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懲りずに新しい恋を探しちゃいけませんか?
6. ミリオンズホテル お見合いパーティー①(一生side)
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白とパステルピンクでまとめられた可愛らしい玄関。置かれている花瓶や陶器の人形は大切に手入れされ、お気に入りだと一目でわかる。八重ママらしい。ここに来ると、やっぱり親子だなぁと無条件に幼馴染の顔が浮かぶ。......いつもなら。
だが、今日はそこでなく玄関に顔を出した人物たちに意識を攫われた。
「....親父たち、ここで何してる」
「きゃっ。一生ちゃん、こわーい。菜々子さ~ん」
「うふふ。八雲さんったら。.....重梨さん達に夫婦で誘ってもらったのよ。一生、今日お仕事お休みなの?」
ふざけた口調で、隣の妻に抱きつく父・八雲といつでものほほんとした雰囲気を崩さない母・菜々子。
何故か両親が八重の家にお邪魔していた。
「....いえ、さっきまで仕事でした。.....ちょっと八重に用があって」
昨日呼び出されたあと、夕方から緊急で手術が入った。
無事患者は助かったが、手術は長時間に及んで時計を見ればすでに日を跨いで翌日早朝近くなっていた。
今日は平日。シフト制の八重が、休みだと言っていたことを思い出す。
眠気が限界だったこともあり、一度マンションに戻って仮眠をとってから八重の家にやって来た。
来る前に電話してみたが留守電に繋がって、送ったメッセージにも既読がつかない。嫌な胸騒ぎがした。
「あら、八重なら出かけたわよ?」
玄関から真っ直ぐ伸びた廊下の先のリビング。開け放たれたドアの向こうから、ひょっこりと八重ママが顔を覗かせた。エプロンをして、ミトンを手に嵌めている。玄関までふわんと甘い香りが漂っていて、趣味のお菓子作りでもしているのかもしれない。
「.....どこにですか?」
「どこかしら?すごくお洒落してたみたいだから、てっきり一生くんとレストランでも行くのかと思ってたんだけど。お父さんが駅前まで送って行ったから、そろそろ戻ってくるんじゃないかしら」
「お洒落して....」
さらに胸がザワザワ騒ぎ始める。
「あなたがここに居るってことは違うのよねえ。....やっと行動したのかと喜んだのに。ね、八雲さん」
「本当だよね、菜々子さん。我が息子ながら情け無い」
両親も会話に入ってきた。首を振って長い息を吐いた父をジロリと見たが、どこ吹く風だ。
八重ママは俺の気持ちに気づいている。
そして俺の両親も。息子たちの居ない所でどんな会話がなされていたのか大体想像がついた。
「一生くんも一緒にお茶でもどう?今日はカントリークッキーを焼いたのよ。あとフルーツショートケーキ」
「お、有り難いじゃないか。良かったな、一生」
「重梨さんのショートケーキ美味しいのよ~。私、大好きなの~」
「あらやだ。料理教室の先生に褒められたら照れちゃうわぁ。昔、菜々子さんがコツを教えてくれたおかげよ」
「うふふふ、その時より格段に上達してるわよ~」
キャピキャピほわほわした空気が流れているのを肌で感じながら、胸のざわつきを抑えられない。
ガチャ。
「あら、あなた。おかえりなさい」
「だだいま。お?一生くんじゃないか」
その時、背後のドアが開いて八重パパが帰ってきた。八重パパは父・八雲と同い年。こちらに越してきてから大手デザイン事務所の社員として働き、最終的に幹部までのぼりつめた。その会社も今年定年を迎えて、毎日のんびり八重ママと過ごしている。
「お邪魔してます」
「何だい、君も重梨に誘われたのか?」
八重パパは、嬉しそうに目尻に皺を刻んで笑う。
その言葉にリビングからまた声が届いた。
「八重に用があったんですって。あなた、八重がどこに行ったか知ってますか?」
「ああ、そうだったのか。後輩さんと待ち合わせしてるみたいだったぞ。何でもお見合いパーティー?とかいうのか?それに行くらしい」
「お見合い、パーティー.....」
ピクリと肩が震えた。身体が強張る。
