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第八章
第七話 サインの入手は大変②
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クリープ、アイネスビジン、そしてアイリンのサインを手に入れた俺は、次のターゲットとして別の走者を探していた。
「さて、次は誰に交渉をしようか」
「ララララ~ララララ~」
「練習に励むウイニングライブさん素敵です! あ、いけない。興奮しすぎて、また鼻血が吹き出そう」
学園の中庭を歩きながら、周囲を見渡していると、聞き覚えのある歌声と、それを応援する人物の声が耳に入る。
そちらに顔を向けると、ロングの黒髪の頭部には小さい2本の角が生え、背中からは黒い翼が生えている女子生徒が、茶髪の髪をツーサイドアップにして、背中から悪魔の翼が生えている女子生徒を、鼻血を出しながら応援している姿を目撃する。
あいつらはウイニングライブとシャワーライトだ。
ウインングライブは逃げ切りシスターズとか言うアイドルグループに所属して、センターを掴み取るほどの人気だ。そしてティアラとシュウカ賞の2冠を持つ実力者。
そしてシャワーライトは、ウインングライブの3冠を阻止したこともあり、実力も人気も高い。
彼女たちのサインなら、ファンは欲しがるに決まっている。
「早速交渉してみるか」
ウインングライブが歌の練習を終えたタイミングで、拍手を送りながら近付く。
「さすがウイングライブだ。つい聴き入ってしまうほどの素晴らしい歌声だな」
「あ、シャカール君! 見ていてくれたんだ」
「げ! どうしてあなたがこんなところにいるのですか? せっかくわたしとウイングライブさんの2人きりの時間を過ごしていたと言うのに」
彼女たちに近付き、声をかける。するとウイニングライブの方は普通に接してくれるも、シャワーライトは邪魔者扱いをするかのように、睨み付けてくる。
「何か用ですか? ウインングライブさんの練習の邪魔になるので、用がなければ視界から消えてください。いえ、存在そのものを抹消してくれた方がありがたいので、この世界から居なくなってください」
相変わらずシャワーライトは俺に対して毒を吐いてくる。まぁ、彼女からは嫌われているから仕方がない。
「シャワーライトちゃん! シャカール君にそんなことを言ってはダメだよ」
「ご、ごめんなさい。つい、脊髄反射並みに頭で考えるよりも、口が速かったです」
ウインングライブが叱責すると、シャワーライトは素直に謝る。やはり、好きな相手からは嫌われたくはないのだろうな。
「練習の邪魔をして悪かったな。実は、お前たちのサインが欲しいんだ。できれば1枚ではなく複数枚欲しい」
「ウイニングライブさんのサインを複数枚! なんてうらやま……けしからないことを考えているのですか! ウイングライブさん、この男のお願いなんて聞いてはダメですよ! きっとこいつはウイニングライブさんの人気を利用して、サインを売り捌いて金儲けをするつもりです!」
サインをお願いした瞬間、シャワーライトの口の端から涎が出た。だが、それに気付いた彼女は直ぐに口元を拭い、俺を睨み付けると妄言を吐く。
しかし、完全に的外れではないため、反論し辛い。
「シャカール君はそんなことはしないよ。取り敢えずは話を聞きましょう」
「ああ、さすがウインングライブさんです! 聖女のように広いお心で、こんなやつの話を聞いてあげるとは! お美しすぎる! マイスイートエンジェル!」
ウイニングライブが俺を擁護する度に、シャワーライトが大げさに彼女を褒め称える。最近のシャワーライトは、ウイニングライブが好きすぎて、バカになって来ているような気がするな。愛は盲目と言う言葉は、彼女のような人を体現しているのだろう。
「話が脱線しそうだから単刀直入に言う。実は、とある生徒の実家が閉店の危機に瀕してな。立て直すために、2人のサインが必要なんだ」
マーヤの名前を出すのを避け、簡潔に事情を話す。
「なるほど。事情は分かったわ。でも、私のサインを営利目的に使うと言われると、流石に1枚が限度になるわね」
