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モルガンは帰って来たティナたちを見て驚いた。
魔物の子供を連れ帰ったこともそうだが、その魔物の子供が大人しく──と言うより、甘えた様子でティナの腕の中にいたからだ。
基本、魔物は人に懐かないと言われている。それなのに魔物の子供はすっかりティナに懐いていると、ひと目でわかったのだ。
「この短い時間で随分懐かれてんじゃねぇか。流石はティナってことか?」
魔物の子供がティナに懐いたのはきっと、彼女が元聖女だからかもしれないとモルガンは推理した。
「魔物が凶暴になるのは瘴気を浴び続けているから、という説がありますし。瘴気が抜けたコイツは魔物に似ている子犬なのかもしれませんね」
成績優秀だったトールは魔物についても詳しかったようだ。
ティナはずっと「魔物は人に害を与える存在」だと神殿で教えられてきた。その教え自体が間違っているかもしれないとは、考えもしなかったのだ。
「じゃあ、私が一緒にいて<浄化>し続けていたら……」
「うん。多分コイツは凶暴化しないんじゃないかな」
明確に証明された訳でなく、仮説だとわかっていても、ティナはトールの言葉に安心する。トールの声には人を落ち着かせる力があるのかもしれない。
「何だか変な気配がするんだけど……あら?」
アネタを寝かしつけていたイロナがテントから出てきた。
勘が鋭いイロナは、魔物の子供の気配を感じ取ったらしい。
「あ、あの、この子は……!」
朝になったら折を見て、魔物の子供のことを説明しようと思っていたのに、早速イロナに見つかってしまった。
隠そうにも既に手遅れで、ティナの腕の中にいる魔物の子供を見たイロナが驚きの声を上げる。
「やだーーーー!! 可愛いーーーー!!」
イロナは魔物の子供を見て大興奮だ。
もしかすると拒絶されるかと思っていたティナは拍子抜けしてしまう。
「え、えっと……。まだ子供とは言え魔物ですけど……怖くないんですか?」
「ええーっ?! こんなに可愛いのに怖い訳ないじゃない! 何かいるな、って感じたけど、まさか<金眼>の魔物だなんて!」
「え? <金眼>……?」
「ええ、<金眼>の魔物はその生息地一帯の主のことよ。この子、大きくなったらきっとすごく強くなるわよ」
「ああ! そういや聞いたことあるな。何だっけか、<王の目>とも言うんだっけか?」
「そうよ。金色の瞳を持つものは王者の素質を持っていると言い伝えられているの。ほら、クロンクヴィストの王族にも<金眼>持ちがいるって噂でしょう?」
イロナたちの会話をティナは呆然としながら聞いていた。自分が知らない内容ばかりなのはもちろん、腕の中の魔物の子供が将来<魔物の王>になるとは思わなかったのだ。
「え、クロンクヴィストの王族は金色の目をしているんですか?」
「ええそうよ。まあ、王族全員じゃないけれど、クロンクヴィストの王族は今も古い血統を引き継いでいてね。<金眼>はその証で、それを持って生まれた者が王位を継ぐらしいわ」
「へ、へぇ~~……。私、全く知りませんでした」
聖女や王妃候補として多忙だったとは言え、隣国の王族について知らなかったのは流石に恥ずかしい。
「ああ、そりゃ知らなくて当然よ。<金眼>の魔物なんて最近は滅多に現れないし、クロンクヴィストでも百年ぶりに<金眼>持ちの王族が生まれたって話だもの。でもねぇ……」
イロナはそう言うと、少し困った表情になる。
「何か問題があるんですか?」
「それが、<金眼>を持って生まれたのが第二王子で、側室の子らしくて。王位継承で随分揉めているらしいのよね。私は優秀な王子なら生まれは関係ないと思うけど。貴族の権力争いまで絡むと複雑になっちゃうわね」
「ほぇ~~……。イロナさんってすごく物知りなんですね……」
王室の内情はその国の沽券に関わるため、基本秘匿されている。
それなのにイロナが王位継承権争いのことまで知っていることにティナは驚いた。
「うふふ。そりゃ、顧客から色々聞かせて貰ったからね。私のお客さんには結構貴族が多かったのよ」
凄腕占術師のイロナに占って貰うには結構な労力が必要だ。確かに貴族であれば、その労力を惜しむ必要はない。
