マジキチ組長一代記 ~半分は狂気、半分は真実~

マジキチ組長

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第11章:マジキチ流・破邪顕正(外敵掃討編)

第54話:砂場の旗(愛国心なき者への一喝)

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 第11章「マジキチ流・破邪顕正編」もいよいよ佳境だ。これまで俺は、占い師が語るまやかしの「運命」を断ち切り、ガチアンチが撒き散らす「憎悪」をマジキチ流の包容力で飲み込み、幽霊という名の「脳のバグ」を物理的ロジックで粉砕してきた。だが今夜、俺の前に現れたのは、これまでのどんな化け物よりも厄介で、根の深い問題を抱えたリスナーだった。

 2026年1月。深夜の事務所に響いたのは、一人の若者リスナーの、冷めきった溜息混じりの声だ。

「組長……愛国心とか言われても、正直ピンとこないんすよね。この国、増税ばかりだし、政治家は裏金だらけだし。もうどうなってもいいっていうか、沈む船と一緒に心中するつもりはないっすよ。日本なんて、もう終わってるじゃないっすか」

 俺は手に持っていた缶コーヒーを、デスクに叩きつけた。ガツンという衝撃音がマイクを通じて配信に響き渡る。中身が少し跳ねたが、そんなことは知らねえ。俺の胸の奥で、マジキチな業火が音を立てて燃え上がった。

「……おい、ガキ。今、何て言った? この国がどうなってもいいだと? 笑わせんじゃねえぞ、コラァ! その言葉、命がけでこの国を繋いできた先祖たちの前でもう一度言ってみろ!」

 俺の怒号に、画面越しのリスナーがびくりと肩を揺らすのが手に取るように分かった。

「最近の若い連中は愛国心がなさすぎる。いや、これは年齢だけの問題じゃねえな。いい歳したオッサンやオバハンも、酒を飲みゃ口を開けば国の悪口ばかりだ。だがな、お前ら。そもそも自分たちがどこの土俵に立って、誰のおかげで今日という日を無事に終えて、飯を食わせてもらってるのか、一秒でも考えたことがあるのか?」

 俺は学生時代の記憶を掘り起こした。思い出すだけで、いらちの俺は血が逆流し、こめかみの血管が浮き出る。

「俺が小学校から高校まで通っていた間、学校の教育現場で何が行われていたか知ってるか? 日本という国に生まれ、日本という国で学んでいるにもかかわらず、国歌である『君が代』を一切教えられなかったんだよ! 余りにも異常すぎるだろうが。何が多様性だ、何が自由だ。卒業式に至っては、国歌斉唱の時に起立すらしない生徒、頑なに口を閉ざして歌わない生徒、それを是とする教師たちがうじゃうじゃいやがった。それを見て俺は心の底から思ったね。こいつら全員、まとめて日本国籍を剥奪して国外追放してしまえ! とな」

 俺はガバッと立ち上がり、画面の向こうの不特定多数の「無関心」を指差した。

「なぜそんなバカな連中が増えたか。理由は簡単だ。我が国の近代史、現代史を真面目に知ろうとしねえからだ! お前らのじいさん、ばあさん、ひいじいさん、ひいばあさんが、どんな想いでこの国を守り、次の世代に繋ごうと命を懸けてきたか。その汗と血の積み重ねの上に、今のお前らのヌルい生活があるんだ。靖国神社の参拝を批判する連中も同じだ。自分たちの先祖が命を投げ打って守った土地で、その先祖を敬い、感謝を捧げることの何が右翼だ、何が悪だ? 当たり前の礼儀だろうが!」

 俺はここで一つ釘を刺した。俺を政治的な枠組みに嵌めようとする奴らへの警告だ。

「勘違いするなよ。俺は右翼でも左翼でもねえ。ただの剥き出しの『愛国主義者』だ。自分の生まれ育った国を愛し、誇りを持つ。これが右翼だと言われるなら、この世のまともな人間は全員右翼になっちまうぞ。違うだろう。当たり前の人間としてのケジメ、帰属意識の話だ。……お前らに自国の歴史について、もっと嘆かわしく、もっと恥ずべき現実を教えてやろう」

