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お人形に恋をした
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シトレディスの信徒がまた屋敷にやって来る。これで3回目だ。「飽きない奴らだ」と言ってやりたいが、彼らに記憶はない。
時間が巻き戻る度に、シトレディスは自分の信徒と彼女が異界から呼んだ女、通称"聖女"を私のもとに寄越した。彼女を使って私のことを探るためだろう。そんなことをしなくても、自分でここに来ればいいのに。
シトレディスは時空の女神だ。この世界で彼女が辿り着けない場所はおろか見渡せない場所はないはずだ。それなのに、なぜ彼女自身がここに来ない? 何かを警戒しているのか? それとも信徒と聖女を使って私に何かをさせる意図があるのか? もしくは、シトレディスがここに来られない理由があるのだろうか?
じっくりと考えても分からない。情報が少なすぎる。これは、きちんと調べないと分からないことだろう。
「エルドノアさま?」
私の上で腰を振っていたティアが声をかけてきた。動くのをやめて不思議そうに私の顔を見ている。
「どうかしたの?」
「明日、王都から調査団が来る」
ティアは首を傾げた。調査団とは何度か会っているのに彼女の記憶にはないらしい。
ほんのこの間まで物を言わぬお人形だった彼女は、最近になってほんの少しだけ自我を取り戻した。
会話をできる時間が増えつつあるが、まだ記憶は混濁しているし、覚えていられることも少ない。そのくせあれは何、これは何と質問ばかりしてきて鬱陶しい。最近は面倒だから、必要最低限しか接しないようにしている。
「調査団は私の邪魔をする悪いやつだよ。だからお前は、そいつらとセックスして魂を綺麗にしてあげないといけない」
「チョウサダンの人とするの?」
「そうだよ。それがティアのお仕事。分かった?」
ティアは顔を顰めた。
「やってくれるよね?」
これは疑問ではない。命令だ。彼女がどう思おうと関係ない。
ーー私はティアの面倒をみるのに飽きてきている。
最初のうちは感謝の気持ちからティアの面倒をみていた。私をあの何もない退屈な空間から解き放ってくれたから当然の行為だと思っていた。
でも、それは最初のうちだけだった。毎日作業的に行うセックスは私をすぐに飽きさせた。
死んだように眠るティアの秘所に毎日精を注いだ。どれだけ突いても、吐き出しても、彼女はピクリとも動かなかった。人形を使って自慰をさせられている気分になって、とても虚しかった。
それでも、私は毎日彼女に精を注いだ。そうしないとティアは死んでしまうから。性行為は私の力を彼女に受け渡せる最も簡単な方法だった。他に方法はなくもないが、煩雑な手順を踏まないといけないからより面倒なことになる。だから、虚しくて退屈なセックスでも毎日続けた。
ティアが死んだら私は天界に帰ることになる。それだけは何としてでも避けたかった。
この世界には現状、私の信徒はティアしかいない。信徒を増やそうにも、シトレディスを盲信する人間が多すぎる。「他の誰でもなく"エルドノア"に助けてもらいたい」と思わなければ、私はこの世界に来ることができない。
きっとこの状況もシトレディスの妨害だ。もし今の状況でティアが死ねば、私は二度とこの世界に来ることができなくなるだろう。
私をあんなつまらない場所に閉じ込めたシトレディスに復讐するまでは何としてでもこの世界に留まり続けてやる。
だから、飽き性の私にしては熱心に人間の面倒をみていたんだけど・・・・・・。その反動のせいか、ティアに自我が戻ってからは、もう何もしたくなかった。
自分で動けるんだから、シトレディスの信徒を相手にして自分で食事をして欲しい。
どうしても無理なら私がしてやる。それと、私が遊びたくなった時も。
これまでかかりっきりで面倒をみてやったんだから少しくらい手を抜いたって許されるだろう。
「エルドノアさま」
ティアは呟いた。
「私、エルドノアさまとしたいの」
「そう。でも、仕事が優先」
「エルドノアさまが好きなの。エルドノアさまがいいの」
ーーああ、うるさい! 好き好きって、もう聞き飽きたんだよ。
ティアは事ある毎に私に愛を囁く。その幼稚な言葉にうんざりしていた。
「お仕事って言ってるでしょ?」
「どうしても?」
ーーしつこいな。
「そうだよ。もし私の役に立ってくれたらご褒美でしてあげる」
そう言ったらティアの顔がぱっと明るくなった。
「ほんとう?」
「うん」
ティアは私の胸に抱きつくと首筋にキスをした。
ーーどんだけシたいんだよ。ほぼ毎日ヤッてるのに。
馬鹿で単純な操り人形だ。
私はフレディアやシトレディスのような真面目な神ではない。言ったことを必ずしも守るとは限らないのに。
現に今も私は約束を守る気などない。ティアが仕事をして来たら指先を少し切って血を与えるつもりだ。シトレディスの信徒とやった後なら腹は十分に満たされているはずだからそれでいいだろう。
時間が巻き戻る度に、シトレディスは自分の信徒と彼女が異界から呼んだ女、通称"聖女"を私のもとに寄越した。彼女を使って私のことを探るためだろう。そんなことをしなくても、自分でここに来ればいいのに。
シトレディスは時空の女神だ。この世界で彼女が辿り着けない場所はおろか見渡せない場所はないはずだ。それなのに、なぜ彼女自身がここに来ない? 何かを警戒しているのか? それとも信徒と聖女を使って私に何かをさせる意図があるのか? もしくは、シトレディスがここに来られない理由があるのだろうか?
