いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜

こころ ゆい

文字の大きさ
27 / 34
懲りずに新しい恋を探しちゃいけませんか?

7. ぐちゃぐちゃな気持ちと優良物件

しおりを挟む


 ~~~♪

 パッと照明が落ちた。会場が薄暗くなり、前方に司会役のスタッフがマイクを片手に現れる。

「お待たせいたしました。皆様!いよいよ、イベント始まります!自己紹介カードのご記入はお済みでしょうか。まだお済みでない方がいらっしゃいましたら、ご記入お願い致します。私、本日司会進行を務めさせていただきますーーー」

「......っ」


 その声に、私も、本城と呼ばれた男性も振り返る。
 ただひとり。一生だけはじっと私を見つめていた。



「......いくぞ」

「え?」



 楽しい音楽が流れ始めて、ザワザワと場が盛り上がり始めた時。


 他の人に聞こえないほど、ぽそりと呟かれた声はかたいもので。直後、人だかりを縫って会場の出口へ歩を進めた一生に戸惑いしかない。抱かれたままの腰を引かれてついていく。

 扉が静かにーー....パタン、と閉まる。
 足は止めず、そのさまを目だけで追った。


「.....一生、どうしたの?」

「............. 」

「....どこ行くの?」

「............ 」


 訊ねても無言。

 ようやく彼が止まったのは、ホールの出口からかなり離れたロビーの隅っこだった。ピリピリとした空気を背負って、私と対峙する。



「.......いっ、せい?」

 あまりの澱んだ気配に、もう一度おそるおそる声をかけた。



「....八重さぁ、何でそんなに恋人欲しいの?」

「え....」


 おもむろに開いた口が紡ぐのは、そんな言葉。

 よく見れば、一生もパーティーに参加するのか上質なスーツに身を包んでいた。



(.....違う人みたい)


 目の前に立つ幼馴染は、まるで別人に見えた。 


(......世界が違う)


 一生と並んで立つ『田淵さん』を思い返して。またモヤが心を覆った。


 そんな自分に再び困惑する。意味がわからなかった。



「.............」


「だからー....何でそんなに恋がしたいんだよ」


 かたまる私に、痺れを切らして訊いてくる。


「それ、は.....」


(....何て答えよう)


 本当は、ただ恋がしたいんじゃない。
 愛し愛される関係を築きたい。

 ーー父や母みたいに。


 何があっても支え合える相手に出会いたい。

 ずっとそうだった。

 父が母を愛するように、母も父を愛していて。私にとってそれが当たり前だった。


 父が転職を考えた時だってそう。
 家族を思って二の足を踏む父に、母はこう言った。父の背中を思い切りバン!と叩いて。


「なに怖がってるの。あなたがしたいようにすればいい。いざとなったら、私が家族を支えるから」


 普段心配性の母が迷いなく言い切って、父の背中を押した。


 娘の前でそんなやりとりをするのはどうかと思うかもしれない。でも私は家族の一員として家族会議に出ている自分が誇らしかった。


 そして、小さくても一人の人間として扱ってくれる家族が好きだと思った。自分もそんな家族をつくりたいと。


 ーーでもそれだけじゃなくて。


(......あれ?なんだっけ?)


 もうひとつ、何かを忘れてる気がするが......気のせいか。


 とにかく。

 恋がしたいというよりは、両親のように支え合える相手に出会いたいと表現する方がより自分の思いに近い気がする。



(まぁ、空回りしてたけど....)



 反省はしたのだ。だから、次は作戦を練る。
 落ち込み続けるより、次へ活かすための作戦を練って積み重ねる方がずっといい。



 ーー次こそ自分をそのまま見てくれる人を見つける。



(.........一生みたいに)



 言えばいいのに、最後に昨日と同じ思いがちらついて口籠る。



「.............. 」



 ーーそもそも、なぜ今、彼は怒っているのか。


(......私、何かした?)




 掴めない自分の心の機微に焦れて。

 彼の心が読めなくて焦れて。


 これが八つ当たりなのかもわからずに
 内心恨めしく目の前の一生を見る。


 自分の答えを待つその姿勢に、逃れることなど不可能だと悟って、仕方なく思いつく理由を口にした。



「それは.......私もそろそろ25歳だし?結婚のこと考えたら、もう相手見つけとかないとヤバいかなって」



 ひどく安っぽくて、言い訳がましい言葉が並ぶ。
 ズクリと胸が疼いた。



「...ふぅん。25歳だからお前の外見しか見ない奴らを結婚相手の候補にしちゃうわけ?...だからいつもうまくいかないんだよ」


「な、なによ~!?そんな言い方ないでしょ?もしかしたら、中身まで見てくれる王子様がいるかもしれないじゃない!」



 言葉とは裏腹な小さな違和感。
 それと共に溢れ落ちた願望。

 まさに売り言葉に買い言葉だった。



(.....違う)


 ーー違うって.....何が?


 
 さっき疼いた胸が、ツキンツキンと痛みを増していく。


 口から溢れる言葉と。

 心が叫ぶ感情と。

 解き明かせない自分の思考と。


 すべてがバラバラに機能して。
 意味を成していない。


 一生は呆れた様子で、ため息を漏らす。


「王子様、ね。一体この世のどこに、その王子様とやらはいるんだよ。...そろそろ、目の前の現実見たら?」



「....はいはい、わかってますよ~。こんな私が王子様と出会えるわけないって言うんでしょ」


 悔しさと苛立ち。ぐちゃぐちゃまとまらない気持ちを誤魔化すように唇を突き出した。


 
「...そうじゃなくて。あー、もう、お前鈍すぎ」


 と、短い黒髪をわしゃわしゃと乱して、彼が口調を強めたことに、首を傾げる。


「え?」


「....だから。どこにいるかもわからない王子様を探すのなんてやめて、現実に目向けろって」


「.............. 」


「その大きくて綺麗な目、ちょっとは活用しろよな?お前のすぐそばに、めちゃくちゃが転がってんだろうが!」



「.........え、え、え?」


 ポカンと口が開いた。
 褒められたと感じた言葉通り、目を見開いてよーく見たら....


 そこには、カァッと顔を真っ赤にした一生が真剣な眼差しを私に向けて立っていた。





  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

女性が少ない世界でVTuberやります!

dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉ なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。 ※恋愛大賞ラストスパートなので24日火曜~27日金曜日まで連日投稿予定! 参加してるみんな!あと少しだよ頑張ろう!(>▽<)/作者ブル

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

わたしの愉快な旦那さん

川上桃園
恋愛
 あまりの辛さにブラックすぎるバイトをやめた。最後塩まかれたけど気にしない。  あ、そういえばこの店入ったことなかったな、入ってみよう。 「何かお探しですか」  その店はなんでも取り扱うという。噂によると彼氏も紹介してくれるらしい。でもそんなのいらない。彼氏だったらすぐに離れてしまうかもしれないのだから。  店員のお兄さんを前にてんぱった私は。 「旦那さんが欲しいです……」  と、斜め上の回答をしてしまった。でもお兄さんは優しい。 「どんな旦那さんをお望みですか」 「え、えっと……愉快な、旦那さん?」  そしてお兄さんは自分を指差した。 「僕が、お客様のお探しの『愉快な旦那さん』ですよ」  そこから始まる恋のお話です。大学生女子と社会人男子(御曹司)。ほのぼのとした日常恋愛もの

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

処理中です...