動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

文字の大きさ
12 / 33

12

しおりを挟む
次の日の朝、俺は一つの大事な事実に気づいた。
俺は、お金を持っていない。
この別館はタダで借りられている。
今のところ食料も、森で調達できている。
でも、この先ずっとというわけにはいかないだろう。
ちゃんとした寝具とか、調理器具とか、買いたいものもたくさんある。
それに、クマ子の食費も馬鹿にならなそうだ。
あいつ、中庭の木の皮を、全部はいで食べていたし。
ルビやコロの、栄養も考えないといけない。
「よし、ドリンさんに相談しに行こう」
俺は三匹(と一頭)に留守番を頼んだ。
ギルドへと、一人で向かった。
クマ子には『中庭の石以外は食べちゃダメだぞ』と、強く言っておいた。

「おはようございます、ドリンさん」
ギルドの執務室を、そっと訪ねた。
「……おお、ユウ殿か。どうした? また何か……いや、なんでもない」
ドリンさんは、俺の顔を見て一瞬固まった。
「今日は、クマ子は一緒じゃないんだな」
彼は、俺の背後を確認して、少しほっとした顔をした。
「はい。あの、ドリンさん。俺、働きたいんですが、何かいい仕事はありませんか」
「仕事?」
「はい。この町で、何か飼育員みたいな仕事ってありませんか?」
俺がそう言うと、ドリンさんは大きなため息をついた。
「飼育員、か……。お主の世話する『動物』のレベルが、高すぎてな……」
「そうですか?」
「この町どころか、この国にも、そんな仕事はないと思うぞ……」
「ええー、そうなんですか。困ったな……」
俺がしょんぼりしていると、ドリンさんは「うーむ」と唸り、何かを考え始めた。
「……待てよ。ユウ殿。お主、スキルで魔物と話せるんだったな?」
「はい。【万物言語理解】です。植物とも話せますよ」
「それだ! それなら、『素材採取』の依頼はどうだ?」
「素材採取、ですか?」
「うむ。ギルドには、森から特定の薬草や、魔物の素材(毛皮や牙など)を取ってくる依頼がたくさんある」
「はい」
「普通は魔物を倒して、素材を剥ぎ取るんだが……」
「あ、なるほど!」
俺は、手を打った。
ドリンさんの言いたいことが、すぐに分かった。
「魔物さんにお願いして、『その毛皮、少し分けてくれませんか?』とか、交渉すればいいんですね!」
「……まあ、そういうことだ。お主なら、できるかもしれん」
ドリンさんは、ちょっと遠い目をしていた。
でも、俺にとっては天職かもしれない。
動物たちと交渉して、素材を分けてもらう。
平和的で、素晴らしい仕事だ。
「それなら、まずは冒険者登録をしろ。ギルドの依頼として、正式に受けられるようになる」
「はい! お願いします!」

俺は受付カウンターに連れて行かれた。
受付のお姉さんは、俺の顔とドリンさんの顔を交互に見た。
少し、緊張しているようだった。
「え、えーっと、ギルドマスターのご紹介ですね。ユウ様。では、こちらの水晶に手を触れて、魔力測定をお願いします」
俺は言われた通り、水晶玉に手を触れた。
しかし、水晶はうんともすんとも言わない。
ぴかっとも光らなかった。
「あれ? すみません、反応しないみたいです」
「え? あ……はい。魔力、ゼロ、ですね……。戦闘能力、なし、と」
お姉さんは、困惑しながら書類に何かを書き込んでいる。
周りで見ていた冒険者たちが、くすくすと笑い始めた。
「おい、ギルドマスターの紹介だから、どんな大物が来たかと思えば」
「魔力ゼロのFランクだってよ。ひどいな」
「まあ、ギルマスも物好きだな」
「えっと……ランクは一番下のFランクからのスタートになります。職業は……テイマー、でよろしいですか?」
「いえ、俺は飼育員です」
「……しいく、いん……?」
お姉さんは、聞いたこともない職業に、首を傾げた。
「はい。動物のお世話をする仕事です」
「……(ドリンさんの方を見る)」
ドリンさんは、こくりと頷いた。
「わ、分かりました……。職業、飼育員……。はい、登録完了です。こちらがギルドカードになります」
こうして俺は、異世界で「Fランクの飼育員冒険者」としてデビューすることになった。
ドリンさんは、「(よしよし、魔力ゼロなら変に目立たんだろう)」と、満足そうに頷いていた。

