処刑聖女は回帰して、全て奪うことにした。~タイムリープ直後の魔力判定で神域を超えたので、ついでに魔王も従えて最強の国家を建国します~

旅する書斎(☆ほしい)

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大聖堂での騒動から数日、王都は私の噂で持ちきりだった。
魔力測定石を破壊した伝説の聖女。
その称号が、勝手に私に付けられている。
父である公爵は、掌を返したように私を褒め称えてきた。
「ユリアナ、お前こそが我が家の誇りだ!」
「エリアナのような役立たずは、もうどうでもいい」
前世では、エリアナに唆されて私を牢に叩き込んだ男だ。
その醜い笑顔を見ているだけで、吐き気がする。
私は、屋敷の自室で荷物をまとめていた。
この国に、もはや利用価値はない。
無能な王族と、欲にまみれた貴族。
彼らが私に縋り付こうとする前に、私は自分の国を作る。
そのための「鍵」が、この国の最果てにある「封印の地」に眠っている。
私は夜陰に乗じ、屋敷を脱出した。
護衛の騎士たちは、私の気配を察することすらできない。
今の私は、身体能力も魔力で極限まで強化している。
一歩踏み出すだけで、数十メートルを音もなく移動できる。
三日三晩、走り続けて到着したのは、荒涼とした岩山だった。
そこは「魔の領域」と呼ばれ、いかなる生物も近づかない場所だ。
中央には、どす黒い魔力を放つ巨大な石碑が立っている。
かつて人類を滅亡寸前まで追い込み、数千人の魔術師が命と引き換えに封印した魔王。
前世では、エリアナがこの封印を不注意で解き、国が滅んだ。
私はその記憶を利用する。
「起きて、私の忠実な下僕」
私は石碑に手を当て、溜め込んでいた魔力を一気に注ぎ込んだ。
石碑に刻まれた古代文字が、赤黒く発光し始める。
地響きが起こり、空が血のような色に変色した。
「……何奴だ。我が眠りを妨げる者は」
石碑の奥から、心臓を直接握りつぶすような重低音が響く。
空間が歪み、そこから一人の男が這い出してきた。
黒髪を長く伸ばし、紅い瞳を持つ、人外の美貌。
彼こそが、伝説の魔王アスタロトだ。
アスタロトは私を一瞥し、鼻で笑った。
「ただの人間か。死にたいようだな」
彼が指先を向けると、そこから空間を消滅させるほどの高密度な魔弾が放たれた。
私は避けない。
【因果逆転】を発動させ、その魔弾を正面から受け止めた。
魔弾は私の体に触れる直前、ただの清涼な風に変換される。
それどころか、放たれた魔力の源泉を辿り、アスタロトの力を強引に引き抜いた。
「なっ……魔力が吸われる!?」
アスタロトが目を見開き、膝をついた。
最強の魔王といえど、このスキルの前では無力だ。
「あなたの強さは、私のものよ。逆らえば、その魂ごと消し飛ばすわ」
私はアスタロトの顎をクイと持ち上げた。
彼は悔しげに唇を噛んでいたが、やがて私の瞳に宿る圧倒的な「格」を悟ったようだ。
その紅い瞳から敵意が消え、代わりに従順な色が宿る。
「……理解した。貴女は、我よりも遥かに上位の存在だ」
「賢いわね。アスタロト」
私は彼の首に、魔力で編み上げた契約の首輪を装着した。
これで彼は、私の許可なく死ぬことすらできない。
「さあ、ここを私たちの庭にするわよ」
私は荒れ果てた大地を見渡し、右手を大きく広げた。
地面から純白の鎖が数千本と飛び出し、岩山を砕き、整地していく。
奪い取った魔力を大地に還元し、一瞬にして緑豊かな平原へと変貌させた。
アスタロトがその様子を見て、呆然と呟く。
「造作もなく、世界の法則を書き換えるというのか……」
「当然よ。私はもう、誰にも縛られない」
遠くの方で、魔王の復活を察知した王国の偵察部隊が、馬を走らせてくるのが見えた。
彼らは、絶望に顔を歪めている。
私はそれを見て、愉快そうに笑い声を上げた。
「アスタロト、あいつら追い払ってきてくれる?」
「仰せのままに、我が主よ」
アスタロトは優雅に一礼し、影のように消えた。
直後、偵察部隊の絶叫が響き渡る。
私は豪華な椅子を魔力で作り出し、そこに腰を下ろした。
これからは、私がルールだ。
退屈しのぎに、まずは城でも建てようかと考えを巡らせる。
「ユリアナ様、周辺の魔物どもをすべて平らげました」
血の匂いを漂わせたアスタロトが、すぐ傍に戻ってきた。
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