そしてイロナは顧客の相談にもよく乗っていたらしいので、それこそ色んな情報を手にしていたのだろう。
魔物の子供を連れ帰ったこともそうだが、その魔物の子供が大人しく──と言うより、甘えた様子でティナの腕の中にいたからだ。
基本、魔物は人に懐かないと言われている。それなのに魔物の子供はすっかりティナに懐いていると、ひと目でわかったのだ。
「この短い時間で随分懐かれてんじゃねぇか。流石はティナってことか?」
魔物の子供がティナに懐いたのはきっと、彼女が元聖女だからかもしれないとモルガンは推理した。
「魔物が凶暴になるのは瘴気を浴び続けているから、という説がありますし。瘴気が抜けたコイツは魔物に似ている子犬なのかもしれませんね」
成績優秀だったトールは魔物についても詳しかったようだ。
ティナはずっと「魔物は人に害を与える存在」だと神殿で教えられてきた。その教え自体が間違っているかもしれないとは、考えもしなかったのだ。
「じゃあ、私が一緒にいて<浄化>し続けていたら……」
「うん。多分コイツは凶暴化しないんじゃないかな」
明確に証明された訳でなく、仮説だとわかっていても、ティナはトールの言葉に安心する。トールの声には人を落ち着かせる力があるのかもしれない。
「何だか変な気配がするんだけど……あら?」
アネタを寝かしつけていたイロナがテントから出てきた。
勘が鋭いイロナは、魔物の子供の気配を感じ取ったらしい。
「あ、あの、この子は……!」
朝になったら折を見て、魔物の子供のことを説明しようと思っていたのに、早速イロナに見つかってしまった。
隠そうにも既に手遅れで、ティナの腕の中にいる魔物の子供を見たイロナが驚きの声を上げる。
「やだーーーー!! 可愛いーーーー!!」
イロナは魔物の子供を見て大興奮だ。
もしかすると拒絶されるかと思っていたティナは拍子抜けしてしまう。
「え、えっと……。まだ子供とは言え魔物ですけど……怖くないんですか?」
「ええーっ?! こんなに可愛いのに怖い訳ないじゃない! 何かいるな、って感じたけど、まさか<金眼>の魔物だなんて!」
「え? <金眼>……?」
「ええ、<金眼>の魔物はその生息地一帯の主のことよ。この子、大きくなったらきっとすごく強くなるわよ」
「ああ! そういや聞いたことあるな。何だっけか、<王の目>とも言うんだっけか?」
「そうよ。金色の瞳を持つものは王者の素質を持っていると言い伝えられているの。ほら、クロンクヴィストの王族にも<金眼>持ちがいるって噂でしょう?」
イロナたちの会話をティナは呆然としながら聞いていた。自分が知らない内容ばかりなのはもちろん、腕の中の魔物の子供が将来<魔物の王>になるとは思わなかったのだ。
「え、クロンクヴィストの王族は金色の目をしているんですか?」
「ええそうよ。まあ、王族全員じゃないけれど、クロンクヴィストの王族は今も古い血統を引き継いでいてね。<金眼>はその証で、それを持って生まれた者が王位を継ぐらしいわ」
「へ、へぇ~~……。私、全く知りませんでした」
聖女や王妃候補として多忙だったとは言え、隣国の王族について知らなかったのは流石に恥ずかしい。
「ああ、そりゃ知らなくて当然よ。<金眼>の魔物なんて最近は滅多に現れないし、クロンクヴィストでも百年ぶりに<金眼>持ちの王族が生まれたって話だもの。でもねぇ……」
イロナはそう言うと、少し困った表情になる。
「何か問題があるんですか?」
「それが、<金眼>を持って生まれたのが第二王子で、側室の子らしくて。王位継承で随分揉めているらしいのよね。私は優秀な王子なら生まれは関係ないと思うけど。貴族の権力争いまで絡むと複雑になっちゃうわね」
「ほぇ~~……。イロナさんってすごく物知りなんですね……」
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それなのにイロナが王位継承権争いのことまで知っていることにティナは驚いた。
「うふふ。そりゃ、顧客から色々聞かせて貰ったからね。私のお客さんには結構貴族が多かったのよ」
凄腕占術師のイロナに占って貰うには結構な労力が必要だ。確かに貴族であれば、その労力を惜しむ必要はない。
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