アイドルとは言え、歌と踊り、そして走りでお金を稼いでいるだけあって、その辺りはしっかりとしているようだ。
やっぱりそうなるよな。なら、ここは彼女がもっと書いてもらえるように交渉するか。
「シャカール君はオタ芸を知っている?」
「一応、知識としては。確かアイドルと一緒で、転生者が伝えたものだよな……まさか!」
「そう、そのまさかよ。休憩が終わった後にまた練習を再開するから、その時にオタ芸で応援して欲しいの。そしたら、何枚だってサインを書いてあげるわ」
サインの交換条件を出され、頭の中で俺がオタ芸を踊っている姿を想像する。
めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか。知っている人物が目撃したら、俺はそれをネタに弄られる。得にアイリンなんかに知られる訳にはいかない。
だが、クリープの時のような幼児プレイよりかはマシだろう。彼女のサインは途轍もない効果を発揮する切り札になる。ここは、クリープの時と同様に、一時の恥をかくしかない。
「分かった。それで手を打とう。そしてシャワーライトだが?」
「このわたしがあなたに協力すると思っているのですか?」
俺に対して鋭い視線を向けながら、協力をしないと告げてくる。
やっぱりそうくるか。なら、こちらも切り札を切るか。
「なら、サインを書いてくれると約束をしてくれるのなら、こいつを進呈しよう」
懐から隠し持っていた飲み物を取り出し、シャワーライトに見せ付ける。
「そ、それは! 食堂の幻の飲み物! ハチミツドリンクこと、ハチミーじゃないですか!」
「そうだ。ハチミーを持っているだけでも凄いが、なんと俺の部屋にはこのハチミーが一ダースある。枚数に応じてハチミーを献上しようじゃないか」
「良いなー。私もハチミー飲みたい」
本物のハチミーを見せ、ウイニングライブも興味を示してきた。ここは彼女にも協力してもらうか。
「ウイングライブはサインの協力をしてくれると言ってくれたから、特別にやるよ」
「本当! ありがとう! シャカール君!」
俺からハチミーを受け取り、ウイニングライブは早速飲み始める。
「うーん! 口一杯にハチミツの甘さが広がって幸せな気分になりそう! これなら、次の練習も頑張れそうだわ」
ハチミーの感想を口に出し、それを聞いたシャワーライトは唾を飲み込んだのか、喉が動くのが見えた。
「お前も欲しいのだろう?」
「い、いらないわよ。わたしは簡単には餌付けされないのだから」
プライドの方が上回っているのか、ハチミーを拒否する姿勢を見せる。だが、口では否定しても、体の方は正直だった。
再び口から涎が出始め、口で拭う動作をする。
「おいおい、口では否定してはいるが、体は正直に求めているじゃないか。正直になれよ。俺のアレが欲しいのだろう? 素直になった方が楽だぜ」
「シャカール君の言う通りよ。甘くて美味しいし、喉に張り付く感じが堪らないのよ。癖になりそうだわ」
「くっ、わたしは……あなたに……くっしたりは……くっしたりは……もう我慢できない! あなたの太くて大きくって濃厚にドロリとした液体をわたしにください!」
様々な葛藤の影響で頭が混乱しているのか、シャワーライトは誤解を招きそうな発言を声音を高くして言い放つ。
その言葉が耳に入り、聞いているこっちが少々恥ずかしくなった。
「分かった。そこまで言うのならくれてやる。その代わりに約束は守れよ」
懐から別のハチミーを取り出し、シャワーライトに手渡す。
「ハチミーには勝てなかったよ! 悔しい! でも美味しい! えん、えん」
羞恥心で涙を流しながら、シャワーライトはハチミーを飲み始める。
さて、これでサインの約束を取り付けたし、他の走者を探しに行くか。
次のターゲットを探すために踵を返してこの場を去ろうとしたその時、背後から肩を掴まれる。
反射的に首を曲げて後方を見ると、ウイニングライブが笑みを浮かべながら俺の行手を阻止していた。
「どこに行くつもりなの? 今から練習を再開するから、約束通りにオタ芸で盛り上げてよ」
「あ、やっぱり覚えていたのだな」
ワンチャン、ハチミーで忘れてくれるかと思ったが、そうはいかないようだ。
「くそう! 早く練習を終わってくれ!」
