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「いやはや、それにしてもこの揚げ浸しは絶品ですな。酒がいくらでも進んでしまう」
金さんは上機嫌で杯を重ねながら、満足そうに目を細めている。
その顔は町奉行の厳しいものではなく、ただの酒好きな人の好い男の顔だ。
「お気に召したようで何よりですわ。夏野菜は、身体にこもった熱を取ってくれますから今の季節にはもってこいですよ」
「うむ。理に適っている。美味いだけでなく身体にも良い。おし乃さんの料理はまさに医食同源ですな」
金さんはそう言って、からからと笑った。
「そういえばおし乃さん。最近、近所の寺子屋の先生が少し困っているようでしてな」
ふと金さんが思い出したように、そんな話を切り出した。
「寺子屋の先生でございますか?」
「ええ。松野先生といってなまだ若いが、とても熱心で子供たちからも慕われている、評判の良い先生なのですよ。その先生がこのところ、どうにも元気がなくてな。先日見回りついでに様子を伺ったところ、深いため息をついておりました」
「まあ。何かお悩みごとでも抱えていらっしゃるのかしら」
「どうやら子供たちのことで、頭を悩ませているようでして。この暑さで子供たちが揃いも揃って夏バテ気味で食が細ってしまっている、と。勉強にもどうにも身が入らない様子で、どうしたものかとほとほと困り果てておりました」
なるほど。子供たちの夏バテか。
それはどんな親でも、そして先生でも頭を悩ませる問題だろう。
子供というのは大人よりも正直だ。
身体が受け付けないものは素直に食べようとはしない。
「それで金さんは、何か良いお知恵を?」
私が尋ねると金さんは、にやりとこちらを見て笑った。
「ええ。もちろんこう申し上げておきましたとも。『それならば深川に、どんな頑固な腹の虫もたちどころに鳴かせてしまう、腕利きの料理人がおりますぞ』とね」
「まあ金さんったら」
その言葉に私は思わず苦笑してしまった。
どうやらまた一つ、厄介なそれでいて楽しそうな仕事が舞い込んできそうだ。
そして金さんの予告通り、その日の夕方。
やわらぎ亭の暖簾を、一人の若い男性がおずおずとくぐった。
真面目そうな顔立ちに着流し姿。けれどその着こなしにはどこか育ちの良さが滲み出ている。
金さんの話していた寺子屋の松野先生に違いなかった。
「あ、あの……。こちらやわらぎ亭さんで、お間違いないでしょうか……?」
その声は少し緊張しているようだった。
「はいさようでございます。どうぞこちらへ」
私がにこやかに迎え入れると松野先生は、ほっとしたように息をつき深々と頭を下げた。
「私、この近くで寺子屋の指南役を務めております、松野と申します。本日お奉行様……いえ遊び人の金さんから、こちらの女将様なら何か良いお知恵を拝借できるやもしれぬと伺いまして……」
「ええお話は、金さんからかいつまんで伺っておりますわ。子供たちが夏バテ気味で、お困りだとか」
私の言葉に松野先生は、ぱっと顔を輝かせた。
「は、はい!そうなのです!お恥ずかしい話なのですが子供たちが、冷たい水菓子や喉越しの良い素麺ばかりを欲しがりまして……。親御さんたちがせっかく作ってくださったお弁当にも、なかなか箸をつけようとしないのです。これでは栄養も偏ってしまいますし何より、夏を乗り切るための体力がつきません。何か……何か子供たちが、喜んで食べてくれるようなそんな夏向きの料理はございませんでしょうか?」
その真剣な眼差しからは子供たちを心から案じる、優しい気持ちが伝わってくる。
この先生は本当に子供たちのことが好きなのだろう。
「お任せくださいな先生」
