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第11章:マジキチ流・破邪顕正(外敵掃討編)
第51話:運命の改竄(占い師との真剣勝負)
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2026年、1月。大阪の街は、冷え切った空気の中に欲望と焦燥を孕んで蠢いている。第10章で「魂の家族」たちと共鳴し、泥臭い絆を再確認した俺だが、世界は相変わらずだ。いや、むしろ時代が進めば進むほど、人間は目に見えない「正解」や「救い」を求めて、安易なテンプレートに縋りたがる。
今回の標的は、SNSで数万人のフォロワーを持ち、「100%の的中率」を豪語する高名な占い師・聖月(せいげつ)だ。配信のゲストとして繋がったその男は、画面越しでも分かるほどの高級そうな着物を纏い、背後には巨大な水晶玉が鎮座している。
「……組長さん。あなたの背後に、非常に重苦しい影が見えます。このままでは、今月の後半に、命に関わるような大きな『災厄』が訪れるでしょう。特に交通事故……。乗り物には細心の注意を払ってください。これは星の導きです」
占い師は、慈愛に満ちたような、しかしどこか見下すような薄笑いを浮かべて宣った。
俺は椅子に深く腰掛け、デスクに置いたエナジードリンクを一気に煽った。そして、腹の底から笑い飛ばした。
「ガハハ! 交通事故だと? 占い師のセンセよ、あんたらはいつもそれだな。誰にでも当てはまるような不安を適当に投げつけて、相手が怯えるのを待つ。悪いが、俺にその手は通用しねえぞ。俺はな、昔から占いなんて類は一度たりとも信じたことがねえんだよ!」
占い師は眉をひそめ、「これは統計に基づいた……」と言いかけたが、俺はそれを遮った。
「統計? 笑わせんな。俺はテレビや雑誌の占いで『今日は交通事故に注意』なんて不吉なことが書かれているのを見つけたら、どうすると思う? あえてその日、愛車(バイク)に跨って、一日中大阪の街を走り回ってやるんだよ! スロットルを全開にして、風を切って、死角から飛び出してくる車を自らの反射神経でねじ伏せる。そうして無傷で帰還して、空を見上げて叫ぶのさ。『ほら、当たらないじゃねえか!』ってな!」
俺は身を乗り出し、画面を睨みつけた。
「いいか、センセ。そもそも占いなんてのは、心理学と統計学を極めれば誰でもできる高等な『ごっこ遊び』だろ。相手が求めている言葉を選び、曖昧な表現で逃げ道を作る。そこに探偵のような鋭い洞察能力と、冷徹な人間観察力を加えれば、初対面の相手の過去なんて誰でも言い当てられるんだ。特別な力? そんなもん、お前の磨いた『話術』の別名に過ぎねえよ」
俺は、数年前にある行きつけの居酒屋で遭遇した「自称・最強の占い師」の話を始めた。
「その居酒屋の隅で、胡散臭い男が客を占ってたんだ。俺も冷やかしで座ってやったよ。そいつは俺に『好きな漢字を一つ教えてくれ』と言いやがった。俺は迷わず豪快の『豪』という字を選んだ。するとその男は、神妙な顔つきでこう抜かしたんだ。『あなたは家庭に何かしらの問題を抱えていますね』とな。……ガハハ! 確かにな、あると言えばあるさ。俺の人生、平坦な道じゃねえからな。だがな、そんなもん悩みの全く無い人間なんてこの世に一人もいねえだろうが! 誰にでも当てはまる欠落を指摘して、『的中した』とドヤ顔をする。それがお前らの手口だ」
俺はニヤリと笑い、種明かしを続けた。
「俺の推測じゃ、その占い師は俺が別の席で、焼酎を煽りながら家庭の愚痴をこぼしていたのを、近くの席で聞き耳を立てて聞いてたんだ。鋭い観察能力と、多少の心理学の心得があれば、俺のような分かりやすい男を分析することなんて赤子の手をひねるより容易だろうよ。若い頃、易者にダル絡み……いや、今と同じ理屈で徹底的に論破してやったことがあるが、その時の易者の顔、見せてやりたかったぜ。顔を真っ赤にして『もう二度と来るな!』って怒鳴りやがった。そこまで怒るってことは、俺の言ったことが図星だったって証拠だよな?」
占い師の聖月は、画面越しに明らかに動揺していた。自慢の「的中率」を、ここまで泥臭いロジックで解体されたことはなかったのだろう。
「……組長さん。あなたは、救いを求める人々の心を蔑ろにしている。私の言葉で救われる人がどれだけいるか……」
「救いだぁ?」
俺は冷たく言い放った。
「勘違いするな。俺は占いという存在そのものを全否定してるわけじゃねえ。以前、俺のリスナーで、精神的に酷く不安定な女性がいたんだ。『明日、どちらの道を選べばいいか分からない』と、声を震わせて泣いていた。その時、俺は彼女に言ったよ。『占いの結果を信じて、その通りに動いてみるのも一つの手だ』とな」
