47 / 132
第10章:共鳴する魂の家族(リアル・コネクション編)
第46話:啜れ、魂の一杯(30代・ラーメン狂のリスナー)
しおりを挟む
第9章で世界を相手に「マジキチ流・マインドフルネス」をぶち上げた俺は、今やネットの深淵から現実の路地裏まで、その影響力をじわじわと広げつつあった。
俺の周りには、理屈や常識では割り切れない「業」を抱えた奴らが、磁石に吸い寄せられる鉄屑のように集まってくる。第10章の幕開けにふさわしい、濃い客がやってきたのはそんな折だった。
深夜の大阪。
ネオンの光が湿ったアスファルトに反射し、都市の毒気を色鮮やかに映し出している。俺はいつものように八キロ行軍の途中にあったが、その夜はどうにも腹が鳴って仕方がなかった。山籠りで研ぎ澄まされた俺の野生が、強烈な「塩分と脂」を求めて吠えていたのだ。
そんな時、前方に行列のできているラーメン屋を見つけた。看板には「SNSで話題! 究極の一杯」という文字が躍っている。それを見た瞬間、俺の胃袋は期待で跳ね上がるどころか、激しい「いらち」の拒絶反応を起こした。
俺は生粋の関西人だ。飲食店で待たされるのが嫌な、典型的な「いらち」なんだよ。行列のできる店に並ぶ? そこまでして食べたいと思う感覚が俺の辞書には存在しねえ。待たされるのはコンビニのレジでも、遊園地のアトラクションでも同じだ。俺の人生の時間は有限なんだよ。数分の無駄が、俺の魂を削っていく。立ち食いそばのように、頼んだら数分で出てくる。それが俺の理想であり、食に対する誠実さだ。
その行列の先頭付近に、スマホを片手にイヤホンを装着し、画面を食い入るように見つめながら並んでいる一人の女がいた。
30代の女性リスナー「Sora」だ。彼女は毎日三食ラーメンを食い、その一杯一杯を記録することに人生を賭けている。だが、その顔はどこか義務感に支配され、楽しんでいるようには見えなかった。俺は行列の脇を通り過ぎようとして足を止め、彼女の肩を叩いた。
「おい、そこまでして『話題』を食いたいか?」
Soraは驚いて顔を上げた。
「あ、組長!? なんでここに……。だってお昼に配信で言ってたじゃないですか、本能に従えって。だから私、今一番バズってるこの店に一時間並んでるんです。この行列を制覇するのが私の『生きる証』なんです」
俺は鼻で笑い、彼女の腕を掴んで行列から引きずり出した。
「一時間? 冗談じゃねえ。そんなに待ってたら、俺の胃袋が暴動を起こして死んじまうわ。行列に並んでイライラしながら食う飯に、何の価値がある? 腹が減った瞬間に、最短ルートで食う。それが食い物に対する最大の礼儀だ。ついてこい、本物の『食』の戦場を教えてやる」
困惑するSoraを連れて俺が向かったのは、大通りから一本入った、何の変哲もない老舗のラーメン屋だった。
行列なんてない。だが、中からは確かなスープの香りが漂っている。暖簾をくぐると、頑固そうな親父が一人で切り盛りしていた。
「へい、らっしゃい」
俺はカウンターに座るなり、迷わず注文した。
「中華そば二つ。麺硬め。それと……俺は替え玉も行くぞ」
注文からわずか三分。目の前に、黄金色に輝くスープの一杯が差し出された。これだ。このスピードこそが芸術であり、敬意だ。Soraが驚いたように時計を見た。
「……早い。さっきの店なら、まだ三メートルも進んでないのに」
「当たり前だ。早さは鮮度だ。そして、鮮度は礼儀だ」
Soraが箸を持とうとした時、彼女は無意識にポケットからスマホを取り出し、耳にはイヤホンを装着したまま、動画を再生しようとした。
現代の連中の「ながら食い」だ。俺は彼女の手を鋭く制した。
「……外せ。その耳のゴミをな。そしてスマホをしまえ」
「えっ、でもいつもこうして動画を見ながらじゃないと、落ち着かなくて……」