私は力強く、そして優しく微笑んだ。
「子供たちが、お弁当の時間を心待ちにするようになるような。そしてお弁当箱を開けた瞬間にわっと歓声が上がるような、とっておきの夏の子供弁当をお作りいたしますわ」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ本当ですとも。明日お昼の刻に、寺子屋までお届けいたしましょう。人数分のお弁当を」
私の言葉に松野先生の顔が、みるみるうちに希望の色に染まっていく。
「あ、ありがとうございます……!本当にありがとうございます……!一体何とお礼を申し上げたら……」
「お礼などとんでもない。子供たちの元気な笑顔が、何よりの礼でございますよ」
松野先生は何度も何度も頭を下げると、晴れやかな顔で帰っていった。
その後ろ姿を見送りながら私の料理人としての魂に、またぽっと温かい火が灯るのを感じていた。
「良太!」
「はいおし乃さん!」
「明日は腕によりをかけるわよ!江戸一番の子供弁当を作るわ!」
「はいっ!」
私と良太は顔を見合わせ、力強く頷き合った。
炊き場の釜の火が私たちの意気込みに応えるように、ぱちりと高く爆ぜた。
翌朝私と良太は、いつもより早くから炊き場に立っていた。
子供たちの笑顔を思い浮かべながら、お弁当の準備に取り掛かる。
まずはご飯から。
ただの白いご飯では面白くない。
私は炊きたてのご飯に、甘辛く煮た鶏そぼろと綺麗な黄色い炒り卵、そしてさっと塩茹でした枝豆を混ぜ込み、彩り豊かな三色ご飯を作った。
これを食べやすいように小さく、丸いおむすびに一つ一つ、丁寧に握っていく。
「うわぁ……。これだけでもう、すごく美味しそうです」
良太が感心したように、おむすびを眺めている。
「ふふ、見た目も大切なおかずの一つよ。特に子供はね」
次に、おかずの準備。
これもまた子供たちが、見て食べて楽しくなるような、そんな工夫を凝らす。
まずは卵焼き。
出汁をたっぷり効かせたやわらぎ亭自慢の卵焼きを、星の形に可愛らしく型抜きする。
それから鶏のから揚げ。
醤油と生姜でしっかりと下味をつけた鶏肉を、かりっと香ばしく揚げる。
冷めても美味しいように、少しだけ濃いめの味付けにするのがこつだ。
「良太。そちらの人参と隠元の飾り切りは、できたかしら?」
「はい!お花の形と葉っぱの形です!」
「まあ上手ね。ではそれをさっと煮浸しにしておいてちょうだい。彩りも綺麗になるわ」
その他にもタコの形に飾り切りした赤いウインナーや、甘く煮たかぼちゃなど色とりどりのおかずを、小さな弁当箱の中にパズルのように美しく、そして楽しく詰めていく。
最後にデザート。
寒天と季節の果物を使った、きらきらと輝く涼しげな水菓子だ。
これなら甘いものが好きな子供たちもきっと喜んでくれるだろう。
「……よし、できたわ!」
色とりどりの、宝石箱のようなお弁当。
蓋を開けた時の子供たちの、驚きと喜びの顔が目に浮かぶようだ。
「おし乃さん……。俺なんだか感動してしまいました……。お弁当ってこんなに人の心を、わくわくさせるものなんですね……」
良太の目も潤んでいる。
「ええ。お弁当はただの食事じゃない。作る人の愛情が詰まった、贈り物なのよ」
私と良太は出来上がったお弁当を、一つ一つ丁寧に風呂敷で包むと連れ立って寺子屋へと向かった。
寺子屋からは子供たちの、元気な声が聞こえてくる。
その声を聞いているだけで私の心も弾んでくる。
「松野先生やわらぎ亭です。お弁当をお届けにまいりました」
私たちが声をかけると松野先生が、ぱっと明るい顔で私たちを迎えてくれた。
「おし乃さん!良太さん!お待ちしておりました!さあどうぞ、中へ!」