占い師が意外そうな顔をする。俺は続けた。
「人は迷いや不安が極限に達した時、何かに縋りたくなる。その『杖』として占いが機能するなら、それは立派な救済措置だ。カウンセリング的な使い方をする分には、俺は文句は言わねえ。だがな、お前のように、見えもしない不吉な未来をさも確定事項のように伝えて、いたずらに他人の不安を煽り、そこに付け込んで金を毟り取るようなクソ占い師が一定数いやがる。そういう奴らのせいで、占いが『怪しい商売』として市民権を得られねえんだよ。お前らが業界を停滞させてる元凶だってことに、いつになったら気づくんだ?」
俺は拳をデスクに叩きつけた。
「いいか、よく聞け。未来ってのはな、星が決めるんじゃねえ。統計が導き出すもんでもねえ。俺が今この瞬間に、何を食い、誰と話し、どこへ歩き出すか……その一歩一歩の積み重ねで、俺自身が改竄していくもんなんだよ! 『交通事故に遭う』だと? だったら俺は、運命という名の車を正面から跳ね飛ばしてやる。たってやる。俺の人生は、俺だけのマジキチな意志で直立させてみせる!」
一方的に通話を切断した。画面は暗転し、事務所に静寂が戻った。
俺は大きく息を吐き、冷めきったコーヒーを一気に飲み干した。
「……ふん。未来を予言する暇があったら、自分の明日がどうなるか心配してろってんだ」
俺はいつものようにリュックを背負い、深夜の行軍へと繰り出した。
大阪の街を横断する、8キロの道のり。
「いらち」な俺にとって、赤信号の待ち時間は相変わらずの苦痛だ。信号が変わるまでの数十秒、俺の魂は苛立ちで小刻みに震える。だが、その焦燥感こそが「今を生きている」という強烈な実感に他ならない。
道端の屋台から美味そうな出汁の香りが漂ってくる。テイクアウトなんて論外だ。俺はその場で、熱々のうどんを啜り込んだ。
「……熱い。だが、これでいい」
食い手の覚悟と、作り手の熱量。その交差点にこそ、運命なんてチャチな言葉では片付けられない真実がある。
アスファルトを踏みしめる一歩一歩が、俺の「回答」だ。
占い師が言った「災厄」? 来るなら来い。その災厄すらも俺の人生のスパイスに変えて、豪快に飲み込んでやる。
「ガハハ! 見てろよ運命。俺が望む未来は、俺がこの足で掴み取ってやる!」
深夜の事務所街に、俺の哄笑が響き渡る。
第11章は、まだ始まったばかりだ。
「たってやる。……全宇宙の迷える魂たちが、予言なんてゴミ箱に捨てて、自分の意志で夜明けを迎えるその日までな!」
占い師の虚飾を剥ぎ取り、自らの意志で未来を切り拓くと宣言した組長。
その圧倒的な言葉の力は、迷えるリスナーたちの心に火を灯した。
今回の標的は、SNSで数万人のフォロワーを持ち、「100%の的中率」を豪語する高名な占い師・聖月(せいげつ)だ。配信のゲストとして繋がったその男は、画面越しでも分かるほどの高級そうな着物を纏い、背後には巨大な水晶玉が鎮座している。
「……組長さん。あなたの背後に、非常に重苦しい影が見えます。このままでは、今月の後半に、命に関わるような大きな『災厄』が訪れるでしょう。特に交通事故……。乗り物には細心の注意を払ってください。これは星の導きです」
占い師は、慈愛に満ちたような、しかしどこか見下すような薄笑いを浮かべて宣った。
俺は椅子に深く腰掛け、デスクに置いたエナジードリンクを一気に煽った。そして、腹の底から笑い飛ばした。
「ガハハ! 交通事故だと? 占い師のセンセよ、あんたらはいつもそれだな。誰にでも当てはまるような不安を適当に投げつけて、相手が怯えるのを待つ。悪いが、俺にその手は通用しねえぞ。俺はな、昔から占いなんて類は一度たりとも信じたことがねえんだよ!」
占い師は眉をひそめ、「これは統計に基づいた……」と言いかけたが、俺はそれを遮った。
「統計? 笑わせんな。俺はテレビや雑誌の占いで『今日は交通事故に注意』なんて不吉なことが書かれているのを見つけたら、どうすると思う? あえてその日、愛車(バイク)に跨って、一日中大阪の街を走り回ってやるんだよ! スロットルを全開にして、風を切って、死角から飛び出してくる車を自らの反射神経でねじ伏せる。そうして無傷で帰還して、空を見上げて叫ぶのさ。『ほら、当たらないじゃねえか!』ってな!」
俺は身を乗り出し、画面を睨みつけた。
「いいか、センセ。そもそも占いなんてのは、心理学と統計学を極めれば誰でもできる高等な『ごっこ遊び』だろ。相手が求めている言葉を選び、曖昧な表現で逃げ道を作る。そこに探偵のような鋭い洞察能力と、冷徹な人間観察力を加えれば、初対面の相手の過去なんて誰でも言い当てられるんだ。特別な力? そんなもん、お前の磨いた『話術』の別名に過ぎねえよ」