 20年ほど昔、俺は会社の研修の一環で、青年会のような集まりに参加したことがあった。そこには世界各国の、未来を担う若者たちが集まっていた。

「アメリカの若者も、ドイツの若者も、中国の若者も、彼らは皆、自国の成り立ちや歴史、自分たちのルーツを、キラキラした目で、胸を張って誇らしげに説明してくれた。……だが、日本側はどうだ? 俺以外の若者は、自分の国の歴史について聞かれても、何一つ答えられなかったんだ。俯いて黙り込む彼らを見て、俺は怒りを通り越して悲しくなったよ。『貴様らいったいどこの国の人間だ! 何のためにここで息をしてるんだ!』ってな」

 俺は深いため息をつき、椅子に座り直した。

「そもそも、我が国の歴史教育をまともにしようとしない、あえて知らせないようにしている今の教育方針、そしてそれを良しとする社会の空気が根本から腐ってるんだよ。お前ら、自分の先祖を蔑ろにしていることに気づかねえのか? お前らが今の平和に胡座をかいて、スマホ片手に国を冷笑している間、お前らのご先祖様たちは草葉の陰で血の涙を流してるぞ。お前らの命のバトンは、そんなに軽いもんだったのか?」

 俺は以前、会社を「砂場」に例えたことがある。社会という巨大な砂場で、俺たちはそれぞれの城を築き、必死に遊んでいる。だがな、その砂場を支えている土台……それこそが「日本」という国なんだよ。

「愛国心なんてな、教科書に載ってるような高尚で難しい話じゃねえんだ。自分が今、遊ばせてもらっているこの砂場を、自分の手で守るっていう男の、そして一人の人間の意地なんだよ。土台が崩れて砂場が消えたら、お前が自慢してる城も、お前のちっぽけな未来も、一瞬で瓦礫の山に変わるんだ。政治が悪い、制度が悪いと文句を言う暇があるなら、まずはこの国に生まれ、この大地に立っているという誇りを魂に刻み込め!」

 画面の向こうで、さっきの若者が言葉を失っている。俺の放つ熱量が、冷え切った彼の心に少しずつ、確実に伝わっているのが分かった。

「いいかげんに気づけよ、お前ら。歴史を忘れた民族に未来はねえ。自分の根っこを否定して、どこへ歩き出そうってんだ。誰にも頼まれなくても、俺はここで『たってやる。』。俺は、俺たちの先祖が愛し、守り抜いたこの国を、俺もまた死ぬまで愛し抜いてやる。この足で、日本の大地を力強く踏みしめてな!」

 配信を終え、俺は事務所を飛び出した。2026年1月。大阪の夜風はどこまでも鋭く、俺の頬を叩く。だが、俺の血は沸騰したままで、寒さなんて微塵も感じねえ。

 深夜の行軍。
 8キロの道のりを歩きながら、俺はアスファルトの感触を一つ一つ確かめる。この道も、この街灯も、誰かがこの国のために、愛する誰かのために尽力した証だ。
「いらち」な俺は、夜の静寂がもどかしくてたまらない。もっと早く、もっと遠くへ、この国の誇りを叫びに行きたいという衝動が突き上げてくる。

 コンビニの前で立ち止まり、俺は再び熱い缶コーヒーを買った。テイクアウトなんてまどろっこしいことはしねえ。その場で一気に飲み干し、喉を焼く熱さを楽しみながら、夜空を見上げた。

「……じいさん、見てるか。俺はまだ、この砂場で誰よりも高い旗を立て続けてるぜ。あんたたちが守ったこの国、俺がしっかり引き受けてやるからな。ガハハ!」

 俺の影が、街灯の下で太く、雄々しく、そして誇り高く伸びていく。

「愛国心? そんなもん、自分の命の根源に感謝して、自分の居場所を愛するってだけの話だろ。たってやる。……世界中の迷える日本人が、自分の国の歴史を誇り、魂の旗を高く掲げるその日までな!」

 第54話、完。

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