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第二章
第四話 魚華は意外と乙女?
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「奇跡の名馬! アタイと勝負だ!」
大和鮮赤が俺に押し付けたせいで、魚華がレース勝負を挑んできた。
まさか、こうなるとは思ってもいなかった。今回はレースをしないで済むと思っただけに、動揺が激しい。
相手はウオッカだ。ダイワスカーレットと同様か、それ以上の強さを秘めている牝馬だ。油断はできない。
「あ、帝……奇跡の名馬、ここに居たんだ! 探したよ!」
思考を巡らし、今できる策を考えていると、奥の方からクロが近付いて来る。一度俺の真名を言おうとしたが、他にも生徒がいることに気付いたらしく、慌てて二つ名に言い直す。
「どうしたの? 何か取り込み中だった?」
クロが魚華の後に立ち、彼女の背中からひょっこりと顔を出す。
その瞬間だった。魚華がいきなり踵を返したかと思うと、クロに向けて回し蹴りを放つ。彼女の足の位置からして、クロの顔面を狙っているのは明白だ。
「クロ!」
「お祭り娘!」
俺と大和鮮赤が同時に叫ぶ。魚華の背中がブラインドとなって、彼女の様子が見えなかったので、横に移動をする。
クロは驚いてその場で膝から崩れ落ちたようで、廊下に座り込んでいた。
彼女の顔には室内用の靴跡もなければ、ケガをしている様子もない。どうやら寸止めだったみたいだ。
「クロ! 大丈夫か!」
「あ、うん。驚いただけだよ。別にケガとかはしていないから」
外見で判断しただけなので、自信はなかったが、彼女自身の言葉を聞いて安堵した。
「アタイの後に立つな。今回だけは警告に留めておくが、次はその可愛らしい顔に靴跡を残すことになる」
「あ、お馬さんがプリントされたパンツ」
魚華が二度と自分の背後に立つなと警告した瞬間、クロの視線は、蹴りを放ったままの体勢を維持している健康美溢れる綺麗な足の、更に奥へと注がれていたようだ。
わざわざ言う必要はないだろうに、クロは魚華の履いているパンツを口にした。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! み、見るな!」
自分が今履いている下着が暴露され、魚華は少女のような可愛らしい悲鳴を上げると直ぐに足を下す。そしてスカートを抑え、顔がどんどん赤くなる。
「言っておくが、これはお馬さんじゃない! ウオッカだ!」
いや、否定するのはそこじゃないだろう。
内心ツッコミを入れつつ、何とも言えない空気感に包まれたことで、俺はどう行動すれば良いのか分からなくなる。
「ウオッカか。確かに彼女の特徴を感じさせるパンツだね。それにしても、わざわざパンツが見えるように足を上げたってことは、見せびらかしたかったの? 自分のパンツを見せるなんて痴女だね」
「ち、痴女じゃない! まだ大人の経験どころか、彼氏ができたことすらないのだからな! アタイは純潔だ!」
羞恥心で頭の中が混乱しているようで、魚華は言わなくても良いことを口にした。
「それに、今日はスパッツを履き忘れていただけだ! だからけしてアタイは痴女じゃない! 分かったか!」
自分が痴女扱いされるのが耐えきれなかったのだろう。魚華は顔を赤くしながら声を上げてスパッツを履いていなかった理由を語る。
「でも、だからって反射的に足を上げてパンツを見せるのはどうかと思うよ?」
「もう、パンツの話題から離れろ! これはアタイの生まれながらに持つ癖なんだよ! 背後に視線を感じると、つい蹴りを入れてしまう!」
魚華がどうしてクロに対して蹴りを入れたのか、その理由を語るが、この時の俺は彼女の言葉に衝撃を受けた。
騎手と馬のシンクロ率やべー! 完成度高いな。
「お祭り娘、ごめんね。こいつ魚華だからさ。背後に気配を感じると今のようになってしまうのよ。魚華だから許して上げて」
「魚華? ああ、ウオッカね。なんだ。ウオッカか。それなら仕方がないないね。馬に噛まれたと思っておくことにするよ。ごめんね。君が魚華なら不注意で近付いた私にも責任があるし、それにしても完成度高いね」
