いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜

こころ ゆい

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懲りずに新しい恋を探しちゃいけませんか?

5. 後輩の誘い

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 一人目は、高校二年生の時。初めて告白された人だった。ある日、彼と街でベビーカーを押す女性とすれ違った時、顔色の悪さと疲れた様子が気にかかった。その背を視線で追っていると、隣にいる彼が私に言った。

「 あれ、見た?ベビーカーのドリンクホルダー。母親の飲み物が入ってた。フラペチーノなんて飲んで.....子供の飲み物置くところだっての」

 その一言に、私は言い返した。

「.....そんな言い方ってないんじゃない?」

「え?」

「あのお母さん、目の下のクマがすごかった。ベビーカー押してるのに赤ちゃんは抱っこ紐だったし。下ろしたら泣いちゃう子なのかも。夜中あまり寝てくれなくて大変だったり。もしかしたら旦那さんや他の人に頼れない状況なのかもしれない.....。赤ちゃん、今は眠ってたし息抜きしたくて甘いものが欲しくなったんじゃないかな?ベビーカー押してたら両手塞がるし、座ったら赤ちゃん起きちゃうと思って歩き続けてるんだとしたら? そんな時くらい、別にホルダー使ってても良くない?」

 私が捲し立てるように言ったら、カッと顔を真っ赤にした彼は背を向けて帰っていってーー翌日にはフラれた。



 二人目は、大学生の時。
 知的な雰囲気の彼で、いつもリードしてくれていた。
 ある時、公園でデートしていたら、子供の泣き声が聞こえてきて、手をはなしてしまった風船が木にひっかかってとれなくなったと話してくれた。

 その日はパンツスタイルだったし、「お姉さんがとってきてあげるよ」と、するする木に登って風船を持って降りてきた。その子は喜んでくれたけれど、彼はあまりいい顔をしなかった。

「恥ずかしいから次はしないで」

「え?どうして?」

「木に登るなんて、女性がすることじゃないだろう」

「そうかな?女性でも男性でも、性別は関係ないんじゃない? 決めつけは良くないと思う」

 サラッと言い返したら、その日から連絡が減って。
 一週間後にはフラれた。



 三人目は、多分、社会人になりたてくらい。

 付き合ってすぐ買い物に行こうと誘われた。デートだとウキウキしていたら、どのお店でも「これ似合うからこれにして」と次々と彼の好みの服を試着室に運ばれて、一切私の意見を尋ねられなかったことが頭にきた。

「私、これは好きじゃない」

「え?」

「明るい色が好きなの。それに、この形は好きじゃないから着たくない」

 断ったら不機嫌になって、「服が嫌なら髪の毛を伸ばして」と言われた。

「どうして?」

「俺がロングが好きだから」

「....私、今は働き始めたばかりで、髪の毛乾かす時間あまりないんだよね。覚えること多いし、仕事頑張りたいし。その時間があるなら、翌日に備えてしっかり寝たいっていうか。だから、今はショートカットがいいんだ」

 ずっとロングだったけど、仕事を始めてからバッサリ切った髪の毛のことを言われて理由を話したつもりだった。

 でも、彼はそれを聞いて無表情になって、体調が悪いと帰っていった。そしてその夜、電話でフラれた。



 そのあと付き合った人たちも。
 何だかんだと、私に理想を押し付けていたのだろう。
 だから、理想通りにならない私を捨てた。

 そう思うと私の中で何かが吹っ切れた。

(見る目を養えばいいのよ)

 今までの失恋は自分の中身が悪いのではなく、男性を見る目がなかった。遅いだろうけれど、今更気づいた私は本当に馬鹿だ。

 自分は自分だ。変えることなどできないのだから、次こそ自分をまるごと好きになってくれる人を見つければいい。


 ーー八重は八重だろ。


 その時だ。何故か一生の言葉が脳裏をよぎった。
 酔っていたけれど、その言葉ははっきり覚えている。

「ふふ....」

 どういう意味で言ったかわからなくても。
 私の勘違いだったとしても。

 やっぱり嬉しかった。
 思い出したら、またじわっと心が温かくなった。

 そう。今度こそーー。

、そのままの私を見てくれる人を.....)
 
 そんな思いが心に広がってーー。

 私は、ピタッと動きを止める。
 無意識に心臓のあたりを掴んだ。


(.....一生みたいに?)


 なんだそれ、と首を捻る。

(.............)

 
 しばらく固まって、ふるふると頭を振った。
 作業に戻ろうとまたペンを握る。


 ーー俺にとって、八重が一番優先だから。


 次の瞬間、今朝の言葉まで耳の奥で響いた。
 再び、ぴたりと固まる身体。

(あれって、どういう意味だろう....)


 考え始めると、車のそばに立っていた『田淵さん』と呼ばれた女性の姿も一緒に思い浮かんでーーもやぁと心に靄が立ち込める。

(.............)

 ......なに、今の。更に首を傾けた。

 綺麗な人だった。おしゃれで、自信に満ち溢れていて。一生と同じ職場ということは、看護師だろうか。
 医師と看護師。お似合いだと素直に思った。

(家、知ってた......)

 本当は一番に気になった。
 いくら届け物でも、病院が住所を教えると思えない。

 もし、一生が教えたならだ。

(.....私、今までどうして気にしてこなかったのかな)

 一生はかっこいい。医師という立場もあって、きっとすごく人気がある。そんな素振り見せたことがないから、考えなかったけれどーー

(.....もしかして邪魔してない?)

 失恋する度に、幼馴染という関係に甘えていた。
 けれど、よく考えてみれば彼も大人の男性で、年齢だって自分より二つ上。

 結婚していてもおかしくない。

(甘えすぎてた.....)

 気づけば手にぐっと力が入っていて、掌に爪が食い込んでいた。


「先輩、先輩」


 と、向かいから聞こえた寧々ちゃんの声で意識が引き剥がされた。

 随分、思考の海に沈んでいたようだ。

「え?」

「じゃじゃーん!明日、これ、一緒にどうですか?」

 視線を向ければ、キラキラ瞳を輝かせて差し出された2枚のチケット。パステルグリーンの紙に、白とピンクの柔らかい文字が印刷されている。

「.....?」

「むふふ、はい。実は、友達に頼まれて」

「うん?」

「このパーティーの主催会社で働いてる子がいるんです。その子と先週会う機会があって、良ければ誰かと来てくれないかって。明日って、先輩もお休みですよね?」

「え、うん」

 この保育園は、日曜日は基本休みだが土曜預かりを実施している。お子さんの居る職員は優先的に土曜日にお休みを入れるため、私も寧々ちゃんも、日曜日以外のもう一日は平日休みが多かった。


「私もなんです。このパーティー、いつもなら大人気なんですけど、明日は平日だからか思うように参加者集まらなかったらしくて。特に女性の数が足りてないから困ってるって。もし予定なければ、どうですか? 元彼さんは早々に忘れて、新しい出会い探しましょう?」


 ニヒヒ、と寧々ちゃんは楽しそうに笑った。


「スペックとか先輩気にしなさそうですけど。ただ、新しい出会いの場という意味で」

「.......うん、いいね。ありがとう。......行ってみようかな」

 私は気持ちを切り替えて、参加を決めた。


「わーい!楽しみ!パーティ14:00~だから、早めに集合して、ランチ一緒しましょうよ~」

「いいね~」

「じゃ、12:00頃に駅前でどうですか?」

「了解」

「何着ていこう~。お洒落して行きましょうね~」

「ふふ、うん。そうだね」


 会話しながら、私は作業に戻っていった。
 

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