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白の脅威

第63話 ひろし、衣装を着る

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 ガチャ 

 おじいさんはいつものようにG区画の家に入ると、みんなはバンド練習をしていた。

 すると、おじいさんに気づいたアカネが声を上げた。

「じいちゃん来た!」

 なんとアカネはミニスカートにブーツ姿のロックガールになっていた。

「おお! アカネさん、とっても可愛いですよ!」

「ありがとう、じいちゃん!」

 アカネは嬉しそうに答えた。

 すると、おじいさんの視界にメッセージが現れた。

『イリューシュさんからアイテムが6点贈られました』

「ひろしさん、昨日買った衣装です。着てみてくださいね」

「あ、ありがとうございます」

 おじいさんはアイテム欄からタイトジーンズやジャケットなど、贈られた物を全て選択して身に着けた。

 それを見たアカネたちは驚いて声をあげた。

「おおお! じいちゃん、めっちゃカッコイイじゃんか!」

「ほんと、おじいちゃんカッコイイよ!」

「あら、ひろしさん本当に素敵!」

「ほんとうですか? いやいや、ちょっと照れますな。ははは」

 アカネはおじいさんの写真を撮ると、おじいさんに送信した。

 おじいさんは視界の左側に現れたアカネからの写真を見ると目を丸くして驚いた。

「おお、これが私ですか!?」

「じいちゃん、これならステージ映えもバッチリだよ!」

「ああ、ありがとうございます、みなさん」

 おじいさんはお礼を言うと、嬉しそうにキーボードのところへ行った。

 するとめぐは、少し気合を入れながらみんなに言った。

「よし、じゃあこの間の曲をもう一度おさらいして、出来たらイリューシュさんの新しい曲を練習しよう!」

「「おー!」」

「じゃあ、いくよ!」

「One, two, three, four!」

『なまえは知らない~……』


 その頃、おばあさんとマユとメイとナミは、哲夫夫妻と美咲にお店を任せてシャームに新店舗の物件を探しに来ていた。

 4人はシャームのデータセンターで物件を閲覧していると、大通り沿いの手ごろな物件を見つけた。

 それを見たマユは嬉しそうにすると、みんなに言った。

「ねぇ、この物件良くない? 家賃もそんなに高くないし大通り沿いだよ」

「え、てかスグそこじゃん。見に行こうよ」

「あ、ほんとだ。行ってみよう」

 4人はデータセンターを出て大通りを進むと、「貸店舗」と書かれている店があった。

「あれじゃない?」

「あれだよ。見てみよう!」

 4人は店に着くと店の前に設置されているタッチパネルを操作して「内見」ボタンを押し、中に入った。

「あ、ちょうどいい大きさ!」
「ほんと! 二階もあるしいいね」
「ぅん」
「あら、カウンターもついてるわね」

 4人は顔を見合わせるとウンと頷いた。

 するとマユがみんなに言った。

「じゃあ、わたしたちの記念すべき2号店、ここで決まりだね!」

「「うん」」

 マユは外に出てタッチパネルの「契約(増店)」ボタンを押すと、お店が契約された。

 ナミはまた看板を描こうとしたが、ちょっと考えてみんなに言った。

「ねぇ。そうぃえば、ぉ店の名前って……、なに?」

「え? ……あ、そういえば店の名前無くない?」
「やば、ピンデチの看板も絵だけだったね」
「あらあら、そういえば!」

「「あはははは」」

 4人は取り敢えず店を閉めて船でピンデチに戻ると、みんなが待っているお店に戻った。

 そして哲夫夫妻と美咲にお店の名前が無かった事を話すと3人も大笑いをして、みんなで店の名前を考えることにした。


 ー 株式会社イグラア エンジニア部門 ー

「なあ、もうシャットダウンの準備しないと遅番のエンジニアが来ちゃうよ?」

「え? あ、もう退社時間か」

 早朝シフトのエンジニアたちは退社時間が近づいていた。

「ていうか、大変そうに仕事してたけど、何やってたの?」

「いやぁ、なぜか追加モンスターが登場してから、ホワイトドラゴンが岩山を超えそうになってる、って報告が来るんだよ」

