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もう少しお手柔らかにお願いしてもいいですか?
5. 《番外編》〜本城 優side〜
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病院に同僚として入ってきた時から有名だった。
文句なしの見目麗しい姿に、背の高さ。
外科の腕は研修医上がりなのに腹が立つほどキレがある。
冷静さと的確さも持ち合わせていて、現場での対応も完璧。そのくせ、それを鼻にかけず患者にも同僚にも好かれている。
だが、ひとつだけ。女の子には全くの興味を示さない。
合コンに誘ってもダメ、女の子の話題を振っても興味なし、可愛い看護師が入ってきても仕事以外関わろうとしない。
もしかしたら恋愛対象が『違う』のかもしれないと憶測が飛び交うほどに。
◇
「これと交換してくれません?」
「は?」
年末恒例の病院の忘年会。ビンゴ大会で出る景品は豪華だった。人気の温泉宿の宿泊チケットから数万円の商品券、人気の家電。
あいつが当てたのは商品券。
どう考えても景品として当たりだ。
俺はマグカップ。それもよくわからない、俺からすれば可愛いとも思えないキャラクターのペアマグ。
いやこれどうしろってんだよ、とひとり心の中で突っ込んでいたら、ぬっと隣から顔を覗かせた大狼が懇願する目で話しかけてきた。
普段の彼と違って冷静じゃない。
どうしてもこのマグがほしいと。
喉から手が出るほどほしいと。全身で言っていた。
「お前....正気か?」
「もちろんです」
親切心で言ったつもりだが、大真面目に頷く様子にひとつ息をついて、まぁそこまで言うのならこちらとしても有難い申し出を断るわけにもいくまい。
「ん。そんなにいうなら、交換してやる」
「ありがとうございます!」
頬が紅潮しているのは、多分お酒のせいじゃない。
このマグカップのせいだ。
俺は興味を抑えられずに聞いてみた。
「....どうしてそれが欲しかったんだ?」
「.....あー。このキャラ、幼馴染が好きなんですよ」
「....へえ」
俺は目を瞠った。そう言った時の大狼の顔が、明らかにその顔だったから。これでもその手の経験は豊富だと自負している。ピンときて勘が働く。
「その子のこと好きなのか?」
「へ?....あー。まぁ」
「告白したのか?お前なら誰でもオッケーするだろ」
案の定、素直に認めた彼に揶揄い混じりに質問を重ねる。
「そんな簡単なもんじゃないですよ。....高校の時、告白しようとしましたけど....その前に相手に彼氏できちゃって失恋です」
「....へえ」
俺はまた目を見開いた。失恋だと言いながら、全然諦めてない顔じゃないか。それだけでも、大狼がずっと彼女を想い続けているのがみて取れて、今までどんな女の子にも靡かなかったのはこれか、と合点がいった。
同時に頭の中で計算した。正確な時期は知らないが、高校の時から数えたってかれこれ十年以上は想っていることになる。
それだけ想い続ける女の子って一体?と、俄然興味が湧いた。
「どんな子なんだよ」
男同士のよくあるアレだ。
酒の席だしもうちょっとくらいならいいだろうと問い詰めれば、今まで見たことのないほど蕩けた顔で話し始めた。
大狼の語る幼馴染の女の子は、俺にとってもすごく魅力的に感じた。その子をずっと好きな大狼が語るから余計魅力を感じるのかもしれない。
きっとそれでだ。
君に視線がいったのは。
忘年会で聞いた彼の話が俺の頭の片隅に鎮座し続けていたから。
君を見つけた時、大狼が愛おしそうに語る幼馴染の女の子の姿と重なって、『面白い子』だと思った。
そう思い始めると自然と目がいくようになって、子供を迎えにいく度に君を探した。
コロコロ表情を変え、子供達に好かれていて。同僚の先生方とも仲が良く、いつも楽しそう。たまに園長先生に怒られて、しゅんとしている。
お淑やかな外見とは一味違う魅力を秘めた君の中身にどんどん惹かれた。
子供の通うクラスが違ったし、普通に考えて子持ちでバツありなんて、君に相応しくないのはわかっていたから見ているだけで満足だった。
ーーそんな時だ。
人数不足だからと友人に頼まれて出席したパーティーで君がホールに入ってきたのは。
これはチャンスだと思った。
君に話しかけるチャンスだって。
見ているだけで満足だなんて、どの口が言っていたのか。勝手に身体が動いて、足は君に引き寄せられる。
話しかけてみれば思った通り、君は素直で元気で勝気で。すごく素敵な女性だった。
警戒されて噛みつかれたけど、今まで女の子に話しかけてそんな反応されたことがなかったから、それさえ新鮮で可愛く映った。
でもーー。
大狼が突然現れて彼女を守るように抱きすくめたのを見てすぐに理解したよ。
彼のいう幼馴染と彼女は同一人物。
俺じゃ絶対手に入らないんだって。
だって、大狼ほど彼女のことを想っている男なんてこの世にいないだろうから。どう頑張ったって、こんな俺じゃあいつには敵わない。
そう思う時点で、負けは決まってる。
潔く身を引くことにしたよ。
ただごめんな、大狼。手は出さないからさ。
