引で得た金を、まともな銀行口座に入金して、出所を分からなくする。いわゆるマネーロンダリングよ」

私の説明に、レオン様がようやく事態の深刻さに気づいたように息を呑んだ。
もしこの資金を受け入れれば、アークライト銀行は犯罪組織の片棒を担いだと見なされる。
王宮財務省が監査に入り、銀行免許を取り消される可能性すらあるだろう。
敵の狙いは、金儲けではない。
私の作り上げた金融システムそのものを、社会的に抹殺することだ。

「な、なんて卑劣な……! 一体どこのどいつが」

「心当たりならあるわ。この手口、陰湿で粘着質なところが、あの国のやり方にそっくりだもの」

私の脳裏に、以前論破して追い返したシオン王国の使節、カゲミツの顔が浮かんだ。
自分の無能さを棚に上げて、逆恨みで報復を仕掛けてくるとは。
しかも、私の最も神聖な領域である「帳簿」を汚そうとするなんて。

「許さないわ。私の銀行をゴミ箱扱いした罪、金貨一枚残らず償わせてやる」

私の低い声に、レオン様が背筋を震わせた。
フェンとノクスが、私の殺気を感じ取って「わふっ」「にゃあ」と短く鳴く。
やる気十分ね。
私は報告書を閉じ、窓の外を流れる闇を見つめた。
ただ防ぐだけでは面白くない。
相手が投げ込んできた毒を、極上の蜜に変えて飲み込んでやる。
それが、アークライト流の倍返しだ。

馬車が王都の屋敷に滑り込んだのは、日付が変わる頃だった。
深夜にも関わらず、屋敷の窓には明かりが灯っている。
玄関ホールに飛び込むと、そこにはカシアンが死人のような顔色で待ち構えていた。
彼は私を見るなり、すがるような目で駆け寄ってくる。

「リリア様! ああ、お待ちしておりました! もはや一刻の猶予もありません!」

「落ち着きなさい、カシアン。数字を扱う者が取り乱してどうするの」

私はマントをセバスチャンに放り投げ、カツカツとヒールを鳴らして階段を上がった。
カシアンが、小走りでついてくる。

「も、申し訳ありません。ですが、事態は深刻です。例の三万枚の金貨ですが、送金元の商会から『明日中に全額を別口座へ移せ』との指示が来ています」

「やっぱりね。金を洗浄したら、すぐに持ち逃げするつもりだわ」

「それだけではありません。王都のゴシップ紙に、アークライト銀行が犯罪組織と癒着しているというタレコミが届いているそうです。明日の朝刊に載れば、取り付け騒ぎが起きます!」

カシアンの声が裏返った。
取り付け騒ぎ。
預金者たちが不安に駆られ、一斉に預金を引き出そうと銀行に殺到する現象だ。
どんなに健全な銀行でも、手元の現金が尽きれば倒産する。
敵は、それを狙っているのだ。

「作戦会議室へ行くわ。セバスチャン、一番濃い珈琲を淹れて。あと、糖分が必要よ」

「かしこまりました。焼きたてのアップルパイをご用意いたします」

私は二階の会議室の扉を勢いよく開けた。
部屋の中央にある大きなテーブルには、すでに複雑な資金経路図が広げられている。
私は上座にドカッと座り、フェンを膝の上に乗せた。
もふもふした感触が、苛立った神経を少しだけ鎮めてくれる。

「カシアン、この『黄金の盾』という口座の名義人は?」

「は、はい。表向きは輸入雑貨商ですが、実態はシオン王国のカゲミツの遠縁にあたる男です」

「やっぱりカゲミツね。あの男、国の恥を晒しただけでは飽き足らず、一族郎党を巻き込んで破滅したいらしいわ」

私はペンを取り、資金経路図の上に大きく×印を書き込んだ。

「リリア様、どうなさいますか? 送金を拒否すれば、契約違反で訴えられます。しかし、送金すれば共犯者に……」

カシアンが、進退窮まったという顔で頭を抱えている。
真面目な彼らしい悩みだ。
法律と規則の枠内で考えている限り、この罠からは抜け出せない。
だからこそ、ルールそのものを書き換える必要がある。

