薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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最終章

第七話 トレーニングの結果

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 魔王杯に向けてトレーニングをすることになった俺たちは、足腰を鍛えるためにダートコースを走ることになった。

 だが、ルーナの罰ゲームと言う話を持ち出した結果、みんなが本気で走る。

 ここまでは良かった。そう、ここまでは。

 タマモたちが罰ゲームを受ける条件は、ハンデを背負っている状態の俺に先にゴールされることだ。そのため、俺を前に行かせないように、そしてより多くの体力を消耗させるために大外を走らせようと彼女たちは協力し合っている。

 今回のトレーニングは魔法を禁止とさせられている。タイヤを引き摺ってハンデのある状態の俺では、魔法なしで彼女たちの壁を越えるのは難しいだろう。

 体力を温存するために内側を走っていては、追い越すことは不可能。だからと言って大外を走れば、その分体力を大きく削られてしまう。

 普段良く走る芝のコースとは違いダートコースは足を乗せた瞬間に沈み、そして前に進むために思いっきり蹴り上げて足を伸ばす必要がある。

 通常と比べてパワーが要求されるし、外を走ればスタミナ切れを起こす可能性もある。だからと言って内で様子を見続けていては勝てず、俺が罰ゲームを受けることになる。

 罰ゲームの内容が何なのかは不明であるが、俺が考える最も嫌な罰ゲームをさせられた場合は、きっと後悔することになるだろう。

 俺も負ける訳にはいかない。

 タマモたちの後を走って様子を伺い続けていると、壁となっている彼女たちにバラツキが生じ始めていることに気付いた。

 そうか。このダートコースはゴールに近付けば近付く程、坂が急勾配になっていく。

 体力がない者から速度を落としていく。なら、その間を掻い潜って行けば、前に進めるはずだ。

「アイリン悪いな。どうやら罰ゲームを受けるのはお前のようだ」

「シャ、シャカールトレーナー! やめてください! わたしは練習ばかりの日々は嫌です!」

 懇願する彼女を無視して、俺は体力を失ってバテ始めているアイリンの横を抜け、前に出た。

 これで俺の罰ゲームは免れる。悪いな。この世界は弱肉強食だ。恨むのであれば、日々トレーニングをサボっていた自分自身を恨んでくれ。

 心の中で呟いたその瞬間、急に足が重くなり、一歩踏み出す足に入れる力が格段に上がった。

 ここに来て、ハンデのタイヤと急勾配の坂の影響が出たのか?

「いやぁ、タイヤの上は楽で良いですね。シャカールトレーナーファイト! このままではどんどん距離を離されていきますよ」

 真後ろからアイリンの声が聞こえ、首を横に向けて後方を見る。後の状況を理解した瞬間、俺は大きく目を見開いた。

「アイリンお前! 何をやっているんだ!」

「何って、見た通りですよ。シャカールトレーナーの引っ張っているタイヤの上に座って体力を温存しているのです」

 俺が引っ張っているタイヤに腰掛け、満面の笑みを浮かべるアイリンに怒りが湧き出す。

「ルーナ! これって反則だろうが! 全力で走っていないから、こいつが罰ゲームを受けるべきだ!」

 今回のトレーニングの対象は別に合格ラインに到達しなかった者だけではない。ルーナが真面目に全力で走っていないと判断した者も、罰ゲームの対象となる。

「ルーナ学園長、わたしはこれでも全力ですよ! 確かにサボっているように見えるかもしれませんが、体力が少ない私がゴールできるには、シャカールトレーナーを利用しなければなりません。わたしが全力で考えた結果の最善策です。わたしはこれでも全力を尽くしていますよ」

 ルーナに向けて弁明しているが、どう見ても屁理屈だろうが。絶対にアイリンは反則だ。彼女が罰ゲームを受けるべき。

 走りながらルーナの判決を待つ。

「分かった。その策は有効と言うことにしておこう。だが、ゴール目前までその状態で居たら、反則扱いにするからな」

 ルーナ! お前! 絶対に面白がっているだろうが!

 心の中で叫び声を上げる。

 普通に考えれば反則のはずが、反則でないと判断されてしまった。

「シャカールトレーナー残念でしたね。うーん、ですが、このままでは皆さんと引き離されていきます。シャカールトレーナー、もっと気合いを入れて走ってください。鞭があればシャカールトレーナーを叩いて気合いを入れさせることができるのになぁ」

 くそう。ルーナが許可を出した瞬間に言いたい放題言いやがって。

 彼女に対して心の中で舌打ちをすると、一度頭の中でシミュレーションをしてみる。

 最悪のケースは、俺が勝利条件を満たせないで罰ゲームを受ける場合だ。

 ゴールが近づいた瞬間に、アイリンは俺を飛び越えてそのままゴールするだろう。休憩をして体力を回復した彼女と、疲労困憊に近い状態の俺なら、アイリンの方が有利だ。

 そしてタマモたちは俺をどんどん引き離している。

 この状況から考えれば、アイリンが何らかのミスをしない限り、俺が負けてしまうことになる。だからと言って神頼みを期待するのも現実的ではない。

 くそう。魔法が使えたら一発逆転ができると言うのに、魔法が使えないのなら俺の負けるリスクが一番高いじゃないか。

 魔法が使いたくとも使えない状況の中、必死になって状況の打開策を考える。

 すると、あることに思い至った。

 そうだ。ルーナは魔法禁止と言っていたが、ユニークスキルまで禁止とは言っていない。なら俺のユニークスキルであるメディカルピックルを発動させれば、可能性は見出せるじゃないか。

「アイリン、今からスピードを上げるぞ! 振り落とされないようにしっかり捕まっていろよ!」

 彼女に忠告すると、ユニークスキルのメディカルピックルを発動する。

 その瞬間、過去に投与された薬の効果が出ていると脳が誤認し、薬を打った時と同じような効果が体に現れる。

 その結果、足の筋肉の収縮速度が上がり、スピードとパワーが格段に上がる。

 今の俺の速度は、俊足魔法を使った時に近い状態だ。これなら、前を走るやつに追い付くだろう。

 その認識は正しかったようで、どんどん前を走っているタマモたちに追い付く。

「うそ! あの距離からどうやって!」

「さすがシャカール君ですね。ママは驚きです」

「シャカールちゃん凄い! さすがマーヤの未来の旦那さん!」

「ゼロナ兄が凄いのは嬉しいけれど、やっぱり負けたくない」

「私に勝っただけはありますね。ですが、負ける訳にはいきません。最後まで全力で走らせてもらいます」

「シャ、シャカールトレーナー激しい過ぎです! わたし、もう、だめええええええええぇぇぇぇぇぇ!」

 後方からアイリンの声が聞こえたかと思った瞬間、彼女はタイヤから吹き飛ばされたようで俺の真上を飛んでいく。

 そして俺たちはゴール板を駆け抜けた。

 結果がどうなったのかは分からない。でも、おそらく全員がほぼ同時にゴールをしたような気がした。

「全員同時ゴールか。つまらない。これでは罰ゲームを考えた意味がないではないか」

 全員罰ゲームを回避したことをルーナが告げ、俺はホッと一安心した。
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