固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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15 カルノライザー、ダンジョンに爆誕

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「嘘だろ……」

 今自分が置かれている状況を理解した瞬間、佐上の顔が絶望に染まって行った。
 このまま壁に潰されてしまう自分の姿を想像してしまったのだ。
 肉が弾け、ミシミシと骨が砕けるその生々しい死にざまを、鮮明に想起してしまったのだ。

「嫌……嫌だよそんなの……」

 その光景を見ていた桜も佐上と同じように自分のその後を理解してしまったようで、その顔を恐怖一色に染めて行く。

「まだ何か……何かしらの出口がきっと……!」

 桜はそう言い、出口を求めて部屋中を探し始めた。

「あっ……!」

 するとそれらしいものを骸骨が身に着けている装飾品の中から発見したのだった。

「転移の指輪……! これでここから出られる……!」

 それは転移の指輪と呼ばれる特殊な指輪であり、使用することで指輪にはめられている魔石に記録されている場所に瞬時に転移できるというものだ。
 用意周到だった彼女はあらかじめダンジョン探索で有用そうな道具などを王城の図書館で調べていたため、それを骸骨が付けていることに気付けたのだった。

「けど、二つしかない……」

 しかし残念な事にその指輪は二つしか無かった。
 転移の指は着用者しか転移出来ないため、必然的に三人のうちの誰かはこの部屋に残ることとなる。

「そいつをよこせ!」

「きゃっ……!?」

 その時、桜の持っていた指輪を佐上が二つとも奪い取ったのだった。

「これは俺と桜ちゃんで使わせてもらう」

「そんな……! それじゃ咲ちゃんが……!」

「残念だけどアイツはここに置いて行くっす。俺と桜ちゃんは貴重なスキル持ちだから、こんなところで死ぬわけにはいかないんっすよ」

「でも……」

「あぁ、めんどくせえ……いいから俺と来いっつってんだよ!」

 佐上は我慢の限界を迎えたのか桜の腕を引っ張り、そのまま彼女に無理やり抱き着いた。

「さ、佐上君!? 放して……!!」

「どうせダンジョン内での事なんて他の奴らには知られねえんだ。だったらどれだけ好きにしたって構わねえだろうよ」

「佐上……!!」

 佐上のその行動は咲の地雷を踏んだらしく、咲は殺意を込めた声で佐上の名を呼ぶ。

「ま、そう言う訳だから。お前はここで潰されて死ね」

 そう言い残すと佐上は桜の指に無理やり指輪をはめて先に転移させた後、自らも転移したのだった。

「佐上……必ずぶっ飛ばす」

 狭まって行く部屋にただ一人残された咲はドスの効いた声でそう呟く。それはまるで自分に言い聞かせるようでもあった。  
 きっと、そうでもしなければ今すぐにでも暴れ狂ってしまっていたのだろう

「はぁ……落ち着け私。とにかく今は外に出ないと」

 冷静さを取り戻そうと深呼吸をした後、咲は魔龍王と戦った時のようにベルトを呼び出した。

『カルノドライバー!!』

「今はそう言う気分じゃないんだけど……まあいいか」

 こんな時でもベルトは元気そうだったが、そんなことなどお構いなしに咲はベルトのボタンを押す。
 するとあの時と同じように青白い粒子が辺りに舞い始めた。

「あ、そう言えば今はカルノンいないんだった……」

 そこで咲はカルノンがいないことを思い出す。
 他の生徒と共に行動する関係上、今回のダンジョン訓練にはカルノンを連れてきていないのだ。
 
 とは言え別に変身出来ないと言う訳では無いため、咲はそのまま変身シーケンスを続ける。

「……変身」

 咲がボタンを押すと共に周囲を舞っていた青白い粒子は恐竜の形のアーマーとなり、彼女の体を包み込んでいった。

『滾る古代の力! カルノライザー!!』

 カルノセイバーを使って変身した時よりも幾分かこじんまりとしたアーマー姿のカルノライザーに変身した咲は迫りくる壁の方へとゆっくり歩いて行き……。

「カルノパンチ」

 そう言いながら軽々とパンチで壁を粉砕したのだった。

「よし、桜を探さないと……」

 そして通路へ出た咲は桜を探すため、片っ端から壁を破壊しながらダンジョンを進み続けるのだった。

――――――

「ここは……」

 気付けば桜はそれまでいた部屋とは別の場所にいた。
 転移の指輪によって別の場所へ転移したのだ。

「ああ、桜ちゃん。よかった転移場所は同じだったんすね」

 それから数秒遅れて佐上が桜の目の前に転移してきた。

「佐上君……どうしてあんなこと!」

「ああでもしないと三人とも潰されてたんすよ」

「でも、いくらなんでも見殺しなんて……」

 桜は部屋に一人残された咲の事を思い、胸が張り裂けそうな程の悲しみを抱いていた。
 もちろん彼女だって誰かが犠牲にならなければいけなかったのはわかっている。しかしあんな別れ方をするのは不本意に決まっているのだ。

「はぁ……あんな外れ勇者のことなんて忘れてさぁ、俺と一緒に来ちゃえばいいじゃん」

「外れ勇者外れ勇者って……咲ちゃんをなんだと思って……ッ!?」

「ねえ、いい加減にしなよ。桜ちゃんさぁ……俺に歯向かえる立場じゃないっしょ」

 桜に言いたい放題言われるのが癇に障ったのか、佐上はその威圧感で桜を壁際まで追い込む。
 そしてそのまま片手で軽々と彼女の両手を拘束したのだった。

「なっ……何を……」

「今ここで起きたことを俺たち以外は知り得ない。つまり、今ここでどんなことをしようと俺は罪には問われないってこと。この意味わかる?」

 そう言いながら佐上は桜の胸に視線を向ける。
 彼女も咲に負けない程に発育のいい体をしており、その整った顔と合わせて間違いなく美少女と言える存在だった。
 故に、彼女もまた佐上が狙っていた女子の一人だったのだ。

「……ッ!?」

 佐上の視線に気付いた桜は頬を染め、拘束から逃れようと藻掻く。
 しかし佐上の勇者適性による筋力上昇量は凄まじく、同じく適性によって著しく筋力が上がっているはずの桜でも全く歯が立たなかった。

「ははっ、無駄だって。なんてったって俺は最強の勇者になる男だからなぁ」

「やめて……お願い……」

 涙目で懇願する桜。しかし佐上は彼女の胸へと伸びるその手を止めようとはしなかった。

 その時である。

「カルノキック」

 壁をキックで容易くぶち抜いた咲がカルノライザーとしてのその姿を二人の前に晒したのだった。
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