「カシアン。銀行の規約第108条を覚えているかしら?」

「え? 第108条……『当行は、国家の安全を脅かす恐れのある資金について、独自の判断でこれを凍結する権利を有する』……ですか?」

「正解よ。その条項を適用しなさい」

「し、しかし! それはあくまで有事の際の特例措置です! 明確な証拠もなしに適用すれば、それこそ信用問題に関わります!」

「証拠なら、今から出てくるわ」

私は天井に向かって、パチンと指を鳴らした。
すると、部屋の隅の影が揺らぎ、音もなく一人の男が姿を現す。
ゼロ兄様だ。
いつもの黒ずくめの装束に身を包み、手には一枚の羊皮紙を持っている。

「待たせたな、リリア。お前の読み通りだったぞ」

「兄様。王都にあるシオン王国のネズミたちの巣穴、特定できた?」

「ああ。下町の路地裏にある、古びた時計店だ。地下室に、カゲミツの部下たちが潜んでいる。そこで偽造書類の作成と、密輸品の管理を行っているようだ」

ゼロ兄様がテーブルの上に羊皮紙を広げた。
そこには、時計店の見取り図と、出入りする男たちの顔ぶれが詳細に記されている。
さすがは兄様、仕事が速い。

「素晴らしいわ。兄様、彼らが『テロ資金の調達に関わっている証拠』は見つかったかしら?」

「まだだ。奴らは慎重でな、決定的な証拠は隠しているようだ」

「あら、そう。……なら、『作って』しまえばいいわね」

私の言葉に、カシアンがギョッとして顔を上げた。
レオン様も、口をぽかんと開けている。

「つ、作る、とは……?」

「兄様。彼らのアジトの近くに、出所不明の武器や爆薬が『偶然』落ちていたことにできないかしら? あるいは、アークライト銀行を襲撃する計画書とか」

「ククッ……。お前、本当に悪党だな」

ゼロ兄様が、肩を震わせて笑った。

「人聞きの悪いことを言わないで。私は、潜在的なリスクを可視化しているだけよ。事実をほんの少しドラマチックに演出するのも、経営者の手腕だわ」

私は悪びれもせずに言い放った。
これで、資金凍結の正当な理由は完成だ。
「テロリストの資金を未然に防いだ英雄的な銀行」というシナリオが出来上がる。

その時、部屋に甘く香ばしい匂いが漂ってきた。
セバスチャンが、銀のワゴンを押して入ってくる。
焼きたてのアップルパイだ。
黄金色のパイ生地から、湯気が立ち上っている。
煮詰められたリンゴとシナモンの香りが、殺伐とした作戦会議室を一瞬で優雅なティーサロンに変えた。

「お待たせいたしました、リリア様。信州産の紅玉をたっぷりと使い、隠し味にラム酒を効かせてございます」

「ありがとう、セバスチャン。いいタイミングだわ」

私はフォークとナイフを手に取り、サクサクと音を立ててパイを切り分けた。
断面から、とろりとしたリンゴの蜜が溢れ出す。
一口食べると、濃厚な甘みと酸味が口いっぱいに広がった。
熱々のパイと、冷たいバニラアイスの温度差がたまらない。

「んんっ……美味しい。やっぱり、徹夜の仕事にはこれがないとね」

私は頬を緩ませ、至福の表情で咀嚼した。
カシアンとレオン様が、呆気にとられた顔で私を見ている。
国の経済を揺るがす大事件の最中に、呑気にお菓子を食べている神経が理解できないのだろう。

「お二人もどう? 頭を使うと、糖分が不足するわよ」

「い、いえ、私は結構です……」

「私も、胃が痛くて……」

二人は青い顔で首を振った。
もったいない。
私はフェンとノクスに、特製のミートパイを分け与えた。
二匹は「わんっ!」「にゃあ」と嬉しそうに鳴き、夢中で食らいついている。
この子たちの食欲を見ていると、どんな強敵もただの餌に見えてくるから不思議だ。

「さて、エネルギー補給も完了したし、反撃の狼煙を上げましょうか」

私はナプキンで口元を拭い、立ち上がった。
瞳の奥に、冷徹な光を宿す。

「カシアン、あなたは銀行に戻り、『黄金の盾』口座の資金を全額凍結なさい。理由を聞かれたら、『王宮からの極秘命令』とだけ答えて、相手を煙に巻くの」

「は、はいっ! 承知いたしました!」

「レオン様、騎士団を招集して。明日の朝一番で、その時計店へ『定期監査』に行くわ」

「定期監査……ですか? 武装した騎士団を引き連れて?」

「ええ。納税状況の確認と、衛生管理のチェックよ。……ドアを蹴破ることになるかもしれないけれど、それも監査の一環だわ」

私はニッコリと笑った。
その笑顔を見て、レオン様は直立不動で敬礼した。
彼の目には、もはや迷いはなかった。

「総員、戦闘準備! リリア様の『監査』に遅れるな!」

翌朝、王都の空は抜けるように青かった。
しかし、アークライト銀行本店前は異様な熱気に包まれていた。
カゲミツの手下たちが撒いたビラを信じた市民たちが、朝から詰めかけているのだ。

