追放された私、実は世界樹の化身だったので離れた瞬間に国が枯れ果てました

旅する書斎(☆ほしい)

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第5話 神々の浴槽と、下界の泥遊び

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『聖泉の風呂』が完成したという無機質な通知音とともに、邸宅の地下へと続く階段が音もなく出現した。
私はクロを抱き上げたまま、期待に胸を躍らせてその階段を見下ろす。
階段は単なる石材ではない。
地下深くから切り出された、淡い光を放つ霊峰の大理石が、継ぎ目なく滑らかに加工されて続いている。
壁面には等間隔に埋め込まれた魔石のランプが、歩調に合わせて柔らかく点灯し、私を最奥へと誘っていた。
足を踏み出すたびに、ひんやりとした冷気が足裏から伝わり、地下特有の静謐さが肌を撫でる。
王宮の地下牢のようなカビ臭さは微塵もない。
むしろ、森林の深奥で深呼吸をした時のような、濃密で瑞々しい清浄な空気が満ちている。

「クロ、いい匂いがするわね」
「ワフッ!」

腕の中のクロも、鼻をヒクヒクさせて同意を示す。
地下へ降りるだけの行為が、まるで天界への階段を昇っているかのような高揚感を与えてくる。
螺旋を描く階段を降りきった先、重厚な白銀の扉が、私の接近を感知して自動的に開いた。
その瞬間、視界を覆い尽くしたのは、圧倒的な「白」と「黄金」の輝きだ。

そこには、王宮の大浴場など家畜の水飲み場にしか見えないほどの、極上の楽園が広がっていた。
広さは学校の体育館ほどもあるだろうか。
天井は高く、ドーム状にくり抜かれた岩盤には、星空を模した魔法の投影が瞬いている。
壁一面には、神話の女神たちが水と戯れる姿を描いたフレスコ画が、生きた絵画のように緩やかに動いていた。
そして中央には、湯気を立てる巨大な浴槽が鎮座している。
浴槽の縁は、純度一〇〇パーセントのオリハルコンと、深海の真珠貝を削り出して作られた装飾で彩られ、見る者を圧倒する威厳を放っていた。
なみなみと湛えられた湯は、白濁とした乳白色で、水面には黄金の光の粒子が蛍のように舞っている。

「……すごい。これ、本当にお風呂なの? 神殿の間違いではなくて?」

私が一歩足を踏み入れると、床に敷き詰められた特殊なタイルが、足裏の水分を瞬時に吸収し、常に快適な歩行を約束してくれた。
湯気とともに、鼻孔をくすぐる芳醇な香りが漂ってくる。
それは、世界中の名だたる香木を千年以上熟成させ、そこに幻の霊花の蜜を滴らせたような、脳髄を直接蕩けさせる至高の香りだ。
ただ呼吸をしているだけで、体内の澱んだ空気が排出され、肺が浄化されていくのがわかる。
血管の一本一本が拡張し、魔力の循環が加速していく感覚。
ここはただの洗い場ではない。
生命を洗濯し、魂を再構築するための聖域だ。

ふと、視界の端に例のウィンドウがポップアップした。

【ハピネスポイント:5000達成】
【ボーナス報酬:『神糸のバスタオル』『至高の石鹸』を贈呈します】

虚空が揺らぎ、そこからふわりと雪のように白い布と、透き通ったエメラルド色の固形物が降ってきた。
私はそれらを空中で受け止める。
『神糸のバスタオル』。
触れた瞬間、指先が繊維の中に沈み込むような錯覚を覚えた。
雲を紡いで糸にし、それを天使の羽で織り上げたかのような、この世の物質とは思えない柔らかさだ。
摩擦係数がゼロに近いのではないだろうか。
肌に当てても抵抗がなく、まるで水に触れているかのような滑らかさがある。
そして『至高の石鹸』。
見た目は宝石のエメラルドそのものだが、指で押すとグミのような弾力がある。
表面からは常に微量な泡が発生しており、それが空気中の塵を分解し続けているようだ。

「クロ、一緒に入りましょうか」

私が誘うと、クロは瞳をキラキラと輝かせ、「ワンッ!」と力強く吠えた。
彼は私の腕から飛び降りると、自ら脱衣所の籠に向かってトテトテと走っていく。
私も神糸で編まれた純白のドレスを脱ぎ捨て、贅沢な湯気の中へと身を投じた。

