固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

文字の大きさ
9 / 101

9 夜襲

しおりを挟む
 時は経ち、すっかりと日が暮れてしまう。
 夜空には月のような星が三つ光り輝いており、ここが紛れもなく異世界であるのだと咲たちに突きつけるのだった。

 で、その咲はと言うと。

「はぁ……露骨に扱いが良くない」

 ため息をつきながらそう文句をこぼしていた。
 と言うのも、彼女が案内された部屋はお世辞にも客人にあてがうようなものでは無かったのだ。
 埃っぽく薄暗い。おまけに壁や天井はところどころ崩れ落ちており、外れ勇者としての扱いの洗礼を受けていた。

「まあ、右も左もわからない世界でいきなり国外に放り出されるよりかはマシか……それにごはんとかお風呂とかは普通に使わせてもらってるしね」

 自身に言い聞かせるように咲はそう言って部屋の隅にカバンを置く。

「ふぅ、これでやっと出られるな」

 するとカルノンがカバンから出てくる。
 他の生徒にその姿を見せる訳にはいかないため、ずっと咲のカバンの中にいたのだ。
 窮屈な中にずっといたからか、久々の外の空気をこれでもかと吸い込んでいる。もっとも彼に呼吸の必要性があるのかは謎だが。

 コンコン

 そんな時、部屋の中にノックオンが響くのだった。

「こんな時間に誰? 夕食も風呂も終わったし、次の集合は明日になってからでしょ」

「俺だよ、佐上だ」

「何の用?」

 扉越しに咲はそう返す。

「なぁに、今朝の事を謝ろうと思ってね。性奴隷にするだなんて言って悪かったっす。……なあ、顔を見て謝りたいから扉を開けてくれよ」

「ああ、そういうこと」

「(お、おい……開けちゃうのか?)」

 咲が鍵を開けようとすると、それは不味いんじゃないかとカルノンは囁いた。

「(でも謝りたいって言ってるし)」

「(どう考えたって怪しいぞ……!)」

「(確かに……)」

 カルノンにそう言われ、考えを改めた様子の咲。
 しかし咲が一向に扉を開けなかったためか佐上は我慢の限界を迎えていた。

「開けないってんならこっちから開けてやるよ」

 そう言って佐上は扉に剣を突き刺した。

「うわっ大胆過ぎる……」

「ははっ、お前がさっさと開けないからいけないんだぞ。まあどちらにしても? この程度の扉じゃ俺に対して何の意味もないけどなぁ」

 何の躊躇いも無く扉を切り刻んだ佐上はそう言いながらズカズカと部屋の中へと入り込む。

「で、謝りたいっていう様子じゃないけど……何の用?」

「おいおい、この状況でわからない訳ねえよな」

 部屋には風呂上りで色気を纏う女子高生と剣を持った男子高生の二人。
 さらには片方はこの世界でもかなり強力なスキル持ちであり、もう片方は外れスキルの持ち主である。
 誰がどう見てもその理由はわかることだろう。

「……恋バナ?」

 ……一人を除いて。

「あぁ? ふざけてんのか?」

「うわっ」

 咲の発言が佐上をさらに不機嫌にしたようで、彼はそのまま咲を押し倒したのだった。

「どう考えたってお前を襲いに来たに決まってんだろうが」

「あー、そういうことか」

 それは納得、と言った表情で咲はそう言う。

「……随分と余裕そうじゃねえか。力じゃどう足掻いたって勝てないっての、本当にわかってんのか?」

 と、余裕綽々で佐上はそう言うものの、実際の所は未変身の状態でも咲の身体能力は凄まじく、今の彼が仮に数十人集まった所で咲には敵わないだろう。
 もっともそれを彼が知るはずもなく、自分の方が強いと思ってのこの行動であった。

「実際、私の方が強いからね」

「……は? おいおい、こりゃ傑作だ。そんなのハッタリにもならねえって」

 咲による自分の方が強い発現が相当ツボに入ったのか佐上は笑い続ける。
 しかし少しするとその表情を一転させ、咲の首元に剣を突き付けたのだった。

「いい加減にしろよ……散々俺をバカにしやがって。まあいいさ。どうせその余裕もすぐに無くなるんだ」

 佐上はそう言って咲の胸に手を伸ばす。
 同年代の女子生徒に比べると遥かに発育の良い彼女の胸を滅茶苦茶にしてやりたいと思っている男子は多く、もちろん佐上もその一人であった。

「触ったら吹っ飛ばすよ」

「あぁ? 無理に決まってんだろうが」

 咲がドスの効いた声で忠告するも佐上はその手を止めようとはしなかった。

「はぁ……。えいっ」

「うぐぇぁっ!?」

 これ以上は許容できないと、咲は佐上に頭突きをする。
 その瞬間、佐上は部屋の外へと凄い勢いで吹き飛んで行ったのだった。

「やば……やり過ぎちゃった」

 石の壁がガラガラと崩れ、その下で佐上は気絶していた。
 このままでは不味いと思った咲は佐上を男子生徒が寝泊まりしている部屋の前へと運んだ。そして昨夜は何も起きていないとだんまりを決め込むことにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...