寺子屋の中では子供たちが机を並べて、静かにお弁当の時間を待っていた。
しかしその表情はどこか、浮かない様子だ。
やはり食欲がないのだろうか。
「みんな、お待ちかねのお昼の時間だよ!今日はやわらぎ亭さんが君たちのために、特別なお弁当を作ってきてくださったんだ!」
松野先生が元気よくそう言うと子供たちは、不思議そうな顔で私たちの方を見た。
私と良太は子供たち一人一人に、お弁当を配っていく。
「さあみんな。どうぞ召し上がれ」
私がにっこりと微笑みかけると子供たちは、おずおずと風呂敷の包みを解き始めた。
そしてお弁当の蓋を開けた、その瞬間。
「「「うわああああああっ!!」」」
寺子屋中に割れんばかりの、大きな歓声が響き渡った。
「なんだこれ!すっげえ!」
「きらきらしてる!お星様が入ってるよ!」
「お花も葉っぱもある!可愛い!」
子供たちの目は宝石を見つけたかのように、きらきらと輝いている。
さっきまでの元気のなかった様子はどこへやら。
誰もが満面の笑みを浮かべてお弁当箱を、食い入るように見つめていた。
「さあ冷めないうちにどうぞ」
その一言を合図に子供たちは、一斉に箸をつけた。
小さな口でおむすびを頬張り、唐揚げにかぶりつき、卵焼きを嬉しそうに口に運ぶ。
「おいしい!」
「先生これ、すっごく美味しいよ!」
「毎日これがいい!」
あちこちから弾むような声が上がる。
さっきまで食が細いと悩んでいたのが嘘のようだ。
どの子も夢中になってお弁当を平らげていく。
その光景を松野先生はただ呆然と、しかしこの上なく幸せそうな顔で見つめていた。
その目には大粒の涙が光っている。
やがてあっという間に、全てのお弁当箱は空っぽになった。
米粒一つ残っていない。
「「「ごちそうさまでした!」」」
子供たちの元気な声が、青空に高々と響き渡った。
その声は私と良太の心に、何よりも嬉しい温かいご馳走となって染み渡っていくのだった。
金さんは上機嫌で杯を重ねながら、満足そうに目を細めている。
その顔は町奉行の厳しいものではなく、ただの酒好きな人の好い男の顔だ。
「お気に召したようで何よりですわ。夏野菜は、身体にこもった熱を取ってくれますから今の季節にはもってこいですよ」
「うむ。理に適っている。美味いだけでなく身体にも良い。おし乃さんの料理はまさに医食同源ですな」
金さんはそう言って、からからと笑った。
「そういえばおし乃さん。最近、近所の寺子屋の先生が少し困っているようでしてな」
ふと金さんが思い出したように、そんな話を切り出した。
「寺子屋の先生でございますか?」
「ええ。松野先生といってなまだ若いが、とても熱心で子供たちからも慕われている、評判の良い先生なのですよ。その先生がこのところ、どうにも元気がなくてな。先日見回りついでに様子を伺ったところ、深いため息をついておりました」
「まあ。何かお悩みごとでも抱えていらっしゃるのかしら」
「どうやら子供たちのことで、頭を悩ませているようでして。この暑さで子供たちが揃いも揃って夏バテ気味で食が細ってしまっている、と。勉強にもどうにも身が入らない様子で、どうしたものかとほとほと困り果てておりました」
なるほど。子供たちの夏バテか。
それはどんな親でも、そして先生でも頭を悩ませる問題だろう。
子供というのは大人よりも正直だ。
身体が受け付けないものは素直に食べようとはしない。
「それで金さんは、何か良いお知恵を?」
私が尋ねると金さんは、にやりとこちらを見て笑った。
「ええ。もちろんこう申し上げておきましたとも。『それならば深川に、どんな頑固な腹の虫もたちどころに鳴かせてしまう、腕利きの料理人がおりますぞ』とね」
「まあ金さんったら」
その言葉に私は思わず苦笑してしまった。