「俺たちの金を返せ!」
「アークライト銀行は犯罪者の味方なのか!」

怒号が飛び交い、銀行の窓口には長蛇の列ができている。
支店長が必死に説明しているが、パニックになった群衆には届かない。
私は、その様子を少し離れた馬車の中から眺めていた。

「ふふ、よく集まったわね。最高の観客だわ」

「リリア様、笑っている場合ですか。このままでは暴動になりますぞ」

レオン様が、馬車の窓から心配そうに声をかけてくる。

「大丈夫よ。見ていなさい」

その時、一台の豪奢な馬車が群衆をかき分けて現れた。
馬車から降りてきたのは、王都の商業ギルド長だ。
彼は、私が事前に「根回し」をしておいた大口顧客の一人である。
ギルド長は、騒ぐ群衆を一喝した。

「静まれ! 愚か者どもめ! アークライト銀行が潰れるだと? 笑わせるな!」

その一言で、群衆が静まり返る。

「ワシは今、ここに金貨五千枚を追加で預けに来たのだ。この銀行が、王宮から『特別監査権限』を与えられたのを知らんのか!」

ギルド長は、私が昨夜のうちに王宮から取り付けた「公認監査機関」の認定証を高々と掲げた。
黄金の印章が、朝日に輝く。

「この銀行は、不正資金を自ら摘発し、国の安全を守ったのだ! そのような堅実な銀行に金を預けずして、どこに預けると言うのだ!」

サクラの芝居……ではない、友情出演は見事だった。
群衆の顔色が、怒りから戸惑いへ、そして安心へと変わっていく。
「ギルド長がそう言うなら……」
「確かに、アークライト様が犯罪に手を染めるはずがない」
「むしろ、不正を暴いた英雄じゃないか」

掌を返したように、称賛の声が上がり始めた。
大衆心理とは、かくも操作しやすいものだ。
私は満足げに頷き、御者に合図を送った。

「さあ、銀行の方は片付いたわ。次は本丸、時計店へ向かうわよ」

馬車はゆっくりと動き出し、路地裏へと進路を取った。
その背後には、完全武装した王宮騎士団が隊列を組んで続いている。
これほど物々しい「監査チーム」は、王国の歴史上初めてだろう。

目的の時計店は、古びたレンガ造りの建物だった。
表には「修理承ります」という看板が下がっているが、窓はカーテンで閉ざされ、中の様子は伺えない。
私は馬車を降り、フェンとノクスを従えて店の前まで歩いた。
レオン様が、剣の柄に手をかけて私の前に立つ。

「リリア様、危険です。私が先に突入します」

「いいえ。これはあくまで行政手続きよ。私がノックをするわ」

私は優雅に一歩進み出ると、右足を高く振り上げた。
そして、思い切りドアを蹴り飛ばした。

ドゴォォォン!!

蝶番が悲鳴を上げ、ドアが内側へ吹き飛ぶ。
店の中にいた男たちが、驚愕の表情でこちらを振り向いた。
薄暗い店内には、数人の男たちが机を囲んで座っていた。
机の上には、書きかけの偽造書類と、武器の山。
言い逃れのできない状況だ。

「おはようございます。アークライト商会です。定期監査に参りました」

私は土足で店内に踏み込み、ニッコリと微笑んだ。
その背後から、数十人の騎士たちが雪崩れ込んでくる。

「な、なんだ貴様らは! 不法侵入だぞ!」

リーダー格の男が、剣を抜こうとして立ち上がった。
しかし、その動きよりも早く、黒い影が走った。
ノクスだ。
ノクスは男の顔面に飛びつき、鋭い爪で視界を奪う。

「ぐあああっ! 目が、目がぁ!」

男が悲鳴を上げて転げ回る。
同時に、フェンが別の男の足に噛みつき、引きずり倒した。
「わんっ! わるいことするやつ、ゆるしません!」
聖獣の牙は、革のブーツごと男の骨を砕くほどの威力だ。