「音楽を聞きながら、動画を見ながら飯を食う。そんな奴は言語道断だ。しっかりと味を楽しめ。聴覚や視覚に神経を奪われれば、味覚は死ぬ。何より、魂を込めてこれを作ってくれた親父さんに対して失礼千万だろうが。この一杯には、この親父の数十年が詰まってるんだぞ。それを余計な雑音で汚すな。全神経を舌に集中させろ。情報を食うな、味を食え」
Soraはビクリと肩を揺らし、イヤホンを外してスマホを鞄の奥深くに沈めた。
「あと、テイクアウトなんてのも論外だ。持って帰る間に冷め、鮮度が落ちる。作られたその場所で、湯気が立っているうちに胃袋へ流し込む。それが作り手と食い物の真剣勝負だ。今、この瞬間、このカウンターでお前はこのラーメンと一対一で向き合うんだ。余計な情報は一切いらん」
静寂が店を支配する。
聞こえるのは、厨房で麺が茹で上がる音と、スープが煮立つ音だけだ。Soraは覚悟を決めたように、レンゲでスープを一口啜った。一時間並んだ有名店とは違う、シンプルだが奥深い出汁の味が彼女の喉を駆け抜ける。
「……美味しい。行列に並んでスマホを見てた時より、ずっと味がはっきり分かります。私、今まで何を食ってたんだろう」
「お前は『行列』という名の承認欲求と、『動画』という名の暇つぶしを食ってたんだよ。本物のラーメンを食うってのは、こういうことだ」
だが、半分ほど食べたところで、彼女は少しだけ箸を止めた。健康診断の「E判定」という文字が、彼女の脳裏をよぎったのかもしれない。だが、彼女は助けを求めるような顔はしなかった。ただ、自分のこだわりと、現実の肉体の限界との間で静かに葛藤しているようだった。俺は自分のどんぶりを空にし、親父に向かって吼えた。「親父! 替え玉だ! 一番硬いので頼む!」
そして、隣の彼女を見据えて一喝した。
「太ることを恐れて、ラーメンが食えるか! 健康診断の数値が怖くて、自分のこだわりを裏切れるか! いいか、Sora。長生きの秘訣は、ストレスを溜めないことだ。100歳の老人が酒と煙草で元気なのは、自分に嘘をついてねえからだ。医者の言葉に従って、ビクビクしながら味のしねえ精進料理を食って、ストレスで精神を腐らせて死ぬ。それがお前の美学か?」
俺は届いた替え玉を豪快にスープに叩き込み、一気に啜り上げた。
「食うなら、自分の責任で食え。健康だの病気だの、そんな後付けの理由に振り回されるな。今、お前の目の前にあるこの一杯が、お前の人生の全てだと思えるか。その覚悟がねえなら、今すぐ箸を置いて帰れ。だが、その覚悟があるなら――一気に飲み干せ。その時、お前のE判定なんて数値は、このスープと一緒に霧散する」
Soraの瞳に、強い光が宿った。
彼女はもう一度箸を握り直し、麺を力強く手繰り寄せた。
「……そうですね。私、ラーメンが好きなんです。数値のために、この瞬間を妥協したくない。組長、私、最後まで美味しくいただきます!」
彼女は夢中で啜り始めた。ズルズルという、生命の躍動を思わせる音が店内に響き渡る。イヤホンも動画もない。ただ、麺を啜り、スープを飲み干す。その一挙手一投足に、彼女の全存在が込められていた。
最後の一滴までスープを飲み干したSoraは、顔を上げ、額の汗を拭った。その表情は、行列に並んでいた時の疲れ切った顔とは別人のように輝いていた。
「ご馳走様でした。組長、私、分かりました。早く出てくる、早く食う、全力で向き合う。これが私にとっての最高のマインドフルネスです」
俺は鼻を鳴らし、立ち上がって会計を済ませた。
「ガハハ! その顔だよ。それでこそ、俺の哲学を理解するマジキチの一員だ。いいか、適度に運動して、何でも食え。そして性欲も忘れるな。それが俺の言う真の健康だ。八キロ行軍、お前もついてくるか?」
「はい! お腹がいっぱいなので、少しでも歩いて燃やさないと!」