どうやらまた一つ、厄介なそれでいて楽しそうな仕事が舞い込んできそうだ。
そして金さんの予告通り、その日の夕方。
やわらぎ亭の暖簾を、一人の若い男性がおずおずとくぐった。
真面目そうな顔立ちに着流し姿。けれどその着こなしにはどこか育ちの良さが滲み出ている。
金さんの話していた寺子屋の松野先生に違いなかった。
「あ、あの……。こちらやわらぎ亭さんで、お間違いないでしょうか……?」
その声は少し緊張しているようだった。
「はいさようでございます。どうぞこちらへ」
私がにこやかに迎え入れると松野先生は、ほっとしたように息をつき深々と頭を下げた。
「私、この近くで寺子屋の指南役を務めております、松野と申します。本日お奉行様……いえ遊び人の金さんから、こちらの女将様なら何か良いお知恵を拝借できるやもしれぬと伺いまして……」
「ええお話は、金さんからかいつまんで伺っておりますわ。子供たちが夏バテ気味で、お困りだとか」
私の言葉に松野先生は、ぱっと顔を輝かせた。
「は、はい!そうなのです!お恥ずかしい話なのですが子供たちが、冷たい水菓子や喉越しの良い素麺ばかりを欲しがりまして……。親御さんたちがせっかく作ってくださったお弁当にも、なかなか箸をつけようとしないのです。これでは栄養も偏ってしまいますし何より、夏を乗り切るための体力がつきません。何か……何か子供たちが、喜んで食べてくれるようなそんな夏向きの料理はございませんでしょうか?」
その真剣な眼差しからは子供たちを心から案じる、優しい気持ちが伝わってくる。
この先生は本当に子供たちのことが好きなのだろう。
「お任せくださいな先生」
私は力強く、そして優しく微笑んだ。
「子供たちが、お弁当の時間を心待ちにするようになるような。そしてお弁当箱を開けた瞬間にわっと歓声が上がるような、とっておきの夏の子供弁当をお作りいたしますわ」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ本当ですとも。明日お昼の刻に、寺子屋までお届けいたしましょう。人数分のお弁当を」
私の言葉に松野先生の顔が、みるみるうちに希望の色に染まっていく。
「あ、ありがとうございます……!本当にありがとうございます……!一体何とお礼を申し上げたら……」
「お礼などとんでもない。子供たちの元気な笑顔が、何よりの礼でございますよ」
松野先生は何度も何度も頭を下げると、晴れやかな顔で帰っていった。
その後ろ姿を見送りながら私の料理人としての魂に、またぽっと温かい火が灯るのを感じていた。
「良太!」
「はいおし乃さん!」
「明日は腕によりをかけるわよ!江戸一番の子供弁当を作るわ!」
「はいっ!」
私と良太は顔を見合わせ、力強く頷き合った。
炊き場の釜の火が私たちの意気込みに応えるように、ぱちりと高く爆ぜた。
翌朝私と良太は、いつもより早くから炊き場に立っていた。
子供たちの笑顔を思い浮かべながら、お弁当の準備に取り掛かる。
まずはご飯から。
ただの白いご飯では面白くない。
私は炊きたてのご飯に、甘辛く煮た鶏そぼろと綺麗な黄色い炒り卵、そしてさっと塩茹でした枝豆を混ぜ込み、彩り豊かな三色ご飯を作った。
これを食べやすいように小さく、丸いおむすびに一つ一つ、丁寧に握っていく。
「うわぁ……。これだけでもう、すごく美味しそうです」
良太が感心したように、おむすびを眺めている。
「ふふ、見た目も大切なおかずの一つよ。特に子供はね」
次に、おかずの準備。
これもまた子供たちが、見て食べて楽しくなるような、そんな工夫を凝らす。
まずは卵焼き。
出汁をたっぷり効かせたやわらぎ亭自慢の卵焼きを、星の形に可愛らしく型抜きする。