足先を湯につける。
熱すぎず、ぬるすぎず、私の体温に合わせて〇・一度の狂いもなく調整された完璧な湯加減だ。
ゆっくりと全身を沈めていくと、湯が私の肌に吸い付くように馴染んでくる。
「はぁ……。極楽だわ……」
思わず、吐息が漏れた。
だが、次の瞬間に感じたのは、単なる温かさではない。
衝撃だ。
皮膚の毛穴という毛穴から、高濃度に圧縮された生命エネルギーそのものが、奔流となって体内に侵入してきたのだ。
王宮での過酷な労働で蓄積していた微細な筋肉の強張りや、精神的な摩耗が、黒い霧となって毛穴から溶け出していくのが目視できる。
それらは湯に触れた瞬間に浄化され、光の泡となって消えていった。

このお湯、ただの水ではない。
おそらく、地下深くを流れる『星の動脈』と呼ばれるマナの奔流を、そのまま汲み上げているのだろう。
普通の人間が入れば、魔力中毒でショック死するか、あるいは細胞が活性化しすぎて肉塊になって弾け飛ぶレベルの代物だ。
だが、世界樹の化身である私にとっては、これこそが本来の「羊水」に近い安らぎだった。
湯船に浸かっているだけで、私の魔力量が指数関数的に増大していく。
背後の空間が陽炎のように歪み、神気が物理的な圧力となって天井の星空を揺らした。

「ワフッ、ワフッ!」

クロもお湯の中でパシャパシャと楽しそうに犬かきをしている。
彼の漆黒の毛並みは、お湯を浴びるたびに濡れるどころか、夜空のように深い輝きを増していった。
星屑のような光が彼の周囲を舞い、彼が伝説の神獣であることを無言で主張している。
どうやら彼にとっても、この湯は最高級のメンテナンス装置であるらしい。

「クロ、あっちに行き過ぎちゃダメよ。深いんだから」

私が注意すると、クロは器用に方向転換し、波紋を立てながら私の元へ戻ってきた。
そして、私の肩にちょこんと顎を乗せる。
その濡れた毛の感触と、体温が心地よい。
私は『至高の石鹸』を手に取り、少しだけお湯を含ませて泡立てた。
たった一擦りしただけで、浴室全体を埋め尽くしそうなほどの濃密な泡が爆発的に膨れ上がった。
その泡は虹色に輝き、一つ一つが意思を持っているかのように肌の上を転がる。
腕を洗えば、古い角質とともに過去の因果さえも洗い流され、肌が陶器のように、いや、発光する宝石のように磨き上げられていく。

あまりの気持ちよさに、意識がとろとろと溶け出しそうになった時だ。
脱衣所の方から、バタバタという慌ただしい足音が聞こえてきた。

「エルナ様、エルナ様ぁぁっ! ご報告がございます! 氷竜アズールの件で……あッ!?」

勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは、賢者アルバスだった。
彼は湯気越しに私の姿を捉えた瞬間、まるでメドゥーサを見たかのように石化した。
いや、石化ではない。
私の裸体から放たれる、直視不可能なほどの神々しいオーラに網膜を焼かれたのだ。
彼の両目からツーと涙が流れ落ちる。

「あ、ああああ……っ! 目が、目がぁぁぁ!」
「か、神罰……! これは神罰です! 女神様の入浴シーンという、宇宙創成以来の禁忌を目撃してしまった!」
「我が薄汚れた眼球が、聖なる光に耐えきれず浄化されていくぅぅ!」

アルバスはその場に崩れ落ち、床を転げ回りながら両手で顔を覆った。
彼の身体からも、私の湯気にあてられたのか、黒い煤のようなものが抜けて若返りが加速しているのが見える。
相変わらず騒がしい老人だ。
私は泡だらけの手で、呆れたようにため息をついた。

「大袈裟ね、アルバス。それより、氷竜の方はどうなったの?」
「は、はいぃぃっ! ひれ伏しながらご報告いたしますぅ!」

アルバスは床に額をめり込ませる勢いで土下座をし、震える声で叫んだ。

「氷竜アズールは、裏庭に建設した氷穴の中に、驚くほど大人しく収まりました!」
「彼、自分の魔力をエルナ様のために捧げられるのが、無上の喜びであるようで……」
「『我はついに生きる意味を見出した』と涙を流し、今は尻尾を振って極上の氷魔法石を量産しております!」
「その生産効率たるや、国家予算十年分を一日で稼ぎ出す勢いです!」

