MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

文字の大きさ
26 / 81
第二章『巡り合う運命』

26 ルーシオの判断

しおりを挟む
「……何故、ここにいるのです」

『妙な事を言う。何故もなにも、ここイダロン帝国は我々の国だろう』

 どうやらコイツらとルーシオは面識があるようだ。
 そして、あまり良い関係とは言い難い雰囲気でもあった……。

「……そう言う事ではありません。貴方たちはしばらくの間、一切の活動を行ってはいなかったはずですが」

『ふむ、そうだな。確かにその通りだ。何しろ我々はナンバー44の居場所を見失ってしまったのだからね』

「その名は捨てました。今の私は……ルーシオです」

『ほう? たかが人の真似事であるお前が、名を持ったと?』

 無機質な人型機械は淡々と、それでいてどこか悪意を感じる声でそう言った。
 正直コイツの言葉もルーシオの過去も気になることは多いが、これ以上は……彼にとって不味い気がする。
 ここは一旦退くべきだろう。

 少なくともこちらにはプレイヤーが二人いるし、ルーシオも相当な実力者だ。
 逃げるだけであればまず問題は無いだろう。

「ルーシオ、ここは一旦退きましょう」

「……すみません。私を置いて、メイデンを連れて先に王国へ戻ってください」

 だが、ルーシオは一人残ることを選んだのだった。

「それは……どうしてです? 少なくとも私たち3人であれば、問題なく逃げきれるでしょう?」

「……確かにそうかもしれません。ですが、彼らの目的は私なのです。魔王を倒した今、君をこれ以上私の過去に巻き込むわけにはいきません」

「今更そんなこと……。それならどうして、私をパーティに誘ったんですか!」

 彼が意図的に俺と距離を置こうとしているのはわかる。
 だが、それならどうして俺とパーティを組んだのか。
 たった数日の短い間だったが、彼が俺にただならぬ思いを抱いているのはわかりきっていた。

 なのに、今になってそれを全て無かったことになんて……。

「ステラ、君に初めて会った時から私は……いえ、何でもありません。私の方からパーティに誘っておいてこんなことになってしまったことを……謝罪します」

「ルーシオ!?」

 気付けば俺は彼の攻撃によって勢いよく吹き飛ばされていた。
 
「あらっ私もなのね」 

 同様にメイデンも俺と同じ方向へと吹き飛ばされている。
 これはプレイヤーとしての耐久を前提とした雑な方法だったが、今この状況で戦線から離脱させるのならこれ以外にいい方法は無いだろう。

 だがそれは、彼一人だけがこの場に残るのだと言う証明でもあった。

「二人は王国に戻ってください。そして、私の事は……どうか忘れてください」

「ルーシオ!!」

 フライで彼の元に戻ろうとしたものの、あまりにも勢いよく吹き飛ばされているせいでフライの飛行速度程度では相殺することが出来なかった。
 ジェット機のような魔導機のバックパックがあれば話は違ったのかもしれないが、生憎とそんな便利なものを今の俺は持ち合わせていない。

「ぐぇっ」

「よっ……と」

 そして十数秒後、俺たちは落下した。

「貴方、受け身とかは取らないのかしら」

「仕方ないだろ……こんなふうに落っこちたのは初めてなんだから」

 地面に埋まっている下半身を掘り起こしながら、呆れた表情のメイデンにそう言う。
 まあそれは良い。今はそんなことを気にしている場合ではないんだ。
 
「やっぱりルーシオを放ってはおけない。俺は、あそこに戻ろうと思う」

「あら? あんなにも感動的な今生の別れを演出されていたのに?」

「それでもだ。説得でもなんでもしてやる。怒られたって、失望されたっていいさ。同じ冒険者パーティとして、このまま放っておくなんて出来ないんだよ……!」

「あら、あらあら……」

 メイデンはニヤニヤとしているが、これはそう言ったものでは無い。
 そもそも今はそう言う気分では無いし、彼女の雰囲気に飲みこまれてしまえばそれこそ思うツボだ。

「でも、貴方は私を任されているのでしょう?」

「……俺を引き留めるのか?」

 確かにルーシオは俺に彼女を任せたうえで、一人あの場に残ったのだ。
 このまま彼女を放棄すれば彼との約束すら破ることになってしまう。

 それでも俺は……それこそ、彼女を倒してでも彼の元に戻る。

「いいえ、そうではないわ。……むしろ、私も協力してあげると言ったら?」

「本当に良いのか? あの人型機械がどんな存在なのかも、どれだけの強さなのかもわからないんだぞ」

「ええ。だって考えてちょうだい? 憧れのランカーと、こうして共に戦える機会なんてそうそうないのよ?」

 彼女の表情は相変わらずミステリアスで、心情が読めないままだった。
 だが、その言葉に嘘は無いと……それだけは確信できた。

「そうか……なら、背中は任せた」

 状況が状況とは言え、これは流石に少々臭すぎる台詞だったかもしれないが……。

「ふふっ、任せてちょうだい。貴方の背中、完璧に守り抜いて見せるわ」

 想定通り、メイデンは楽しそうにそう返してきた。
 ロープレ好きな彼女ならばきっとこの方がテンションが上がると思っていたが、それは正しかったようだ。
 
「それじゃあ、行こうか」

「待ってちょうだい」

「何だ?」

「私、フライを使えないのよ」

 ……完全に失念していたが、そう言えば彼女は戦士系のキャラだった。

「じゃ、じゃあ……俺の上に乗ってくれ」

「あら、こんなに小さな女の子に乗られたい変態だったのかしら」

「違う! ……見ればわかるだろ」

 彼女の前でしゃがみ、おんぶする形で俺の背中に乗ってもらった。

「それじゃあ、行くぞ」

「ふふっ、落とさないでちょうだいね? それと、あまり変な所は触らないでもらいたいわ。その、敏感な所もあるから……なんて」

「……はいはい、わかったわかった。ほら、飛ぶからきちんと掴まっていてくれ」

 出鼻はくじかれるし、どこまで冗談なのかもわからないし、とにかく彼女には振り回されてばかりだ。
 だが、それも今は我慢。
 急いで彼の元へと向かうしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...