それから鶏のから揚げ。
醤油と生姜でしっかりと下味をつけた鶏肉を、かりっと香ばしく揚げる。
冷めても美味しいように、少しだけ濃いめの味付けにするのがこつだ。
「良太。そちらの人参と隠元の飾り切りは、できたかしら?」
「はい!お花の形と葉っぱの形です!」
「まあ上手ね。ではそれをさっと煮浸しにしておいてちょうだい。彩りも綺麗になるわ」
その他にもタコの形に飾り切りした赤いウインナーや、甘く煮たかぼちゃなど色とりどりのおかずを、小さな弁当箱の中にパズルのように美しく、そして楽しく詰めていく。
最後にデザート。
寒天と季節の果物を使った、きらきらと輝く涼しげな水菓子だ。
これなら甘いものが好きな子供たちもきっと喜んでくれるだろう。
「……よし、できたわ!」
色とりどりの、宝石箱のようなお弁当。
蓋を開けた時の子供たちの、驚きと喜びの顔が目に浮かぶようだ。
「おし乃さん……。俺なんだか感動してしまいました……。お弁当ってこんなに人の心を、わくわくさせるものなんですね……」
良太の目も潤んでいる。
「ええ。お弁当はただの食事じゃない。作る人の愛情が詰まった、贈り物なのよ」
私と良太は出来上がったお弁当を、一つ一つ丁寧に風呂敷で包むと連れ立って寺子屋へと向かった。
寺子屋からは子供たちの、元気な声が聞こえてくる。
その声を聞いているだけで私の心も弾んでくる。
「松野先生やわらぎ亭です。お弁当をお届けにまいりました」
私たちが声をかけると松野先生が、ぱっと明るい顔で私たちを迎えてくれた。
「おし乃さん!良太さん!お待ちしておりました!さあどうぞ、中へ!」
寺子屋の中では子供たちが机を並べて、静かにお弁当の時間を待っていた。
しかしその表情はどこか、浮かない様子だ。
やはり食欲がないのだろうか。
「みんな、お待ちかねのお昼の時間だよ!今日はやわらぎ亭さんが君たちのために、特別なお弁当を作ってきてくださったんだ!」
松野先生が元気よくそう言うと子供たちは、不思議そうな顔で私たちの方を見た。
私と良太は子供たち一人一人に、お弁当を配っていく。
「さあみんな。どうぞ召し上がれ」
私がにっこりと微笑みかけると子供たちは、おずおずと風呂敷の包みを解き始めた。
そしてお弁当の蓋を開けた、その瞬間。
「「「うわああああああっ!!」」」
寺子屋中に割れんばかりの、大きな歓声が響き渡った。
「なんだこれ!すっげえ!」
「きらきらしてる!お星様が入ってるよ!」
「お花も葉っぱもある!可愛い!」
子供たちの目は宝石を見つけたかのように、きらきらと輝いている。
さっきまでの元気のなかった様子はどこへやら。
誰もが満面の笑みを浮かべてお弁当箱を、食い入るように見つめていた。
「さあ冷めないうちにどうぞ」
その一言を合図に子供たちは、一斉に箸をつけた。
小さな口でおむすびを頬張り、唐揚げにかぶりつき、卵焼きを嬉しそうに口に運ぶ。
「おいしい!」
「先生これ、すっごく美味しいよ!」
「毎日これがいい!」
あちこちから弾むような声が上がる。
さっきまで食が細いと悩んでいたのが嘘のようだ。
どの子も夢中になってお弁当を平らげていく。
その光景を松野先生はただ呆然と、しかしこの上なく幸せそうな顔で見つめていた。
その目には大粒の涙が光っている。
やがてあっという間に、全てのお弁当箱は空っぽになった。
米粒一つ残っていない。
「「「ごちそうさまでした!」」」
子供たちの元気な声が、青空に高々と響き渡った。
その声は私と良太の心に、何よりも嬉しい温かいご馳走となって染み渡っていくのだった。
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