俺はさっそく、一番簡単だという薬草採取の依頼を受けることにした。
「森に生えている『月光草』を5本」という内容だ。
報酬は銅貨5枚。
よし、頑張るぞ。
俺はぷるんだけを頭に乗せて、森にやってきた。
ルビやコロ、クマ子がいると、他の魔物が怖がってしまう。
交渉どころじゃなくなるかもしれないからな。
「さて、と。薬草さーん、月光草さーん、どこですかー?」
俺がスキルで呼びかけると、すぐに返事があった。
『はーい! こっちにいまーす!』
『でも、ちかくに、こわーいイノシシさんがいて、でられませーん!』
声がする方へ行くと、綺麗な白い花(月光草)が、茂みのかげで震えていた。
そして、その前には、牙の生えた巨大なイノシシ(ワイルドボア)が、鼻をフンフン鳴らしている。
どうやら、この辺りが縄張りらしい。
ワイルドボアは俺に気づくと、目を赤くして威嚇してきた。
『グルルル! ニンゲン! オレノナワバリ、ハイル! クウ!』
「あ、どうも、こんにちは。すみません、そこの月光草さんを、ちょっとだけ採らせてもらえませんか? すぐに帰りますから」
俺は笑顔で、交渉を試みた。
『ダマレ! オマエハ、エサダ!』
ワイルドボアは、そう叫ぶと、俺に向かって猛然と突進してきた。
すごい迫力だ。
でも、俺は慌てない。
「ぷるん。あのイノシシさんの足元に、ちょっとだけ、ネバネバするやつ、お願いできるか?」
『はーい! まかせて!』
俺の頭の上から、ぷるんがぴょんと飛び降りた。
そして、突進してくるワイルドボアの進路上に、青い粘液をぺちゃっと吐き出した。
ワイルドボアは、それに気づかない。
粘液の上に、思いっきり踏み込んだ。
ズベシャッ!
「グエッ!?」
ワイルドボアは、見事に足を取られた。
そのままの勢いで地面を滑り、盛大にすっ転んだ。
そして、慌てて起き上がろうとする。
だが、足が粘液に張り付いて、もがいている。
『な、なんだこれ!? あしが! あしが、うごかない!』
「すみませんね。ちょっと通りますよ」
俺はワイルドボアの横を通り過ぎ、月光草さんのところへ行った。
「ごめんね、怖かったね。5本だけ、いただきます」
『は、はい! どうぞ! たすけてくれて、ありがとう!』
俺は丁寧に月光草を採取した。
振り返ると、ワイルドボアがまだもがいていた。
あれじゃあ、他の魔物に襲われちゃうかもしれない。
それは、いくらなんでも可哀想だ。
「ぷるん。あのネバネバ、どうやったら取れるんだ?」
『んー? あれはね、みずじゃおちないよ。でも、ぷるんがたべたら、すぐきれいになる!』
「そうか! じゃあ、お願いできるか?」
『はーい!』
ぷるんはぴょんぴょんと跳ねて、ワイルドボアの足元に行った。
そして、自分の出した粘液を、ぺろぺろと食べ(吸収し)始めた。
ワイルドボアは、その光景を見て、恐怖で真っ青になっている。
『ひいっ!? や、やめろ! スライムが! スライムが、オレのあしをたべてる! とける! あしがとけるぅぅぅ!』
ワイルドボアは、あまりの恐怖に白目をむいた。
そのまま、気を失ってしまった。
ぷるんは、きれいに粘液を回収し終え、満足そうに戻ってきた。
『ごちそうさま!』
「あれ? 寝ちゃった。まあ、いいか。よし、ぷるん、帰るぞ」
俺は月光草を手に、ギルドへと戻った。
受付のお姉さんは、俺がこんなに早く戻ってきたので驚いていた。
「あ、ユウさん。もう終わったんですか? ……あれ? 薬草、すごく状態がいいですね」
「そうですか?」
「はい。傷一つないですし、泥もついていない……」
「ええ。イノシシさんにお願いして、無事に採れましたから」
「(イノシシに……お願い……?) は、はい。依頼達成です。こちら、報酬の銅貨5枚です」
俺は、初めて自分の力で稼いだお金を握りしめた。
「やったぞ、ぷるん! これで、みんなのご飯が買えるぞ!」
『わーい!』
俺が喜んでいるのを、ギルドマスターのドリンが、柱の陰からじっと見ていた。
彼は、また胃を押さえていた。
俺の冒険者(飼育員)生活は、こうして始まったのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

処理中です...