固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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86 路地裏での戦い①

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 突如、咲の前に姿を現した佐上。
 そんな彼を見るなり咲は口を開く。

「なんの用? あんたに構っている時間はないんだけど……」

「おいおい、連れないこというなよ。せっかく俺自ら会いに来てやったんだからさぁ」

「いや、別に会いたくないし……」

 そんな事を言い合いながらも佐上は少しずつ咲との距離を詰めて行った。
 そしてある程度の距離まで近づくやいなや、佐上は剣を振り上げるのだった。

「ッ!」

 その攻撃を避けようとする咲。
 と同時に佐上が叫ぶ。

「今だ、お前ら!!」

 その瞬間、先程と同じように物陰から二人の少女が姿を現し、咲に向かって魔法を発動させた。

「サイコバインド!」

「エレキバインド!」

 二人が発動させたのは共に拘束系の上位魔法であるサイコバインドとエレキバインドと言う魔法だった。
 両魔法とも強大な魔物ですらその動きを完全に止められてしまう強力なものであり、この魔法こそが佐上の絶対的な自身の元となっているのである。

「ははっ馬鹿が! 俺が何の策も無しに攻撃に出るとでも思ったか?」

 そんな上位魔法を無抵抗に食らった咲を見るなり、佐上は盛大に笑い始めた。

「はぁ~傑作だなこれは。いくらお前が素早く動こうが、攻撃を避ける瞬間にはどうやったって隙が出来る。つまり、お前はまんまと俺のブラフにはまったんだよ!」

 佐上は得意気にそう言いながら咲へと向かって悠々と余裕を見せながら歩いて行く。

「さーて、それじゃあ好き放題いたぶらせてもらおうか~。……は?」

 しかしそれまでの自信と余裕に満ちた彼の表情はどこへやら。佐上は目の前の光景を見るやいなや、驚愕や恐怖と言った感情が入り混じった表情を見せるのだった。

「どうしたの? 馬鹿笑いはもう終わり?」

 何故なら拘束魔法を無抵抗に受けたはずの咲が何も無かったかのように動いているのだ。
 彼にとっては想定外以外の何物でもないだろう。

「ば、馬鹿な……! 今のは上位魔法だぞ!?」

「悪いけど、私には拘束魔法とか効かないよ。そういう能力……いや、体質って言うのかな?」

「ふざけんなよ……。おい、お前ら!」

「ッ!? な、なんでしょうか佐上様」

 佐上に呼ばれた少女たちは一瞬だけ動きを止めるものの、すぐさま佐上の元へと走り出す。
 それはまるで彼に対して恐れや恐怖と言った感情を抱いているかのようであった。

 ……いや、実際に抱いていた。

「お前らの魔法はアイツにも通用するんじゃ無かったのかよ!?」

「も、申し訳ありません佐上様!」

「佐上様ごめんなさい……!!」

「はぁ? 謝って済むことじゃねえだろうが!」

 そう叫んだのと同時に佐上は二人を殴り飛ばした。

「お前らの拘束魔法ならアイツに通用すると思ったから買ってやったってのに……期待外れだ」

「ちょっと佐上、何して……!!」

 咲は追撃を入れようとする佐上を止めるために彼の前に立ちふさがった。

「……どけよ」

「それは無理。あんた、あの子たちをまた殴るつもりでしょ」

「はぁ? 他人の所有物の扱いに何か文句でもあるわけ? 奴隷に何をしようが俺の自由でしょうよ」

 佐上の言う通り、この世界において奴隷には人権と呼べるものが無く、あくまでただの所有物でしかなかった。
 そのため人間として扱われる事も少なく、今回のように所有者に暴力を振るわれることも日常茶飯事であるのだ。

 咲もそれは理解していたが、それでも佐上の行動を許せずにいた。

「だとしても放っておけない。流石に今のあんたの行動は目に余るよ」

「ははっ……馬鹿がよ。ならどうする? 俺を殺すか? 外れ勇者のお前が」

「そうするしかないのなら、私はその道を選ぶよ」

 そう言うと咲はベルトを呼び出し、カルノライザーへと変身した。
 なおカルノンは桜と共にゼルの所にいるため、今の彼女は通常形態である。

「は……? え、なんでお前が……」

 咲が変身する様子を見ていた佐上は再び驚愕していた。
 外れ勇者だと見くびっていた相手が実は最強の戦士と言ってもおかしくない存在だったのだからそうもなるだろう。

「嘘だろ……? お前がカルノライザーだったってのか? ……いや、だとしてもだ! この世界に来てから俺はかなり強くなってる。いくらお前がカルノライザーだろうが、今の俺には勝てっこないだろ……!?」

 佐上は恐怖を振り払うように、そして己を鼓舞するように、そう叫びながら剣を構え直す。

「は、ははっ……。俺に歯向かったこと、絶対に後悔させてやるからな……!」

 そう言うや否や佐上は咲に斬りかかるのだった。
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