じっくりと考えても分からない。情報が少なすぎる。これは、きちんと調べないと分からないことだろう。
「エルドノアさま?」
私の上で腰を振っていたティアが声をかけてきた。動くのをやめて不思議そうに私の顔を見ている。
「どうかしたの?」
「明日、王都から調査団が来る」
ティアは首を傾げた。調査団とは何度か会っているのに彼女の記憶にはないらしい。
ほんのこの間まで物を言わぬお人形だった彼女は、最近になってほんの少しだけ自我を取り戻した。
会話をできる時間が増えつつあるが、まだ記憶は混濁しているし、覚えていられることも少ない。そのくせあれは何、これは何と質問ばかりしてきて鬱陶しい。最近は面倒だから、必要最低限しか接しないようにしている。
「調査団は私の邪魔をする悪いやつだよ。だからお前は、そいつらとセックスして魂を綺麗にしてあげないといけない」
「チョウサダンの人とするの?」
「そうだよ。それがティアのお仕事。分かった?」
ティアは顔を顰めた。
「やってくれるよね?」
これは疑問ではない。命令だ。彼女がどう思おうと関係ない。
ーー私はティアの面倒をみるのに飽きてきている。
最初のうちは感謝の気持ちからティアの面倒をみていた。私をあの何もない退屈な空間から解き放ってくれたから当然の行為だと思っていた。
でも、それは最初のうちだけだった。毎日作業的に行うセックスは私をすぐに飽きさせた。
死んだように眠るティアの秘所に毎日精を注いだ。どれだけ突いても、吐き出しても、彼女はピクリとも動かなかった。人形を使って自慰をさせられている気分になって、とても虚しかった。
それでも、私は毎日彼女に精を注いだ。そうしないとティアは死んでしまうから。性行為は私の力を彼女に受け渡せる最も簡単な方法だった。他に方法はなくもないが、煩雑な手順を踏まないといけないからより面倒なことになる。だから、虚しくて退屈なセックスでも毎日続けた。
ティアが死んだら私は天界に帰ることになる。それだけは何としてでも避けたかった。
この世界には現状、私の信徒はティアしかいない。信徒を増やそうにも、シトレディスを盲信する人間が多すぎる。「他の誰でもなく"エルドノア"に助けてもらいたい」と思わなければ、私はこの世界に来ることができない。
きっとこの状況もシトレディスの妨害だ。もし今の状況でティアが死ねば、私は二度とこの世界に来ることができなくなるだろう。
私をあんなつまらない場所に閉じ込めたシトレディスに復讐するまでは何としてでもこの世界に留まり続けてやる。
だから、飽き性の私にしては熱心に人間の面倒をみていたんだけど・・・・・・。その反動のせいか、ティアに自我が戻ってからは、もう何もしたくなかった。
自分で動けるんだから、シトレディスの信徒を相手にして自分で食事をして欲しい。
どうしても無理なら私がしてやる。それと、私が遊びたくなった時も。
これまでかかりっきりで面倒をみてやったんだから少しくらい手を抜いたって許されるだろう。
「エルドノアさま」
ティアは呟いた。
「私、エルドノアさまとしたいの」
「そう。でも、仕事が優先」
「エルドノアさまが好きなの。エルドノアさまがいいの」
ーーああ、うるさい! 好き好きって、もう聞き飽きたんだよ。
ティアは事ある毎に私に愛を囁く。その幼稚な言葉にうんざりしていた。
「お仕事って言ってるでしょ?」
「どうしても?」
ーーしつこいな。
「そうだよ。もし私の役に立ってくれたらご褒美でしてあげる」
そう言ったらティアの顔がぱっと明るくなった。
「ほんとう?」
「うん」
ティアは私の胸に抱きつくと首筋にキスをした。
ーーどんだけシたいんだよ。ほぼ毎日ヤッてるのに。
馬鹿で単純な操り人形だ。
私はフレディアやシトレディスのような真面目な神ではない。言ったことを必ずしも守るとは限らないのに。
現に今も私は約束を守る気などない。ティアが仕事をして来たら指先を少し切って血を与えるつもりだ。シトレディスの信徒とやった後なら腹は十分に満たされているはずだからそれでいいだろう。
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