MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

文字の大きさ
32 / 81
第二章『巡り合う運命』

32 幻惑竜

しおりを挟む
 あれから十数分が経ち、皆の集中も切れ始めていた。
 人間の集中力の限界は50分あたりらしいが、いつどこから襲われるかもわからない極限状態での集中力なんてせいぜい数分が限界なものだろう。
 この世界の人間にもそれが当てはまるかはわからないものの、これだけ保てれば普通は充分なのかもしれない。

 だが、今は違った。
 俺たちを襲おうとしている魔物は、まだまだ我慢比べをするつもりのようなのだ。
 これ以上は彼らも限界が近く、このまま行けば集中が切れた所を襲われ、一網打尽。
 無惨にも壊滅と言う訳だ。

 ……と、魔物は考えていることだろう。
 その考えは実際正しい。俺が向こうの立場で耐久戦を挑むとしたらそうするだろうよ。 
 しかしそれはあくまで、俺たちプレイヤーがいない場合のみに成立する話だった。

 何しろ俺たちプレイヤーは精神面にもステータスの補正を受けているのだ。
 このまま何十分も、何時間も、戦闘態勢でいられる訳である。

「見て、あれ!!」

 それに気付いたのかどうかはわからないが、とうとう魔物はその姿を現した。

「げ、幻惑竜だって……!? いやありえねえぜ。このダンジョンにあんな魔物がいるはずが……!」

「知るか、ここに居るっつんなら居るんだよ。それともあれか? てめえらは竜を相手にしたら何もできねえ雑魚だってのか?」

「なんだと!?」

「ルーク、落ち着いて。今は目の前の事にだけ集中するのよ」

 どうやら俺たちを狙っていた魔物の正体は幻惑竜と呼ばれる竜種のようだった。
 この魔物はその名の通り幻惑魔法を得意としていて、それを使って獲物に幻惑を見せて狩りを行うという習性を持っている。

 ゲーム内では透明になったり偽物をデコイとして出してきたりするくらいなものだったが、なるほど……獲物を道に迷わせるなんて使い方もあるわけだ。
 恐らく彼が先に進めなかったのは、幻覚魔法によって元の場所へと戻るように嘘の景色を見せられていたからだろう。

 だが種さえわかってしまえばこちらのものだ。
 先行した班を壊滅させたヤバイ奴が来る前に、こんな雑魚さっさと倒してしまおう。

「私とルークが前に出る! 魔術師たちは援護を頼んだ!」

 そう言ってアイシャとルークが前に出た。

 援護を頼むと言われても……あれだけ距離が近いと撃てるものも撃てないな。
 ネワオンにはパーティメンバーへのフレンドリーファイアは無効化されていたけど、この世界にはそんなものは無い。
 俺の魔法を真正面から受ければ間違いなく黒焦げ……いや、塵も残らないかもしれない。

 そのことを伝えて後ろに戻ってもらうか。

「第一等級魔法、ファイアボール!!」

「第一等級魔法、ウィンドアロー!」

 とその前に他の魔術師たちの攻撃が始まってしまった。

「どうするのステラ。貴方の魔法だと、周りにいるあの子たちも巻き込んでしまうでしょう?」

「それはそうなんだが、後ろに戻ってもらうにもこの距離だと声が届かないからな……」

 魔法や金属の当たる音によって彼らへの声がかき消されてしまう。
 このままでは意思疎通も出来ないままだ。

 せめて前へ出られれば話は違うんだが……。

「って、メイデンは前に出ないのかよ」

 そうだ、彼女に前に出て貰って伝えて貰えば……。

「無理ね。私はほら、アレの対処をしないと」

 そう言うメイデンの視線の先には大量の魔物がいた。
 どうやら俺たちと幻惑竜の戦闘音を聞いた魔物がおこぼれを狙いに集まってきてしまったようだ。

「一人で大丈夫か?」

「ふふっ、これくらいなんてことはないわ。それよりも貴方はどうするつもり?」

「俺は……仕方ない、あれをやるか」

 正直なところ、手はあった。
 今俺が抱えている問題を全て踏み倒せる画期的な手だ。
 だがその代償は大きい。

「あれ……って、なんなのかしら?」

 これはPVPでもほとんど使ったことは無く、基本的にギミック持ちのボスと戦う時くらいにしか使わないものだ。
 そのため、メイデンが知らないのも無理はない。
 
 そして願わくば、一生知らないでいて欲しかった。
 彼女に知られれば、恐らく一生からかわれることになる。

 だが、今やらないと状況がさらに悪化する恐れもある。いくら多くの経験を積んできた紅の華と言えど、ブロンズランクは竜種を相手に出来る程に強くはないんだ。
 ……覚悟を決めるしかなかった。

「……モードチェンジ『マナウォリアー』」

 俺がそう口にした瞬間、身にまとっていた俺の装備は一瞬にして消え去り、代わりにこれでもかと言う程に露出の多いビキニアーマーが装着された。

「あらあら、これは……随分とまあハレンチな変身ヒロインね」

 メイデンは俺の今の姿を見るなりニヤリとしながら開口一番そう言った。
 だから、彼女には見せたくなかったんだ。

 この姿は魔法系でありながら近接戦闘を行う職業であるマナウォリアーの持つ「モードチェンジ」を発動することで変身できるものだった。
 え、どうして変身したらこんなにドスケベなビキニアーマー姿になるのかって?
 それは、俺がそう言う設定にしたからだ。

 このモードチェンジと言うスキルは持っている装備の中からあらかじめマナウォリアー用に適応させておいたものを即座に装着して戦うというもので、せっかくだからと高性能かつエッチで見栄えのいい装備を設定したのだ。
 そしてこの設定は一度設定してしまうと特定の施設でしか再設定できない。

 そう、要するにゲーム内でならとお遊びで設定した装備を、俺は今こうして着ないといけなくなったわけである。クソが。

「それにしても、中々面白いスキルがあるのね」

「面白いってそれ、どっちの意味で言っているんだ?」

「両方よ、両方」

 メイデンは相変わらずニタニタと笑いながらそう言って来た。

 このスキルは魔法系をメインクラスにすると本来装備出来ないはずのアーマー系を例外的に装備することができる。
 そして魔法系ステータスの半分が物理系ステータスに加算されるという効果もあるため、一時的な魔術師の戦士化のためのスキルだった。

 だから彼女がこのスキルを面白いと思うのもまあわかる。
 一時的とはいえ、魔法系のビルドでありながら戦士のような戦い方が出来るのだ。その分、戦略も広がるものだろう。
 そして普通ならもっとしっかりとした全身鎧を纏い、前線で戦士に混ざって戦うカッコいい姿を見ることも出来るのだ。
 
 だが見ての通り、俺はふざけた装備を設定したせいで頭のおかしいイカレ痴女になってしまった訳である。
 おのれ、あの時のネタ欲求と性欲に塗れた俺め……絶対に許さんぞ。

「それじゃあ、私はアレの相手をしてくるから……貴方はその姿を彼らに見せてあげなさい?」

「ああ、わかったよクソ!」

 そうしてメイデンと俺は別れ、それぞれの戦いに身を投じることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...