「え? あの破壊神はかいしんホワイトドラゴン?」

「そう」

「で、追加モンスターってなんだっけ」

爆炎ばくえんタートル」

「ああ、最後に自爆じばくするカメか」

「そうそう、急に社長から強いモンスターを投入するように言われて、急いで作ったんだよ」

「そっか。まぁ、モンスタ―同士も縄張り争いで戦うけど……、ホワイトドラゴンが山を越えるのと無関係だよな」

「そうなんだよね。さっきからホワイトドラゴンでシミュレートしてたんだけど、やっぱり岩山は越えられないんだよ」

「いや、そりゃそうでしょ。ホワイトドラゴンが山越えたらピンデチじゃん。もうパニックどころじゃないよ」

「だよなぁ」

「ていうか、越えそうになってるってだけで越えてないんでしょ。なら大丈夫じゃない?」

「うん、だよな。チーフ・エンジニアのチェックも通ってるし。じゃあ帰るか」

「だな」

 2人はエンジニア部門のパソコンをシャットダウンすると、セキュリティーをかけて部屋を出ていった。


 ー イークラト地区 ー

 イークラト地区はメインクエストを終了したプレイヤーたちがエンドコンテンツを楽しむような場所だった。

 モンスターたちは桁外けたはずれに強いが、最高ランクのS級武器を作る素材をドロップするのでハイレベルプレイヤーたちが集まっていた。

 今回追加された爆炎タートルは、倒すと炎属性のS級武器が作れるため、たくさんのプレイヤーたちが挑戦をしていていた。

 そして今日も2人のプレイヤーが爆炎タートルに挑戦していた。

「おい、麻痺弓で足止めしてくれ!」

「わかった!」

 ヒュッ……、ドッ!

「だめだ! 爆炎タートル麻痺耐性があるっぽい!」

「やばい、あいつ炎吐くぞ!」

 すると、爆炎タートルが回転しながら炎を吐き出した。

 ブォォオオオオ!

「うわぁぁぁ」

 大弓使いは逃げ遅れて消滅していった。

 残された槍の騎士は地面に伏せて難を逃れると、即座に立ち上がって槍スキルの「千本突き」を繰り出した。

「やられてたまるか! 千本突きだ!」

 ズドドドドドドド

 槍は見事に爆炎タートルの頭をとらえた。

「グォォォオオオ」

 爆炎タートルは槍を受けると頭を引っ込めて大きく怯んだものの、まだ倒すにはいたらなかった。

「なら、これでどうだ!」

 槍の騎士はスキル「突撃」を使って爆炎タートルに突っ込んでいった。

「うぉぉぉおお!」

 ブワッ!

 しかしなんと、爆炎タートルは4本の足で力強くジャンプすると、槍の騎士めがけてボディプレスを繰り出した。

「なっ!!」

 ズゥゥウウン

 爆炎タートルの下敷きになった槍の騎士は身動きも取れずに消滅していった。


 爆炎タートルはHPを減らして瀕死ひんしの状態だったが、ゆっくりと歩いて岩山の下にある森の寝床ねどこへと戻っていった。


 爆炎タートルが森の奥の寝床へ帰ると、なんとホワイトドラゴンが弱った爆炎タートルを狙って降りてきた。

「ギャァォォォオオ」

 ドラゴンが咆哮ほうこうをすると爆炎タートルも大声で威嚇いかくした。

「グルォォォオオオオ」

 爆炎タートルは降りてくるホワイトドラゴンへ突進していくと、ホワイトドラゴンも鋭い爪で攻撃してきた。

 それを見た爆炎タートルは固い甲羅の中に身を隠すと、なんとドラゴンは甲羅ごと足で掴んで飛び上がってしまった。

 バサッ バサッ バサッ!

 グルォォォオオ

 そして、甲羅を掴んだまま勢いよく急降下すると、そのまま地面へ叩きつけた。

 ドゴォオン!

 爆炎タートルはあまりの衝撃に大ダメージを受けて力尽ちからつきた。しかし、次の瞬間、

 ドガーーーン!!

 自爆して大爆発を起こした。

 爆発の衝撃で甲羅は垂直に上へと吹き飛び、甲羅を掴んでいたホワイトドラゴンごと空へと弾き飛ばした。

 空へ吹き飛んだホワイトドラゴンは驚いて、吹き飛ばされた高さからさらに羽ばたいて上へと逃れた。

 するとなんと、ゲーム内で想定していたよりも、はるかに高く飛び上がってしまった。

 ホワイトドラゴンは、そのまま水平に飛び、ピンデチとイークラトのさかいにある岩山の頂上へ降り立った。
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