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第11章:マジキチ流・破邪顕正(外敵掃討編)
第53話:幽霊の正体(霊能現象への宣戦布告)
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第11章「マジキチ流・破邪顕正編」もいよいよ中盤。占い師が語る「運命」という名の鎖を粉砕し、ガチアンチが撒き散らす「憎悪」をマジキチ流の包容力で飲み込んできた俺だが、今夜はさらに手強い相手……というか、この世に存在すらしない「幻」にケリをつけてやることにした。
2026年1月。俺が深夜の行軍の果てに辿り着いたのは、大阪の郊外にある、曰く付きの廃トンネルだ。画面の向こうのリスナーからは「組長、そこはマジでヤバい」「霊の通り道だ」と、怯えるコメントが滝のように寄せられている。だが、俺は片手にスマホ、片手に熱い缶コーヒーを持って、その漆黒の闇へと迷いなく踏み込んだ。
「ガハハ! おいリスナーども、何をそんなにガタガタ震えてやがる。画面の端にオーブが見える? 誰もいないはずの奥から足音が聞こえる? バカバカしい。いいか、耳をかっぽじってよく聞け。霊能現象なんてものはな、この世に1ミリも存在しねえんだよ!」
俺の怒号のような声が、湿ったトンネル内に反響し、不気味な残響を作る。リスナーたちは「組長、後ろ!」「冷やかしはやめたほうがいい」とパニック寸前だが、俺は鼻で笑って、むしろ闇の深い方へと進んでいく。
「人間はな、錯覚する生物なんだよ。昔、ある高名な芸人……俺が心底尊敬していた、理屈で世の中を斬るあの天才が、テレビ番組で霊能者どもを徹底的に論破していた時に言ってた真理を教えてやろう。『夜に柳の木の下に、白い服を着て髪の長い女が立っている』。これを聞いてお前らが怖がるのはな、日本という国で育ち、それが幽霊だという『共通認識』を学習してきたからだ。もし、その文化も伝承も一切知らないブラジルの人がそれを見たら、怖がるか? ただの『夜中に変な格好で突っ立ってる奇妙な女』としか思わねえよ。恐怖の正体は、霊じゃなくお前らの脳内にある『既知のイメージ』なんだよ!」
俺はライトで壁を照らしながら、さらに奥へと進む。壁面には不気味なシミや落書きがあるが、俺にとってはただの物理現象に過ぎない。
「人間はな、本能的に『知らないこと』に恐怖を覚えるようにDNAに植え付けられてる。正体が分からねえ不気味な音や影に対して、脳が勝手にバグを起こして、過去に聞いた噂話や映画の知識を無理やり繋ぎ合わせて『幽霊』という形を作り出す。人から言われた話、ネットの書き込み、そんなもんを通じて妄想が膨らんでいるだけだ。いいか、そんな有りもしない幻想よりも、この世で一番怖いのは『生きた人間』だってことを、俺が今ここで証明してやるよ!」
俺は立ち止まり、スマホのライトを自分の顔に下から当て、わざと不気味な影を作って笑った。
「例えばだ、お前ら想像してみろ。選択肢は二つだ。
一つ目、夜の静まり返った墓場を一人で歩く。そこには『幽霊が出る』という噂が山ほどある。
……二つ目、夜の薄暗い廃墟を歩く。そこには上半身裸で、目を血走らせ、奇声を上げながら金属バットをフルスイングで振り回す本物のマジキチが潜んでいる。
……さあ、どっちが怖い? 答えは決まってんだろ! バット持ったキチガイに決まってんだよ! 死人は髪の毛一本、埃ひとつ動かせねえが、生きたキチガイはお前の頭蓋骨を物理的に砕きに来るんだよ!」
俺はトンネルのコンクリート壁を思い切り拳で叩いた。鈍い打撃音が闇を切り裂く。
「幽霊がいるなら出てきて俺を殴ってみろ! できないだろ? 本当にそんなものがあるなら、俺だってこの目で見てみたいよ。だがな、科学技術がこれほど発展した現代だ。あらゆる心霊現象は、脳の錯覚や低周波音、あるいは電波の影響として次々と解明されているのが現実なんだよ。……ただな」
俺はふと足を止め、缶コーヒーの蓋を開けた。立ち上る湯気がライトに照らされる。少しだけ声を落とし、静かに言葉を紡いだ。
「ただ一つだけ、俺が信じたいもの、あってもいいと思えるものはある。それはな、大切だった人が亡くなった後に、霊として、あるいは夢として目の前に現れてくれることだ。……これは、遺された人間の心の安らぎになる。そうした『救い』としての幽霊なら、俺は信じても良いと考えている」