その後、俺はペンライトとか言うものを持たされ、彼女の練習が終わるまで、オタ芸を踊らされることになったのだった。
「さて、次は誰に交渉をしようか」
「ララララ~ララララ~」
「練習に励むウイニングライブさん素敵です! あ、いけない。興奮しすぎて、また鼻血が吹き出そう」
学園の中庭を歩きながら、周囲を見渡していると、聞き覚えのある歌声と、それを応援する人物の声が耳に入る。
そちらに顔を向けると、ロングの黒髪の頭部には小さい2本の角が生え、背中からは黒い翼が生えている女子生徒が、茶髪の髪をツーサイドアップにして、背中から悪魔の翼が生えている女子生徒を、鼻血を出しながら応援している姿を目撃する。
あいつらはウイニングライブとシャワーライトだ。
ウインングライブは逃げ切りシスターズとか言うアイドルグループに所属して、センターを掴み取るほどの人気だ。そしてティアラとシュウカ賞の2冠を持つ実力者。
そしてシャワーライトは、ウインングライブの3冠を阻止したこともあり、実力も人気も高い。
彼女たちのサインなら、ファンは欲しがるに決まっている。
「早速交渉してみるか」
ウインングライブが歌の練習を終えたタイミングで、拍手を送りながら近付く。
「さすがウイングライブだ。つい聴き入ってしまうほどの素晴らしい歌声だな」
「あ、シャカール君! 見ていてくれたんだ」
「げ! どうしてあなたがこんなところにいるのですか? せっかくわたしとウイングライブさんの2人きりの時間を過ごしていたと言うのに」
彼女たちに近付き、声をかける。するとウイニングライブの方は普通に接してくれるも、シャワーライトは邪魔者扱いをするかのように、睨み付けてくる。
「何か用ですか? ウインングライブさんの練習の邪魔になるので、用がなければ視界から消えてください。いえ、存在そのものを抹消してくれた方がありがたいので、この世界から居なくなってください」
相変わらずシャワーライトは俺に対して毒を吐いてくる。まぁ、彼女からは嫌われているから仕方がない。
「シャワーライトちゃん! シャカール君にそんなことを言ってはダメだよ」
「ご、ごめんなさい。つい、脊髄反射並みに頭で考えるよりも、口が速かったです」
ウインングライブが叱責すると、シャワーライトは素直に謝る。やはり、好きな相手からは嫌われたくはないのだろうな。
「練習の邪魔をして悪かったな。実は、お前たちのサインが欲しいんだ。できれば1枚ではなく複数枚欲しい」
「ウイニングライブさんのサインを複数枚! なんてうらやま……けしからないことを考えているのですか! ウイングライブさん、この男のお願いなんて聞いてはダメですよ! きっとこいつはウイニングライブさんの人気を利用して、サインを売り捌いて金儲けをするつもりです!」
サインをお願いした瞬間、シャワーライトの口の端から涎が出た。だが、それに気付いた彼女は直ぐに口元を拭い、俺を睨み付けると妄言を吐く。
しかし、完全に的外れではないため、反論し辛い。
「シャカール君はそんなことはしないよ。取り敢えずは話を聞きましょう」
「ああ、さすがウインングライブさんです! 聖女のように広いお心で、こんなやつの話を聞いてあげるとは! お美しすぎる! マイスイートエンジェル!」
ウイニングライブが俺を擁護する度に、シャワーライトが大げさに彼女を褒め称える。最近のシャワーライトは、ウイニングライブが好きすぎて、バカになって来ているような気がするな。愛は盲目と言う言葉は、彼女のような人を体現しているのだろう。
「話が脱線しそうだから単刀直入に言う。実は、とある生徒の実家が閉店の危機に瀕してな。立て直すために、2人のサインが必要なんだ」
マーヤの名前を出すのを避け、簡潔に事情を話す。
「なるほど。事情は分かったわ。でも、私のサインを営利目的に使うと言われると、流石に1枚が限度になるわね」
アイドルとは言え、歌と踊り、そして走りでお金を稼いでいるだけあって、その辺りはしっかりとしているようだ。
やっぱりそうなるよな。なら、ここは彼女がもっと書いてもらえるように交渉するか。
「シャカール君はオタ芸を知っている?」