時々、子供の送り迎えの時だけでも彼女の姿を探すくらいは許してくれよ。子供が卒園するまででいいから。それまでには、この気持ちに整理つけるから。
文句なしの見目麗しい姿に、背の高さ。
外科の腕は研修医上がりなのに腹が立つほどキレがある。
冷静さと的確さも持ち合わせていて、現場での対応も完璧。そのくせ、それを鼻にかけず患者にも同僚にも好かれている。
だが、ひとつだけ。女の子には全くの興味を示さない。
合コンに誘ってもダメ、女の子の話題を振っても興味なし、可愛い看護師が入ってきても仕事以外関わろうとしない。
もしかしたら恋愛対象が『違う』のかもしれないと憶測が飛び交うほどに。
◇
「これと交換してくれません?」
「は?」
年末恒例の病院の忘年会。ビンゴ大会で出る景品は豪華だった。人気の温泉宿の宿泊チケットから数万円の商品券、人気の家電。
あいつが当てたのは商品券。
どう考えても景品として当たりだ。
俺はマグカップ。それもよくわからない、俺からすれば可愛いとも思えないキャラクターのペアマグ。
いやこれどうしろってんだよ、とひとり心の中で突っ込んでいたら、ぬっと隣から顔を覗かせた大狼が懇願する目で話しかけてきた。
普段の彼と違って冷静じゃない。
どうしてもこのマグがほしいと。
喉から手が出るほどほしいと。全身で言っていた。
「お前....正気か?」
「もちろんです」
親切心で言ったつもりだが、大真面目に頷く様子にひとつ息をついて、まぁそこまで言うのならこちらとしても有難い申し出を断るわけにもいくまい。
「ん。そんなにいうなら、交換してやる」
「ありがとうございます!」
頬が紅潮しているのは、多分お酒のせいじゃない。
このマグカップのせいだ。
俺は興味を抑えられずに聞いてみた。
「....どうしてそれが欲しかったんだ?」
「.....あー。このキャラ、幼馴染が好きなんですよ」
「....へえ」
俺は目を瞠った。そう言った時の大狼の顔が、明らかにその顔だったから。これでもその手の経験は豊富だと自負している。ピンときて勘が働く。
「その子のこと好きなのか?」
「へ?....あー。まぁ」
「告白したのか?お前なら誰でもオッケーするだろ」
案の定、素直に認めた彼に揶揄い混じりに質問を重ねる。
「そんな簡単なもんじゃないですよ。....高校の時、告白しようとしましたけど....その前に相手に彼氏できちゃって失恋です」
「....へえ」
俺はまた目を見開いた。失恋だと言いながら、全然諦めてない顔じゃないか。それだけでも、大狼がずっと彼女を想い続けているのがみて取れて、今までどんな女の子にも靡かなかったのはこれか、と合点がいった。
同時に頭の中で計算した。正確な時期は知らないが、高校の時から数えたってかれこれ十年以上は想っていることになる。
それだけ想い続ける女の子って一体?と、俄然興味が湧いた。
「どんな子なんだよ」
男同士のよくあるアレだ。
酒の席だしもうちょっとくらいならいいだろうと問い詰めれば、今まで見たことのないほど蕩けた顔で話し始めた。
大狼の語る幼馴染の女の子は、俺にとってもすごく魅力的に感じた。その子をずっと好きな大狼が語るから余計魅力を感じるのかもしれない。
きっとそれでだ。
君に視線がいったのは。
忘年会で聞いた彼の話が俺の頭の片隅に鎮座し続けていたから。
君を見つけた時、大狼が愛おしそうに語る幼馴染の女の子の姿と重なって、『面白い子』だと思った。
そう思い始めると自然と目がいくようになって、子供を迎えにいく度に君を探した。
コロコロ表情を変え、子供達に好かれていて。同僚の先生方とも仲が良く、いつも楽しそう。たまに園長先生に怒られて、しゅんとしている。
お淑やかな外見とは一味違う魅力を秘めた君の中身にどんどん惹かれた。
子供の通うクラスが違ったし、普通に考えて子持ちでバツありなんて、君に相応しくないのはわかっていたから見ているだけで満足だった。
ーーそんな時だ。
人数不足だからと友人に頼まれて出席したパーティーで君がホールに入ってきたのは。
これはチャンスだと思った。
君に話しかけるチャンスだって。
見ているだけで満足だなんて、どの口が言っていたのか。勝手に身体が動いて、足は君に引き寄せられる。
話しかけてみれば思った通り、君は素直で元気で勝気で。すごく素敵な女性だった。
警戒されて噛みつかれたけど、今まで女の子に話しかけてそんな反応されたことがなかったから、それさえ新鮮で可愛く映った。
でもーー。
大狼が突然現れて彼女を守るように抱きすくめたのを見てすぐに理解したよ。
彼のいう幼馴染と彼女は同一人物。
俺じゃ絶対手に入らないんだって。
だって、大狼ほど彼女のことを想っている男なんてこの世にいないだろうから。どう頑張ったって、こんな俺じゃあいつには敵わない。
そう思う時点で、負けは決まってる。
潔く身を引くことにしたよ。
ただごめんな、大狼。手は出さないからさ。
時々、子供の送り迎えの時だけでも彼女の姿を探すくらいは許してくれよ。子供が卒園するまででいいから。それまでには、この気持ちに整理つけるから。
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