俺たちは店を出た。
夜の大阪の空気は、ラーメンの熱気で火照った身体に心地よかった。
Soraはもう、行列の店を振り返ることはなかった。行列に並ぶ無駄も、スマホに依存する空虚も、テイクアウトで冷めた料理も、ここにはない。あるのは、自分自身の欲求に正直になった一人の女の、力強い足音だけだ。
「Sora、人生もラーメンと同じだ。待ってちゃいけねえ。熱いうちに、自分が『これだ』と思った瞬間に飛び込め。たとえそれが不健康だと言われようが、お前の心が『美味い』と叫んでいるなら、それがお前にとっての正解なんだよ」
「はい! 私、もう行列なんて並びません。食べたい時に食べて、やりたい時にやる。それが私の新しいスタイルです!」
俺は再び歩き出した。背後でSoraが深々と頭を下げる気配を感じる。
第10章、幸先のいいスタートだ。世の中には、まだ常識や流行という名の行列に並んで、自分の魂を冷ましている奴らがごまんといる。そんな奴らの目を覚まさせ、本能の火を灯す。それが俺の、そしてStudio MAD-KICHIの使命だ。次はどんな迷える魂が、俺の前に現れるのか。どんなに時代がスマートになろうとも、俺の豆タンクのような情熱は加速し続ける。
「たってやる。……胃袋の底から、魂を震わせてな!」
深夜の行軍は続く。
街の喧騒が遠ざかり、俺の呼吸だけがリズムを刻む。腹は満たされ、心は研ぎ澄まされている。健康診断の結果? そんな紙切れ一枚で俺の生き様が決まってたまるか。
俺はポケットから、いつもの納豆巻きを取り出そうとしたが、ふと思い直して止めた。今夜は、あのラーメンの余韻をもう少しだけ楽しんでいたい。親父が丹精込めて作ったスープ、あの熱。それを汚すような真似は、一流のマジキチには許されない。
「……さて、明日もまた、美味いもんを食うために歩くとしようか」
俺の影が、街灯の下で長く、力強く伸びていた。
一杯のラーメンに魂を再起動させた女と、己の流儀を貫く豆タンク。欲望の先にこそ、真の自由がある。
俺の周りには、理屈や常識では割り切れない「業」を抱えた奴らが、磁石に吸い寄せられる鉄屑のように集まってくる。第10章の幕開けにふさわしい、濃い客がやってきたのはそんな折だった。
深夜の大阪。
ネオンの光が湿ったアスファルトに反射し、都市の毒気を色鮮やかに映し出している。俺はいつものように八キロ行軍の途中にあったが、その夜はどうにも腹が鳴って仕方がなかった。山籠りで研ぎ澄まされた俺の野生が、強烈な「塩分と脂」を求めて吠えていたのだ。
そんな時、前方に行列のできているラーメン屋を見つけた。看板には「SNSで話題! 究極の一杯」という文字が躍っている。それを見た瞬間、俺の胃袋は期待で跳ね上がるどころか、激しい「いらち」の拒絶反応を起こした。
俺は生粋の関西人だ。飲食店で待たされるのが嫌な、典型的な「いらち」なんだよ。行列のできる店に並ぶ? そこまでして食べたいと思う感覚が俺の辞書には存在しねえ。待たされるのはコンビニのレジでも、遊園地のアトラクションでも同じだ。俺の人生の時間は有限なんだよ。数分の無駄が、俺の魂を削っていく。立ち食いそばのように、頼んだら数分で出てくる。それが俺の理想であり、食に対する誠実さだ。
その行列の先頭付近に、スマホを片手にイヤホンを装着し、画面を食い入るように見つめながら並んでいる一人の女がいた。
30代の女性リスナー「Sora」だ。彼女は毎日三食ラーメンを食い、その一杯一杯を記録することに人生を賭けている。だが、その顔はどこか義務感に支配され、楽しんでいるようには見えなかった。俺は行列の脇を通り過ぎようとして足を止め、彼女の肩を叩いた。
「おい、そこまでして『話題』を食いたいか?」
Soraは驚いて顔を上げた。