クロが立ち上がると、彼女は優しい笑みを浮かべながら自分にも落ち度があると言い、謝る。
「どうしてアタイなら仕方がないだよ! おかしいだろう! 普通は怒るところじゃないか!」
思っていたことと違った展開になっているようで、魚華はこの反応はおかしいと指摘してきた。
「確かに他の人なら怒るよ。でも、ウオッカなら仕方がないし、今回はそのシンクロ率の高さに感動さえ覚えたから、許して上げる」
「お前たちはバカだ! どうかしている! もう、何が何なのか分からなくなってきたじゃないか!」
どうして俺たちがこのような反応を示しているのかが理解できていないようで、魚華は両手を頭の上に置く。
ダービー馬のウオッカは、父親のタニノギムレットの血を受け継いでいることもあり、父親と同様に後に近づかれるのを嫌っていた。後に立った相手を自分から蹴りに行くと言う気性の荒さもある。
俺たちはウオッカと魚華の性格のシンクロ率が高いことに感動を覚え、ついつい許したくなってしまったのだ。
「もう、何が何なのか分からねぇ! くそう! 出直しだ! 覚えておきやがれ! ブォン! ブォン! ブオオオォン!」
この場に居辛くなったのか、魚華はバイクのアクセルを回すような動作をすると、バイク音を口にしながらどこかへと走って行った。
「なんかごめんね。私が来たことで、何か邪魔しちゃたみたい」
「いや、助かった。クロが来なければ、余計な勝負をすることになっていた。
魚華との勝負を避けることができた立役者に礼を言い、俺たちは学生寮へと帰って行く。
翌日の放課後、今日はクロと大和鮮赤と一緒に帰っている。
廊下を歩いていると、黒いショートヘアーで、毛先は白くなっているツートンカラーの女の子が、こちらに向かっているのが視界に入る。
彼女は魚華だ。もしかして、昨日のことを思い出して、俺に勝負を挑みに来たのだろうか。
距離が近付くと、彼女も俺たちのことに気付いたらしく、右手を上げる。
「よぉ、ハルウララの騎手」
「魚華、まさかまた俺に勝負を挑みに来たのか?」
「勝負? ああ、そう言えばそんなことを言っていたな。だけどパスだ。今のアタイはレースができない」
元気なく言葉を連ねる彼女に、衝撃を覚える。
いったい彼女に何が起きたんだ?
大和鮮赤が俺に押し付けたせいで、魚華がレース勝負を挑んできた。
まさか、こうなるとは思ってもいなかった。今回はレースをしないで済むと思っただけに、動揺が激しい。
相手はウオッカだ。ダイワスカーレットと同様か、それ以上の強さを秘めている牝馬だ。油断はできない。
「あ、帝……奇跡の名馬、ここに居たんだ! 探したよ!」
思考を巡らし、今できる策を考えていると、奥の方からクロが近付いて来る。一度俺の真名を言おうとしたが、他にも生徒がいることに気付いたらしく、慌てて二つ名に言い直す。
「どうしたの? 何か取り込み中だった?」
クロが魚華の後に立ち、彼女の背中からひょっこりと顔を出す。
その瞬間だった。魚華がいきなり踵を返したかと思うと、クロに向けて回し蹴りを放つ。彼女の足の位置からして、クロの顔面を狙っているのは明白だ。
「クロ!」
「お祭り娘!」
俺と大和鮮赤が同時に叫ぶ。魚華の背中がブラインドとなって、彼女の様子が見えなかったので、横に移動をする。
クロは驚いてその場で膝から崩れ落ちたようで、廊下に座り込んでいた。
彼女の顔には室内用の靴跡もなければ、ケガをしている様子もない。どうやら寸止めだったみたいだ。
「クロ! 大丈夫か!」
「あ、うん。驚いただけだよ。別にケガとかはしていないから」
外見で判断しただけなので、自信はなかったが、彼女自身の言葉を聞いて安堵した。
「アタイの後に立つな。今回だけは警告に留めておくが、次はその可愛らしい顔に靴跡を残すことになる」
「あ、お馬さんがプリントされたパンツ」
魚華が二度と自分の背後に立つなと警告した瞬間、クロの視線は、蹴りを放ったままの体勢を維持している健康美溢れる綺麗な足の、更に奥へと注がれていたようだ。
わざわざ言う必要はないだろうに、クロは魚華の履いているパンツを口にした。
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! み、見るな!」