「そう。それは良かったわ。じゃあ、今夜のデザートは彼の氷を使った冷たいシャーベットにしましょうか」

私が笑うと、アルバスは感極まったのか、そのまま床を水浸しにするほどの勢いで号泣し始めた。

「私は幸せ者です……! 伝説の厄災をエアコン兼製氷機扱いし、神の湯に浸かるお方に仕えられるとは!」
「このアルバス、残りの寿命すべてを捧げて、シャーベットの器を磨き上げますぞぉぉ!」

「もういいから、アルバスも向こうで休んでて。後で美味しいおやつをあげるから」

私は手を振って、興奮冷めやらぬアルバスを浴室から追い出した。
脱衣所の扉が閉まり、再び静寂が戻ってくる。
クロが「やれやれ」といった様子で、短く鼻を鳴らした。

ふと、浴室の壁面に設置されていた巨大な姿見――魔法の鏡が、勝手に起動していることに気づいた。
曇っていた鏡面が波打ち、遠く離れた場所の映像を鮮明に映し出し始める。
そこには、砂塵が舞い、ひび割れた大地で絶望に暮れるラインハルト王国の様子が映っていた。
まるでお節介なニュース番組だ。
今の私には、関係のない世界の話なのに。

映像の中、かつて私が手入れをしていた王宮の庭園は、見るも無惨な姿になっていた。
鮮やかだった薔薇は黒く炭化し、地面は毒々しい紫色のカビに覆われている。
噴水からはヘドロのような泥水が湧き出し、悪臭が画面越しに伝わってきそうなほどだ。
その中心で、ライナルト王太子が枯れ果てた薔薇の茎を握りしめ、発狂したように叫んでいる姿が見えた。

「なぜだ! なぜ花が咲かん! なぜ水が腐る!」
「エルナがいなくなってから、まだ数週間だぞ!? これほど早く、国の備蓄が尽きるなどありえん!」
「リリア! お前は聖女だろう! なんとかしろ! 魔力を出せ!」

王太子は、足元にうずくまっている婚約者を蹴り飛ばした。
リリアはボロボロのドレスを着て、泥まみれの地面を這いずり回っている。
彼女の自慢だったピンク色の髪は、栄養失調でパサパサになり、抜け落ちて斑になっていた。
かつての愛らしい美貌は見る影もなく、頬はこけ、眼だけがギョロリと異様に輝いている。

「無理よ……! もう魔力が一滴も残っていないのよぉ!」
「私の祈りなんて、この乾いた大地には水滴一つにもならない……!」
「エルナの残り香だけで保っていたなんて、聞いてないわよぉぉ!」

リリアは鼻水を垂らしながら絶叫し、地面の泥を口に含んでいる。
飢えと渇きで、正気を失いつつあるようだ。
民衆もまた、王城の門に押し寄せ、暴動を起こしかけている。
彼らの顔には死相が浮かび、明日をも知れぬ命を呪っていた。
私が無自覚に垂れ流していた「恵み」が完全に枯渇した今、この国に残されたのは緩やかな滅びのみ。
当然の報いだ。
恩を仇で返した彼らに、慈悲を与えるつもりはない。

私は鏡の中の地獄絵図を見ても、心の底から何も感じなかった。
怒りも、憐れみもない。
ただ、目の前のクロの毛並みの方が、よほど重要で価値のあるものに思えた。
お湯が冷めないうちに――といっても、この魔法の湯は永遠に冷めないけれど――髪を洗わなきゃ。

「クロ、次は頭を洗ってあげるわね」

私は濡れた指先で鏡の表面をなぞり、不快な映像をブラックアウトさせた。
闇に沈んだ鏡には、神々しいまでに美しく磨き上げられた私と、幸せそうに目を細めるクロの姿だけが映っている。
それだけで十分だ。
私は至高の石鹸を再び泡立て、クロの頭にこんもりと乗せた。
クロが気持ちよさそうに「クゥ~ン」と甘えた声を上げる。
その声こそが、私にとっての世界の全てだった。
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