「一応、知識としては。確かアイドルと一緒で、転生者が伝えたものだよな……まさか!」
「そう、そのまさかよ。休憩が終わった後にまた練習を再開するから、その時にオタ芸で応援して欲しいの。そしたら、何枚だってサインを書いてあげるわ」
サインの交換条件を出され、頭の中で俺がオタ芸を踊っている姿を想像する。
めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか。知っている人物が目撃したら、俺はそれをネタに弄られる。得にアイリンなんかに知られる訳にはいかない。
だが、クリープの時のような幼児プレイよりかはマシだろう。彼女のサインは途轍もない効果を発揮する切り札になる。ここは、クリープの時と同様に、一時の恥をかくしかない。
「分かった。それで手を打とう。そしてシャワーライトだが?」
「このわたしがあなたに協力すると思っているのですか?」
俺に対して鋭い視線を向けながら、協力をしないと告げてくる。
やっぱりそうくるか。なら、こちらも切り札を切るか。
「なら、サインを書いてくれると約束をしてくれるのなら、こいつを進呈しよう」
懐から隠し持っていた飲み物を取り出し、シャワーライトに見せ付ける。
「そ、それは! 食堂の幻の飲み物! ハチミツドリンクこと、ハチミーじゃないですか!」
「そうだ。ハチミーを持っているだけでも凄いが、なんと俺の部屋にはこのハチミーが一ダースある。枚数に応じてハチミーを献上しようじゃないか」
「良いなー。私もハチミー飲みたい」
本物のハチミーを見せ、ウイニングライブも興味を示してきた。ここは彼女にも協力してもらうか。
「ウイングライブはサインの協力をしてくれると言ってくれたから、特別にやるよ」
「本当! ありがとう! シャカール君!」
俺からハチミーを受け取り、ウイニングライブは早速飲み始める。
「うーん! 口一杯にハチミツの甘さが広がって幸せな気分になりそう! これなら、次の練習も頑張れそうだわ」
ハチミーの感想を口に出し、それを聞いたシャワーライトは唾を飲み込んだのか、喉が動くのが見えた。
「お前も欲しいのだろう?」
「い、いらないわよ。わたしは簡単には餌付けされないのだから」
プライドの方が上回っているのか、ハチミーを拒否する姿勢を見せる。だが、口では否定しても、体の方は正直だった。
再び口から涎が出始め、口で拭う動作をする。
「おいおい、口では否定してはいるが、体は正直に求めているじゃないか。正直になれよ。俺のアレが欲しいのだろう? 素直になった方が楽だぜ」
「シャカール君の言う通りよ。甘くて美味しいし、喉に張り付く感じが堪らないのよ。癖になりそうだわ」
「くっ、わたしは……あなたに……くっしたりは……くっしたりは……もう我慢できない! あなたの太くて大きくって濃厚にドロリとした液体をわたしにください!」
様々な葛藤の影響で頭が混乱しているのか、シャワーライトは誤解を招きそうな発言を声音を高くして言い放つ。
その言葉が耳に入り、聞いているこっちが少々恥ずかしくなった。
「分かった。そこまで言うのならくれてやる。その代わりに約束は守れよ」
懐から別のハチミーを取り出し、シャワーライトに手渡す。
「ハチミーには勝てなかったよ! 悔しい! でも美味しい! えん、えん」
羞恥心で涙を流しながら、シャワーライトはハチミーを飲み始める。
さて、これでサインの約束を取り付けたし、他の走者を探しに行くか。
次のターゲットを探すために踵を返してこの場を去ろうとしたその時、背後から肩を掴まれる。
反射的に首を曲げて後方を見ると、ウイニングライブが笑みを浮かべながら俺の行手を阻止していた。
「どこに行くつもりなの? 今から練習を再開するから、約束通りにオタ芸で盛り上げてよ」
「あ、やっぱり覚えていたのだな」
ワンチャン、ハチミーで忘れてくれるかと思ったが、そうはいかないようだ。
「くそう! 早く練習を終わってくれ!」
その後、俺はペンライトとか言うものを持たされ、彼女の練習が終わるまで、オタ芸を踊らされることになったのだった。
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