「ひぃっ! 化け物だ!」
「逃げろ! 裏口だ!」

残った男たちが裏口へ殺到するが、そこにはすでにゼロ兄様が待ち構えていた。
兄様は、逃げてきた男たちをゴミのように蹴り飛ばし、店の中へ放り投げ戻す。

「おっと。監査はまだ終わっていないぞ。座って話を聞け」

ゼロ兄様が入り口を塞ぎ、レオン様率いる騎士団が周囲を包囲する。
袋のネズミとは、まさにこのことだ。
私は、震え上がっている男たちの前に進み出た。
そして、カシアンが作成した資金移動のログデータを、彼らの目の前にばら撒いた。

「あなたたちが『黄金の盾』名義で送金した金貨三万枚。全額、テロ支援資金として没収させていただきました」

「な、何を馬鹿な……! あれは、我々の活動資金……いや、正当な商売の利益だ!」

男の一人が、往生際悪く叫んだ。

「正当な商売? この店には時計が一つも置いてありませんけれど?」

私は、埃をかぶった棚を指差した。
そこにあるのは、武器と怪しい薬瓶だけだ。

「それに、あなたたちの親玉であるカゲミツさんからは、すでに『全権委任状』を頂いておりますの。シオン王国の資産管理は、今後すべて私が担当することになりました」

これはハッタリだ。
まだカゲミツの承認は取っていない。
しかし、彼らが王都で連絡を取れる手段は、すでにゼロ兄様が全て遮断している。
彼らに、真偽を確かめる術はない。

「そ、そんな……カゲミツ様が、裏切ったというのか……」

男たちは絶望し、その場に崩れ落ちた。
忠誠心が折れれば、あとは脆いものだ。
レオン様が合図をすると、騎士たちが次々と男たちを縛り上げていく。

「全員、国家転覆罪および金融犯罪の容疑で連行する! 王宮の地下牢で、たっぷり絞らせてもらうぞ!」

レオン様の怒号が響く中、カゲミツの手下たちはズルズルと引きずり出されていった。
店内には、私と兄様、そして二匹の相棒だけが残される。
私は、散乱した書類の山の中から、一つの美しい懐中時計を見つけた。
精巧な細工が施された、シオン王国の特産品だ。
おそらく、カゲミツが彼らに褒美として与えたものだろう。

「あら、素敵なデザイン。……今回の騒動の迷惑料として、頂いていくわ」

私は時計をポケットにしまい込んだ。
もちろん、帳簿には「押収品」として記載するつもりはない。
私の精神的苦痛に対する、正当な慰謝料だもの。

屋敷に戻る馬車の中で、私は窓の外の青空を見上げた。
手元には、新たに銀行の資本金として組み込まれた三万枚の金貨がある。
これだけの資金があれば、何ができるだろうか。
アークライト領のインフラ整備?
新しい工場の建設?
いや、もっと大きなことができるはずだ。

「ねえ、兄様」

私は、向かいの席で腕を組んでいるゼロ兄様に話しかけた。

「なんだ、リリア。まだ何か企んでいるのか」

「企んでいるだなんて。……ねえ、馬車って遅いと思わない?」

「は?」

兄様が、怪訝そうな顔をした。

「王都から領地まで、馬車だと数日かかるわ。美味しい食材を運ぶには、時間がかかりすぎるのよ」

「だから、どうしたと言うんだ」

「鉄の道を敷くのよ、兄様。馬よりも速く、大量の荷物を運ぶ、魔法の乗り物を作るの」

私の頭の中には、前世の記憶にある「鉄道」のイメージが鮮明に浮かび上がっていた。
蒸気機関車。
この世界にはまだ存在しない、鉄の怪物。
それを魔法の力で再現し、大陸中に線路を張り巡らせる。
そうすれば、世界中の美味しいものが、新鮮なまま私のテーブルに届くようになる。

「……お前、本気で言っているのか?」

「ええ、本気よ。この三万枚の金貨は、そのための最初のレールになるわ」

私は、ポケットの中の懐中時計を取り出し、カチリと蓋を開けた。
秒針が、正確なリズムで時を刻んでいる。
時は金なり。
物流の速度を支配する者が、世界の富を支配するのだ。

「さて、お昼は何を食べようかしら。大仕事を終えた後だもの、奮発して特上のステーキでも焼きましょうか」
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