「あ、組長!? なんでここに……。だってお昼に配信で言ってたじゃないですか、本能に従えって。だから私、今一番バズってるこの店に一時間並んでるんです。この行列を制覇するのが私の『生きる証』なんです」
俺は鼻で笑い、彼女の腕を掴んで行列から引きずり出した。
「一時間? 冗談じゃねえ。そんなに待ってたら、俺の胃袋が暴動を起こして死んじまうわ。行列に並んでイライラしながら食う飯に、何の価値がある? 腹が減った瞬間に、最短ルートで食う。それが食い物に対する最大の礼儀だ。ついてこい、本物の『食』の戦場を教えてやる」
困惑するSoraを連れて俺が向かったのは、大通りから一本入った、何の変哲もない老舗のラーメン屋だった。
行列なんてない。だが、中からは確かなスープの香りが漂っている。暖簾をくぐると、頑固そうな親父が一人で切り盛りしていた。
「へい、らっしゃい」
俺はカウンターに座るなり、迷わず注文した。
「中華そば二つ。麺硬め。それと……俺は替え玉も行くぞ」
注文からわずか三分。目の前に、黄金色に輝くスープの一杯が差し出された。これだ。このスピードこそが芸術であり、敬意だ。Soraが驚いたように時計を見た。
「……早い。さっきの店なら、まだ三メートルも進んでないのに」
「当たり前だ。早さは鮮度だ。そして、鮮度は礼儀だ」
Soraが箸を持とうとした時、彼女は無意識にポケットからスマホを取り出し、耳にはイヤホンを装着したまま、動画を再生しようとした。
現代の連中の「ながら食い」だ。俺は彼女の手を鋭く制した。
「……外せ。その耳のゴミをな。そしてスマホをしまえ」
「えっ、でもいつもこうして動画を見ながらじゃないと、落ち着かなくて……」
「音楽を聞きながら、動画を見ながら飯を食う。そんな奴は言語道断だ。しっかりと味を楽しめ。聴覚や視覚に神経を奪われれば、味覚は死ぬ。何より、魂を込めてこれを作ってくれた親父さんに対して失礼千万だろうが。この一杯には、この親父の数十年が詰まってるんだぞ。それを余計な雑音で汚すな。全神経を舌に集中させろ。情報を食うな、味を食え」
Soraはビクリと肩を揺らし、イヤホンを外してスマホを鞄の奥深くに沈めた。
「あと、テイクアウトなんてのも論外だ。持って帰る間に冷め、鮮度が落ちる。作られたその場所で、湯気が立っているうちに胃袋へ流し込む。それが作り手と食い物の真剣勝負だ。今、この瞬間、このカウンターでお前はこのラーメンと一対一で向き合うんだ。余計な情報は一切いらん」
静寂が店を支配する。
聞こえるのは、厨房で麺が茹で上がる音と、スープが煮立つ音だけだ。Soraは覚悟を決めたように、レンゲでスープを一口啜った。一時間並んだ有名店とは違う、シンプルだが奥深い出汁の味が彼女の喉を駆け抜ける。
「……美味しい。行列に並んでスマホを見てた時より、ずっと味がはっきり分かります。私、今まで何を食ってたんだろう」
「お前は『行列』という名の承認欲求と、『動画』という名の暇つぶしを食ってたんだよ。本物のラーメンを食うってのは、こういうことだ」
だが、半分ほど食べたところで、彼女は少しだけ箸を止めた。健康診断の「E判定」という文字が、彼女の脳裏をよぎったのかもしれない。だが、彼女は助けを求めるような顔はしなかった。ただ、自分のこだわりと、現実の肉体の限界との間で静かに葛藤しているようだった。俺は自分のどんぶりを空にし、親父に向かって吼えた。「親父! 替え玉だ! 一番硬いので頼む!」
そして、隣の彼女を見据えて一喝した。
「太ることを恐れて、ラーメンが食えるか! 健康診断の数値が怖くて、自分のこだわりを裏切れるか! いいか、Sora。長生きの秘訣は、ストレスを溜めないことだ。100歳の老人が酒と煙草で元気なのは、自分に嘘をついてねえからだ。医者の言葉に従って、ビクビクしながら味のしねえ精進料理を食って、ストレスで精神を腐らせて死ぬ。それがお前の美学か?」