だが、そんな俺の様子には気づかずに八重パパは陽気に続けた。.....この中で俺の気持ちに気づいていないのは八重パパだけ。昔から彼は鈍感なところがあった。
「最近は、パーティーなんかがあるんだな~。お父さんたちの時代はお見合いと言ったら、料亭の座敷とか有名ホテルのロビーとかで仲人さんが引き合わせてくれてな。『あとはお若いお二人で~』なんていったもんでな~」
でへへと笑った八重パパに、八重ママの低い声が飛んだ。
「.....あら、お見合いしたことあるの?」
「へ?」
「随分知った口調じゃない?」
「あ.....いや、そんなことないよ。これは一般的なイメージを言っただけでだな」
「.....ふぅん、どうかしら」
「あら~」
しどろもどろになる八重パパに、拗ねる八重ママ。頬に手を当て「困ったわぁ~」と言いながらのほほんと構える母・菜々子。
「まぁまぁ。昔の話ですよね、弥太郎さん」
父はフォローしているらしいが、ことを荒立てているとしか思えないことを言い出す始末。
俺はそんな会話を遮った。
「どこですか」
「.....え?」
できるだけ冷静に言ったつもりだ。けれど制御できなかった。静かだがーードス黒い感情が混じった低く唸る声音に、ビクゥと皆が固まった。
「.....パーティー会場、どこですか」
「あ、えぇっと....確か、駅前のミリオンズホテルだったと思うぞ。そこのホールだって」
「ミリオンズホテル.......これか」
すぐさま、八重パパの言ったホテルの名前と『お見合いパーティー』と検索欄に打ち込む。
数件ヒットして、主催会社の電話番号をタップした。
「......お邪魔しました。俺、行ってきます」
無表情でペコリと頭を下げる。玄関のドアをくぐりながら、コール音の鳴り始めた受話器を耳に運んだ。
ーーパタン。
◇
一生が出て行って閉まった扉の方を、皆が呆然と見つめる。しばし沈黙が訪れてーーわっと場が賑わった。
「あらあらあら~。いよいよかしらぁ~」
「うんうん、我が息子、ついに動くのか。やるじゃないか!頑張れよ、一生!」
「うふふ、夜が楽しみねえ。どんな話が聞けるのかしらぁ。あら、もしかして明日の朝かしらね~」
「あらやだ~、重梨さんたら~。うふふ」
「だって~」
「..........??? な、何だったんだ??」
和やかに意味のわからない会話をしている三人に、八重パパだけが蚊帳の外だった。
白とパステルピンクでまとめられた可愛らしい玄関。置かれている花瓶や陶器の人形は大切に手入れされ、お気に入りだと一目でわかる。八重ママらしい。ここに来ると、やっぱり親子だなぁと無条件に幼馴染の顔が浮かぶ。......いつもなら。
だが、今日はそこでなく玄関に顔を出した人物たちに意識を攫われた。
「....親父たち、ここで何してる」
「きゃっ。一生ちゃん、こわーい。菜々子さ~ん」
「うふふ。八雲さんったら。.....重梨さん達に夫婦で誘ってもらったのよ。一生、今日お仕事お休みなの?」
ふざけた口調で、隣の妻に抱きつく父・八雲といつでものほほんとした雰囲気を崩さない母・菜々子。
何故か両親が八重の家にお邪魔していた。
「....いえ、さっきまで仕事でした。.....ちょっと八重に用があって」
昨日呼び出されたあと、夕方から緊急で手術が入った。
無事患者は助かったが、手術は長時間に及んで時計を見ればすでに日を跨いで翌日早朝近くなっていた。
今日は平日。シフト制の八重が、休みだと言っていたことを思い出す。
眠気が限界だったこともあり、一度マンションに戻って仮眠をとってから八重の家にやって来た。
来る前に電話してみたが留守電に繋がって、送ったメッセージにも既読がつかない。嫌な胸騒ぎがした。
「あら、八重なら出かけたわよ?」
玄関から真っ直ぐ伸びた廊下の先のリビング。開け放たれたドアの向こうから、ひょっこりと八重ママが顔を覗かせた。エプロンをして、ミトンを手に嵌めている。玄関までふわんと甘い香りが漂っていて、趣味のお菓子作りでもしているのかもしれない。
「.....どこにですか?」
「どこかしら?すごくお洒落してたみたいだから、てっきり一生くんとレストランでも行くのかと思ってたんだけど。お父さんが駅前まで送って行ったから、そろそろ戻ってくるんじゃないかしら」
「お洒落して....」
