固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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13 転移トラップ

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 ダンジョンへと入った生徒はパーティごとに個別行動を行うこととなった。
 ダンジョン探索においてこの狭い場所で同時に戦えるのはせいぜい数人までであり、生徒全員で行動を共にすると逆に危険なのだ。

 そのため咲と桜、そして佐上の三人も例に漏れず他パーティからは離れて探索を行うこととなる。

「桜ちゃんは俺の後ろに隠れてて。咲は……俺の邪魔にならないように適当にしてればいいんじゃね」

 そう言いながら佐上は現れた魔物から桜を守るような位置に移動する。

「がんばれー」

 そんな佐上に咲はやる気の無い声で応援した。

「ッ……言われなくても!!」

 それにムカッときたのか佐上は明らかに過剰な力で魔物を叩き潰す。
 するとスライムの時と同じように魔物の姿は消滅し、その場に魔石が転がり落ちるのだった。

「桜ちゃん。一応聞いておくけど、魔石は全部俺の物ってことでいいっすよね」

 魔石を拾い上げながら佐上は咲に問いかけた。
 ……それ以外にはありえないよな、と言う雰囲気を纏いながら。

「う、うん……それで構わないよ」

 佐上のその雰囲気に抗えるはずもなく桜はそう答えた。

 魔石は売ればそれなりの金になるため、独り占めなんかしようものならパーティ解散や最悪殺し合いが発生しかねないものではある。
 しかし上級剣術スキル持ちの佐上に物申すことなど出来るはずもなく、桜は彼の言うようにするしかないのだった。
 それに特段お金が欲しい訳でもないので、余計ないざこざを起こすくらいならその方が良いと考えたのだ。 
 
 その後も三人はダンジョンを進んで行く。
 時折魔物が現れては佐上が一瞬で片を付けるため、これと言って危険が迫ることも無かった。
 
 しかしそのせいで佐上は油断しまくっていた。
 そしてそれは往々にして取り返しのつかないミスに繋がるものである。

「うぉっ、なっなんだ……!?」

 佐上の足元がガコンと言う音と共に凹む。
 警戒が薄れていた彼は床にあったトラップのスイッチを踏んでしまったようだ。
 その瞬間、三人の足元に魔法陣が現れた。

「なにこれっ、一体何が起こってるの!?」

「桜、手を……!」

「おい、俺を忘れるな……!!」

 咲は咄嗟に桜の手を握る。
 同時に佐上も桜の腕を掴んだ。

 それから数秒も経たない内に三人は光に包まれ、気付けば全く見覚えの無い場所に立ち尽くしているのだった。

「ここどこだよ……!?」

「この感じ、多分転移か何か……かな?」

 突然の事に理解が追いつかない佐上に対して、咲はとても落ちついていた。
 そして瞬時に状況を理解し、先程の魔法陣の効果を予測する。

 さっきまでいた場所は洞窟のような壁であったのにも関わらず、今彼女たちがいる場所は石造りの壁だったのだ。
 明らかに場所が違うため、まず間違いなく転移関係だろうという結論を出していた。
 またドラゴラゴンの幹部級にも転移能力を使う者がいたため、彼女自身転移を経験していたのもその結論を補強するものとなっていた。

「転移って……私たち、戻れるの?」

 不安そうに咲の手を強く握る桜。

「大丈夫、きっと戻れるよ」

 そんな桜を安心させるために咲は彼女を抱きしめながらそう繰り返す。

「クソッ、どうしてこんなことに……! いや待てよ? 考えようによっちゃあ俺の活躍の場がやってきたって感じなんじゃねえの~これ」

 佐上はこんな状況だと言うのに随分と浮かれていた。
 それが心から思っていることなのかただの空元気なのかはわからないが、少なくとも戦意喪失するよりかは幾分かマシだろう。

「安心してくれよ桜ちゃん。俺が絶対守ってやるっすから」

「う、うん……ありがとう」

 この状況に置いてただ一人の攻撃役である佐上を失えばまず助からない。それを理解していた桜は極力彼の機嫌を損ねないように振舞うのだった。

「それじゃあ行くっすよ」

 形だけとは言え桜からの感謝の言葉を貰い気分が上がった佐上は意気揚々と無警戒に歩き出す。
 そんな彼の足元から魔物が飛び出した。

「うわっとぉぉ!?」

 突然現れた蟻のような姿をしたその魔物は恐ろしく大きな顎を持っており、纏うオーラも彼女らがこれまで見てきた魔物とは明らかに格が違うものだった。
 高い身体能力のおかげで初手の一撃をギリギリ避けられた佐上だが、そのオーラに飲みこまれてしまってからは一歩も動けずにいた。

 一言で言えば、レベルが違う。
 その魔物は今の彼が挑んでいい相手ではなかったのだ。

「逃げるよ!」

 そんな時、辺りに咲の声が響く。
 すると圧倒的強者を前にしたために本能的恐怖に支配されていた二人が一瞬我に返った。
 と同時に咲は二人の腕を引っ張り、その場から逃げ去ったのだった。
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