俺は届いた替え玉を豪快にスープに叩き込み、一気に啜り上げた。
「食うなら、自分の責任で食え。健康だの病気だの、そんな後付けの理由に振り回されるな。今、お前の目の前にあるこの一杯が、お前の人生の全てだと思えるか。その覚悟がねえなら、今すぐ箸を置いて帰れ。だが、その覚悟があるなら――一気に飲み干せ。その時、お前のE判定なんて数値は、このスープと一緒に霧散する」
Soraの瞳に、強い光が宿った。
彼女はもう一度箸を握り直し、麺を力強く手繰り寄せた。
「……そうですね。私、ラーメンが好きなんです。数値のために、この瞬間を妥協したくない。組長、私、最後まで美味しくいただきます!」
彼女は夢中で啜り始めた。ズルズルという、生命の躍動を思わせる音が店内に響き渡る。イヤホンも動画もない。ただ、麺を啜り、スープを飲み干す。その一挙手一投足に、彼女の全存在が込められていた。
最後の一滴までスープを飲み干したSoraは、顔を上げ、額の汗を拭った。その表情は、行列に並んでいた時の疲れ切った顔とは別人のように輝いていた。
「ご馳走様でした。組長、私、分かりました。早く出てくる、早く食う、全力で向き合う。これが私にとっての最高のマインドフルネスです」
俺は鼻を鳴らし、立ち上がって会計を済ませた。
「ガハハ! その顔だよ。それでこそ、俺の哲学を理解するマジキチの一員だ。いいか、適度に運動して、何でも食え。そして性欲も忘れるな。それが俺の言う真の健康だ。八キロ行軍、お前もついてくるか?」
「はい! お腹がいっぱいなので、少しでも歩いて燃やさないと!」
俺たちは店を出た。
夜の大阪の空気は、ラーメンの熱気で火照った身体に心地よかった。
Soraはもう、行列の店を振り返ることはなかった。行列に並ぶ無駄も、スマホに依存する空虚も、テイクアウトで冷めた料理も、ここにはない。あるのは、自分自身の欲求に正直になった一人の女の、力強い足音だけだ。
「Sora、人生もラーメンと同じだ。待ってちゃいけねえ。熱いうちに、自分が『これだ』と思った瞬間に飛び込め。たとえそれが不健康だと言われようが、お前の心が『美味い』と叫んでいるなら、それがお前にとっての正解なんだよ」
「はい! 私、もう行列なんて並びません。食べたい時に食べて、やりたい時にやる。それが私の新しいスタイルです!」
俺は再び歩き出した。背後でSoraが深々と頭を下げる気配を感じる。
第10章、幸先のいいスタートだ。世の中には、まだ常識や流行という名の行列に並んで、自分の魂を冷ましている奴らがごまんといる。そんな奴らの目を覚まさせ、本能の火を灯す。それが俺の、そしてStudio MAD-KICHIの使命だ。次はどんな迷える魂が、俺の前に現れるのか。どんなに時代がスマートになろうとも、俺の豆タンクのような情熱は加速し続ける。
「たってやる。……胃袋の底から、魂を震わせてな!」
深夜の行軍は続く。
街の喧騒が遠ざかり、俺の呼吸だけがリズムを刻む。腹は満たされ、心は研ぎ澄まされている。健康診断の結果? そんな紙切れ一枚で俺の生き様が決まってたまるか。
俺はポケットから、いつもの納豆巻きを取り出そうとしたが、ふと思い直して止めた。今夜は、あのラーメンの余韻をもう少しだけ楽しんでいたい。親父が丹精込めて作ったスープ、あの熱。それを汚すような真似は、一流のマジキチには許されない。
「……さて、明日もまた、美味いもんを食うために歩くとしようか」
俺の影が、街灯の下で長く、力強く伸びていた。
一杯のラーメンに魂を再起動させた女と、己の流儀を貫く豆タンク。欲望の先にこそ、真の自由がある。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