さらに胸がザワザワ騒ぎ始める。
「あなたがここに居るってことは違うのよねえ。....やっと行動したのかと喜んだのに。ね、八雲さん」
「本当だよね、菜々子さん。我が息子ながら情け無い」
両親も会話に入ってきた。首を振って長い息を吐いた父をジロリと見たが、どこ吹く風だ。
八重ママは俺の気持ちに気づいている。
そして俺の両親も。息子たちの居ない所でどんな会話がなされていたのか大体想像がついた。
「一生くんも一緒にお茶でもどう?今日はカントリークッキーを焼いたのよ。あとフルーツショートケーキ」
「お、有り難いじゃないか。良かったな、一生」
「重梨さんのショートケーキ美味しいのよ~。私、大好きなの~」
「あらやだ。料理教室の先生に褒められたら照れちゃうわぁ。昔、菜々子さんがコツを教えてくれたおかげよ」
「うふふふ、その時より格段に上達してるわよ~」
キャピキャピほわほわした空気が流れているのを肌で感じながら、胸のざわつきを抑えられない。
ガチャ。
「あら、あなた。おかえりなさい」
「だだいま。お?一生くんじゃないか」
その時、背後のドアが開いて八重パパが帰ってきた。八重パパは父・八雲と同い年。こちらに越してきてから大手デザイン事務所の社員として働き、最終的に幹部までのぼりつめた。その会社も今年定年を迎えて、毎日のんびり八重ママと過ごしている。
「お邪魔してます」
「何だい、君も重梨に誘われたのか?」
八重パパは、嬉しそうに目尻に皺を刻んで笑う。
その言葉にリビングからまた声が届いた。
「八重に用があったんですって。あなた、八重がどこに行ったか知ってますか?」
「ああ、そうだったのか。後輩さんと待ち合わせしてるみたいだったぞ。何でもお見合いパーティー?とかいうのか?それに行くらしい」
「お見合い、パーティー.....」
ピクリと肩が震えた。身体が強張る。
だが、そんな俺の様子には気づかずに八重パパは陽気に続けた。.....この中で俺の気持ちに気づいていないのは八重パパだけ。昔から彼は鈍感なところがあった。
「最近は、パーティーなんかがあるんだな~。お父さんたちの時代はお見合いと言ったら、料亭の座敷とか有名ホテルのロビーとかで仲人さんが引き合わせてくれてな。『あとはお若いお二人で~』なんていったもんでな~」
でへへと笑った八重パパに、八重ママの低い声が飛んだ。
「.....あら、お見合いしたことあるの?」
「へ?」
「随分知った口調じゃない?」
「あ.....いや、そんなことないよ。これは一般的なイメージを言っただけでだな」
「.....ふぅん、どうかしら」
「あら~」
しどろもどろになる八重パパに、拗ねる八重ママ。頬に手を当て「困ったわぁ~」と言いながらのほほんと構える母・菜々子。
「まぁまぁ。昔の話ですよね、弥太郎さん」
父はフォローしているらしいが、ことを荒立てているとしか思えないことを言い出す始末。
俺はそんな会話を遮った。
「どこですか」
「.....え?」
できるだけ冷静に言ったつもりだ。けれど制御できなかった。静かだがーードス黒い感情が混じった低く唸る声音に、ビクゥと皆が固まった。
「.....パーティー会場、どこですか」
「あ、えぇっと....確か、駅前のミリオンズホテルだったと思うぞ。そこのホールだって」
「ミリオンズホテル.......これか」
すぐさま、八重パパの言ったホテルの名前と『お見合いパーティー』と検索欄に打ち込む。
数件ヒットして、主催会社の電話番号をタップした。
「......お邪魔しました。俺、行ってきます」
無表情でペコリと頭を下げる。玄関のドアをくぐりながら、コール音の鳴り始めた受話器を耳に運んだ。
ーーパタン。
◇
一生が出て行って閉まった扉の方を、皆が呆然と見つめる。しばし沈黙が訪れてーーわっと場が賑わった。
「あらあらあら~。いよいよかしらぁ~」
「うんうん、我が息子、ついに動くのか。やるじゃないか!頑張れよ、一生!」
「うふふ、夜が楽しみねえ。どんな話が聞けるのかしらぁ。あら、もしかして明日の朝かしらね~」
「あらやだ~、重梨さんたら~。うふふ」
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