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試験はいよいよ私達のクラスの番になった。
保健室を出た私とハインリヒは会場の中庭に向かった。途中、私達と入れ違いに保健室へ向かうアンナと出会った。
「アンナ。試験はどうだった」
ハインリヒが問いかけたらアンナは、にこやかに「上手くいきました」と返事をした。
「よかったね。・・・・・・そうだ。次は俺たちの番だから。大丈夫だとは思うけど、気分が悪くなったらすぐに人に知らせるんだよ」
「心配してくれてありがとうございます。試験、頑張って下さいね」
アンナが美しく笑うとハインリヒも微笑み返した。
「エマさんも、頑張って下さいね」
「はい」
「では、失礼します」
アンナはそう言うと保健室へ向かった。私とハインリヒは黙って中庭に向かう。
中庭に着くと、私はすぐにハインリヒから離れて友達の下へ向かった。
「エマ、アンナ様の魔法すごかったよ!」
私の顔を見るなり、友人は興奮気味にそう言った。
「蝶の幻影を出すつもりだとおっしゃっていたけど、そんなに綺麗だったの?」
「それはもう! たくさんの黒いアゲハ蝶が星のような煌めきを纏わせながら羽ばたいていたのよ。すごく幻想的だったんだから」
近くにいた友達全員が、頷き合い、口々に称賛している。
「私、闇魔法のイメージ変わったかも」
「そうよね。もっと怖いものだとばかり思っていたもの」
「怖いイメージ?」
私がそう言うと、友達は私に顔を近づけた。
「闇の女王のことよ。彼女には恐ろしい伝説が山程あるじゃない? 闇魔法を使って人を洗脳したとか、監視していたとか」
彼女は小声で教えてくれた。
そういえば、『1』でアレクシアはそういう非道な行いをしていた。
「皆さん、そろそろ試験を始めますよ」
先生の声で私達の雑談は終わった。私達は決められた通りに整列した。
名前を呼ばれた人から魔法の発表が行われる。手のひらに炎を灯したり、限られた範囲に雨を振らせたり。カリンが言っていたように、みんな基礎的な魔法を実演している。
「エマ・マイヤー侯爵令嬢」
「はい」
試験はいよいよ私の番になった。私は、前に出る。
「光魔法の、ライトを行います」
そう宣言して右手を上にかざした。
「ライト!」
そう叫んで右手に魔力を集中させると、手のひらから淡い光の玉が出てきた。
ーーいいかんじ!
意識を集中させて光を強くする。今は少し曇っているおかげで昼間にも関わらず光が鮮明に見えた。
後は、色を白、赤、青と変化させればおしまいだ。次の段階に移るため、意識を集中した時、頭痛が走った。
「ーーっ!」
ーー頭が、割れる。
あまりの痛みに、私は魔法を維持することができなかった。そして、試験中にも関わらず、思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「マイヤー侯爵令嬢、どうしましたか?」
先生が大きな声をあげて、私に駆け寄って来る。それと同時に、頭の中から不気味な声が聞こえた。
"お前の身体を、寄こせ"
いつかの夢で見たあの声だった。
あの時の夢と同じように、身体の中に何かが入ってくる感覚がする。身体中のいたるところが痛み始めた。
「嫌!」
私は叫んだ。得体のしれない何かが身体の中に入って来ようとしている。直感的にそう思った。
私の身体は絶対に渡さない。
ーーでも、どうやって抗えばいい?
叫んだところで何も変わらない。それどころか、身体の奥の方がズキズキと痛み始めた。
あまりの痛さに気を失いそうになった時、強い風が吹いたのを感じた。
私は突風に煽られて転んでしまい、そのまま意識を失った。
保健室を出た私とハインリヒは会場の中庭に向かった。途中、私達と入れ違いに保健室へ向かうアンナと出会った。
「アンナ。試験はどうだった」
ハインリヒが問いかけたらアンナは、にこやかに「上手くいきました」と返事をした。
「よかったね。・・・・・・そうだ。次は俺たちの番だから。大丈夫だとは思うけど、気分が悪くなったらすぐに人に知らせるんだよ」
「心配してくれてありがとうございます。試験、頑張って下さいね」
アンナが美しく笑うとハインリヒも微笑み返した。
「エマさんも、頑張って下さいね」
「はい」
「では、失礼します」
アンナはそう言うと保健室へ向かった。私とハインリヒは黙って中庭に向かう。
中庭に着くと、私はすぐにハインリヒから離れて友達の下へ向かった。
「エマ、アンナ様の魔法すごかったよ!」
私の顔を見るなり、友人は興奮気味にそう言った。
「蝶の幻影を出すつもりだとおっしゃっていたけど、そんなに綺麗だったの?」
「それはもう! たくさんの黒いアゲハ蝶が星のような煌めきを纏わせながら羽ばたいていたのよ。すごく幻想的だったんだから」
近くにいた友達全員が、頷き合い、口々に称賛している。
「私、闇魔法のイメージ変わったかも」
「そうよね。もっと怖いものだとばかり思っていたもの」
「怖いイメージ?」
私がそう言うと、友達は私に顔を近づけた。
「闇の女王のことよ。彼女には恐ろしい伝説が山程あるじゃない? 闇魔法を使って人を洗脳したとか、監視していたとか」
彼女は小声で教えてくれた。
そういえば、『1』でアレクシアはそういう非道な行いをしていた。
「皆さん、そろそろ試験を始めますよ」
先生の声で私達の雑談は終わった。私達は決められた通りに整列した。
名前を呼ばれた人から魔法の発表が行われる。手のひらに炎を灯したり、限られた範囲に雨を振らせたり。カリンが言っていたように、みんな基礎的な魔法を実演している。
「エマ・マイヤー侯爵令嬢」
「はい」
試験はいよいよ私の番になった。私は、前に出る。
「光魔法の、ライトを行います」
そう宣言して右手を上にかざした。
「ライト!」
そう叫んで右手に魔力を集中させると、手のひらから淡い光の玉が出てきた。
ーーいいかんじ!
意識を集中させて光を強くする。今は少し曇っているおかげで昼間にも関わらず光が鮮明に見えた。
後は、色を白、赤、青と変化させればおしまいだ。次の段階に移るため、意識を集中した時、頭痛が走った。
「ーーっ!」
ーー頭が、割れる。
あまりの痛みに、私は魔法を維持することができなかった。そして、試験中にも関わらず、思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「マイヤー侯爵令嬢、どうしましたか?」
先生が大きな声をあげて、私に駆け寄って来る。それと同時に、頭の中から不気味な声が聞こえた。
"お前の身体を、寄こせ"
いつかの夢で見たあの声だった。
あの時の夢と同じように、身体の中に何かが入ってくる感覚がする。身体中のいたるところが痛み始めた。
「嫌!」
私は叫んだ。得体のしれない何かが身体の中に入って来ようとしている。直感的にそう思った。
私の身体は絶対に渡さない。
ーーでも、どうやって抗えばいい?
叫んだところで何も変わらない。それどころか、身体の奥の方がズキズキと痛み始めた。
あまりの痛さに気を失いそうになった時、強い風が吹いたのを感じた。
私は突風に煽られて転んでしまい、そのまま意識を失った。
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