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第三章

おまけ回その② ハナマドウジジイの行動2

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~ハナマドウジジイ視点~



 ワシことハナマドウジジイは、隠れていた場所から出て来るように言われ、3人組の旅人の前に飛び出す。

「待って!」

「うそ!」

「まさか、この子がわたしたちに視線を送っていたの!」

 旅人たちの前に姿を現すと、女の子二人が驚く。だが、男の方は既に分かっていたからか、眉ひとつ動かさずにジッと見つめてくる。

「どうして私が隠れているのが分かったの」

 どうして隠れて監視していたことがバレてしまったのか訊ねる。すると男は少し困ったような顔をした。

 しかし言葉が見つかったようで、数秒の間が空いたのちに口を開く。

「それはな。俺が凄い存在だからだ。だから君の隠れている場所なんか、簡単に分かる」

 男の言葉に、衝撃が走った。

 この男……バカなのか? そんなもので納得できるのは幼い人間の子どもだけではないか。

 子ども騙しに語る男に対して、冷ややかな視線を送る。

 すると、赤い髪をモテの王道であるクラシカルストレートにしている女の子が近付く。

 もしかして、男に冷めた視線を送ったから怒ったのか?

「あなた、お名前は何て言うのかな?」

 赤い髪の女の子が屈んで視線を合わせると、黄色の瞳で見つめてくる。

「え? 名前? えーと、えーと」

 名前を訊ねられ、戸惑ってしまう。

 まずいな。孫娘の名前なんて知らないぞ。名前を知る前に殺してしまったからな。でも、早く名前を言わなければ怪しまれてしまうのではないか。何か良い名前はないだろうか?

 思考を巡らせていると、フラワーディジーズのことを思い出す。

 これだ!

「えーと、ディジー」

「ディジーちゃんね。私はルナよ。宜しくね」

 咄嗟に出た名前だったが、どうやら不信感を抱かれないようだ。

 そう言えば、こいつらは旅の者だったな。それなら孫娘の名前を知らなくて当たり前だ。

「それで、ディジーちゃんはどうして私たちを見ていたのかな?」

 幼女の姿をしているからか、ルナと名乗った女の子は、笑みを浮かべながら問うてくる。

 さすがに本当のことは言えない。とにかく今は、こいつらを森から遠ざけるようにしなければ。

「あ、ごめんね。別にあなたを叱っている訳じゃないのよ。ただ、何か理由があるのなら話してほしいなって思ったから」

 顔を俯かせて言い訳を考えていると、どうやらルナは勘違いをしているようだ。ワシが怒られて顔を俯かせたと思い込んでいる。

「お爺ちゃんは、悪くない。お爺ちゃんはみんなを助けるために、モンスターのお花を育てている」

 咄嗟に思い付いた設定を語る。

 ショーンには、モンスターの蜜を飲めば病が治ると言うところまで聞かれた。だが、やつはワシを見抜き、この町から追い出そうとしている。先見の明をもって、様々なことを考慮した場合、やはりあの男を悪者にした方が良いだろう。

「それってどう言うことなんだい? あのショーンとか言う男が言っていたのと、内容が違うのだけど?」

 この場凌ぎの設定を語ると、今度は薄い水色のロングヘアーの女の子が近付き、訊ねてくる。

「あいつ悪者、お爺ちゃんをこの町から追い出そうとしている。あの森にいるモンスターはいいお花だよ。モンスターの蜜を飲めば、たちまち元気になる」

「ディジーちゃんのお爺ちゃんってこの町の町長さんよね?」

 ルナの質問に、無言で頷く。

「テオ君どうしようか? この子が言っていることが本当だったら、取り返しのつかないことになるよ」

 ルナがワシの隠れ場所を見破った男に訊ねる。

 あの男、テオと言うのか。

「私嘘言っていない。お願い信じて!」

 懇願しながら、信じるようにお願いする。

 幼女の頼みだ。普通のやつなら、大人よりも純粋そうな子どもを信じるはず。

「とりあえずは、教えてもらった山に行こう。そこでこの目で真実を確かめる。どちらかが巧みに嘘をついていたとしても、事実は変わらないからな」

 テオの言葉に衝撃が走った。

 何だと! こいつ、幼女の頼みを無視するのか! なんて意思の堅いやつだ!

 テオの揺るがない意思の強さに敬服すると、彼が近付く。

 すると石に足を滑らせ、男は転倒した。

 意思は堅いが、おっちょこちょいなところがあるな。

 少しだけテオの評価を考え直そうかと思っていると、突如何かが頭に当たった。ガラスが割れたときの音が聞こえ、頭から液体のようなものが落ちてくる。

 この匂い、香水か。くっせえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 香水のキツイ匂いが体に染み付いていく!

 香水塗れにされ、思わずテオを睨み付けた。

「すまない、大丈夫か?」

 起き上がったテオが、申し訳なさそうな顔をしてワシを見る。

「大丈夫な訳ない! どうしてくれるの! 絶対にあの男の野望を阻止しないと許さないのだから!」

 ワシを香水塗れにした罪は重いぞ! 香水が臭くて敵わん。

「悪かった。謝る。だから許してくれ」

 テオが再び謝るも、赦すつもりはない。

 謝って赦されるのなら、衛兵や牢屋なんてものは必要ない!

「だから赦さないって言っているじゃない! あの男の野望を阻止して、お花のモンスターを守って! そしたら赦してあげるから」

 こうなっては、何が何でもフラワーディジーズを守らせてやる!

「悪かった。別に君くらいに嫌われても良い。1番大事なのは、真実を見極めて町民たちを助けることだ。ルナさん、メリュジーナ行こう」

 モンスターを守るように告げると、テオは冷たく言葉を吐き捨ててこの場から離れて行く。

 男を追うように、ルナと薄い水色のロングヘアーの女の子も、ワシから離れて行った。

 こうなってくると、テオがフラワーディジーズに接触し、ショーンの方を実行する可能性も出てくる。

「こうなっては仕方がない。ワシ自ら、やつらを倒してくれる」

 懐から転移アイテムのクリスタルを取り出す。そしてイメージを強くすると、目の前の光景がガラリと変わった。

 建築物だらけだったのが、多くの木々に変わっている。

 どうやらうまく森の中に転移することができたな。さぁ、あやつらを倒してくれる。

 森の中を走り、先回りをする。すると、先ほどの3人組が見えた。

 悪く思うなよ。これも全て、あの方のためだ。

 モンスターの姿に戻ると、体から蔓や蔦を伸ばし、テオたちを攻撃する。
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