俺は10年ほど前に亡くなった、大好きだった母方の祖母のことを思い出した。
「ある時、不思議な夢を見たんだ。祖母が出てきた。昔のように元気な顔立ちをして、ニコニコ笑ってた。そこには俺の息子もいてな……まあ、子がいるってのはメタい話だが、ここだけの秘密にしてくれよ。ガハハ。その夢の中で、息子が祖母の手を引いて、楽しそうに遊んでたんだ。息子は祖母が亡くなってから数年経って生まれたんだぜ? 本来なら会えるはずがねえんだ。夢と言えばそれまでだが、俺はこう思わずにはいられなかった。天国の祖母が、曾孫である俺の息子にどうしても会いたくて、会いに来てくれたんじゃねえかってな」
俺は少し照れくさそうに頭を掻き、冷めかけたコーヒーを啜った。
「あれほど霊能現象なんてねえと言い切っておきながら、俺も勝手な解釈をするもんだよな。だが、人間ってのはそういう温かい幻を見て、明日を生きる糧にする生き物なんだ。それは否定しねえ。……だが、これだけは絶対に、万死に値するほど許せねえことがある!」
俺の声に再び怒りが籠もる。
「占い師の回でも言ったが、有りもしない、見えもしない霊をあたかもあるかのように騙り、不幸な人間に『霊障だ』『除霊が必要だ』と吹き込んで、いたずらに恐怖を煽るクソな霊媒師どもだ! 他人の弱みや悲しみに付け込んで、あわよくば金を毟り取ろうとするバカな連中。もしこの世に地獄という場所が存在するのならば、間違いなくこいつらは真っ先に、一番熱い業火の中に叩き落とされるだろうよ。人を騙して飯を食う連中を、俺は絶対に認めねえ!」
俺はトンネルの出口に向かって再び歩き出した。闇の向こうに、冬の夜空と月明かりが見えてくる。
「幽霊も、救いも、結局は全部自分の中にある。自分が『たってやる。』と決めて、前を向いて歩いている限り、どんな闇も、どんな化け物も、俺の足元を掬うことはできねえんだ。生きているこの瞬間に、その命を燃やし尽くせ!」
トンネルを抜け、俺は大阪の鋭い夜風を全身に浴びた。深夜の行軍は続く。8キロの道のりはまだ半ばだ。
「いらち」な俺は、夜中の静寂にすら急かされているような気分になる。だが、このアスファルトを叩く足音こそが、俺自身の最強の生存証明だ。
俺の影が、街灯の下で誇らしく、揺るぎなく、夜の街へと伸びていく。
第53話、完。
2026年1月。俺が深夜の行軍の果てに辿り着いたのは、大阪の郊外にある、曰く付きの廃トンネルだ。画面の向こうのリスナーからは「組長、そこはマジでヤバい」「霊の通り道だ」と、怯えるコメントが滝のように寄せられている。だが、俺は片手にスマホ、片手に熱い缶コーヒーを持って、その漆黒の闇へと迷いなく踏み込んだ。
「ガハハ! おいリスナーども、何をそんなにガタガタ震えてやがる。画面の端にオーブが見える? 誰もいないはずの奥から足音が聞こえる? バカバカしい。いいか、耳をかっぽじってよく聞け。霊能現象なんてものはな、この世に1ミリも存在しねえんだよ!」
俺の怒号のような声が、湿ったトンネル内に反響し、不気味な残響を作る。リスナーたちは「組長、後ろ!」「冷やかしはやめたほうがいい」とパニック寸前だが、俺は鼻で笑って、むしろ闇の深い方へと進んでいく。
「人間はな、錯覚する生物なんだよ。昔、ある高名な芸人……俺が心底尊敬していた、理屈で世の中を斬るあの天才が、テレビ番組で霊能者どもを徹底的に論破していた時に言ってた真理を教えてやろう。『夜に柳の木の下に、白い服を着て髪の長い女が立っている』。これを聞いてお前らが怖がるのはな、日本という国で育ち、それが幽霊だという『共通認識』を学習してきたからだ。もし、その文化も伝承も一切知らないブラジルの人がそれを見たら、怖がるか? ただの『夜中に変な格好で突っ立ってる奇妙な女』としか思わねえよ。恐怖の正体は、霊じゃなくお前らの脳内にある『既知のイメージ』なんだよ!」
俺はライトで壁を照らしながら、さらに奥へと進む。壁面には不気味なシミや落書きがあるが、俺にとってはただの物理現象に過ぎない。
