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気がついたら、私は寮の自室のベッドの上にいた。窓の外は暗く、サイドテーブルに置いてあるランプがついていた。
身体を起こしてみたら頭痛がした。頭を抑えて俯いていると耳元で声が聞こえた。
"大丈夫?"
ヴェルナーの声だった。いつもみたいに人を馬鹿にしたような声色じゃない。
ーーもしかして、私を心配してくれている?
そう思ったのは、体調が悪いせいだろうか。
「近くにいるんですか?」
"うん。窓から入るから開けて"
自分の姿を確認したらネグリジェでこの姿で合うのは恥ずかしかった。私は上着を一枚羽織ってから窓を開けた。ヴェルナーはすぐに部屋の中に入ってきた。
「うわっ。ひどい顔」
ヴェルナーは私の顔を見るなり言った。
机に置いてあった手鏡を覗いてみたら、ヴェルナーの言う通り、ひどい顔をしていた。元々肌は白い方だけど、今は青白くて唇は色を失っていた。
「もう少し横になったら?」
「いえ、大丈夫ですから」
私がベッドの脇に座るとヴェルナーがその隣に座ってきた。あなたは椅子に座ってと言いたいけど、今はそういうやり取りをする気力もない。
「君は3日も寝込むものだから、流石の俺も心配しちゃった」
そう言うヴェルナーは飄々としていて、とても心配してくれているようには見えない。
「3日も寝てたんですね」
「うん」
ズキズキと頭が痛んだ。
「試験は、どうなりました?」
試験の途中に倒れてしまったわけだけど。再テストをしてくれないのかしら。
「こんな時でも試験のことを気にするなんて、真面目だねえ」
ヴェルナーはケラケラ笑った。
「こんな時?」
「ああ、もしかして知らなかった? 君が試験を受けている途中に魔物が出たんだよ。"瞳の魔物"がね」
私は驚きのあまり、目を見開いていた。
「何があったんです?」
「俺はその場にいたわけじゃないから、人から聞いた話だよ」
ヴェルナーは前置きをして、話し始めた。
「君がライトの魔法を実演していたら、急に頭を抱え込んでしゃがみこんだ。様子がおかしかったから先生が君に駆け寄っていったら君の頭上に瞳の魔物が現れた。金色の一つ目をしたそれは君のことをじっと見つめていたそうだよ。まるで獲物を狙うようにね」
あの時、私の頭上には瞳の魔物がいたんだ。じゃあ、私の身体の中に入って来ようとしたのは、あの魔物だったというの?
私は恐ろしくなって自分のお腹を抱きしめた。
「君に渡しておいた魔法石が魔物に反応したおかげで、魔物は逃げていったんだけど。その後、君は、疑われたんだよね」
「疑われたって、まさか」
「そのまさか。君が意図的に瞳の魔物を呼んだって思われてた」
私は頭を抱えた。あははと笑うヴェルナーの声が耳障りだ。
「きっと、図書館の件もあって私が疑われているんですよね」
「そうだね」
「私、ただの15歳の女ですよ。勉学も魔法も特別秀でているわけでもない」
「でも、3回も瞳の魔物に出遭ったんだから疑われても仕方がないよね?」
「3回?」
ヴェルナーの言葉に違和感を覚えた。でも、頭痛も相まってそれが何なのか分からない。
「こんな時でもとぼけるなんて、流石だね」
本当に分からないだけなのに隠し事をしていると思われている。ヴェルナーは私を買いかぶりすぎだ。
ヴェルナーが急に真剣な顔になった。
「入学式の日に遭ったんだろ? 禁断の園で」
「なぜ、それを?」
あの日、あの魔物に遭ったことは誰にも言っていない。あの頃からヴェルナーは私を監視していたの?
「マテウスが学園長に報告しているのを聞いていたから」
「マテウス様が?」
彼は私が魔物に遭ったことを知っていたというの? そもそも、彼は瞳の魔物の存在を知っていた?
