MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

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第二章『巡り合う運命』

31 異常事態

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「おい、何とか言ったらどうなんだ!」

「ちょっと貴方、今はそんなことをしている場合ではないの」

「あ゛ぁ?」

 正直、彼とは最悪なタイミングで出会ってしまったと言える。
 ただでさえ異常事態の今、余計なことをしている暇などないのだ。

「私たちよりも先に進んでいた班が壊滅していたの。恐らく想定よりも遥かに強力な魔物が現れたんだと思う」

 だが彼の気迫に負けず、アイシャは淡々と情報共有を行っていた。
 流石はリーダー。頼りになる。

「だから……」

「だから退けってか? 冗談じゃねえ。そんな化け物がいるんなら俺が倒して、俺こそが本当に魔王を倒せる存在なんだってことを知らしめてやるさ」

 そう言うと彼はそのままアイシャの横を素通りして行ってしまった。

「ちょっと、貴方! まさか一人で行くつもりじゃないわよね!?」

「はっ、俺には弱い仲間なんていらねえ。正直言って足手纏いだ。俺一人の方が戦いやすい」

 彼のその言葉を聞いた彼の班のメンバーは委縮していた。
 実際、彼らが身にまとっている装備はお世辞にも性能が良いと言えるものでは無かった。
 それはイコールで彼らの実力がそれ相応に低いものであると言っているようなものだ。

 だが、だとしても班のメンバーを放置して独断専行など……。

「あら、どうしたのかしらステラ。顔が暗いのだけど?」

「俺に、彼を止める権利なんてあるのかって思ってな」

 あの時、俺は保護対象のメイデンを巻き込んでまでルーシオの元に戻ろうとした。
 今考えれば、どう考えても優先順位を間違えていたと断言できる。
 全滅の可能性と、召喚された勇者だけでも王国へ送り届ける。その二つを天秤にかけた時、優先すべきは間違いなく勇者の保護だった。

 そんな俺が彼を止める?
 何様のつもりだよ。優先順位を見誤って独断専行をしたのは……俺も同じじゃないか。

「ああ、そういうことなのね。ふふっ、思い詰めているようだけれど、何か勘違いしているんじゃないかしら」

「……何が勘違いだって言うんだ?」

「あの時、私の方から貴方に同行するようにお願いしたのよ? 貴方が悪い訳では無いわ」

「それは……いや、だとしてもだ。俺は勇者の保護を放り出してルーシオを助けに行こうとした。その判断が正しいはずが……」

 彼女の言う事は確かに事実だが、だとしてもルーシオの元に戻ろうとしたのは間違いなく俺の判断ミスで……。

「でも、貴方がその判断をしたのは私がプレイヤーだからでしょう?」 

「……?」

「あの時の私が見た目通りのひよわで可愛い美少女だったなら、きっと貴方は彼を見捨ててでも私の保護を優先したと思うわ。だから貴方は間違っていない。むしろ、私と貴方と言うこの世界でも最大戦力と言って良い程のタッグで彼を助けに行くのが最適解とすら言えたんじゃないかしら」

「メイデン……!」

「だから、そもそもが勘違いなのよね。あの時の貴方は間違いなく最適解を選んでいたわ。それを誇りなさい」

 彼女の言葉に嘘偽りは無かった。
 本心からそう思っているのだと、確信できた。

 だからこそ、彼女のその言葉に俺は……救われた気がした。

「メイデン……! 本当に、ありがとう……」

「あらあら、こんなに小さな女の子に抱き着くなんて、やっぱり変態なのね貴方は。それに、別に貴方に何かしてあげたつもりは無いのよ? 貴方が勝手に吹っ切れただけ。私は客観的事実を話しただけなのだから」

「そうだな。うん、そう言う事にしておこう」

 このまま彼女の胸で男泣きしたいところだが、ここはダンジョンだ。
 そう言うことをしている間に危険の方からやってくる可能性もあるし、そもそもこんなことをしている所を他人に見られでもしたら……。

 ……ん?

「えっと、私たちお邪魔だった?」

「ははっ、魔王殺しも中々隅に置けないぜ!」

「パーティメンバーとそう言う関係になる方たちも多いと聞いてはいたけど、まさか同性でこんな年の差もあるなんて……結婚の際は是非、僕の師匠の教会でどうでしょうか」

「美人と美少女の組み合わせって凄くいいよね! もういっそのこと男は男同士で、女は女同士でくっついたらどうだろう!」

 ……俺は、今世紀最大のやらかしを更新したのかもしれなかった。

「あ、えっと……これは……」

「おいてめえ! 何ダンジョンで乳繰り合ってやがる!!」

 と、その時だった。
 先に進んでいたはずの彼が戻ってきたのだ。
 正直、気まずいどころの騒ぎでは無かったから彼には助けられた。

「魔王殺しサマにとってダンジョンなんて遊びも同然ってか?」

「そ、そう言う訳じゃないさ。それより、どうして戻ってきたんだ?」

「進めねえんだよ。どれだけ奥に行こうとしても元の場所に戻されちまう。アンタらのせいか?」

 彼のその言葉を聞いたこの場の全員が首を横に振った。
 それはつまり、彼が嘘を言っているか……何者かの攻撃を受けているかの二択だ。

「全員、戦闘用意!」

 その瞬間、アイシャがそう叫んだ。
 と同時にこの場の全員が戦闘態勢をとった。

「チッ……面倒なことになりやがったな」

「各自警戒して、何か発見したらすぐに報告するように!」

「てめえ、俺に命令すんじゃねえ!!」

 彼は相変わらずと言った様子だ。
 そんな彼もアイシャの戦闘用意の命令に反する訳にはいかず、剣と盾を構えてどこから攻撃を受けても大丈夫なようにしていた。

 その構えに隙は無く、度重なる経験の先に習得したものであろうことを感じられた。
 流石にあれだけ啖呵を切るだけあって実力は充分のようだ。

 それにしても、進むことが出来ずに元の場所に戻ってしまう……か。
 そんな奇妙な能力を持った魔物、ゲームにはいなかったはずだ。
 となると俺の知らない魔物の仕業か?

 少なくとも、一筋縄ではいかなさそうだな。
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