「人間はな、本能的に『知らないこと』に恐怖を覚えるようにDNAに植え付けられてる。正体が分からねえ不気味な音や影に対して、脳が勝手にバグを起こして、過去に聞いた噂話や映画の知識を無理やり繋ぎ合わせて『幽霊』という形を作り出す。人から言われた話、ネットの書き込み、そんなもんを通じて妄想が膨らんでいるだけだ。いいか、そんな有りもしない幻想よりも、この世で一番怖いのは『生きた人間』だってことを、俺が今ここで証明してやるよ!」
俺は立ち止まり、スマホのライトを自分の顔に下から当て、わざと不気味な影を作って笑った。
「例えばだ、お前ら想像してみろ。選択肢は二つだ。
一つ目、夜の静まり返った墓場を一人で歩く。そこには『幽霊が出る』という噂が山ほどある。
……二つ目、夜の薄暗い廃墟を歩く。そこには上半身裸で、目を血走らせ、奇声を上げながら金属バットをフルスイングで振り回す本物のマジキチが潜んでいる。
……さあ、どっちが怖い? 答えは決まってんだろ! バット持ったキチガイに決まってんだよ! 死人は髪の毛一本、埃ひとつ動かせねえが、生きたキチガイはお前の頭蓋骨を物理的に砕きに来るんだよ!」
俺はトンネルのコンクリート壁を思い切り拳で叩いた。鈍い打撃音が闇を切り裂く。
「幽霊がいるなら出てきて俺を殴ってみろ! できないだろ? 本当にそんなものがあるなら、俺だってこの目で見てみたいよ。だがな、科学技術がこれほど発展した現代だ。あらゆる心霊現象は、脳の錯覚や低周波音、あるいは電波の影響として次々と解明されているのが現実なんだよ。……ただな」
俺はふと足を止め、缶コーヒーの蓋を開けた。立ち上る湯気がライトに照らされる。少しだけ声を落とし、静かに言葉を紡いだ。
「ただ一つだけ、俺が信じたいもの、あってもいいと思えるものはある。それはな、大切だった人が亡くなった後に、霊として、あるいは夢として目の前に現れてくれることだ。……これは、遺された人間の心の安らぎになる。そうした『救い』としての幽霊なら、俺は信じても良いと考えている」
俺は10年ほど前に亡くなった、大好きだった母方の祖母のことを思い出した。
「ある時、不思議な夢を見たんだ。祖母が出てきた。昔のように元気な顔立ちをして、ニコニコ笑ってた。そこには俺の息子もいてな……まあ、子がいるってのはメタい話だが、ここだけの秘密にしてくれよ。ガハハ。その夢の中で、息子が祖母の手を引いて、楽しそうに遊んでたんだ。息子は祖母が亡くなってから数年経って生まれたんだぜ? 本来なら会えるはずがねえんだ。夢と言えばそれまでだが、俺はこう思わずにはいられなかった。天国の祖母が、曾孫である俺の息子にどうしても会いたくて、会いに来てくれたんじゃねえかってな」
俺は少し照れくさそうに頭を掻き、冷めかけたコーヒーを啜った。
「あれほど霊能現象なんてねえと言い切っておきながら、俺も勝手な解釈をするもんだよな。だが、人間ってのはそういう温かい幻を見て、明日を生きる糧にする生き物なんだ。それは否定しねえ。……だが、これだけは絶対に、万死に値するほど許せねえことがある!」
俺の声に再び怒りが籠もる。
「占い師の回でも言ったが、有りもしない、見えもしない霊をあたかもあるかのように騙り、不幸な人間に『霊障だ』『除霊が必要だ』と吹き込んで、いたずらに恐怖を煽るクソな霊媒師どもだ! 他人の弱みや悲しみに付け込んで、あわよくば金を毟り取ろうとするバカな連中。もしこの世に地獄という場所が存在するのならば、間違いなくこいつらは真っ先に、一番熱い業火の中に叩き落とされるだろうよ。人を騙して飯を食う連中を、俺は絶対に認めねえ!」
俺はトンネルの出口に向かって再び歩き出した。闇の向こうに、冬の夜空と月明かりが見えてくる。
「幽霊も、救いも、結局は全部自分の中にある。自分が『たってやる。』と決めて、前を向いて歩いている限り、どんな闇も、どんな化け物も、俺の足元を掬うことはできねえんだ。生きているこの瞬間に、その命を燃やし尽くせ!」
トンネルを抜け、俺は大阪の鋭い夜風を全身に浴びた。深夜の行軍は続く。8キロの道のりはまだ半ばだ。
「いらち」な俺は、夜中の静寂にすら急かされているような気分になる。だが、このアスファルトを叩く足音こそが、俺自身の最強の生存証明だ。
俺の影が、街灯の下で誇らしく、揺るぎなく、夜の街へと伸びていく。
第53話、完。
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