自分が今履いている下着が暴露され、魚華は少女のような可愛らしい悲鳴を上げると直ぐに足を下す。そしてスカートを抑え、顔がどんどん赤くなる。
「言っておくが、これはお馬さんじゃない! ウオッカだ!」
いや、否定するのはそこじゃないだろう。
内心ツッコミを入れつつ、何とも言えない空気感に包まれたことで、俺はどう行動すれば良いのか分からなくなる。
「ウオッカか。確かに彼女の特徴を感じさせるパンツだね。それにしても、わざわざパンツが見えるように足を上げたってことは、見せびらかしたかったの? 自分のパンツを見せるなんて痴女だね」
「ち、痴女じゃない! まだ大人の経験どころか、彼氏ができたことすらないのだからな! アタイは純潔だ!」
羞恥心で頭の中が混乱しているようで、魚華は言わなくても良いことを口にした。
「それに、今日はスパッツを履き忘れていただけだ! だからけしてアタイは痴女じゃない! 分かったか!」
自分が痴女扱いされるのが耐えきれなかったのだろう。魚華は顔を赤くしながら声を上げてスパッツを履いていなかった理由を語る。
「でも、だからって反射的に足を上げてパンツを見せるのはどうかと思うよ?」
「もう、パンツの話題から離れろ! これはアタイの生まれながらに持つ癖なんだよ! 背後に視線を感じると、つい蹴りを入れてしまう!」
魚華がどうしてクロに対して蹴りを入れたのか、その理由を語るが、この時の俺は彼女の言葉に衝撃を受けた。
騎手と馬のシンクロ率やべー! 完成度高いな。
「お祭り娘、ごめんね。こいつ魚華だからさ。背後に気配を感じると今のようになってしまうのよ。魚華だから許して上げて」
「魚華? ああ、ウオッカね。なんだ。ウオッカか。それなら仕方がないないね。馬に噛まれたと思っておくことにするよ。ごめんね。君が魚華なら不注意で近付いた私にも責任があるし、それにしても完成度高いね」
クロが立ち上がると、彼女は優しい笑みを浮かべながら自分にも落ち度があると言い、謝る。
「どうしてアタイなら仕方がないだよ! おかしいだろう! 普通は怒るところじゃないか!」
思っていたことと違った展開になっているようで、魚華はこの反応はおかしいと指摘してきた。
「確かに他の人なら怒るよ。でも、ウオッカなら仕方がないし、今回はそのシンクロ率の高さに感動さえ覚えたから、許して上げる」
「お前たちはバカだ! どうかしている! もう、何が何なのか分からなくなってきたじゃないか!」
どうして俺たちがこのような反応を示しているのかが理解できていないようで、魚華は両手を頭の上に置く。
ダービー馬のウオッカは、父親のタニノギムレットの血を受け継いでいることもあり、父親と同様に後に近づかれるのを嫌っていた。後に立った相手を自分から蹴りに行くと言う気性の荒さもある。
俺たちはウオッカと魚華の性格のシンクロ率が高いことに感動を覚え、ついつい許したくなってしまったのだ。
「もう、何が何なのか分からねぇ! くそう! 出直しだ! 覚えておきやがれ! ブォン! ブォン! ブオオオォン!」
この場に居辛くなったのか、魚華はバイクのアクセルを回すような動作をすると、バイク音を口にしながらどこかへと走って行った。
「なんかごめんね。私が来たことで、何か邪魔しちゃたみたい」
「いや、助かった。クロが来なければ、余計な勝負をすることになっていた。
魚華との勝負を避けることができた立役者に礼を言い、俺たちは学生寮へと帰って行く。
翌日の放課後、今日はクロと大和鮮赤と一緒に帰っている。
廊下を歩いていると、黒いショートヘアーで、毛先は白くなっているツートンカラーの女の子が、こちらに向かっているのが視界に入る。
彼女は魚華だ。もしかして、昨日のことを思い出して、俺に勝負を挑みに来たのだろうか。
距離が近付くと、彼女も俺たちのことに気付いたらしく、右手を上げる。
「よぉ、ハルウララの騎手」
「魚華、まさかまた俺に勝負を挑みに来たのか?」
「勝負? ああ、そう言えばそんなことを言っていたな。だけどパスだ。今のアタイはレースができない」
元気なく言葉を連ねる彼女に、衝撃を覚える。
いったい彼女に何が起きたんだ?
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