俺は、数年前にある行きつけの居酒屋で遭遇した「自称・最強の占い師」の話を始めた。
「その居酒屋の隅で、胡散臭い男が客を占ってたんだ。俺も冷やかしで座ってやったよ。そいつは俺に『好きな漢字を一つ教えてくれ』と言いやがった。俺は迷わず豪快の『豪』という字を選んだ。するとその男は、神妙な顔つきでこう抜かしたんだ。『あなたは家庭に何かしらの問題を抱えていますね』とな。……ガハハ! 確かにな、あると言えばあるさ。俺の人生、平坦な道じゃねえからな。だがな、そんなもん悩みの全く無い人間なんてこの世に一人もいねえだろうが! 誰にでも当てはまる欠落を指摘して、『的中した』とドヤ顔をする。それがお前らの手口だ」
俺はニヤリと笑い、種明かしを続けた。
「俺の推測じゃ、その占い師は俺が別の席で、焼酎を煽りながら家庭の愚痴をこぼしていたのを、近くの席で聞き耳を立てて聞いてたんだ。鋭い観察能力と、多少の心理学の心得があれば、俺のような分かりやすい男を分析することなんて赤子の手をひねるより容易だろうよ。若い頃、易者にダル絡み……いや、今と同じ理屈で徹底的に論破してやったことがあるが、その時の易者の顔、見せてやりたかったぜ。顔を真っ赤にして『もう二度と来るな!』って怒鳴りやがった。そこまで怒るってことは、俺の言ったことが図星だったって証拠だよな?」
占い師の聖月は、画面越しに明らかに動揺していた。自慢の「的中率」を、ここまで泥臭いロジックで解体されたことはなかったのだろう。
「……組長さん。あなたは、救いを求める人々の心を蔑ろにしている。私の言葉で救われる人がどれだけいるか……」
「救いだぁ?」
俺は冷たく言い放った。
「勘違いするな。俺は占いという存在そのものを全否定してるわけじゃねえ。以前、俺のリスナーで、精神的に酷く不安定な女性がいたんだ。『明日、どちらの道を選べばいいか分からない』と、声を震わせて泣いていた。その時、俺は彼女に言ったよ。『占いの結果を信じて、その通りに動いてみるのも一つの手だ』とな」
占い師が意外そうな顔をする。俺は続けた。
「人は迷いや不安が極限に達した時、何かに縋りたくなる。その『杖』として占いが機能するなら、それは立派な救済措置だ。カウンセリング的な使い方をする分には、俺は文句は言わねえ。だがな、お前のように、見えもしない不吉な未来をさも確定事項のように伝えて、いたずらに他人の不安を煽り、そこに付け込んで金を毟り取るようなクソ占い師が一定数いやがる。そういう奴らのせいで、占いが『怪しい商売』として市民権を得られねえんだよ。お前らが業界を停滞させてる元凶だってことに、いつになったら気づくんだ?」
俺は拳をデスクに叩きつけた。
「いいか、よく聞け。未来ってのはな、星が決めるんじゃねえ。統計が導き出すもんでもねえ。俺が今この瞬間に、何を食い、誰と話し、どこへ歩き出すか……その一歩一歩の積み重ねで、俺自身が改竄していくもんなんだよ! 『交通事故に遭う』だと? だったら俺は、運命という名の車を正面から跳ね飛ばしてやる。たってやる。俺の人生は、俺だけのマジキチな意志で直立させてみせる!」
一方的に通話を切断した。画面は暗転し、事務所に静寂が戻った。
俺は大きく息を吐き、冷めきったコーヒーを一気に飲み干した。
「……ふん。未来を予言する暇があったら、自分の明日がどうなるか心配してろってんだ」
俺はいつものようにリュックを背負い、深夜の行軍へと繰り出した。
大阪の街を横断する、8キロの道のり。
「いらち」な俺にとって、赤信号の待ち時間は相変わらずの苦痛だ。信号が変わるまでの数十秒、俺の魂は苛立ちで小刻みに震える。だが、その焦燥感こそが「今を生きている」という強烈な実感に他ならない。
道端の屋台から美味そうな出汁の香りが漂ってくる。テイクアウトなんて論外だ。俺はその場で、熱々のうどんを啜り込んだ。
「……熱い。だが、これでいい」
食い手の覚悟と、作り手の熱量。その交差点にこそ、運命なんてチャチな言葉では片付けられない真実がある。
アスファルトを踏みしめる一歩一歩が、俺の「回答」だ。
占い師が言った「災厄」? 来るなら来い。その災厄すらも俺の人生のスパイスに変えて、豪快に飲み込んでやる。
「ガハハ! 見てろよ運命。俺が望む未来は、俺がこの足で掴み取ってやる!」
深夜の事務所街に、俺の哄笑が響き渡る。
第11章は、まだ始まったばかりだ。
「たってやる。……全宇宙の迷える魂たちが、予言なんてゴミ箱に捨てて、自分の意志で夜明けを迎えるその日までな!」
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