「もういい加減に、瞳の魔物について教えてもらえませんか」
私がそう言うと、ヴェルナーはにこりと笑った。
身体を起こしてみたら頭痛がした。頭を抑えて俯いていると耳元で声が聞こえた。
"大丈夫?"
ヴェルナーの声だった。いつもみたいに人を馬鹿にしたような声色じゃない。
ーーもしかして、私を心配してくれている?
そう思ったのは、体調が悪いせいだろうか。
「近くにいるんですか?」
"うん。窓から入るから開けて"
自分の姿を確認したらネグリジェでこの姿で合うのは恥ずかしかった。私は上着を一枚羽織ってから窓を開けた。ヴェルナーはすぐに部屋の中に入ってきた。
「うわっ。ひどい顔」
ヴェルナーは私の顔を見るなり言った。
机に置いてあった手鏡を覗いてみたら、ヴェルナーの言う通り、ひどい顔をしていた。元々肌は白い方だけど、今は青白くて唇は色を失っていた。
「もう少し横になったら?」
「いえ、大丈夫ですから」
私がベッドの脇に座るとヴェルナーがその隣に座ってきた。あなたは椅子に座ってと言いたいけど、今はそういうやり取りをする気力もない。
「君は3日も寝込むものだから、流石の俺も心配しちゃった」
そう言うヴェルナーは飄々としていて、とても心配してくれているようには見えない。
「3日も寝てたんですね」
「うん」
ズキズキと頭が痛んだ。
「試験は、どうなりました?」
試験の途中に倒れてしまったわけだけど。再テストをしてくれないのかしら。
「こんな時でも試験のことを気にするなんて、真面目だねえ」
ヴェルナーはケラケラ笑った。
「こんな時?」
「ああ、もしかして知らなかった? 君が試験を受けている途中に魔物が出たんだよ。"瞳の魔物"がね」
私は驚きのあまり、目を見開いていた。
「何があったんです?」
「俺はその場にいたわけじゃないから、人から聞いた話だよ」
ヴェルナーは前置きをして、話し始めた。
「君がライトの魔法を実演していたら、急に頭を抱え込んでしゃがみこんだ。様子がおかしかったから先生が君に駆け寄っていったら君の頭上に瞳の魔物が現れた。金色の一つ目をしたそれは君のことをじっと見つめていたそうだよ。まるで獲物を狙うようにね」
あの時、私の頭上には瞳の魔物がいたんだ。じゃあ、私の身体の中に入って来ようとしたのは、あの魔物だったというの?
私は恐ろしくなって自分のお腹を抱きしめた。
「君に渡しておいた魔法石が魔物に反応したおかげで、魔物は逃げていったんだけど。その後、君は、疑われたんだよね」
「疑われたって、まさか」
「そのまさか。君が意図的に瞳の魔物を呼んだって思われてた」
私は頭を抱えた。あははと笑うヴェルナーの声が耳障りだ。
「きっと、図書館の件もあって私が疑われているんですよね」
「そうだね」
「私、ただの15歳の女ですよ。勉学も魔法も特別秀でているわけでもない」
「でも、3回も瞳の魔物に出遭ったんだから疑われても仕方がないよね?」
「3回?」
ヴェルナーの言葉に違和感を覚えた。でも、頭痛も相まってそれが何なのか分からない。
「こんな時でもとぼけるなんて、流石だね」
本当に分からないだけなのに隠し事をしていると思われている。ヴェルナーは私を買いかぶりすぎだ。
ヴェルナーが急に真剣な顔になった。
「入学式の日に遭ったんだろ? 禁断の園で」
「なぜ、それを?」
あの日、あの魔物に遭ったことは誰にも言っていない。あの頃からヴェルナーは私を監視していたの?
「マテウスが学園長に報告しているのを聞いていたから」
「マテウス様が?」
彼は私が魔物に遭ったことを知っていたというの? そもそも、彼は瞳の魔物の存在を知っていた?
「もういい加減に、瞳の魔物について教えてもらえませんか」
私がそう言うと、ヴェルナーはにこりと笑った。
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